エントレインメントペーシングはリエントリー性心房頻拍の回路診断に有用であるが,ペーシングによる頻拍の変化が懸念される.頻拍中に多極マッピングカテーテルの下流電極から単発期外刺激を入れ,上流電極で頻拍のリセットを確認する方法は,頻拍の停止の頻度が少ない可能性がある.本研究では,48の心房頻拍を対象として,エントレインメントペーシングと単発刺激法の診断能をそれぞれ評価した.両診断ペーシング法の陽性適中率は100%であり,陰性適中率はエントレインメントペーシングと単発刺激法で同等であった(96%対100%,P=0.25).診断ペーシングによる頻拍の変化または停止の頻度は,エントレインメントペーシングよりも単発刺激法の方が低かった(1% vs 10%,P=0.003).多極マッピングカテーテルを用いた単発刺激は,頻拍の変化や停止を回避しつつ,頻拍回路の診断を可能にするかもしれない.
心房細動の発症は線維化を中心とする心房構造的リモデリングの進行と関連する.カテーテルアブレーション時のvoltage mappingによって観察される低電位領域(low-voltage area:LVA)はこれまで局所的な線維化領域と考えられてきた.しかし,我々は心房構造的リモデリングはびまん性プロセスであり,LVAの存在はびまん性voltage低下の局所的な反映であるという仮説を検証した.高位右房ペーシング中に高密度voltage mappingを行い,左房全体のbipolar voltageの低下とLVAの関係を評価した.その結果,LVA出現の背景には左房全体のびまん性voltage低下があることを確認した.また,カテーテル心房生検を開発し,組織学的線維化率が生検部位および左房全体のbipolar voltageと逆相関することを示した.その後の研究により,心房構造的リモデリングの組織学的因子は線維化に先行する細胞間隙の拡大,線維化,心筋粗鬆化,心筋核密度減少の4つの因子であることを明らかにした.さらなる研究により,心房リモデリングの機序を解明するとともに,心房細動および心房心筋症に対する新たな治療標的の創出を目指す.
【背景・目的】腹部にペースメーカ(PM)を植込んだ小児患児において,電磁干渉(マグネットレスポンス)を認める症例を経験した.本研究では,電磁干渉の原因を検証し,安全予防策を検討した.【対象・方法】マグネットレスポンスエピソード件数がログで残るAbbott社製PMを対象とし,PM本体が腹部に植込まれている患者26例で検討した.調査期間は2022年1月から2023年2月までに同エピソードが増加した7例の患児を対象に,電磁干渉の関連因子を検討した.【結果】患者は全員就学児童で,平均年齢は8±4歳であった.1ヵ月あたりのエピソード件数は平均39±91件/月で,発生時間は就学時間帯に顕著に増加していた.学校内における電磁干渉対象物として,就学時間帯以外に自宅でも同エピソードを認めたため,学習用タブレットとの関連が疑われた.タブレットを調査した結果,内部に磁石が使用されていることが判明した.タブレット使用時は腹部から離すよう指導したところ,マグネットレスポンス作動は消失した.【結語】PM本体が腹部に植込まれた児童が,タブレット端末を腹部に接触させた状態で使用する場合にはPMに影響することが示唆され,注意が必要である.