日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
22 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
今号のハイライト
原著
  • 相澤 純, 永田 博文, 山田 直人, 鈴木 道大, 鈴木 健二
    2015 年 22 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/19
    ジャーナル フリー
    【目的】近赤外線分光法による脳組織酸素飽和度(regional saturation of oxygen, rSO2)に影響する指標を調査した。【方法】麻酔中rSO2を測定した症例〔肺腫瘍に対する肺葉切除術群(lung tumor, LT群,n=50),腹部大動脈瘤に対するY型人工血管置換術群(abdominal aortic aneurysm, AAA群,n=42),胸腹部大動脈瘤に対する胸腹部人工血管置換術群(thoracic abdominal aortic aneurysm, TAAA群,n=43)〕を対象とし,rSO2に影響する呼吸・循環・代謝指標を重回帰分析により検討した。【結果】rSO2に影響する指標はLT群でHb・PaO2・PaCO2,AAA群でHb・上大静脈血酸素飽和度,TAAA群で体温・混合静脈血酸素飽和度であった(P<0.01)。また,rSO2に最も影響する指標はLT群でPaO2,AAA群でHb,TAAA群で体温であった(P<0.01)。【結語】脳の酸素化を維持するためにはHb・PaO2・PaCO2・体温の制御が重要である可能性が示唆された。
症例報告
  • 岩下 義明, 山本 章貴, 鈴木 圭, 畑田 剛, 武田 多一, 丸山 一男, 今井 寛
    2015 年 22 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/19
    ジャーナル フリー
    クリオプレシピテート(以下,クリオ製剤)は新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma, FFP)から調整された濃縮血液製剤であり,諸外国では大量出血患者に対するフィブリノゲン(fibrinogen, FBG)補充目的に使用されている。本邦でも手術中の大量出血に対する止血効果が報告されているが,外傷患者に対する使用の報告はまだ少ない。当院では,これまでに6例の外傷患者に対しクリオ製剤を使用している。6症例のクリオ製剤投与直前のFBGの平均は99.2 mg/dlで,投与後のFBGの平均は179 mg/dlであった。乳酸値は投与前4.6 mmol/lから投与後3.5 mmol/lへ改善した。投与した6症例中死亡例は1例で,5例は生存退院した。対象症例中,クリオ製剤投与に伴う有害事象はみられなかった。クリオ製剤は低FBG血症を伴う外傷患者に対し急速にFBGを補充することで止血を可能にし,生命予後を改善させる可能性があると考えられる。
  • 柚木 一馬, 菅生 教文, 植田 浩司, 下薗 崇宏, 瀬尾 龍太郎, 美馬 裕之, 山崎 和夫
    2015 年 22 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/19
    ジャーナル フリー
    非痙攣性てんかん重積状態(nonconvulsive status epilepticus, NCSE)は意識障害以外に臨床的所見に乏しく,脳波検査(electroencephalogram, EEG)が唯一の診断の手掛かりとなる。当院において体外循環使用成人心臓血管外科術後に意識障害の遷延,覚醒遅延からEEGを施行し,NCSEと診断・治療を行った11症例を分析した。NCSEと診断したのは体外循環使用成人心臓血管外科手術433例中11例(2.6%),11例中9例では治療介入後に意識レベルの改善を認めた。多変量解析では閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans, ASO)の合併,心房細動(atrial fibrillation, Af)の存在,体外循環時間180分以上,術中トラネキサム酸(tranexamic acid, TXA)の使用の4点が術後NCSEのリスク因子として同定された。術後意識障害が遷延する場合,NCSEを鑑別に挙げ早期にEEGを施行し,てんかん波を認めた場合は積極的に治療介入すべきである。またTXAは術後NCSEのリスク因子であり,その使用は出血リスクが高い症例に限定すべきである。
  • 田村 暢一朗, 椎野 泰和, 鈴木 幸一郎
    2015 年 22 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/19
    ジャーナル フリー
    今回われわれはウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症の2症例を経験したので報告する。【症例1】71歳,女性。朝方自宅で倒れているところを発見された。頭部CTおよびMRI,脳波,髄液検査などで異常所見なく,ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑った。気管挿管,尿道バルーンを挿入,ampicillin/sulbactamの投与を行った。尿培養ではCorynebacterium urealyticumが検出され,ウレアーゼ陽性であった。【症例2】67歳,女性。意識障害を主訴に救急搬送された。ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑い,尿道バルーンを挿入,cefozopranの投与を行った。尿培養ではKlebsiella oxytocaが検出され,ウレアーゼ陽性であった。2症例とも尿閉であった。尿閉患者における高アンモニア血症の原因を鑑別する上で,ウレアーゼ産生菌による尿路感染は考慮されるべきである。
  • 宮本 和幸, 田中 幸太郎, 田中 俊生, 井手 亮太, 萩原 祥弘, 福田 賢一郎, 三宅 康史, 有賀 徹
    2015 年 22 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2015/01/01
    公開日: 2015/01/19
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(Parkinson's disease, PD) は自律神経症状を合併する多系統変性疾患である。近年,心臓交感神経の除神経過敏が証明されたが,PDの血管作動薬使用については十分に理解されていない。症例は78歳,男性。強い下腹部痛,発熱を主訴に搬送された。偽性腸閉塞に伴う敗血症性ショックと診断し,経肛門ドレナージ,輸液,抗菌薬投与を行った。しかし,徐々に血圧が低下したためノルアドレナリン(noradrenaline, NA)投与を開始した。直後から心室性期外収縮が頻発し,NA増量に伴い心室頻拍となり,さらに血圧が低下した。NAからバゾプレッシン(vasopressin, VP)に変更したところ,不整脈は著明に減少し,ショックから離脱できた。PDでは早期から心臓交感神経が障害される。除神経過敏を合併するPDでは,アドレナリン受容体を介さないVPへの早期変更を考慮すべきと考える。
短報
feedback
Top