日本集中治療医学会雑誌
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20 巻, 4 号
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
今号のハイライト
総説
  • 上農 喜朗
    2013 年 20 巻 4 号 p. 581-587
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    気管挿管とマッキントッシュ型喉頭鏡は永らく気道管理のゴールドスタンダードと認識されてきた。ビデオ技術の進歩により,声門を直接視認しないで気管挿管を実施できる間接視認型ビデオ喉頭鏡が急速に普及している。気管チューブ誘導機構を有する間接視認型ビデオ喉頭鏡によって,胸骨圧迫中も安全・迅速に気管挿管ができるようになった。声門上気道管理器具の開発・普及によって,気管挿管を行わないで安全に全身麻酔中の気道確保を実施できるようになった。気道確保困難症例での使用だけでなく,心肺蘇生や院内急変対応時の気道確保器具としても有効である。今後も患者の安全と治療効果の向上を実現する新しい技術や器具の開発が続くことを期待したい。
  • 宇治 満喜子, 後藤 幸子, 藤野 裕士
    2013 年 20 巻 4 号 p. 588-593
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    本邦では2010年に改正臓器移植法が施行され,脳死後の臓器移植件数は増加してきている。それにともなって心臓移植待機中に左心補助人工心臓を装着する患者の数も増加傾向であり,装着を施行する施設の数も増加すると予測される。REMATCH(randomized evaluation of mechanical assistance for the treatment of congestive heart failure)試験により,末期心不全患者に対する左心補助治療の有効性が証明され,使用が増加している。本邦では欧米に比して心移植症例数が少なく,登録から移植日までの心移植待機期間は米国の約20倍の960日と長い。左心補助人工心臓装着患者の管理に関する明確なガイドラインはないため,左心補助人工心臓と装着患者について,文献的考察に当施設での経験を加え,適応,装置の種類,術前/術後管理(意識,呼吸,循環,抗凝固,感染),長期的予後を概説する。
原著
  • 大網 毅彦, 池山 貴也, 中林 洋介, 水城 直人, 齊藤 修, 新津 健裕, 諏訪 淳一, 清水 直樹
    2013 年 20 巻 4 号 p. 595-600
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    【目的】小児重症患者における塩酸バンコマイシン(vancomycin, VCM)濃度予測の信頼性に影響を与える臨床因子を後方視的に検討した。【対象と方法】2010年3月~2011年11月当PICUに入室しVCMを投与した84例(pediatric logistic organ dysfunction, PELODスコア;10.7±10.6)を対象とした。当院でのシミュレーションソフトウェアによる予測濃度と実測濃度から予測誤差を算出し,影響を与える臨床因子を解析した。【結果】全症例の平均予測誤差は-16±64%。PELODスコア≧20とpercent fluid overload(%FO)≧10,estimated creatinine clearance(estCCr)<50の症例の予測誤差は12.4±68.0%,13.1±42.7%,-44.8±80.6%で有意に増大した(P<0.05)。【結語】小児重症患者ではPELODスコアと%FO,estCCrが濃度予測に影響を与えていた。
  • 川崎 達也, 関根 裕司, 塩崎 麻那子, 釜田 峰都, 北村 祐司, 川根 清美, 加藤 寛幸
    2013 年 20 巻 4 号 p. 601-607
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    【背景】Rapid response system(RRS)は予期せぬ病棟心停止や死亡率を減らす可能性が示唆され,国内外の医療安全指針に採用されている。【方法】2009年9月より当院にて全医師・看護師・リハビリスタッフが起動可能なRRSを導入した。全事案を前向き記録し,導入後24ヶ月間の病棟心停止の発生率や院内死亡率を導入前27ヶ月間と前後比較した。【結果】RRS起動件数は68件(1,000入院当たり6.6件)。RRS導入前後で病棟心停止(同前0.70,後0.68)や院内死亡率(同前8.56,後7.62)は低下しなかったが,病棟からのICU予定外入室患者の死亡率〔前10.7%,後3.8%;RR(relative risk)0.36,95%CI(confidence interval)0.13~0.98〕は有意に低下した。【結論】RRS導入前後の約2年間ずつの観察では病棟心停止や院内死亡率の改善は認めなかった。今後もシステムを改善し評価を継続する方針である。
  • 大路 牧人, 寺尾 嘉彰, 一ノ宮 大雅, 三浦 耕資, 福崎 誠, 澄川 耕二
    2013 年 20 巻 4 号 p. 608-613
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    【目的】くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage, SAH)では脳脊髄液中S100β蛋白濃度が上昇している。SAH患者において,髄液中S100β蛋白と神経学的予後との関連性について検討した。【方法】2006年6月から2008年5月までの期間に,SAH発症48時間以内に全身麻酔後,手術前に脳脊髄腔ドレーンを留置し,脳外科手術を施行された55名を対象とした。手術前の髄液中S100β蛋白を測定した。退院時の神経学的予後はGlasgow outcome scaleで評価した。【結果】55名中25名は神経学的予後不良だった。術前の髄液中S100β蛋白は予後不良群において予後良好群よりも高値を示した。神経学的予後不良に対する髄液中S100β蛋白の受信者動作特性曲線の曲線下面積は0.65であった。【結論】SAH発症後の術前髄液中S100β蛋白の増加が神経学的予後の悪化と関連している可能性が示唆されたが,正確な予後予測因子ではなかった。
症例報告
  • 桑原 政成, 西 裕太郎, 西原 崇創, 安齋 均, 新沼 廣幸, 大谷 典生, 石松 伸一, 久留 一郎
    2013 年 20 巻 4 号 p. 615-619
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    患者は,69歳,男性。高血圧で内服加療中であった。テニスプレー中に意識消失し,心停止のため心肺蘇生開始された。自動体外式除細動器で除細動施行後,呼吸再開し当院搬送となった。来院時,意識はJapan coma scale II-10,心電図で心房細動とV2~V6でST低下,心エコー図検査で軽度左室肥大,びまん性壁運動低下が認められた。緊急心臓カテーテル検査で左前下行枝に90%狭窄病変が認められ,同部位に経皮的冠動脈形成術を施行された。心電図変化の改善,心エコー図検査で壁運動の改善が認められたが,心筋逸脱酵素の上昇は認められなかった。入院後の心臓MRI検査にて遅延造影陽性となり,心筋生検で心筋の錯綜配列,心筋線維化が認められ肥大型心筋症と診断され,植込み型除細動器の植込み後に退院となった。心臓カテーテル検査で虚血による心停止が疑われた場合でも,他疾患を合併することがあり,十分な鑑別と精査が必要である。
  • 田村 哲也, 坪内 宏樹, 新美 太祐, 川出 健嗣, 辻 麻衣子, 野手 英明, 松永 安美香, 祖父江 和哉
    2013 年 20 巻 4 号 p. 620-624
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    【目的】High flow-volume large size polymethyl methacrylate-hemodiafiltration(high performance-HDF, HP-HDF)の,プロカルシトニン(procalcitonin, PCT)値に対する影響を調査した。【方法】敗血症性ショックでHP-HDFを施行した18例で,HP-HDFでPCTが除去されるか調査した。HP-HDF開始1時間後,3時間後に血液浄化回路の入口と出口で採血し,HP-HDF施行翌日のPCT値も測定した。【結果】血液浄化回路出口部のPCT濃度は入口部の濃度より有意に低下した。HP-HDF開始3時間後の血液浄化回路によるPCTクリアランスは1時間後と比較して有意に低下した。施行翌日のPCT値は入室時と比較して低下傾向だった(P=0.054)。【結論】HP-HDF施行時,PCTはある一定量は除去されると考えられた。
  • 長嶺 祐介, 倉橋 清泰
    2013 年 20 巻 4 号 p. 625-628
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    臓器血流障害を合併したStanford B型急性大動脈解離の予後は不良であるが,ステントグラフト治療が導入され,低侵襲の治療が可能となってきた。我々は,Stanford B型急性大動脈解離による腎臓の血流障害を合併した症例に対する胸部下行大動脈ステントグラフト留置術の周術期管理を経験した。患者は79歳女性,偽腔開存型Stanford B型急性大動脈解離と診断された。降圧療法などの保存治療を施行したが,腎機能が悪化し,血液透析が必要となった。偽腔拡大化と真腔狭小化による腎血流障害と診断され,準緊急に胸部下行大動脈ステントグラフト留置術を全身麻酔下で施行した。術中は,経食道心エコーを用いてステントグラフトの留置を補助し,真腔・偽腔血流を評価した。術後に速やかに腎機能が回復し,血液透析を離脱した。腎血流障害を合併したStanford B型急性大動脈解離に対するステントグラフト治療は有効であったが,腎血流障害をより早期に診断する必要性があったと考えられた。
  • 中村 文人, 大塚 洋司, 永野 達也, 五十嵐 孝, 多賀 直行, 竹内 護
    2013 年 20 巻 4 号 p. 629-633
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    重症複合型免疫不全症(severe combined immunodeficiency, SCID)は原発性免疫不全症の最重症型で,救命のために造血幹細胞移植が必要であり,適切な診断と感染管理が重要となる。今回われわれはニューモシスチス肺炎を契機に診断されたSCIDの症例を経験したので報告する。症例は4ヶ月,女児。遷延する咳嗽・体重減少を認め受診した。SpO2 85%(空気呼吸下),胸部X線にて浸潤影を認めたが,発熱や血液検査にて炎症反応の上昇を認めなかった。肺炎による呼吸不全として抗菌薬治療を行うも改善なく,体重減少・リンパ球減少・胸腺欠損から原発性免疫不全症を疑い,T細胞・B細胞欠損(いずれも50 /μl以下)を認めSCIDの診断に至った。喀痰polymerase chain reaction(PCR)検査にてニューモシスチス肺炎と診断,ST合剤投与にて呼吸状態が改善し臍帯血移植施行,生着が得られ救命できた。非典型的な経過を辿り治療抵抗性の乳児期の重症感染症には原発性免疫不全症の可能性を考慮すべきである。
短報
レター
調査報告
  • 志馬 伸朗, 篠原 貴子, 重見 研司
    2013 年 20 巻 4 号 p. 667-670
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    敗血症に関する知識を,計503名の医療従事者(集中治療専門医でない卒後5年以内の医師及び看護師),学生(医学部,看護学部,非医学部理系学部)及び患者を対象に,質問紙形式で調査した。「敗血症」という言葉の認知度は,医療従事者や学生で100%だが,非医学部理系学生53%,患者49%であった。敗血症の内容を,“知らない“としたものは,看護学生30%,理系学生83%,患者41%,“血中への菌の侵入”としたものは医師33%,看護師47%,医学部学生45%,看護学生32%であった。敗血症の死亡率(28~50%)を正答できたものは医師60%,看護師29%,医学部学生13%,看護学生15%,理系学生8%,患者2%であった。敗血症という用語は,医療従事者以外には認知されていない。医療従事者や学生の敗血症の知識は十分でない。医療従事者から一般市民まで幅広く啓発/教育活動を行う余地がある。
委員会報告
  • 日本集中治療医学会集中治療の労働力調査プロジェクトWG, 日本集中治療医学会小児集中治療委員会, 日本集中治療医学会将来計画委員会, 日本集 ...
    2013 年 20 巻 4 号 p. 671-678
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/02
    ジャーナル フリー
    【背景】日本においても,小児ICU設置,その専門医による治療は利益を持つと考えられるが,その実態は明らかでない。【方法】2011年10,12月に本学会員を対象に横断研究を実施した。専門医所持の有無,勤務時間・施設,小児の診療経験・自信などを調査した。【結果】1,298名より回答を得た(回収率22.1%)。本学会員のうち日本小児科学会にも所属する者は5.0%,小児科学会専門医を有する者は3.7%であった。非小児科医のうち62.0%は重症小児の診察に携わらないと回答した。一方で35.1%は小児患者を診察するとし,うち25.0%は小児診療に自信はないが,せざるを得ないとした。【結論】本学会員の4~5%が小児科学会員であると考えられる。本学会員の約半数が小児診療に携わっている一方,その多くがその意思に反して小児診療に従事せざるを得ず,また診療に不安を感じる状況にあることが明らかとなった。
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