社会はますます不安定となり,不確実で予測困難なVUCA(Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambi-guity)の時代に突入した。このような混沌とした社会情勢の中で,大学に対しては,明るい未来を創り出すことができる人材の育成が,これまでにないほど強く求められて
1.はじめに
社会を支える電気,ガスなどのエネルギー安定供給のためには,さまざまなリスクへの備えが欠かせない。災害リスク(地震,台風等),地政学的リスク(世界情勢の緊張化等),環境リスク(気候変動等)やサイバー攻撃などのリスクへの対応が大事になる。2024年能登半島地震では,
1.エネルギーレジリエンスの検討の背景
1.1 自然環境の変化
昨今の地球環境の変化が起因となり,日本を含め世界中で災害規模が増大し,それに伴い保険金支払額が増えている。保険金支払額は,世界的に見ても経済損失額と相関しており,自然災害による経済ダメージは増加傾向にある。
地球環境の変化は海水温の上昇,北極海の氷の減少を生
1.背景
近年,災害が広域化・激甚化するなか,エネルギーレジリエンスは安定供給実現のための重要な概念として注目されてきている。しかし,安定供給に関する政府指標はエネルギー自給率に留まり,定量指標は十分に整備されているとは言えない。エネルギー政策の基本的な視点3E+S(経
1.はじめに
カーボンニュートラルの実現に向けてはエネルギー需要の電化と電源の脱炭素化が重要であるが,太陽光発電などの再生可能エネルギー電源の予期せぬ出力変動時でも電力の安定供給を実現するには,蓄電池や電気自動車(Electric Vehicle:EV)といった分散型エネルギーリソース
1.概要
日本のエネルギー政策の基本方針は「安全性」「エネルギーの安定供給」「経済効率性の向上」「環境への適合」を総称した「S+3E」である。とりわけ昨今の自然災害の多発・激甚化や国際的なエネルギー需給構造の変化,地政学リスクの顕在化等を背景にエネルギーの安定供給の重要性
1.はじめに
これまで東京は,自然災害にたびたび見舞われており,今後,気候変動で激甚化する風水害や,首都直下地震,大規模な火山噴火などがいつ起きてもおかしくない状況である。風水害では,2023年3月のIPCC報告書において,災害の増加・激甚化の引き金となる気温上昇の可能性が改
1.はじめに
2023年3月に国産量子コンピュータ初号機「叡」が(国研)理化学研究所(以下,理研)で公開された(1)。間を置かずに2および3号機がそれぞれ同年10月および12月に公開された。2号機は理研と富士通(株)の共同研究(2),3号機は大阪大学を中心とした研究グループ(3)による。量子
1.はじめに
世界初のコンピュータの完成からおよそ80年が経過し,今やデジタル機器は身の回りに溢れている。そんな世相を反映し,論理回路の解説書も数多く出版されてきた。論理回路は0と1のデジタル信号を扱う装置なので,多くの解説書はAND・OR・NOTから成るブール代数の説明
1.はじめに
昨今,データを学習することで新たな画像や文章を生成する人工知能の開発や,さまざまな病気に対する薬の候補化合物の探索などのデータ分析やシミュレーションがさまざまな分野で用いられ,その重要性が増している。これらに対して,より精度の高い結果を得ようとすると,スー
電気学会倫理委員会編により,技術者倫理事例集(第3集)『科学者・技術者として活躍しよう』が2024年8月に出版された。この書名には執筆・編集に携わった人たちの,我が国の科学者・技術者への想いが詰まっている。その一端を本稿で紹介したい。