夫婦でStreptococcus pyogenesによる壊死性筋膜炎を発症したが,妻のみ劇症型の経過となり死亡するという転帰の異なる2症例を経験した。妻は,病変部位の病理検査では好中球の浸潤が乏しく,血液培養から病原制御因子であるCsrSに変異のある菌株が検出された。一方,夫の病理検査では多数の好中球の浸潤を認め,菌株に病原制御因子の変異を認めなかった。菌株の病原制御因子の変異は,劇症化や病理組織所見と関連する可能性が示唆された。
重度の頸椎後屈制限を伴うムコ多糖症I型(Hurler症候群)の患児に対し,縦隔気管孔形成術を施行した1例を経験した。症例は10歳,男児。幼少時よりHurler症候群と診断され,4歳時に頸椎症に対して椎弓切除術を受けた。ARDSのため他院で気管挿管されたが,集中治療目的に当院に搬送された。集中治療により肺炎は改善したが,人工呼吸器からの離脱が困難で,気管切開が必要な状態と判断された。しかし,頸椎後屈制限のため気管切開が不可能であり,縦隔気管孔形成術を行う方針とした。小児では稀な術式であり,患児の合併疾患も重篤であるため,多職種合同カンファレンスを行い,周術期管理について綿密に検討した。特に手術体位の決定,術野挿管の方法,体外循環の可否,腕頭動静脈切断リスクへの対応について議論した。手術は問題なく終了し,術後合併症を生じずに良好な経過をとった。多職種連携による集学的治療を行うことで安全に管理できた。
当院ICUでは感染制御の観点から,重症COVID-19患者の現場での学生臨床実習を断念してきたが,この度,スマートグラス(以下,SG)を用いた遠隔での臨床実習を実施した。その有用性と課題について質問紙調査を実施し,学生12名と指導医2名(回答率100%)から回答を得た。SGを用いることで,感染区域の患者が対象であっても,学生に満足度の高い臨床実習を安全に提供できた。遠隔実習独特の教育技法や技術的サポートの必要性が求められるものの,今後工夫を重ねることでSGは現場での臨床実習を補完する選択肢になる可能性がある。
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