日本集中治療医学会雑誌
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28 巻, 6 号
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編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 櫻谷 正明
    2021 年 28 巻 6 号 p. 509-519
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

    動脈瘤破裂によるくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage, SAH)は,脳卒中全体の5%と比較的少ないものの,他の脳卒中と比較して若年でも発症しやすく,死亡率は高い。病態生理の理解が進み,管理方法が向上し,神経学的予後は改善している。脳血管攣縮が遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia, DCI)を引き起こすと考えられてきたが,脳血管攣縮だけではなく様々な要因で起こることがわかってきている。SAH後にDCIを起こし,脳梗塞に至ってしまうと身体機能は低下する可能性が高く,適切な予防や介入が求められる。過去60年以上にわたり脳血管攣縮やDCIに対する予防や治療が検討されてきているが,確立した予防・治療法は少ない。本稿では,DCIの病態生理および,モニタリング方法と予防・治療的介入について解説する。

原著
  • 篠原 史都, 水谷 公司, 加賀谷 斉, 幸村 英文, 尾崎 祐輔, 河合 佑亮, 西田 修
    2021 年 28 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

    【目的】術後管理目的にICUへ入室した患者を対象にし,抜管直前の呼吸機能検査における再挿管の関連因子を検討した。【方法】2016年6月から2018年7月の間に術後管理目的で人工呼吸器装着のままICUへ入室した症例のうち,抜管直前に呼吸機能検査を行えた症例を対象とした。対象者を抜管後72時間以内の再挿管の有無で再挿管群と非再挿管群に分けた。 APACHE Ⅱscore,性別,術式にて1:2でマッチングし,背景因子と抜管直前の呼吸機能検査値を比較検討した。【結果】全324例中再挿管群は9例(2.8%)であった。背景因子はマッチングした非再挿管群の18例との間に差を認めなかった。呼吸機能検査値では最大呼気圧(maximal expiratory pressure, MEP)のみ再挿管群で有意に低値であった。再挿管理由の半数以上が痰の喀出困難であった。【結論】MEPが低値であると再挿管に至る可能性が高いことが示唆された。

症例報告
  • 赤松 貴彬, 稲田 雄, 清水 義之, 籏智 武志, 井坂 華奈子, 伊東 幸恵, 谷口 昌志, 竹内 宗之
    2021 年 28 巻 6 号 p. 527-531
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019, COVID-19)患者の急増により成人ICUの病床が逼迫し,独立病院型小児総合医療施設である当院に成人COVID-19患者の受け入れ要請があった。患者は75歳,男性,発熱後にCOVID-19と診断され呼吸困難のため前医に入院した。その後呼吸不全に至り,気管挿管後に当院PICUに転院した。2日間の筋弛緩薬持続投与と腹臥位療法を併用した肺保護換気を行い,酸素化・静的呼吸器系コンプライアンスは改善したが,大きな1回換気量と人工呼吸器関連肺炎が懸念され,他院の成人ICU医師に相談しながら抜管の可否を日々評価した。転院5日後に抜管,転院7日後に前医に転院した。 本症例の受け入れには,事前の準備,病院内外との連携やスタッフの教育による成人診療の質の確保,小児医療体制の維持などの様々な課題に取り組む必要があったが,小児重症患者に対する医療体制を維持しながら十分な質の成人医療を提供し得た。

  • 戸塚 亮, 鈴木 秀鷹, 相原 史子, 櫻井 うらら, 松尾 和廣, 寺岡 麻梨, 原 俊輔, 原田 尚重
    2021 年 28 巻 6 号 p. 532-536
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

    メトホルミン関連乳酸アシドーシス(metformin-associated lactic acidosis, MALA)は広く知られているが,血漿中濃度測定と剖検の報告は少ない。今回,MALAを発症して死亡し,死亡前の血漿メトホルミン濃度が高値であった剖検例を経験したので報告する。症例は糖尿病でメトホルミン内服中の64歳,女性。嘔吐を主訴に救急搬送され,MALA,急性腎障害,肺炎の診断でICUに入室した。抗菌薬,人工呼吸器管理,腎代替療法を施行したが奏功せず死亡した。血漿メトホルミン濃度は51.9 mg/Lと高値であった。病理解剖で巣状融合性肺炎を認めたが,高度な乳酸アシドーシスの原因は指摘できず,MALAの診断に矛盾しなかった。 血漿中濃度測定,病理解剖ともに行った症例は稀少で, MALAの診断には血漿メトホルミン濃度と臨床像の蓄積が重要であり,特異的な病理所見の有無の確認のためには,さらなる研究が待たれる。

  • 木村 友則, 湯澤 紘子, 小口 萌, 森戸 知宏, 淺木 弓英, 貞広 智仁
    2021 年 28 巻 6 号 p. 537-541
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

    症例は22歳,女性。左副腎腫瘍の腫瘍内出血と重度のショック,意識障害で当院へ紹介された。ショックをきたす様々な疾患を鑑別しつつ,大量輸液,カテコラミンの持続投与,人工呼吸管理,ステロイドの補充などの全身管理を行った。状態は数日で安定したが,軽度の刺激で血圧の急上昇を認めたため褐色細胞腫による高血圧クリーゼを疑い,αおよびβ遮断薬の投与を開始したところ循環動態は徐々に安定し,pheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の診断に至った。循環動態を安定化させ,周術期合併症のリスクを減らした状態まで全身状態を改善させ,第62病日に後腹腔鏡補助下副腎摘出術を行い独歩退院した。本症例はショックの鑑別,病態の把握および診断に苦慮した。PMCは非常に稀な病態であるが,集中治療医は致死率の高い内分泌疾患としてその病態を理解しておく必要がある。また,刻々と変化する患者の状態を把握,治療しながらバイタルサインの変化を見逃さず診断につなげることが重要である。

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