心電図
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44 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 服部 正幸, 小松 雄樹, 野上 昭彦
    2024 年44 巻2 号 p. 75-83
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    器質的心疾患を背景に有する持続性心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)のアブレーション治療において,洞調律/心室ペーシング中の興奮伝導特性を評価するfunctional substrate mappingの有用性が複数報告されている.伝導速度の低下した部位は,3次元マッピングシステムにおいてisochronal colorの密集する部位(isochronal crowding:IC)として反映され,同部位が至適通電部位とされる.しかし,臨床上はICが複数の部位に認められ,また距離の長い帯状の病変として記録されることがある.我々はこのIC直上またはその断端で,90°以上の内向きの湾曲をする興奮伝播様式を認める部位があることに注目し,これをrotational activation pattern(RAP)と定義した.カテーテルアブレーションの行われた37名45個のVTに対して後方視的に解析を行ったところ,通電による直接停止ないしペースマッピングにより回路が特定された計33個のVTのうち,70%でRAPを認めた.ベースラインリズム中はRAPを認めなかったが,異なる部位からの心室ペーシング中に作成したmapでRAPを認めた症例(n=4)や,心筋中層ないし心外膜にVT回路が存在し,RAPを伴わない心内膜側表面への通電によってVTの誘発性が消失した症例(n=6)が存在した.器質的心疾患を有するVTのカテーテルアブレーション治療において,functional substrate mappingはVT回路を推定する上で重要な手法であり,なかでもRAPを呈する領域が至適治療部位となる可能性がある.

  • 會田 敏, 吉田 健太郎
    2024 年44 巻2 号 p. 84-96
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    心磁図は心臓で発生する電気活動を磁場として捉え解析する機器であるが,磁場信号は生体組織の影響を受けることが少ないため,微小電位を検出したり電流の発生源を推定したりすることに優れた検査法である.すなわち,心磁図は心電図と比較して不整脈の発生起源を予測するのにより有用な手法と考えられ,我々は心磁図とCTを用いて心室期外収縮の起源を非侵襲的にマッピングする方法を開発し,その診断精度の検証を行った.マッピング画像は,心磁図データからRENS空間フィルタ法により作成した3次元電流分布図とCT画像とを合成することによって,作成された.それらを実際にカテーテルアブレーションで治療した結果と比較することで,この手法の診断精度を評価した.結果は,18例中17例(94%)で事前のマッピングによって推定した起源が一致した.これは従来の体表心電図による診断精度を上回る結果であり,臨床応用に値する有用な結果であったと考えられた.

原著
  • 塩野 敦, 江神 康之, 矢岡 真一, 欅田 智大, 森奥 知由, 山本 敬二, 浮田 康平, 安元 浩司, 松永 泰治, 矢野 正道, 西 ...
    2024 年44 巻2 号 p. 97-106
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    CARTO3version7.2からUnipolar電位の基準電極としてTRUErefを選択できるようになった.TRUErefとはOCTARAYのシャフト内に配置された電極をUnipolarの基準電極として使用することができる機能である.今回我々はUnipolarの基準電極としてTRUErefと従来のWCTを比較し,検証を行った.5例の心房細動患者に対し左心房後壁および左肺静脈に配置したOCTARAYカテーテルの電位をTRUEref使用時(TR群)とWCT使用時(WCT群)でそれぞれ取得し,電位波高値について評価を行った.左心房後壁においての解析では,心室のFar field電位についてBipolarでは差が見られなかったが,UnipolarではTR群の平均が0.22±0.12mV,WCT群の平均が1.74±0.48mVであり,統計学的有意差が見られた.また,左上肺静脈においては,心房もしくは左心耳のFar field電位について,BipolarではTR群とWCT群の間に有意差は見られなかったが,UnipolarではTR群の平均が0.24±0.27mV,WCT群の平均が0.42±0.27mVであり,統計学的有意差が見られた.結果から,TRUErefはBipolar電位に影響を与えずに,Unipolarの心室Far field電位を大きく軽減できることが示唆された.また,TRUErefはUnipolarの心房Far field電位も軽減できることが示され,TRUErefのUnipolar電位がより局所の興奮を反映していると考えられた.TRUErefはUnipolarのFar field電位を低減することができ,より正確な局所の電位を反映していると考えられた.

Communication
  • 秋山 泰利, 戸叶 隆司, 大山 夏菜, 中川原 詩織, 島野 寛也, 小田切 史徳, 中里 祐二, 南野 徹
    2024 年44 巻2 号 p. 107-113
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    植込み型心臓デバイス(CIED)装着患者に対する条件付きMRI撮像を,当院では放射線科と連携を取り,デバイス外来と同日に集約し施行しているが,今回その安全性について検証,報告する.対象は,2018年1月から2021年12月までの4年間に施行された121件のMRI撮像(男性80例・女性41例,平均73.2±11.5歳,ペースメーカ110例・植込み型除細動器6例・皮下植込み型除細動器3例・両心室ペーシング機能付き除細動器2例)である.対象例において,撮像前後・遠隔期のテレメトリーデータ,有害事象に関して検証した.当院では上記の撮像枠でMRI対応カード持参を確認後,各メーカーのチェックシートを用いてテレメトリーデータ収集とMRI撮像設定を行っており,このデータを基にした撮像前後のテレメトリーデータで変動を認めた例はなかった.有害事象と考えられるものはMRI撮像直後の一過性心房細動3例,遠隔期での心室刺激閾値軽度上昇1例,電池早期消耗1例であるが,MRI撮像の関与は不明であった.また,複数回の撮像を経験した例ではERIまでの期間の若干の短縮が見られたが,撮像後遠隔期のチェックで刺激閾値やリード抵抗値の変化は見られなかった.条件付きMRI対応CIEDにおけるMRI撮像は,当院においては各社のチェックシートに基づいた確認と各部署との連携で概ね安全に施行できており,重大な事故を含む技術的な問題の発生も認めていない.

研究会レポート
心電学フロンティア2023「T波の不思議」
  • 中川 幹子
    2024 年44 巻2 号 p. 119-125
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    T波は心室の再分極過程で形成される心電図波形であり,病態に応じて様々な変化を呈する.ST部分を含めたST-T変化の原因は,心室内に活動電位波形の異なる領域が存在するために起こる一次性変化と,心室脱分極過程の変化に起因する二次性変化に分類される.T波形は年齢,性,体格,自律神経活動などに影響されるため個体差が大きい.特に女性では,交感神経の急激な緊張時に心室の再分極異常を起こしやすいため,正常亜型と異常の判別には注意が必要である.また,T波は様々な器質的心疾患で特有な経時的変化を示す.虚血性心疾患以外では,肥大型心筋症,たこつぼ心筋症,急性心膜炎,肺血栓塞栓症,不整脈原性右室心筋症などで病態特有の変化を示す.これらの疾患においては,T波の空間的・時間的変化を注意深く観察することが重要である.

  • 丸山 徹
    2024 年44 巻2 号 p. 126-132
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

    心室の再分極波であるT波は,心室各部の興奮消退過程の時空間的な差異が体表面誘導に反映された波形である.正常なT波がQRS波と同じ極性をもつことは,心室の興奮消退過程が興奮伝播過程と異なるシークエンスであることを意味する.心内膜側と心外膜側を考えると,興奮はPurkinje線維網が走る心内膜側から始まり,心外膜側へと伝搬する.一方,興奮の消退過程は逆に心外膜側から始まり,心内膜側へ波及する.これは,心筋全層の収縮弛緩時におけるエネルギー効率を最大化する上でも重要である.そのために心筋細胞のイオンチャネル,ポンプ,トランスポーターやCa2+ハンドリング蛋白,収縮蛋白のCa2+感受性は,合目的的に心筋全層にわたり貫壁性の勾配を示す.これらが活動電位波形の局所的な差異を生み出しており,正常なT波の形成にも関与している.

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