パームオイルメチルエステル(PME)は安定供給が可能なグリーン燃料として注目されている.本研究では,数値シミュレーションによりPMEの燃焼性能を普遍的に評価するため,実燃料の模倣性,再現性に優れるPMEサロゲート燃料の候補を選定し,さらに,燃焼性能の予測性に優れるPMEサロゲートモデルを探査した.メチルエステルは,炭素鎖の長さに大きく関わらず,類似した燃焼特性を示すため,炭素鎖長の異なるメチルエステルから,入手が容易であり,かつ,PME実燃料と同等の総発熱量を有する直鎖型メチルエステルを調査し,ブタン酸メチル(C5H10O2),オクタン酸メチル(C9H18O2),デカン酸メチル(C11H22O2)をPMEサロゲート燃料の候補として選定した.さらに,それぞれのメチルエステルの代表的な詳細反応機構において,着火遅れ時間を比較した.その結果,Dayma et al.(2011)によって構築されたオクタン酸メチルの詳細反応モデルが着火遅れ時間の実験値に最も近い値を得ることがわかった.続いて,層流燃焼速度を比較した結果,Gail et al.(2007)によって構築されたブタン酸メチルの詳細反応モデルが層流燃焼速度の実験から得られる傾向に最も近いことがわかった.
藍藻Spirulina platensisの増殖におよぼす共存バクテリアの影響を明らかにするため,共存バクテリアの分離・同定を行った.Bacillus pseudofirmusとHalomonas sp. がS. platensisと共存していた.光独立栄養培養,従属栄養培養の場合とも,共存バクテリアを除去したS. platensisの比増殖速度は小さくなった.共存バクテリアを添加するとS. platensisの比増殖速度は回復した.従属栄養培養の場合,S. platensisの最大増殖量を大きくするにはHalomonas sp. の共存が望ましい.
リン酸水素二ナトリウム12水塩は,結晶成長速度が速く単位体積当たりの蓄熱密度が大きいため,有望な潜熱蓄熱材候補である.しかしその実用的な利用には,蓄熱・放熱の繰返しによる相分離および濃度分極の形成を解消することが,重要な技術的課題になっている.本研究では,このような相分離および濃度分極の形成が蓄熱材の放熱挙動におよぼす影響を理解するため,12水塩融液中にそれらが形成された試料を人為的に作製し,それぞれの凝固挙動を直接目視観察した.また12水塩の結晶成長速度を実測し,それぞれの凝固挙動の特徴を定量的に評価した.その結果,相分離して希薄化した12水塩融液および濃度分極して希薄化した上層側融液では,結晶成長速度がともに約4割に低下した.また,高濃度化した下層側融液では約2割に低下した.相分離および濃度分極の形成は,潜熱量の減少のみならず放熱速度の低下をもたらすことが示唆された.