諸外国の歴史を顧みると,技術の進歩が止まることで社会,経済そして政治が混乱に陥ってしまった例は枚挙にいとまがありません。国土が狭く,資源が乏しく,そして少子高齢化の進む日本が地球という大きな財産を守りながらこれからも発展していくためには技術の進歩が
1.はじめに
筆者は全国の主に建築学科に属する研究者とともに,これまで住宅や非住宅建築物のエネルギー消費量の実績値を収集し分析してきた。これらの情報はデータベースとして整理し,国内の非住宅建築物についてはDECC(1),東南アジアの住宅についてはBELDA(2)として公開している。実
1.街のスマート化
日本の街は豊かで活気に満ち溢れている。これは物質ではなく情報の話である。道路上にはカメラが無数にあって,行き交う車両のナンバーやドライバーが記録されているし,河川にも監視カメラがあって,遠隔から水位を把握できるようになっている。多くの駐車場では満車と空車の
1.はじめに
今世紀に入りエネルギー分野で起こった変化として最たるものは再生可能エネルギーをはじめとする分散型発電の普及とその加速度的な導入といえる。風力発電や太陽光発電の導入コストはその累積導入量の増加とともに低減し,世界中の多くの地域で最もコストの低い電源であるグリッ
1.はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大の中,国内の至るところで起き,入口だけのデジタル化,紙を中心とする業務プロセス,システム間のデータの未連携,IDではなく文字列での照合などの実態が明らかになり,デジタルを前提とした業務の見直しや,情報連携を可能とするシステム基盤の
1.スマートシティに向けた都市のデータ化
今日の都市において,デジタル技術や高度なデータ活用は,複雑化・多様化する都市問題の解決プロセスを支援するための重要な手段やツールであると同時に,市民に対するサービスや説明責任を果たす上で極めて重要な要素になってきている。世界的にも,スマートシティ(1)による都
1.はじめに
今日の科学技術,産業,医療の発展に大きく貢献している加速器であるが,エネルギーフロンティアを目指した加速器の中にはそのサイズが数キロメートルにも及ぶものもあり,また直径数百メートルの大型放射光施設も珍しくない。このような膨大な資金と立地が必要とされる巨大加速
1.はじめに
関西電力(株)の保有する水力発電所の多くは建設から50年以上を経過し100年を越えているものもあり,設備の高経年化が進んでいる。これら水力発電設備のうち土木設備(ダム,取水口,導水路,放水路等)の点検については気中部と水中部に分けて実施しており,水中部の点検に
電気学会が後援しました映画「エジソンズ・ゲーム」が公開されました(図1)。本映画は,1880年代のアメリカにおける「電流戦争」を描いた伝記映画となります。本稿では,字幕監修を担当した私が,感じたことを記します。
本映画は,直流派のエジソンとモルガン,交流派のウェ
1.はじめに
電気・機械系の大学や大学院を卒業した後の就職先としてはさまざまなものがある。例えば,電気機械製品を製作しているメーカに焦点を当てた場合,大きくは発電設備から,小さくはスマートフォンの電子回路まで,現代の暮らしを豊かにするための製品作りが行われている。これらの
鋼鉄と電子の塔,これは書名である。電気学会倫理委員会編で2020年12月に出版された。馴染みにくい書名だと思われるだろうか。確かにそうかもしれない。副題を含めた書名は,「鋼鉄と電子の塔─いかにして科学技術を語り,科学技術とともに歩むか」。その出版の経緯を報告す