化学工学論文集
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31 巻, 1 号
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移動現象,流体工学
  • 大森 寛, 石井 靖之, 庄野 厚, 佐藤 一省
    2005 年 31 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    新しい形式の撹拌槽型気液接触装置として,気泡の微細化と気液混相の循環をそれぞれ翼径より大きな径のリングスパージャーと吐出性能のよい撹拌翼に分担させる方法を提案し,水およびCMC水溶液(粘度10–70 mPa·s)への酸素の吸収特性を中心に実験的な検討を行った.この形式では,通気ガスの翼への集中が避けられ,翼の吐出性能の低下が少ないため,液粘度の高い系においてガスホールドアップやKLaが通常形式に比べ増大する.通常形式とは異なり,KLaに対する通気の寄与が撹拌の寄与に比べ相対的に大きくなる.通気ガスの空塔速度が同一の場合には,スパージャーの孔径を小さくするとKLaは増大するが,孔数の影響はほとんど認められない.
  • 藤田 佳江, 宮原 敏郎
    2005 年 31 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    化学反応装置やバイオリアクターでの消泡を目的とし,消泡の対象である細胞状泡沫層の安定性を実験的に検討した.標準型気泡塔を用い,HLB値(Hydrophile-Lipophile-Balance)の異なる四種類の非イオン性界面活性剤水溶液にガスを吹き込み,細胞状泡沫層を形成させ,その成長および崩壊過程を観察した.その結果,三種類の泡沫層成長パターンと二種類の泡沫層崩壊パターンが見出された.さらに,Hartland and Barber(1974)およびBarber and Hartland(1975)の提案する薄膜化速度式を用い,細胞状泡沫層が破裂する際の臨界液膜厚さを求めた.得られた臨界膜厚さは液の密度,粘度および表面張力以外に,気液界面物性である表面粘度およびHLB値により相関された.
  • 島田 直樹, 冨山 明男
    2005 年 31 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    著者らが開発した(N+2)-field modelを圧縮性混相熱流動解析用に修正し,各相密度の温度,圧力依存性を考慮できる数値解法をTomiyamaらが提示した解法を基に構成した.本数値解法は非圧縮流れ解法の枠内で構成でき,エネルギー保存式は分離して解ける.さらに,時間刻み幅に対する制約はCourant条件であるため,圧縮性流れ用の数値解法よりも大きな時間刻み幅を用いて安定に計算を実施できる.
    構築した計算手法の妥当性を検証するため,三つの計算を実施した.はじめに,密度の圧力依存性を考慮した本解法の性能を検証するため,大きな静水圧差下の気泡流を計算した.計算結果から,提案した解法が気相密度低下による気相体積流束の増加を良好に予測できることを確認した.次に,ダクト壁面から流体を加熱した際の気泡流を計算し,圧力に加えて温度の変化が体積流束に及ぼす影響を検証した.これらの計算結果から,提案した解法が密度変化による気液各相体積流束の変化を良好に予測できることを確認した.最後に工業装置の計算例として,気泡塔を計算した.提案した手法により,計算時間の膨大な増加を回避しつつ,塔の性能評価に必要な各種変数(気泡径,ボイド率,流速,温度など)の計算に密度の温度・圧力依存性が考慮できることを確認した.
粉粒体工学
  • 田中 泰光, 佐伯 周, 張 其武, 齋藤 文良
    2005 年 31 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    磁気テープ素材を単独ならびに脱塩素剤共存下で乾式混合粉砕(メカノケミカル(MC)処理)し,テープに含有するPVCなどの有機ハロゲン化物の分解・脱塩素を達成し,その後,水洗・ろ過して,生成した無機塩素化合物を分離し,固体残渣とともに再利用する新しいリサイクル法を開発した.MC処理過程では水溶性塩化物が生成するが,テープ中には十分な量の脱塩素剤となる無機物が無いため,脱塩素剤としてCaOを添加したが,これによってテープ中のPVCが完全に分解される.MC処理物を水洗・ろ過するとろ液と固体残渣に分離できるが,前者には,Ca2+イオンが含まれるため,リン酸塩を含む廃液中に放流するとヒドロキシアパタイト(HAp)が生成する.したがって,ろ液は河川などのリン酸塩濃度低減用として,また,そこで生成するHApによる重金属吸着固定用としてリサイクルできる.一方,後者は,一般のRDF同等あるいはそれ以上の燃焼発熱量を持ち,安全で良質な固形燃料としてリサイクルできる.本リサイクル法では,記録材料である磁性体とテープ中のPVCとの固相反応から,構成元素であるコバルトや鉄のリサイクルも可能である.
  • 伊藤 竜生, 西村 学, ゴールマン ボリス, 篠原 邦夫, 福中 唯史
    2005 年 31 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    これまで錠剤の作製条件は,溶解速度を主要な基準の一つとして,溶解試験の繰り返しにより,経験的に決められてきており,製剤の分野においては,その作製条件から溶解速度を予測した研究は未だ行われていない.そこで,本研究では,圧縮成型体の作製条件および1次粒子の性状が溶解速度に与える影響について定量的に検討を行った.その結果,溶解速度は,空隙率の増大,主成分の体積割合の減少,粒子形状指数の増大,比表面積径の減少に伴い増大した.よって,これまで考慮されていなかった形状指数の効果が比表面積径の効果と同程度あるため,これらを考慮した新たな溶解モデルの構築が必要と考えられる.
分離工学
  • 吉田 雅俊, 法邑 雄司, 山下 善之, 松本 繁
    2005 年 31 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    非等温クロマトグラフィーは,ガス中の複数成分を連続的に分離ができる新しいプロセスである.本プロセスは,温度分布を形成し,それをカラム軸方向に移動することで,温度スイング吸着プロセスの吸脱着の繰返し操作を一つのカラムで連続的に行うのが特徴である.すなわち,温度スイングプロセスとガスクロマトグラフィーを組合せたプロセスになっている.本研究は提案したプロセスの実験室規模の分離装置を作製し,窒素ガス中に含まれる微量のエチレンと二酸化炭素の濃縮分離を行う実験を行い,その有用性を示している.さらに,本プロセスの分離特性を表現するモデルを構築して,シミュレーションを行っている.このシミュレーションは実験結果と良く一致し,分離特性を表現するモデル化ができた.
  • 姫野 修司, 仲沢 敦史, 小松 俊哉, 藤田 昌一, 澤原 大道
    2005 年 31 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    5種類のメタンなどのガス吸着に適していると考えられる活性炭を用いて消化ガスの吸着貯蔵量の評価を行った.特に本研究では,消化ガス貯蔵における吸着熱の貯蔵量へ与える影響を明らかにし,活性炭の発熱による温度上昇を考慮した消化ガス吸着貯蔵量の評価を行うことを目的とした.まず,それぞれの活性炭について消化ガスの主成分であるメタン,二酸化炭素の単成分吸着等温線を測定し,Toth式および拡張Toth式で解析を行った.次に,求められたパラメーターを用いてIdeal Adsorbed Solution Theory(IAST)でメタン,二酸化炭素混合ガスの2成分吸着量の予測を行った結果,実験値と誤差7%以内で一致した.また,IASTを用いて消化ガスの吸着量を評価することが可能かを検討するため,実際の消化ガスの吸着量とIASTにより求めた消化ガス組成のメタン,二酸化炭素混合ガスの吸着量を比較した結果,両者は8%以内で一致し,IASTにより消化ガスの任意の温度,組成,圧力での吸着量の予測が可能であることを確認した.さらに,貯蔵容器内を断熱状態と仮定し,吸着熱による貯蔵容器中心部の温度上昇を考慮した貯蔵量の計算方法を示し,従来の圧縮貯蔵との貯蔵効率の比較を行った結果,消化ガス貯蔵に適した活性炭を用いれば消化ガスを0.7 MPaで充填すると32 Kの温度上昇が予測されたが,圧縮貯蔵に比べ,0.3 MPaで16倍,0.6 MPaで10倍の貯蔵量を得られることを明らかにした.さらに,パイロット試験機を用いて実消化ガスを0.3, 0.5, 0.7 MPaで貯蔵した際の活性炭の温度上昇結果とを比較した結果,両者は3 K以内で一致した.
反応工学
  • 小島 紀徳, 小宮 真平, 上宮 成之
    2005 年 31 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    AlN微粉末の合成を流動層内で直接窒化法を用いて行った.流動層法によれば熱交換に優れ,また原料のAlが層内で溶融分散することにより反応速度の増大,生成物の微粉化が期待される.本検討では高効率化を目的とし操作条件を策定,プロセスの改善法を検討した.その結果,本法を用いることにより,凝集物の生成は見られるが,高純度のAlNを比較的低温で合成することができることを示した.
  • 森本 達也, 落合 哲也, 荒木田 和正, 亀谷 知彦, 小田 廣和
    2005 年 31 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    石炭の高温迅速乾留チャーのCO2ガス化に対し,反応条件(反応温度,反応率)および炭種がランダムポアモデル(RPM)の細孔構造パラメータΨに及ぼす影響を検討した.Ψは各反応率における部分ガス化チャーの真密度,N2BET表面積,細孔長さからそれぞれ算出した.石炭化度(C%)の低い炭種では,Ψはガス化開始直後のみ反応率とともに減少するものの,それ以降は反応が進行してもほとんど変化しなかった.一方でC%の高い炭種ではガス化開始直後に急激な減少がみられ,反応中期(X=0.5)付近で極小値を得た.この急激な減少は,ガス化温度を高くすることによって緩和された.またC%が80以上の炭種に関しては,Ψはほぼ例外なく反応中期付近で極小値をとることもわかった.これらΨの変化は,ガス化に伴う閉鎖孔の開放と関連すると考えられる.
エネルギー
  • 佐保 瑞絵, 中里 勉, 小林 一正, 中川 紳好
    2005 年 31 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル フリー
    直接メタノール燃料電池(DMFC)の燃料(メタノールと水の混合物)の電池への供給形態として液相供給,気相(相対湿度90%)供給および気液混相(相対湿度130%)供給のそれぞれについて,Nafion112を電解質膜に用いた電池の発電特性を比較し,燃料供給形態が電池発電特性に及ぼす影響を検討した.電解質膜の含水率に関係して気相供給では他に比べ電池オーム抵抗が大きくなる傾向を示したが,常圧,353 Kにおいてメタノールおよび水の活量が一致する条件では各燃料供給形態の直流過電圧特性はほぼ一致し,電極反応機構や電解質膜物性は液相や気相の状態の差異の影響を受けないことが示された.一方,高電流密度域での電流値の経時変化(一定電圧下)の比較において,電流値に振動が見られ,振動の振幅や周期が燃料供給形態に依存した.このことは二酸化炭素のアノードにおける物質移動が原因と見なされた.
  • 濱口 涼吉, 西村 勇毅, 松隈 洋介, 峯元 雅樹, 渡部 正治, 有川 究
    2005 年 31 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    海底に存在するメタンハイドレートの回収方法は未だ確立されていない.ガスリフトを用いた深海底資源メタンハイドレート回収システムに関する検討を行った.高さ5 m,管径100 mmのガスリフト実験を行い,吹き込むガス量と揚水量の関係を求めた.回収管の全長が3000 m,管径2 m,ガスを吹き込む水深50–800 mの条件における回収システムを想定したガスリフト垂直管内流動解析を目的とする圧縮性非定常一次元二相流の数値計算を行った.基礎方程式は,各相における質量保存式と運動量保存式,気相の状態方程式,体積分率の式を用いた.ガスリフトによるメタンハイドレート回収システムの検討を行った.数値計算による結果よりガスリフト動力は発電可能と想定される電力の数%程度となり,ガスリフトを用いた回収システムは経済的に有効であることを示した.ガスを吹き込む水深にはガスリフトの動力面から見て最適な水深が存在することを確認し,ガスを吹き込む水深やガス流量を条件に応じて操作することによりガスリフトによる回収システムはより経済的な回収システムとなることを示した.
環境
  • 芝田 隼次, 村山 憲弘, 田辺 満昭, 山本 秀樹
    2005 年 31 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
    ジャーナル 認証あり
    アルミドロスを原料として,無機陰イオン交換体の一種であり層状複水酸化物構造を有するハイドロタルサイトの合成を行った.得られた反応生成物に対して,結晶構造,表面構造,熱重量変化などの物性,pH緩衝作用,リン酸イオンの除去能力について検討した.
    ハイドロタルサイトの合成は,アルミドロスおよびMgCl2含有廃液を用いてAlとMgの複水酸化物の共沈法により行った.反応生成物には少量のSiO2, Al2O3, Fe2O3などが不純物として残存していた.得られた反応生成物の層間距離は約0.3 nmであった.ハイドロタルサイトを773 Kで3 h焼成するとMg–Al酸化物に変化し,焼成後に再水和操作を行うと再びハイドロタルサイトに復元した.反応生成物の物性は,試薬から合成したものとほぼ同一であった.得られたハイドロタルサイトは,pH緩衝作用とリン酸除去能力を併せもつものであった.
  • 香川 詔士, 鈴木 敬介, 保坂 怜
    2005 年 31 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/02/25
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    煙草の吸い殻を原料に活性炭の製造を行った.原料中に含ませた水分は賦活作用をもつことを見いだした.煙草の吸い殻の含有水分量を200%としたとき,昇温速度5 K/min,炭化・賦活温度1173 Kでその温度を1時間保持することによって比表面積556 m2/g程度の活性炭が得られた.またこの活性炭の細孔直径は約4 nmのメソ細孔を有し,ヨウ素吸着量522 mg/g,メチレンブルー吸着量58 cm3/gの吸着性能をもつことがわかった.
広領域,その他
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