妊娠初期に発症し,心電図変化を来した劇症1型糖尿病の1例を経験した。症例は27歳女性。糖尿病を指摘されたことはなかった。2003年12月5日,腹痛,発熱が出現した。同9日,妊娠第5週で流産した。その後悪心・嘔吐を繰り返し,同12日,口渇,呼吸困難も呈し来院した。急性胃腸炎,過換気症候群の診断で一旦帰宅するも,症状増悪したため,同日再度来院した。血液検査上,著明なアシドーシス,高血糖を認めたが,HbA
1Cは5.5%と正常であり,劇症1型糖尿病によるケトアシドーシスと診断し治療を開始した。経過中,胸部不快感を呈し,心電図上,T波の陰性化を認めた。経過観察により症状は軽快したが,心電図が正常化したのは6ヶ月後であった。劇症1型糖尿病は極めて急激な経過でケトアシドーシスを発症する。診断,治療が遅れると死亡する可能性もあるため,特に救急医,産婦人科医,内科医は本症を念頭において診療にあたる必要がある。
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