今回,助溶媒添加系における超臨界二酸化炭素中の固体溶質の溶解度推算モデルを開発した.まず,助溶媒として,エタノール,メタノール,アセトン,酢酸エチル各種を用いた24の有機溶質に対する計960の溶解度データを集積し,溶解度の相関モデルを開発した.この開発には,以前に著者らが構築した超臨界二酸化炭素純溶媒中の固体溶質の溶解度推算モデルであるpredictive Dimensionless Solubility (pDS) model(Ota et al., 2018)を基礎部分として採用し,助溶媒添加系の溶解度の促進効果をHansen溶解度パラメータ等を用いて新たにm-pDSモデル(pDS for a single modifier addition systems)として定式化できたのでここに報告する.
CO2–ethanol–water系の高圧気液平衡組成を,温度313–353 Kおよび圧力8 MPaにて流通式装置を用いて測定した.得られた気液平衡データと以前の報告(Sato et al., 2019)のデータに対して,Peng–Robinson状態方程式にvan der Waals 1流体(vdW1)混合則およびWong-Sandler(WS)混合則を用いた相関方法の適用性を確認した.また,相関によって決定したフィッテイングパラメータの温度依存性近似式を用いた推算より,CO2–ethanol–water系においてvdW1混合則およびWS混合則両者の適用性が示唆された.
低粘度流体の混合の効率化を目的に開発されたHR320とHR320Sの性能を撹拌所要動力,混合時間を測定することによって評価した.HR320およびHR320Sの撹拌所要動力は,ピッチドパドル翼の相関式の乱流項のパラメータを修正することで相関できた.そして,脱色法による混合時間の測定により,乱流条件下ではHR320とHR320Sは,プロペラ翼,ピッチドパドル翼,HR100と比較して良好な混合性能が得られた.
本研究では,ホウ素をターゲットとした高容量の吸着材として,ポリエチレンイミン,水酸基を4つ有するラクトン,架橋剤から側鎖にポリオールを有するヒドロゲルを合成した.グルコノラクトンから合成したヒドロゲルは,100 mg/Lのホウ素溶液に投入すると3 h程度で吸着平衡に達し,pH 4–8において13 mg/g-drygel以上の吸着量を示した.この吸着量は,既存のキレート樹脂の約1.5倍であった.吸着等温線から本ヒドロゲルはLangmuir型の吸着様式を示し,飽和吸着量は17.2 mg/g-drygelであることがわかった.さらに,架橋度が高いヒドロゲルは,再生することで吸着量の低下を起こすことなく再利用可能なことが明らかになった.
らせん軸周りの回転で粒子を輸送するコイル状らせん型装置について,既往の研究で用いた小型(JIS規格20Aサイズ)装置と比べて,体積で10.6倍の大きさであるJIS規格50Aサイズのステンレス製180°ロングエルボを組み合わせた5旋回コイル状らせんを製作し,粒子輸送速度と壁面–粒子間の伝熱速度を測定した.粒子には,既往の研究で用いた球形粒子に加え,新たに天然鉱物を破砕した非球形粒子を用いた.らせん内の粒子層の体積と,らせん内壁面のうち粒子と接触する面積を,粒子の安息角を用いたモデルで推定した.装置内粒子層体積は,モデルの予測とほぼ一致した.壁面と粒子の間の伝熱係数は,既往の小型装置で求めた伝熱係数の相関式とおおむね一致した.粒子群交換モデルによる伝熱係数の推算値と実測値間に差異があり,この原因として壁面付近の粒子密度が低い層の伝熱抵抗が影響していると示唆された.
リン酸水素二ナトリウム12水塩は室内の空調や床暖房への適用が期待される潜熱蓄熱材である.しかし,蓄熱状態にあるその融液は融点以下の温度に冷却されても容易に核化しないので,蓄えた潜熱を融点で放熱する潜熱蓄熱操作に支障が生じる.この過冷却の問題を解決するため,一般に発核剤の添加がおこなわれるが,これまでの多くの開発研究にもかかわらず,その核化促進能力は不十分なものであった.本研究では,発核剤として機能するための必要な物性条件の抽出を目的とし,添加試薬をナトリウム塩に固定して,それらの核化促進能力の強さを熱サイクル実験によって調査した.促進能力の強さを過冷却比として定量化し,陰イオンの酸解離定数との関係を調べた結果,12水塩を構成するリン酸一水素イオンの酸解離定数より大きい解離定数を有する陰イオンでは,その数値が大きいものほど促進能力が強いことがわかった.また促進効果の発現メカニズムとして,添加した陰イオンの塩基的作用により12水塩融液中のイオン環境が不安定化し,核化のエネルギー障壁が減少したことが考察された.