高温耐久性のより高いシリカ複合膜を得ることを目的に,原料にシロキサン結合を有するシリコン化合物(ヘキサメチルジシロキサン(HMDS),1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDS),1,3-ジオクチルテトラメチルジシロキサン(DOTMDS))を用いて,対向拡散CVD法によって多孔質α-アルミナ支持管上に製膜した.作製したシリカ膜の水素透過特性,耐熱性,長時間安定性,水蒸気安定性の評価を従来よく用いられるテトラメチルオルトシリケート(TMOS)を原料としたシリカ膜の性能と比較した.
その結果,ヘキサメチルジシロキサンを用いて作製した膜は,TMOS膜に比べて1桁高い水素透過率を示し,600°Cにおいて水素透過率1.2×10
−6 mol·
m−2·s
−1·Pa
−1, H
2/N
2透過係数比550を示した.さらに,800°Cでは水素透過率1.0×10
−6 mol·m
−2·s
−1·Pa
−1, H
2/N
2透過係数比590を示し600°Cと比較して水素透過率が低下するものの,H
2/N
2透過係数比は維持された.500°Cにおける長時間透過試験では200時間で水素透過率は8%の減少に留まり,TMOSを原料としたシリカ膜に比べて高い安定性を示した.さらに水蒸気雰囲気下での透過試験では初期の数時間で,水素透過率は26%減少し,窒素透過率は10%増加したものの,その後は水素透過率5.1×10
−7 mol·m
−2·s
−1·Pa
−1, H
2/N
2透過係数比440が維持された.シロキサン結合を有する原料を用いて製膜することで高温安定性の高いシリカ膜を得ることができた.
抄録全体を表示