化学工学論文集
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34 巻, 2 号
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物性,物理化学
  • (せん断流の回転角速度ベクトル方向に磁場が作用する場合の平均場近似による解析)
    早坂 良, 青島 政之, 鈴木 寿則, 佐藤 明
    原稿種別: ノート
    専門分野: 物性,物理化学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    粒子軸と垂直方向に磁化された棒状粒子からなる,非希釈コロイド分散系の配向分布と粘性に及ぼす粒子間磁気的相互作用の影響を検討した.加えて,印加磁場,せん断流,ランダム力の影響も明らかにした.その際,粒子間相互作用は平均場近似を適用して近似的に取り扱った.配向分布関数の方程式はトルクのつり合いの式より導出し,数値解析によって解を求めた.結果を要約すると以下のとおりである.磁場が非常に強い場合は,粒子の磁気モーメントは磁場方向に強く制限されるため,粒子の運動はせん断面に垂直な面内に拘束される.粒子間磁気力が大きい場合,磁気モーメントはさらに磁場方向に強く制限されるようになるため,磁気モーメントを磁場方向に一致させながら,徐々に流れ方向に配向するようになる.せん断流の影響をさらに強くすると,棒状粒子の配向特性がさらに顕著に現れ,配向分布関数は一点集中型のピークを有するようになる.また平均場が磁場方向の成分のみを有するので,粒子間磁気的相互作用は粘度に影響しない.
移動現象,流体工学
  • 門叶 秀樹, 原田 英二, 栗山 雅文
    専門分野: 移動現象,流体工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    高粘度液通気撹拌槽において撹拌羽根背面に形成されるキャビティの体積について実験的に検討した.サイズの異なる2種類のラシュトンタービン翼を用い,通気停止後も羽根背面に安定に存在しているステイブルキャビティの体積を測定した.さらに,通常の通気撹拌時およびステイブルキャビティ付加時の撹拌所要動力も測定して両者を比較し,通気撹拌時のキャビティとステイブルキャビティの関係に考察を加えた.
    ステイブルキャビティ体積は試料液粘度および撹拌速度を広範囲に変化させて測定した.得られた結果およびキャビティに作用する力に関する簡単な考察から,層流および乱流域おのおのについてキャビティ体積を予測する実験式を提出した.
分離工学
  • 山内 恒, 児玉 昭雄, 広瀬 勉, 岡野 浩志, 山田 健一郎
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 217-223
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    排ガス中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の無害化処理技術が強く求められるようになったが,低濃度,大風量に加え多種多様な有機化合物を安全かつ効率的に処理する上で課題が多く残されている.そこで本論文は,疎水性ゼオライトなどを担持したハニカムローター型の吸着剤を温度スイング吸着で操作するVOC濃縮装置が有効な技術であることを示すとともに,実機運転の実績に基づいて本装置の設計・操作の指針を,吸着剤ローターの選択,ローター諸元と空塔速度,処理対再生風量比,最適ローター回転数等にわたって論述する.さらに,高沸点物質の蓄積によるVOC除去性能低下への対応策として,シリカバインダーを従来より半減させた疎水性ゼオライトローターを開発するとともに,性能劣化ローターのVOC吸着量が300°Cの高温度再生により未使用ローター近くまで回復することを確認した.あわせて高温度での再生に耐えるシール構造を開発し,高性能のVOC濃縮装置の実機導入を図った.
  • 中西 俊成, 足立 尚聰, 阿曽 一正, 岩壁 幸市, 松田 圭悟, 堀内 均平, 中岩 勝, 高松 武一郎
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 224-229
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)パイロットプラントにおいて用いられているチューブユニットを7本束ねた多管式二重管型構造において,分離性能に大きな影響をおよぼす塔頂の液分配器の設計方法および設計した液分配器の性能について検討を行った.各チューブユニットへの液分配の不均一性が分離性能に与える影響についてシミュレーションを行ったところ,チューブユニット間のわずかな液流量の差異が塔頂製品濃度に大きく影響することがわかった.この結果から,チューブユニット間の偏流率を3%と定めた.シミュレーションでの検討結果に基づいて,液分配試験器の開発を行った.開発した試験器による実証実験では,偏流率は2.5%程度であり,要求される仕様を満たしていた.さらに,設計した液分配器を用いたHIDiCパイロットプラントの運転データにおいて,各チューブユニット間で温度分布に差異が見られないことから,本研究で開発した液分配器は各チューブユニットに液を均一に分配していることが示された.
  • 川喜田 英孝, 大渡 啓介, 原田 浩幸, 井上 勝利, ドュルガ パラジュリ, 山内 理絵
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    ポリフェノールを大量に含有するカキシブ液を用いて,金の選択的な凝集分離を試みた.塩酸濃度による依存性を調べたところ,0.5 mol·dm−3以下までは貴金属および卑金属の中から金のみを選択的に100%回収することができた.また顕微鏡およびX線回折より,金粒子の形成が確認された.これはポリフェノールによって3価の金イオンが0価に還元されたためである.この技術によって,金含有廃液から金のみを選択的に回収できると考える.
  • 長谷川 昇, 入谷 英司, 片桐 誠之
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 234-241
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    プール水の浄化・殺菌においては,濁度と遊離残留塩素の制御が重要である.一般に,汚濁物質は循環濾過によって除去され,また遊離残留塩素濃度に応じて消毒剤が間欠的に注入される.本研究では,砂濾過機と次亜塩素酸ナトリウムによる消毒システムを備えた室内温水プールにおいて,決まった人数の遊泳者が決まった時間遊泳する種々の計画遊泳を行い,プール水中の濁度,遊離残留塩素濃度および塩素剤注入量の経時変化を測定した.濾過機による汚濁物質の除去特性を考慮にいれた修正室谷式に基づき,汚濁物質排出の原単位である遊泳者1人が単位時間あたりに排出する汚濁物質量の値を用いて,濁度の経時変化を精度良く推定できた.また,遊離残留塩素の消費が遊泳者に由来する部分と遊離残留塩素濃度に比例する部分からなると考え,ある一定レベルの遊離残留塩素濃度を保つために必要な塩素注入量の経時変化を精度良く計算できることを示した.これらの結果は,遊泳プールの設計や運転に対して基礎的知見を与えるものと考えられる.
  • 吉野 泰, 安藤 泰典, 田口 久富, 伊藤 直次
    専門分野: 分離工学
    2008 年 34 巻 2 号 p. 242-248
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    高温耐久性のより高いシリカ複合膜を得ることを目的に,原料にシロキサン結合を有するシリコン化合物(ヘキサメチルジシロキサン(HMDS),1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDS),1,3-ジオクチルテトラメチルジシロキサン(DOTMDS))を用いて,対向拡散CVD法によって多孔質α-アルミナ支持管上に製膜した.作製したシリカ膜の水素透過特性,耐熱性,長時間安定性,水蒸気安定性の評価を従来よく用いられるテトラメチルオルトシリケート(TMOS)を原料としたシリカ膜の性能と比較した.
    その結果,ヘキサメチルジシロキサンを用いて作製した膜は,TMOS膜に比べて1桁高い水素透過率を示し,600°Cにおいて水素透過率1.2×10−6 mol·m−2·s−1·Pa−1, H2/N2透過係数比550を示した.さらに,800°Cでは水素透過率1.0×10−6 mol·m−2·s−1·Pa−1, H2/N2透過係数比590を示し600°Cと比較して水素透過率が低下するものの,H2/N2透過係数比は維持された.500°Cにおける長時間透過試験では200時間で水素透過率は8%の減少に留まり,TMOSを原料としたシリカ膜に比べて高い安定性を示した.さらに水蒸気雰囲気下での透過試験では初期の数時間で,水素透過率は26%減少し,窒素透過率は10%増加したものの,その後は水素透過率5.1×10−7 mol·m−2·s−1·Pa−1, H2/N2透過係数比440が維持された.シロキサン結合を有する原料を用いて製膜することで高温安定性の高いシリカ膜を得ることができた.
反応工学
プロセスシステム工学,安全
  • 小林 大祐, 松本 秀行, 黒田 千秋
    専門分野: プロセスシステム工学,安全
    2008 年 34 巻 2 号 p. 254-260
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    超音波を用いた乳化重合プロセスは,開始剤を使用せず界面活性剤の使用量を削減し室温程度で重合反応を進行させることが可能であるため,環境調和型プロセスの1つとして有用である.本研究では,スチレン乳化重合に超音波間接照射法を適用し,照射条件を経時的に変化させる動的プロセス操作法による乳化重合プロセスの強化技術について検討した.具体的には,反応器の設置位置を2段階に操作して,第1段階では誘導期間の短い位置で照射し,第2段階では高分子の分解の効果が小さい位置で照射することにより効率的に比較的大きな分子量を有する高分子を生成させることができた.また,第1段階の照射時間および第2段階の反応器の設置位置が分子量分布におよぼす影響を明らかにし,著者らが以前に提案した,乳化重合プロセスにおける超音波の化学的・物理的効果の指標が有用であることを明らかにした.本論文で提案した動的プロセス操作法は.従来法では容易に生成させることができない巨大高分子を効率的に調製することが可能であり,乳化重合プロセスの強化技術の有効な一手法である.
材料工学,界面現象
  • 小島 紀徳, 舘 健悟, 境 純一, 加藤 茂, 里川 重夫
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 2 号 p. 261-265
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    高純度微粉シリカは半導体産業などで広く使われている.著者らは,前報でテトラメトキシシラン(TEMS)の気相加水分解でシリカの微粉生成が可能であることを示した.本論文では,装置形状,粒子性状特に粒径に与える影響について調べた結果を報告する.
    Type 1–3の3種類の形状の異なる反応器を用いた.Type 1は前報で用いられたものであり,TEMSは水蒸気とともに反応器上部より同方向に流入し,加熱されながら反応する.一方,Type 2および3では,TEMSは装置下方より流入,加熱された水蒸気と混合される.Type 3ではType 2に比べ水の導入管は短く,混合部温度はより高温である.
    平均粒子径はType 1, 2, 3の順に小さくなった.この結果から,水蒸気共存下でTEMSを急速に加熱することによってより小さい微粉粒子が生成することが示された.この条件下では異相反応による粒子成長が抑えられ,核生成反応のみが加速されたものと考えられる.このように反応器形状を変えることでガス混合条件を変え,ひいては水蒸気共存下でのTEMSの加熱条件が変わり,生成シリカ粒子の平均粒径が変わったものと考えられる.
  • 今駒 博信
    専門分野: 材料工学,界面現象
    2008 年 34 巻 2 号 p. 266-276
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    Fick型物質移動が生じている平板に対する既往の乾燥特性モデルに顕熱と浸透期間を加味したモデル式を提案した.このモデルに,さらに乾燥応力に起因する物質移動促進効果を加味して新乾燥特性モデルを提案した.対象物質に応じて容易に変形し得る乾燥特性モデルの特徴と利便性ならびに汎用モデルとしての可能性を示す1例だろう.新乾燥特性モデルの妥当性を,ポリビニルアルコール水溶液膜に対する既往のFick式に基づくシミュレーション結果および実験結果と比較検討した.新乾燥特性モデルを用いた計算による乾燥速度曲線は,物質移動促進効果を考慮しない既往のシミュレーション結果およびこのシミュレーション結果とは一致しなかった既往の実験結果の両者と良好に一致した.さらに,仮想ゲルに対する新乾燥特性モデルの計算結果は,ゼラチンゲルに対する既往の実験結果を定性的に説明できた.また,実用レベルの塗布層厚みに対して促進効果のある場合とない場合の計算結果を比較したところ,乾燥終期においてのみ両結果の乾燥速度の差はきわめて大きかった.
エネルギー
  • 大竹 哲也, 宍戸 昌広
    専門分野: エネルギー
    2008 年 34 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    防腐処理木材を含む建築廃木材から燃料ガスを製造することを想定し,熱天秤型反応器を用いてCCA(クロム,銅およびヒ素)処理木材より調製した木炭のCO2ガス化実験を行った.これによりCCA成分が木炭のガス化におよぼす影響を検討し,あわせて炭化およびガス化によるクロム,銅,ヒ素の挙動を確認した.その結果CCA薬剤に含まれる金属が,木炭のCO2ガス化反応の活性化エネルギーを低下させることが明らかとなった.またCCA成分を含む木炭のガス化特性は,とくに銅の影響が大きいと推察された.炭化およびガス化によるCCA成分の挙動を確認した結果,ヒ素の放散が確認できた.CCA薬剤成分のうち,銅およびクロムは灰分として回収が可能であった.
環境
  • 井上 勝利, 西浦 正紘, 川喜田 英孝, 大渡 啓介, 原田 浩幸
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 282-286
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    微量のインジウムを含有する使用済み液晶パネルからインジウムを選択的に分離,精製,回収するための基礎的研究を行った.使用済み液晶パネルの酸による浸出実験を行った結果,塩酸を用いることで王水に匹敵する効率で抽出が可能なことがわかった.また,トリオクチル酸化ホスフィンの抽出試薬を用いることで,高濃度の塩酸溶液からインジウムを回収できることを明らかにした.さらに,4級アンモニウム化合物,およびトリオクチル酸化ホスフィンを含浸させた2種の多孔性樹脂を調製し,2つのカラムに充填し直列に連結した装置に液晶パネル中に含まれる金属を全て含む 3 M(mol dm−3)の塩酸のモデル液を通液した.その結果,不純物として共存する亜鉛,錫,鉄などの金属を前者のカラムによりあらかじめ吸着・除去することでインジウムを効率的に分離することができた.さらに,溶離液として0.1 Mの硫酸を通液することで供給液に対して10倍程度に濃縮して回収することができた.
  • 甲原 好浩, 吉田 昌弘, 武井 孝行, 岩崎 広, 竹宮 鉄史, 幡手 泰雄, 筒井 俊雄, 水田 敬
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 287-290
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    セラミックスやエレクトロニクス産業の分野で広く使用されている封着加工用鉛ガラスの無鉛化は急務な課題である.本研究ではわれわれの研究グループが報告した封着加工用鉛フリーガラスである,41.8 mol% V2O5–3.1 mol% ZnO–17.6 mol% BaO–37.5 mol% TeO2(以下VTEと略記)ガラスと53.0 mol% V2O5–4.0 mol% ZnO–22.4 mol% BaO–20.6 mol% P2O5(以下VPと略記)ガラスの2つの組成系の実用化に向けた評価試験の検討を行った.評価試験内容としては,平面蛍光管の封着加工後のサーマルショック試験,耐圧試験,連続点灯試験を行った.対象実験として従来の鉛ガラス(以下Pbと略記)で作製した平面蛍光管と比較した結果,サーマルショック試験および加圧試験では鉛ガラスで作製された平面蛍光管と同等の熱衝撃および圧力衝撃性を有していることがわかった.また,連続点灯試験においても鉛ガラスを使用したものと同等の発光特性を有することがわかった.
  • 山口 洋平, 野中 利瀬弘, 菅原 勝康
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 291-296
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,種々の溶融飛灰に対応した効率的な亜鉛の揮発分離プロセスの開発を目的として,溶融飛灰の単独加熱ならびにポリ塩化ビニルや固体炭素を添加したときの亜鉛の揮発挙動を追跡するとともに,逐次抽出法に基づき加熱時における亜鉛化合物の形態変化を明らかにした.
    実験には,処理方式や組成の異なる二種類の溶融飛灰を用いた.ポリ塩化ビニルを添加した場合,亜鉛の形態としてZnOを主成分とする試料では, 573 Kから固相中にZnCl2の生成が確認され873 Kから亜鉛の揮発が進行した.一方,ZnCO3を主成分とする試料では,ZnCl2の生成は確認されず,CaCl2の融点の1045 K以上の高温域になってから亜鉛の揮発が進行した.
    炭素を添加した場合,いずれの試料ともZnCl2の沸点付近から著しい揮発が観測されたが,揮発率は試料中の塩素含有量に依存することがわかった.
  • 安井 晋示, 池田 弘一, 白井 裕三
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 297-303
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    廃フロンに含まれるフッ素を乾式で蛍石として再資源化する新たな技術の開発に向けて,フロン(R22)を空気とともに水蒸気分解した分解ガスと炭酸カルシウムとの反応特性を調べた.フロンを一旦高温炉で分解し,その分解ガス(HF濃度:約30%,HCl濃度:約15%)を,粒度1–2 mmの炭酸カルシウムとSVが1860 h−1の条件において200°Cで気固反応させた.
    HFガスが破過するまでの固定化炉出口ガスに含まれるHF濃度は1000 ppm未満と極めて低く,一方,HCl濃度は10–15%の範囲と高く,固定化炉においてフッ素が選択的に炭酸カルシウムに吸収されることが分かった.また,反応が比較的進行した試料の蛍石としての純度も約94%となった.さらに,固定化炉の下流では,分解ガス中のHClと炭酸カルシウムが反応して塩化カルシウムが少量生成されるものの,固定化時間の経過により高濃度のHFガスと接触することで,未反応の炭酸カルシウムや生成した塩化カルシウムも徐々に蛍石になることが示唆された.これらの結果から,廃フロン類の乾式再資源化技術が実現可能であることを明らかにした.
  • 福井 国博, 木戸口 聡, 有満 直樹, 山本 徹也, 吉田 英人
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 304-308
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    焼却飛灰を原料として,リン酸カルシウムハイドロゲルを作製することが可能であることが確認された.その際に必要となるリン酸量は炭酸カルシウム試薬から作製した場合と同量であった.その特性を炭酸カルシウム試薬から作製したものと比較検討した結果,中間生成物であるリン酸カルシウムガラスの機械的強度は,焼却飛灰を原料とした場合のほうが小さいことがわかった.また,焼却飛灰中に価数の高い金属イオンが含まれるために,焼却飛灰を原料とした非晶質リン酸カルシウムハイドロゲルの方が高い電導率を有し,その水分保持力も高いことがわかった.さらに,結晶質のリン酸カルシウムハイドロゲルでは,炭酸カルシウム試薬を原料としたときのほうが,その電導率は高くなる.これは焼却飛灰から作製したハイドロゲルのほうが結晶性が低いためであると考えられる.しかし,その差異は温度が上昇するにつれて減少することが明らかとなった.
  • 田熊 保彦, 福田 加代子, 川田 幸平, 加藤 茂, 里川 重夫, 小島 紀徳
    専門分野: 環境
    2008 年 34 巻 2 号 p. 309-312
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2008/04/12
    ジャーナル 認証あり
    本研究では鉄粉と過酸化水素を用いたフェントン反応によるTCEの分解反応の反応速度を測定した.その結果,鉄粉を用いたときにはFe(II)を用いた場合と異なり,TCE分解速度は分解初期の導入期を経た後,分解が進むことがわかった.導入期を除くと,反応はTCE濃度に対して1次として解析できた.得られた反応速度定数は,鉄粉濃度に対して1次反応であることがわかった.過酸化水素濃度に対しての反応次数は過酸化水素濃度範囲によって変化することがわかった.また,高濃度の過酸化水素を用いた場合,TCE分解反応の過酸化水素濃度に対する反応次数は負になることがわかった.
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