カテコラミンクリーゼによる急性左心不全にて発症し,体外式心肺補助(extracorporeal lung and heart assist; ECLHA)施行により救命しえた褐色細胞腫症例を経験した。36歳,男性,背部に激痛を訴えた後ショックとなった。心エコーで左室壁運動の著明な低下が認められ,心筋炎による急性左心不全を疑い人工呼吸下にカテコラミンおよび大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping; IABP)で治療した。しかし循環維持は困難で,一時的なカテコラミンの増量に対し左室壁運動が改善されないことを受けECLHAを施行した。血行動態は安定し,左室壁運動が改善したところでECLHAを離脱したが,その後の循環動態はむしろ高心拍出となり降圧薬の投与を必要とした。腹部コンピューター断層撮影および血中,尿中カテコラミンより右副腎腫瘍(褐色細胞腫)と診断され,腫瘍摘出術を施行し,その後の経過は良好であったが,心電図に心筋障害と思われる異常所見を残した。われわれは,一時的なカテコラミン増量に対し左室壁運動が改善されないのを受け,さらなる薬物投与ではなく早期にECLHAを開始し良好に循環管理を施行しえた。このことは,ECLHAが褐色細胞腫のカテコラミンクリーゼのショック状態の循環維持に有用であるばかりでなく,さらなるカテコラミンによる心筋障害を予防しえたと考えられた。
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