日本集中治療医学会雑誌
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28 巻, 5 号
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編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 時田 祐吉, 山本 剛
    2021 年 28 巻 5 号 p. 419-428
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:集中治療領域で行われる心エコー図検査の代表的なものとして,①緊急を要する病態に対し,ベッドサイドでの迅速な診断を目的とし定性的な評価を行うpoint-of-care超音波であるfocused cardiac ultrasound(FoCUS)と,②包括的なプロトコルに基づき定量的評価を含め循環器系の幅広い病態の診断を目的とした包括的心エコー図検査(comprehensive echocardiography),の2つが挙げられる。FoCUSは循環器医に限らず幅広く集中治療医により行われるため,目的や評価すべき内容の理解に加え,誤った診断に至らないようにFoCUSの限界や包括的心エコー図検査でなければ診断できない病態についての理解が必要である。本総説ではFoCUSの概要と限界,また包括的心エコー図検査との関係について述べる。

解説
  • 小野 理恵, 髙山 真, 有田 龍太郎
    2021 年 28 巻 5 号 p. 429-435
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:昨今の新興ウイルスによる呼吸器感染症では,病原体の変異,多臓器不全をきたす病態管理の困難さや医療資源の枯渇化が問題となっている。漢方治療では病原体にかかわらず,感染症の病態を感染経過や宿主の状態から6つの病期ステージに分類し,独自の病態把握によって漢方薬を適用してきた。過去の繰り返されるパンデミックにおいて,漢方薬は炎症と急激な病態悪化に対応できるよう工夫された。漢方薬は多成分系薬剤でありその作用機序は複雑であるが,基礎研究において非特異的抗ウイルス作用,サイトカイン調整作用,臓器保護作用を有することが示唆されている。集中治療においても宿主の恒常性を調整する概念と漢方薬の特徴を活かしたアプローチが治療選択の一つとなる可能性がある。

原著
  • 吉廣 尚大, 冨田 隆志, 櫻谷 正明, 小野塚 和人, 橋本 佳浩
    2021 年 28 巻 5 号 p. 437-443
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:【目的】退院時の医薬品を自己管理できないことを推定しうる,ICUで測定可能な関連因子を特定する。【方法】後ろ向き観察研究をデザインし,既報で医薬品自己管理能力関連因子とされた年齢,性別,ICU退室時の内服薬の数,リハビリテーション介入時のfunctional independence measure(FIM)スコア,合併慢性疾患の数を141名で名義ロジスティック解析した。また,receiver operating characteristics(ROC)曲線分析で閾値と予測能を算出し,期間の異なる72名で一致度を評価した。【結果】75歳以上(OR 3.81,95%CI 1.33~10.9),FIM 認知機能の構成要素の1項目以上が4点以下(介助に該当),(OR 11.5,95%CI 4.3~30.6)が退院時に医薬品を自己管理できないことの独立した因子だった。FIM認知機能スコア26点以下のarea under the curve(AUC)が最も大きく(感度62.5%,特異度88.1%),該当する時の患者割合は高く一致した。【結語】FIM認知機能スコアと年齢が独立した因子であり,予測能はFIM認知機能スコア26点以下の時に最も可能性が高くなる。

症例報告
  • 宮本 将太, 陣上 直人, 柚木 知之, 髙谷 悠大, 樽野 陽亮, 松本 理器, 髙橋 良輔, 大鶴 繁
    2021 年 28 巻 5 号 p. 445-449
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:【背景】側頭葉てんかんに関連して徐脈や心静止を伴うことがあり,発作性徐脈症候群といわれている。徐脈性不整脈を繰り返した抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体関連の難治性てんかん症例を経験したので報告する。【症例】抗GAD抗体関連の左側頭葉てんかんの30歳女性が,腎盂腎炎による敗血症に付随した急性腎機能障害のため入院した。治療中に徐脈性不整脈を3回発症し,ICU管理を要した。カテコラミンに不応で最終的に徐脈が原因で死亡した。再発時には電解質異常を呈しており,てんかん閾値が下がった可能性があった。 てんかんのコントロールが不良であったため,発作性徐脈症候群が関与した突然死の可能性が示唆された。【結論】難治性てんかん症例で,発作性徐脈症候群を疑う症例では,発作時脳波同時記録および待機的体外式ペーシングの適応を考慮することが重要である。

  • 中島 孝輔, 牧 盾, 髙橋 慶多, 白水 和宏, 生野 雄二, 徳田 賢太郎, 赤星 朋比古, 山浦 健
    2021 年 28 巻 5 号 p. 450-453
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:悪性カタトニアは,昏迷,無動,カタレプシーなどのカタトニアに特徴的な症状に発熱や自律神経症状を伴い,致死的になり得る症候群である。症例は53歳の女性で,統合失調症の治療中に意識障害,筋緊張亢進,発熱を来して救急搬送された。精神科病棟に医療保護入院したが,呼吸不全を呈したため応援を要請された。ICUで治療を開始し,全身管理と並行して悪性症候群や他の身体疾患の除外診断を行った。統合失調症による悪性カタトニアを疑いロラゼパムを静注したところ,意識が回復し筋緊張亢進も軽快した。悪性カタトニアを疑った場合は,全身管理や合併症への対応と並行して身体疾患の除外診断を行い,ベンゾジアゼピンによる診断的治療を行う。ロラゼパムの静注は効果発現が早いため,悪性カタトニアを疑った場合の診断的治療に有用である。

  • 佐藤 慧, 丹保 亜希仁, 奥田 勝博, 清水 惠子, 南波 仁, 一宮 尚裕, 山蔭 道明
    2021 年 28 巻 5 号 p. 454-457
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:急性カフェイン中毒は用量依存性の反応を示し,同じくキサンチン誘導体であるテオフィリン中毒に症状や機序が類似する。致死量の急性カフェイン中毒に対して血液透析(hemodialysis, HD)を施行して改善を認めた症例を経験し,経過中のカフェインおよび中間代謝産物のテオフィリン血中濃度の推移から治療戦略について検討した。本症例のカフェインとテオフィリンの血中濃度は,内服後早期で異なった推移を示した。HD施行後,腸管再吸収に伴うカフェイン血中濃度再上昇時も含め,両者は相似的に推移した。HD効果によるカフェイン血中濃度低下の指標や,再吸収による血中濃度再上昇の指標として,テオフィリン血中濃度の推移は参考となる可能性が示唆された。

短報
委員会報告
  • 日本集中治療医学会看護師将来計画委員会
    2021 年 28 巻 5 号 p. 477-486
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    要約:安全で質の高い医療を提供するプロセスに,認定看護師や専門看護師,特定行為研修修了者の活動が寄与していると考えるが,具体的な活動内容は明らかでない。そこで,集中治療部門に勤務する認定看護師,専門看護師の活動内容,特定行為研修修了者の取得行為についてweb調査を実施した。分析対象は265名であった。認定看護師,専門看護師の役割発揮においては「過大侵襲を受け重篤な状態にある患者の回復促進のための包括的ケア」の実践,「対応が困難な重症患者の家族ケアに関する相談」,「重篤な患者の回復に向けたケアに関する多職種間の調整」,「患者の意思確認が困難な状況での家族の代理意思決定における倫理調整」などの活動が明らかになった。特定行為研修修了者は35名で,呼吸器関連3区分と「循環動態に係る薬剤投与関連」,栄養・水分管理に係る2区分の取得が多かった。203名が,呼吸ケアサポートチーム,院内迅速対応システムなどの多職種チーム活動へ参画していた。

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