3つのタービン翼を備えた縦型撹拌槽の液混合特性について,逆混合モデルを適用して逆流量および交換流量におよぼす多孔板型仕切板の開孔率,撹拌速度の影響を実験的に検討した.槽径DTは0.10 m, 翼径Diは槽径DTの1/2とした.3段縦型撹拌槽の逆流量f,供給流量q,交換流量Qの間にf=Q−q/2の関係が成立した.交換流量は撹拌速度nと開孔率Arに比例して大きくなった.3段縦型撹拌槽の修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)は,撹拌レイノルズ数NReが1×103–6×103の範囲では撹拌レイノルズ数の約0.2乗に比例して大きくなり,撹拌レイノルズ数NReが6×103以上では約0.17でほぼ一定となる.
筆者らは流脈の可視化に基づき,3S(Simple, Speedy, Stable)の性能を持つ新規な撹拌翼(HB翼)を開発した(Kato et al., 2015a, 2015b).本報では,HB翼の実用化の一環として,グラスライニング化を試みた.従来大型翼のグライスライニング化と同様に上下で翼を分割した形状とした.混合特性を評価した結果,上下分割の影響はほとんど無く,良好な混合性能を示した.これによりHB翼の実用化の幅はさらに拡がったと考えられる.
インジェクションキャピラリーの先端内径とコレクションキャピラリーの流路内径を様々に変更した複数のco-flow型ガラスキャピラリー製マイクロ流体デバイスを作製した.気相として窒素ガスを,液相として超純水を用いて,気相圧力と液相流量を変更してマイクロバブルを作製した.流路径,気相圧力,液相流量の調整によりCV値2%以下の単分散性の高いマイクロバブルを,平均気泡径4–70 µmの範囲で生成速度1.7×105–1.5×102 bubbles/sで作製できた.
近年,化石資源の代替エネルギーとして植物系バイオマスに注目が集まっている.しかし,人口が増加しているなか,植物系バイオマスの利用には新たな食糧問題が生じる恐れがある.そのため,食糧との競合がない廃棄物であるコーヒー残渣に注目した.本研究では,超臨界二酸化炭素を用いて,コーヒー残渣からの有用成分抽出におけるエントレーナ効果の探索および酵素を用いた脂肪酸エステルの生成について検討を行った.超臨界二酸化炭素抽出における最適条件,ならびにエントレーナの効果を明らかにした.さらに,抽出物とエントレーナを反応物とし,酵素を用いてオンライン抽出・反応させる際のパラメーターについて検討し,エントレーナ量,および水分量の影響を明らかにした.
1時間当たり50 kgの原料を供給可能な実証規模のロータリーキルン炭化装置を用いて汚泥と石炭の混合熱分解実験を実施し,得られる混合チャーの性状評価を行った.混合熱分解実験では,堆肥化乾燥汚泥に石炭を異なる割合で混合し,得られるチャーの収量計測,組成分析,発熱量測定およびチャーの表面観察を行い,汚泥への石炭の混合が,熱分解により得られる混合チャーの性状に与える影響について評価を行った.また,キルン内での混合熱分解挙動を評価するため,熱重量分析装置を用いた混合熱分解も実施した.キルンを用いた混合熱分解により得られた混合チャーは,石炭混合が多くなるとともに固定炭素量は増大するため,発熱量が高く,また灰分量の少ない汚泥燃料を製造することができた.また,汚泥と石炭の混合熱分解においては,原料の混合はそれぞれの原料の熱分解に影響を与えており,汚泥より高い温度で熱分解が始まる石炭熱分解成分は,汚泥チャーに吸着,固定化されている可能性があることが示唆された.
半導体製造プロセスの排気処理装置で使用された活性炭について,超臨界二酸化炭素(ScCO2)を用いた洗浄再生の検討を行った.洗浄再生実験は,温度80°C, 圧力20 MPa, 洗浄時間6 hのScCO2条件下にて実施した.その結果,排気処理装置での使用期間が短い活性炭についてはScCO2により再生できたが,使用期間が長い活性炭は再生が困難であった.活性炭の吸着質をTGA(熱重量分析)およびGC-MSを用いて分析した結果,使用済み活性炭には低沸点領域(TGA: 100–400°C)と高沸点領域(TGA: 400–900°C)の吸着質があり,低沸点吸着質はScCO2によって除去できたが,高沸点吸着質は除去できなかった.高沸点吸着質の割合は排気処理装置での使用期間が長くなるにつれて増加する傾向を示し,それにともない,活性炭の再生率は直線的に減少した.高沸点吸着質の割合に相当する高沸点率という指標を定義した上でScCO2による再生結果を整理したところ,使用された活性炭は高沸点率が2.0%では90%の再生率となり,高沸点率が4.0%であれば80%の再生率となったことから,高沸点率は再生率の指標となる可能性が示唆された.
軽量かつ高強度等の利点を持つ炭素繊維複合材料(CFRP, Carbon Fiber Reinforced Plastic)が自動車など様々なものに使用され,年々その使用量は増加することが予測されている.そこで,CFRP廃材の大量発生に備え,低コスト・省エネなCFRP廃材リサイクルによるリサイクル炭素繊維回収技術の研究開発が行われているが,リサイクル回数の増加とともに短繊維化して性能が劣化すると言われている.本研究では,炭化・焼成から成る2段階熱処理法でのリサイクル回数のリサイクル炭素繊維特性への影響を評価した.その結果,1回炭化・焼成2段階熱処理された炭素繊維の繊維長は短くなるが,その後同じ条件で2–3回炭化・焼成2段階熱処理されても繊維長に変化はないこと,および引張強度は1–4回炭化・焼成2段階熱処理を繰り返すにつれて減少し,指数関数で近似できることがわかった.