妊娠関連非典型溶血性尿毒症症候群(pregnancy-associated atypical hemolytic uremic syndrome, P-aHUS)を疑いエクリズマブを投与したところ,腎機能の速やかな改善を認めた症例を経験したので報告する。症例は24歳,女性。帝王切開後に血小板減少,溶血性貧血,腎機能障害をきたし,当院に転院となった。血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)あるいはP-aHUSを疑い,入院2日目から血漿交換療法を2日間,連日施行した。 分娩後発症であること,中枢神経症状が全くないこと,腎機能障害が高度であることから,TTPよりもP-aHUSの可能性が高いと考え,入院3日目より抗補体療法(エクリズマブ900 mg/week)を開始したところ,入院4日目から血小板数が上昇,入院5日目から血清Cr値が低下し,以降は血小板数,Cr値ともに順調に改善した。入院7日目にa disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs, number 13(ADAMTS13)活性が正常であることが判明し,TTPは否定された。臨床的にaHUSが疑われる場合は,鑑別診断を進めると同時に,可及的速やかに抗補体療法の導入を検討することが重要である。
抄録全体を表示