日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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82 巻, 5 号
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  • 岡島 英五郎, 大園 誠一郎
    1991 年 82 巻 5 号 p. 705-715
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Experimental bladder tumor was reviewed in this paper. Many investigators have been studying on the bladder carcinogenesis since occupational bladder cancers were reported. Main object in research for bladder cancer was to identify and remove environmental causes and various factors related to the development of bladder cancer.
    Human bladder cancers can be classified into papillary non-invasive and nodular invasive cancer. The establishment of an animal model of bladder cancer similar to human bladder cancer is important to clarify the natural history of this disease and obtain basic data on its clinical diagnosis and treatment.
    Bladder carcinogenesis has been known to occur in a two-stage process: initiation and promotion. Recently inhibitory effects on the bladder carcinogenesis were also studied.
    In this paper we described the results that have been obtained in our laboratory concerning animal bladder carcinomas.
  • レンサ球菌製剤OK-432の転移抑制効果に関する研究
    丹治 進
    1991 年 82 巻 5 号 p. 716-725
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BALB/cマウス自然発生腎細胞癌 (Renca) を用いて, BRMsの一つであるOK-432の抗腫瘍効果を検討した. 同種マウスの左腎被膜下に移植された Renca は, 移植局所の増殖に伴い移植後8日目以降に腹部リンパ節, 肺, 肝, 脾, 消化管および腹壁に転移し, マウスは移植後42日以内に癌死した. OK-432の腹腔内投与は移植局所の腫瘍増殖に対する抑制効果や組織学的変化を示さなかったが, 有意の転移抑制と延命効果を示した. また, 移植後7日目の腫瘍移植腎摘出は延命効果を示さず, OK-432の抗腫瘍効果にも影響を与えなかった.
    OK-432を投与された Renca 移植マウスの脾細胞は, Renca 細胞とともにYAC-1細胞とEL-4細胞を傷害し, この effector 細胞は, asialo GMIまたは Thy-1,2の表面マーカーを持つ細胞群であった. 一方, OK-432を腹腔内投与された正常マウスの脾細胞は, YAC-1細胞のみならず Renca 細胞をも傷害した. さらに, 抗 asialo GM1抗体の腹腔内投与は, OK-432の延命効果を障害した.
    以上より, Renca 実験系においてOK-432は著明な転移抑制効果および延命効果を示し, その effector としてはNK細胞が主体であるが, 活性化T細胞も関与することが示唆された.
  • 五島 明彦
    1991 年 82 巻 5 号 p. 726-733
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Wistar 系ラットを用いて, 実験的片側精巣捻転における対側陰嚢内精巣についての組織学的, 免疫組織化学的検索を行なった. この結果以下の実験成績が得られた.
    1) 片側精巣の捻転による対側精巣の造精機能障害は造精機能の成熟したラットのみに認められた.
    2) 対側精巣の組織学的変化は, 片側精巣の捻転処置後3~5週で出現し, spermatocyte の著減, spermatid, spermatozoa の消失が認められ, また Sertoli-cell only の精細管も多数認められた. 間質細胞は増生していたが, 基底膜の肥厚や炎症性細胞の浸潤は認められなかった. 捻転群の精細管径および対側精巣重量のラット体重比は対照群に比してp<0.05で有意な減少が示された.
    3) 蛍光抗体間接法による免疫組織化学的検索の結果, 対側精巣に造精機能障害を生じたラットの血清を用いた場合のみ, 正常精巣切片にて spemlatid, spermatozoa への immunodeposit が認められ, 抗精子抗体の存在によるものと考えられた.
    以上より, 成熟 Wistar 系ラットでは, 片側精巣の捻転により対側精巣に生ずる造精機能障害の機序の1つとして, 抗精子抗体を主体とする体液性免疫の関与が示唆された.
  • 比嘉 傳, 秋元 晋, 井坂 茂夫, 島崎 淳, 後藤 澄雄
    1991 年 82 巻 5 号 p. 734-743
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨転移を有する前立腺癌の転移病変について骨単純X線像にてその所見を分類し, 内分泌療法後の経過をあわせて検討した. 81例の症例について骨病変の骨単純X線像所見を, 1) 造骨型, 2) 造骨主体混合型, 3) 破骨主体混合型, 4) 破骨型および, 5)骨シンチグラフィーでは陽性であるが骨単純X線像にて病像をつかめない未変化型の5型に分類した結果, 1) 15%, 2) 31%, 3) 17%, 4) 10%, 5) 27%であった. 2) と3) の混合型の2型は骨転移巣の拡がりが他の型よりも大きく, 前立腺酸性ホスファターゼは高い傾向を示した.
    治療後に造骨性病変の一過性増大がみられ, これは増悪とはいえなかった. 時間経過とともに治療効果の有無と関係がなく破骨性病変より造骨性へと変化し, これが病勢とともに繰り返されるとみなされた. 破骨性病変の増大は病勢の増悪を示した. 骨病変中に骨梁が再形成されるときは治癒的変化であり, 予後が良好であった. 治療前の病型で混合型の2型は, 予後が悪い傾向を示した.
    骨梁化, 骨病変の数および拡がりの変化, 新病変の出現を基準とした治療効果判定は予後との相関を示した.
    以上より前立腺癌骨病変は治療効果と関係なく破骨性より造骨性に向かい, これが繰り返され進展すること, さらに造骨性が骨梁化したとき, 治癒的病変であることが観察された.
  • 角谷 秀典, 始関 吉生, 小竹 忠, 高原 正信, 島崎 淳
    1991 年 82 巻 5 号 p. 744-749
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    片側性停留睾丸の妊孕性については, 十分に解明されていないため, 本症の造精機能について検討した. 千葉大学泌尿器科にて術後経過をみている17歳以上に達した片側性停留睾丸固定術後の20例と17歳以降まで放置しその後手術した片側性停留睾丸18例の計38例を対象とした. この38例について手術時年齢, 健側および患側睾丸容積, 精液所見, 血清LH・FSH・テストステロン値について相互の関係を観察し, 本症の造精機能についての因子を検討した. 精子濃度は手術時年齢が上がると低下した. 睾丸容積は, 手術時年齢の上昇とともに低下する傾向をみとめたが, 健側でとくに顕著であった. 精子濃度は, 検査時において血清FSHの上昇とは逆の関係をしめした. 健側または患側の睾丸容積が大きくなるにつれ精子濃度も高値となり, さらに両側睾丸容積の和は精子濃度ともっともよく関連していた. 血清LH・FSH値は健側睾丸容積の低下により上昇した.
    以上より, 片側性停留睾丸の造精機能は, 手術時年齢・健側睾丸の発達により依存していると考えられ, 患側睾丸への障害のみならず, 停留睾丸を放置することによる健側睾丸への障害が示唆された.
  • 竹内 敏視, 石原 哲, 長谷 行洋, 小出 卓也, 酒井 俊助, 玉木 正義, 前田 真一, 山本 直樹, 小林 覚, 河田 幸道
    1991 年 82 巻 5 号 p. 750-757
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    外傷性膜様部尿道断裂8例および球部尿道断裂2例の尿道完全閉塞例に対し, 内視鏡および透視下に経会陰的あるいは経尿道的に遠位尿道より近位尿道端に穿刺針を刺入する腔内穿刺を行い, ガイドワイヤーを膀胱, 膀胱瘻へと導き, 拡張バルンカテーテルによる尿道拡張, 直視下内尿道切開および瘢痕切除術を試みた. 近位尿道端への穿刺が不可能であった1例を除き, 9例は術後, 自排尿可能となった. 成功例のうち, 3例に軽度の尿失禁を認めるものの, 本法は外傷性尿道断裂による尿道完全閉塞例に対し, 簡便かつ安全な内視鏡的尿道再建術と考えられた.
  • 公平 昭男, 藤本 健吉, 絵鳩 哲哉, 上村 博司
    1991 年 82 巻 5 号 p. 758-761
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症による急性尿閉症例33例において血清γ-Sm値を測定検討した. その結果初診尿閉時のγ-Sm値は17.1±54.9ng/ml (N=33), その陽性率は72.7%であった. 尿閉解除1週間後では, 3.7±3.6ng/ml (N=17), 陽性率は42.8%, そして1ヵ月後には全例陰性であった. 即ち前立腺肥大症による急性尿閉時には高率にγ-Sm介が上昇し, 尿閉解除により急速に低下し正常化することがわかった.
  • 腫瘍細胞上におけるクラスI主要組織適合抗原の発現との関係
    冨田 善彦, 木村 元彦, 西山 勉, 佐藤 昭太郎
    1991 年 82 巻 5 号 p. 762-768
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎癌細胞株 (ACHN, KRC/Y) を用いて, インターフェロン (IFN) 存在下での腫瘍細胞の培養が lymphokine-activated killer (LAK) 細胞に対する感受性に及ぼす影響につき検討した. また, このとき腫瘍細胞上の major histocompatibility complex (MHC) クラスI抗原の発現との関係についても検討した. フローサイトメトリー (FCM) による解析では, 未処理のACHN, KRC/YともクラスI抗原を発現しており, これはIFN-αまたは-γによる培養で増強され, pH3の酸処理によって減弱した. 腫瘍細胞をIFN-γまたは-αで処理すると明かにLAK細胞に対する感受性の低下が見られた. これまで腫瘍細胞上のクラスI抗原の増強にともなってLAK細胞に対する感受性が低下すると言う報告がいくつか見られたが, 今回の腎癌細胞株に対するIFNと酸処理による検討ではクラスI抗原の発現の増強とLAK細胞に対する感受性の低下は必ずしも並行しなかった. 以上の結果は臨床的に投与されたIFNによって腎癌細胞のLAK細胞に対する抵抗性が誘導され得る可能性と, RCC上で高率に発現されるクラスI抗原は必ずしもLAK療法に不利とはならない事を示唆している.
  • 肺血流シンチグラフィーによる肺塞栓病変と肺転移
    舛森 直哉, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 小谷 典之, 宮尾 則臣, 柳瀬 雅裕, 高橋 敦, 岩部 秀夫
    1991 年 82 巻 5 号 p. 769-775
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌においては静脈浸潤の進展と肺転移の間には密接な関係があることが知られている. 我々は, 臨床的な肺転移が出現する際, 特に腎静脈や下大静脈への静脈浸潤がある場合には, その前段階として腫瘍塞栓が肺動脈に捕捉される必要があるのではないかと推論した. そこで, 種々の静脈浸潤を有する腎細胞癌22例において肺血流シンチグラフィーを施行し, 腎細胞癌における肺動脈腫瘍塞栓に関し検討を行った.
    治療前肺血流シンチグラフィーの陽性所見は22例中8例に認められた. この陽性の頻度は, 静脈浸潤の程度と共に上昇し, また, 治療前陽性症例は陰性症例に比べて明らかに肺転移を合併する割合が高かった. これらのことは, 静脈浸潤の程度が強くなるにしたがい肺動脈における腫瘍塞栓を起こしやすくなり, さらに肺動脈の腫瘍塞栓は肺転移形成に発展する可能性が高いことを示唆していた.
    治療前肺血流シンチグラフィー陽性症例の治療後の経過を検討すると, 陽性所見が新たな肺転移出現と並行するグループと, 経過観察中に陽性所見が消失し肺転移出現の認められないグループが存在した. 前者の結果からは, 治療前陽性例においては, より注意深い経過観察が必要であることが示された. また後者は, 肺転移成立のためには肺毛細血管への癌細胞の捕捉だけではなく, 癌細胞自身の転移能や癌細胞の増殖に適した微小環境などの要因が必要であることを示唆していた.
  • 厚生省特定疾患「進行性腎障害」調査研究班
    東原 英二, 伊藤 晴夫, 島崎 淳, 小磯 謙吉, 酒井 紀, 阿曽 佳郎
    1991 年 82 巻 5 号 p. 776-785
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    多施設より集計された196例の小児と成人の膀胱尿管逆流 (VUR) について, VURと腎瘢痕の関係について解析を行った. 腎瘢痕の Grade はVURの Grade とよく相関 (p<0.01) したが, VURの認められない腎にも腎瘢痕は存在し, 低形成腎の存在あるいは先行した尿路感染症を示唆した. 腎瘢痕の程度と, 尿中蛋白の程度, 血圧, 及び治療の程度はよく相関したが, VURの程度とこれら3つの指標の間には相関は認められなかった. 平均3.3年の保存的治療期間中に腎瘢痕が進展したのは primary VURの111腎中7腎 (6.3%) であった. VURの Grade が悪化しない例でも腎瘢痕の進展が認められたが, その原因は腎盂腎炎であると考えられた. 一方, 逆流防止術によって腎盂腎炎の頻度は0.60±0.89より0.084±0.305回/患者・年へと有意 (p<0.01) に減少したにもかかわらず, 腎瘢痕の進展例が13腎 (5.8%) に認められた. このうち手術の失敗によるものは7腎で, 残りの6腎 (3症例) では手術の成功にもかかわらず腎瘢痕が進展していた. 腎瘢痕の進展は従来指摘されている小児例のみならず, 成人例でも認められた. 腎瘢痕進展の原因をより明らかにする為に, 今後, 多症例による prospective な研究が必要であると考えられた.
  • 小谷 典之, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 宮尾 則臣, 岩部 秀夫, 柳瀬 雅裕, 高橋 敦, 舛森 直哉
    1991 年 82 巻 5 号 p. 786-791
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行性尿路上皮癌22例 (移行上皮癌18例, 移行上皮癌+扁平上皮癌3例, 扁平上皮癌1例) に対してM-VAC療法に準じた多剤併用化学療法を施行し, その臨床的検討を行った. 22例のうち, 本療法を2コース以上施行し, 評価可能病変を有していた症例は14例であり, CR3例, PR6例で奏功率は64.3%であった. 臓器別直接効果は膀胱75%, 肺100%, 皮下組織100%, リンパ節75%の奏功率を認めたが, 骨, 腸腰筋に対しては無効であった. また, neoadjuvant としての膀胱に対する効果はCR1例はT2からT0へ, PR5例のうち4例はT2からT1への down staging を認めた. 転移出現後に投与した9例のうち, CR2例はいずれも生存しているが, 無効例3例はすべて1年以内に癌死していた.
    また, 扁平上皮癌の component を含んだ症例では無効例が多く, 血中SCC関連抗原値がM-VAC療法の効果予測にある程度有効であると考えられた.
    副作用は白血球減少 (1,000/mm3未満) 18.2%, 血小板減少 (10万/mm3) 27.2%, 悪心, 嘔吐100%, 脱毛90.9%, 腎機能障害 (Ccr501/day 以下) 13.6%であった.
  • 本間 之夫, 小澤 輝晃, 東原 英二, 阿曽 佳郎
    1991 年 82 巻 5 号 p. 792-798
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症に対し, イスラエル Biodan 社製プロスタサーマーを用いて温熱療法を施行した. 治療方法は直腸内に挿入したアプリケーターにより915MHzのマイクロ波を照射し, 週1~2回, 計6回施行した. 対象症例のうち2名がアプリヶーターの異和感等で初回治療で中止となり, 残る28名で有効性を検討した. その結果何らかの自覚症状の改善を24名 (85.7%) に認めた. また夜間排尿回数は治療前後で平均2.9回から2.0回へ有意に減少した. 他覚所見では, 残尿量, 残尿率, 前立腺の大きさには変化を認めなかったが, 平均尿流量率及び最大尿流量率の有意な改善 (p<0.01) がみられた. 副作用には, 尿道出血又は直腸異和感の2例の他, 2例で下部尿路感染症, 1例の血圧低下 (治療5回目で) がみられたが重篤なものはなかった. 自・他覚所見をスコア化した判定の有用性では, 有用以上10例 (33.3%), やや有用以上20例 (66.7%) であった. 以上の結果は, 本機器による前立腺肥大症に対する治療の有用性を示すものであった.
  • 重回帰分析法によるCaOX結晶形成におよぼす尿中諸物質の影響についての検討
    片岡 喜代徳, 梅川 徹, 片山 孔一, 石川 泰章, 児玉 光正, 高村 知諭, 高田 昌彦, 加藤 良成, 郡 健二郎, 井口 正典, ...
    1991 年 82 巻 5 号 p. 799-803
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    上部尿路結石患者と健常人の尿中の蓚酸カルシウム結晶量と尿中諸物質濃度を測定し, 重回帰分析することによりそれらの影響力を検討した. 1. 結石患者の尿では説明変数としては蓚酸, ナトリウム, カルシウム, 尿酸, マグネシウムが採択されそれぞれの偏相関係数は0.67, 0.28, 0.18, 0.18, -0.10であった. CaOX結晶量の回帰式は CaOx Crystal 量 (×106μm3/ml)=3.59×102Ox(mM/l)+4.72×10-3Ca(mM/l)+4.52×10-3Na(mM/l)+2.51×10-4UA(mM/l)-2.39×10-2Mg(mM/l)-1.65で, 重相関係数は0.759であった. 結石患者の尿では結晶形成は修酸濃度に最も依存し, ナトリウム, カルシウム, 尿酸が結晶形成促進因子として働き, マグネシウムが阻止因子として作用していた. 2. 健常人の尿では説明変数として蓚酸と無機燐が採択されそれぞれの偏相関係数は0.51, -0.24であった. CaOX結晶量の回帰式は CaOx Crystal 量 (×106μm3/ml)=1.91×10-2Ox(mM/l)-3.43×10-4P(mM/l)+0.29で, 重相関係数は0.525であった. 健常人の尿でも結晶形成は蓚酸濃度に依存していたが, 他に促進因子は明らかではなかった. 阻止因子としての作用は無機燐に認められた. 健常人では結石患者に比べ重相関係数も低く, 結晶形成に他の不明の多くの諸物質の関与が推察された.
  • 予後因子としての肉眼的腫瘍血栓
    寿美 周平, 立花 裕一, 東 四雄, 福井 巌, 高木 健太郎, 大島 博幸
    1991 年 82 巻 5 号 p. 804-809
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1972年から1988年までの17年間に加療した腎細胞癌のうち肉眼的腫瘍血栓の進展度を確認し得た114例を対象として血栓の進展度別の分析を行い, 予後因子としての肉眼的腫瘍血栓の意義を検討した. 下大静脈に腫瘍血栓を認めたV2症例は18例 (15.8%), 腎静脈に腫瘍血栓を認めたV1症例は19例 (16.7%), 肉眼的に血栓を認めないV0症例は77例(67.5%)であった. V1, V2を合わせたV+群ではV0群に比して, 静脈内進展を除外して評価した局所進展度がT3以上である頻度, 遠隔転移陽性率および異型度がG3である頻度が高く, これらはV1, V2の5年実測生存率がV0より不良である背景と考えられた. そこでリンパ節転移・遠隔転移のない (N0M0) 腎摘施行例に限定して比較すると, 3群間で局所進展度に有意差はなく, V2の5年実測生存率 (83.3%) はV0 (87.3%) に近いが, V1ではG3の頻度が高くその5年実測生存率 (54.4%) はV0より低かった. さらにG3症例を除外し, 背景因子を一致させるとV1の生存率はV0のそれに等しくなり, 静脈内進展度別予後の間に差は認められなくなった. 以上より腎細胞癌における肉眼的腫瘍血栓の存在そのものは一次的な予後規定因子ではなく, 組織学的異型度と腫瘍浸潤が高度な腫瘍に起こり易い二次的な現象であり, それ自体を予後不良化因子として局所進展度の評価因子の一つとすることに疑義があることが示唆された.
  • 服部 良平, 松浦 治, 竹内 宣久, 橋本 純一, 大島 伸一, 小野 佳成, 山田 伸, 絹川 常郎, 三宅 弘治
    1991 年 82 巻 5 号 p. 810-815
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    無症候性顕微鏡的血尿症例では40歳以上に悪性腫瘍を含むより多くの泌尿器科的疾患が発見されたことを既に報告したが, このことを踏まえ, 昭和62年1月より昭和63年12月までに40歳以上で無症候性顕微鏡的血尿を主訴に受診した422例 (男122例女300例平均55.7±9.6歳, 以下A群) に対しては原則として全例に尿一般検査, 尿細胞診, KUB, IVP, 腹部エコーに加え膀胱鏡を行った. それに対し昭和59年1月より昭和60年12月までに40歳以上で無症候性顕微鏡的血尿を主訴とした266例 (男92例, 女174例, 平均53.8±9.1歳, 以下B群) に対しては一定の基準で検査を行なわなかった. B群では, 266例中108例 (40.6%) に膀胱鏡を施行し, 1例 (0.4%) の膀胱腫瘍 (45歳) が発見された. A群では膀胱鏡を368例中321例 (87.2%) に施行し, 10例 (2.4%) の膀胱腫瘍 (43~79歳平均56.1±12.1歳) が発見された. 特にA群のうち男性に限ってみると112例中7例 (5.7%) の高率に膀胱腫瘍が発見された. 次いでA群の膀胱腫瘍例で尿細胞診との関係をみると膀胱腫瘍の発見された10例のうち5例 (50%) は尿細胞診が陰性だった. また10例中IVPで異常所見を認めた例は1例 (10%) のみであった. 以上より40歳以上の無症候性顕微鏡的血尿症例に対して40歳以上の無症候性顕微鏡的血尿症例には膀胱鏡検査は必須とすべきと考えられた.
  • 岡野 達弥, 井坂 茂夫, 阿部 功一, 五十嵐 辰男, 村上 信乃, 松嵜 理, 島崎 淳
    1991 年 82 巻 5 号 p. 816-820
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂尿管癌に対するリンパ節郭清の評価は未だ確立したものとは言えない. 今回, 1980年以降治療成績改善目的で加えたリンパ節郭清施行症例34例につき集計し, その意義を検討した. 原腫瘍は, 腎盂癌21例, 尿管癌10例, 腎盂尿管癌3例であり, 組織学的には, 移行上皮癌33例, 扁平上皮癌1例であった. リンパ節郭清の範囲は, 原則的には, 腎盂および上部尿管の腫瘍では, 同側の腎茎部および大動脈周囲リンパ節, また下部尿管では, 同側の骨盤内リンパ節とした. 転移陽性は15例 (44.1%) で, 転移部位は腎茎部および傍大動脈リンパ節が主体であった. いわゆる skip lesion は認められず, 原発巣に最も近い所属リンパ節への転移頻度が高かった. 転移陽性例の原腫瘍は Grade 3, pT 2以上のものが大部分を占めた. 術後経過では, リンパ節転移を認めない群では, 5年生存率74.3%であるのに対し, 転移陽性群では5年生存率26.3%と有意に予後不良であった. また, Grade 3, pT 2以上の症例について, historical control 群 (1961年から1979年) との予後を比較すると, 後者では, 5年生存率6.7%であるのに対し, 郭清施行群では5年生存率35.8%と予後は改善しており, リンパ節郭清の診断面のみならず治療面での有用性が示唆された.
  • 大谷 幹伸, 宮永 直人, 野口 良輔, 小磯 謙吉, 辻 比呂志, 有本 卓郎, 稲田 哲雄, 北川 俊夫, 辻井 博彦, 田中 良典, ...
    1991 年 82 巻 5 号 p. 821-825
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    C3H/He雌マウスに対し, 0.05%のN-Butyl-N-(4-Hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) を飲料水として18週間与えた. 19週目に11頭のマウス (第3群) を屠殺して, 全てに膀胱癌が発生していることを確認した. 残りのマウスは二つの群に分け, 第1群は骨盤全体に20Gyの陽子線を照射した. 一方第2群は, 照射を行なわない対照群とした. 照射の3週間後全てのマウスを屠殺し, 膀胱を切除した. 膀胱はホルマリン固定後に重量 (≒癌の重量) の測定と, 組織学的検索を行なった. 膀胱の平均重量 (≒癌の重量) は, 第1群で67.7mg, 第2群で120.6mg, 第3群で106.5mgであって, 第1群との間にそれぞれ有意な差が認められた (p<0.05). また表在癌 (pT1) と深部浸潤癌 (pT2~3) の頻度は, 第1群で10/18 (56%) と8/18 (39%) であった. また第2群のそれは, 3/17 (18%) と14/17 (82%), 第3群のそれは2/11 (18%), 9/11 (82%) であった. 第1群と2群間に有意な差 (p<0.05) が認められた. しかし第1群と第3群との差は有意ではなかった (p=0.068). これらの結果はマウスの膀胱癌に対して, 陽性線照射が有効な治療法であることを示唆している.
  • 武田 正之, 片桐 明善, 金井 利雄, 米山 健志, 筒井 寿基, 片山 靖士, 川上 芳明, 佐藤 昭太郎, 木村 元政, 小田野 幾雄
    1991 年 82 巻 5 号 p. 826-829
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    転移を伴う悪性褐色細胞腫患者2名に対して, Cyclophosphamide, Vincristine, Dacarbazine (CVD) 療法と選択的動脈塞栓療法 (TAE) の併用療法を施行した.
    症例1は59歳, 女性. 左副腎原発褐色細胞腫摘除除後に, 左腎門部再発および右腸骨, 第5頚椎転移を起こした. 右内腸骨転移巣に対するTAE後CVD療法3コースを施行し, 治療終了後1年以上経過しても内分泌学的には正常化している.
    症例2は29歳, 男性. 膀胱原発の褐色細胞腫に対して膀胱全摘除術後に, 右閉鎖節転移および多発性骨転移を生じた. CVD療法3コース終了後に右閉鎖節転移巣に対するTAEを施行し, インシュリン, 降圧剤を中止できたが, この効果は一時的なものであった.
    結論として, CVD療法とTAEの併用療法は転移を有する悪性褐色細胞腫に対して有効であると考えられた.
  • 本田 直康, 内田 豊昭, 向井 伸哉, 呉 幹純, 横山 英二, 真下 節夫, 遠藤 忠雄, 石橋 晃, 小柴 健, 渋谷 宗則
    1991 年 82 巻 5 号 p. 830-833
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例29歳, 会陰部痛を主訴として1987年11月9日当科受診. 前立腺炎の診断にて2ヵ月間外来にて抗生剤の投与をうけていたが, 軽快しないため精査目的にて入院となった. 骨盤部CT, MRIにて膀胱後部に辺縁不整な膀胱に突出する腫瘍を認め, また腹部大動脈周囲のリンパ節の腫大, 両肺に多数の coin lesion が認められた. 血中のα-fetoptotein は12,170ng/mlと上昇していたことから, 遠隔転移を伴う異所性の胎児性癌と診断し, PVB, VAB-6等の化学療法および原発巣への84Gyの Liniac 照射を行うも効果なく, 1989年5月永眠した. 経過観察中, 両側睾丸は触診上および超音波診断上, 異常所見は認めず, 剖検にても異常は認められなかったことから, 膀胱後部原発の異所性胎児性癌と診断した.
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