冠動脈瘤は比較的稀な疾患ではあるが,心筋梗塞や心タンポナーデを来し致命的な経過を辿ることから,迅速な治療が求められる。症例は58歳,男性。化膿性膝関節炎治療中に冠動脈3枝病変と右冠動脈瘤を指摘され,冠動脈狭窄,心房細動に対して抗凝固薬と抗血小板薬が追加された。その後,心嚢液が緩徐に増加し,第17病日に閉塞性ショックを伴う心タンポナーデを来し,転院した。緊急開胸手術を行い,心膜切開をすると,心膜切開後CVPは30 mmHgから8 mmHgまで速やかに低下し,血行動態は安定した。出血源は右冠動脈瘤と考えられたため縫合止血し,大動脈内バルーンパンピング補助下に冠動脈バイパス術を併施した。 心タンポナーデの原因として外傷,心筋梗塞,心破裂,心膜炎などが挙げられるが,今回のように冠動脈瘤破裂も一因となり得ることは銘記すべきである。さらに,冠動脈瘤や心嚢液を有する菌血症治療時には,外科治療も念頭に治療を進めるべきとも考える。
人工呼吸管理中のCOVID-19患者では,人工呼吸器との同調や呼吸仕事量の低減を目的として,比較的大量の静脈麻酔薬が必要となり,鎮静管理に難渋することがある。海外において,重症COVID-19患者に対する揮発性吸入麻酔薬の使用報告が散見されているが,本邦では未だ使用報告は少ない。今回,我々はCOVID-19患者に対してセボフルランを用いて鎮静を行った症例を4例経験したので報告する。本報告では,いずれの患者も静脈麻酔薬のみでの鎮静管理が困難となり,セボフルランの使用が開始された。セボフルラン投与開始後24時間の時点でプロポフォールやミダゾラムなどの静脈麻酔薬の使用量は減少しており,セボフルラン使用前後で患者の鎮静度に大きな変化は見られなかった。今回の観察期間でセボフルラン使用に伴う明らかな有害事象は見られなかった。以上から,人工呼吸器管理中のCOVID-19患者においてセボフルランは,鎮静度を保ちながら静脈麻酔薬の減量を行うための選択肢となる可能性がある。
日本集中治療医学会薬事・規格・安全対策委員会は,2021年1月に「日本集中治療医学会 集中治療室における安全管理指針」を報告した。しかしながら2024年4月から開始される「医師の働き方改革」に向け,タスク・シフト/シェアを推進するための各医療関係職種の業務範囲の見直しが行われたため,チーム医療や働き方改革を推進するための新たな視点が安全管理に必要となった。日本集中治療医学会薬事・規格・安全対策委員会は,集中治療タスク・シフト/シェアに関する安全管理指針作成ワーキンググループを立ち上げ,「集中治療に係るタスク・シフト/シェアに関する安全管理指針」を作成した。本指針は,特定行為研修修了看護師や医療関係職種が,集中治療に係るタスク・シフト/シェアを行う際の医療安全を確保することを目的としている。本指針が臨床の現場で適切に活用されることを期待している。
日本集中治療医学会の集中治療専門医研修施設(375施設)の実態,診療内容および患者転帰を明らかにするため,2022年度の施設調査を行った。すべての研修施設から調査票を回収することができ,集中治療室の施設概要や運用・診療体制,患者動態などの実態が明らかになった。