化学工学論文集
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24 巻, 4 号
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  • 羽深 等
    1998 年 24 巻 4 号 p. 527-537
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    常圧 SiHCl3-H2系シリコンエピタキシャル成長に関わる輸送現象とシリコン基板表面の化学反応のモデル化により, 幅広い成長温度 (1073-1398K), SiHCl3ガス濃度, 基板回転数にわたりエピタキシャル成長速度予測が可能となった.併せて, コールドウォールの水平型エピタキシャル成長装置における成長原料ガス (SiHCl3) およびドーパントガス (B2H6) に対する基板回転と熱拡散現象の影響を考察した.拡散現象と熱拡散現象による流束の比率, 気相から基板表面へのガス輸送と基板表面の化学反応の比率を検討し, 原料ガス供給量に対するエピタキシャル成長速度の非直線的変化が輸送現象および表面反応に起因することを示した.最後に, シリコンエピタキシャル成長における今後の研究の展望について記した.
  • 武田 和宏, 柚木 健一, 柘植 義文, 松山 久義
    1998 年 24 巻 4 号 p. 538-545
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    生産技術の未成熟な工場において, 装置補修, 装置故障, 不良品, 割り込み受注は予め決められたスケジュールに従って生産することを阻害し, 生産性の低下, リードタイムの延長の原因となっている.
    ここでは, 適正な予防的補修を行えば故障や不良品の発生を抑えることができると考えて, 装置補修を頻繁に行っても高い生産性, 短いリードタイムを保持することができる分散型スケジューリングアルゴリズムを提案する.さらに, 特定用途向集積回路製造工場の実データから作成したプラントモデルを用いてシミュレーションを行い, その有効性を確かめた.
  • 三村 富雄, 薩美 七朗
    1998 年 24 巻 4 号 p. 546-551
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    火力発電所に化学吸収法の炭酸ガス分離プロセスを適用する場合, 炭酸ガス分離プロセスの廃熱を給水・復水系統に利用して発電出力を回復するシステムについて発電出力の減少量を計算した. このようなシステムでは廃熱回収をしないケースと比べて出力減が1/3となるような大幅な出力回復が見込まれ, 廃熱回収の有効性が確認できた.
    天然ガスだき発電プラントで最新の化学吸収剤 (KS-1, KS-2) を適用し炭酸ガス分離廃熱を回収すると, 発電出力減は約5%のレベルである.また, 石炭だき発電プラントのケースでは発電出力減は約9%のレベルである.
  • 杉田 創, 坂東 芳行, 中村 正秋
    1998 年 24 巻 4 号 p. 552-557
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    地熱水処理へのシリカゲルシード添加法の応用を想定して, モデル地熱水からのシリカ除去に及ぼすpHおよび操作条件の影響について実験的に検討した.諸条件におけるシリカ擬安定濃度を求め, シリカ除去率の算出に用いた.
    初期pHの値は5~9の範囲で変えられた.初期シリカ濃度が0.5kg-SiO2・m-3の場合, シリカ除去率は初期pHに伴い高くなる.一方, 初期シリカ濃度が0.7kg-SiO2・m-3の場合, シリカ除去率は初期pHの増加に対して極大値, 極小値を持ち, 初期シリカ濃度が0.9kg-SiO2・m-3の場合, 極小値を持つ.初期シリカ濃度が低い場合, シリカ除去率はプレシーディング時間に影響されないが, 初期シリカ濃度が高い場合, プレシーディング時間に伴いシリカ除去率は減少する.本研究の結果から, 本シード添加法は多くの地熱水処理に適用可能であると推測される.
  • 熊谷 剛彦, 近田 昭一, 佐々木 健, 石川 達雄, 千葉 忠俊
    1998 年 24 巻 4 号 p. 558-561
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    溶融塩を用いたTiの電解採取や還元製造のための原料塩であるK2TiCl6の合成におけるKClと TiCl4の反応特性を検討した.K2TiCl6の合成反応実験では, 種々の粒径のKCl粒子を用い, 過剰のTiCl4ガスと683Kで接触させた.その結果, 反応速度は反応進行に伴って急速に低下し, 反応は完了前に実質的に停止することが判明した.生成粒子断面のEPMA分析結果から, 反応の停止がK2TiCl6の粒子外殻層形成に起因し, 層厚さが5~6μmに達すると起こることがわかった.さらに, これらの結果が生成物層内のTiCl4ガスの拡散律速を仮定した未反応核モデルにより説明できることを明らかにした.
  • 大平 勇一, 小幡 英二, 空閑 良壽, 安藤 公二
    1998 年 24 巻 4 号 p. 562-567
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    光照射後, 光を遮断してスピルリナの比呼吸速度の経時変化に及ぼす入射光照度及び光照射時間の影響を実験的に検討した.比呼吸速度は遮光直後より約15~30分間一定値Q1を保つ.その後急激に減少し, 遮光後30分経過すると再び一定値Q2となる.比呼吸速度Q1は照度の増加に伴い増加した.比呼吸速度Q1に及ぼす光照射時間の影響は顕著に現れなかった.比呼吸速度Q2は入射光照度によらず一定で, 長時間暗条件下での比呼吸速度Q0=1.2mg-O2・kg-Spirulina-1・s-1とほぼ一致した.対数平均照度をI1m [k1x] とすると, 比呼吸速度Q1の照度依存性は次式で表すことができた.
    Q1-Q0=13I1m/(15+I1m)
  • 管内壁とワイヤーコイルとの隙間の影響
    庄司 幸嗣, 佐藤 恭三, D. R. OLIVER
    1998 年 24 巻 4 号 p. 568-572
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    円管内にワイヤーコイルを乱流促進体として用いた場合の熱伝達と流動抵抗に対する管内壁とワイヤーコイルとの隙間の影響について実験的に検討した.実験した隙間としてはε/Di=0.007, 0.05, 0.15, 0.21そして0.30の5種類である.結果として, 隙間が非常に小さい場合, ワイヤーコイルを挿入しない場合に対し熱伝達と流動抵抗は, それぞれ, およそ3倍と10倍として得られた.隙間が0<ε/Di<0.05の範囲においては熱伝達と流動抵抗はさほど大きな差は見られないが, 0.05以上においては, それらは隙間が増すと共に減少することを示した.この熱伝達の相関として500<ReH<7,000の領域に対してNuH= {0.231-0.456・ (ε/Di)} ・ReH0.64Pr1/3を得た.これは±7.0%以内でデータを満足した.これよりワイヤーコイルを乱流促進体として用いる場合の隙間に関する基礎資料を提供することができた.
  • 長さおよび分割による影響
    庄司 幸嗣, 佐藤 恭三, D. R. OLIVER
    1998 年 24 巻 4 号 p. 573-577
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    管内の熱伝達を促進させるため, 乱流促進体を挿入する方法がある.著者らは乱流促進体としてワイヤーコイルを用いた場合についての研究を進めている.前報では管内壁とワイヤーコイルとの隙間の影響について報告した.本報告では試験部の長さに対するワイヤーコイルの長さの割合や分割した場合について熱伝達と流動抵抗を実験的に求めたので報告する.結果として, 試験部の長さに対しワイヤーコイルの長さを短くすればするほど熱伝達と流動抵抗は共に小さくなり, 熱伝達に対する相関としてNuH=0.227・ (l/L) 1.6ReHmPr1/3を得た.また, ワイヤーコイルの全長を同じとした場合, 分割することにより熱伝達が増大する結果を得た.
  • 村上 佳広, 岡田 三樹也, 内山 寛信, 長谷部 伸治, 橋本 伊織
    1998 年 24 巻 4 号 p. 578-584
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    装置間がパイプで結ばれている化学バッチプロセスでは, 装置間に中間タンクが存在する場合に限り, 二つの装置で異なるジョブの処理順をとることができる.また, 途中一部異なる経路を通るジョブがあるような場合, 経路の分岐装置と合流装置間において他の経路を通るジョブの追い抜きが可能となる.本研究では, 中間タンクや分岐・合流装置を有するプロセスに対して, 与えられた処理順が実行可能である条件を明らかにした.シミュレーテッド・アニーリング法を用いたスケジューリングアルゴリズムでは, 実行可能な初期スケジュールから, 一つのジョブの各装置での処理順を変更する操作を繰り返し行うことによりスケジュールを逐次改良する.このアルゴリズムに, 上述した条件を組み込むことにより常に実行可能なスケジュールのみを探索する効率的なアルゴリズムを提案した.
  • 野村 俊之, 山田 善之, 増田 弘昭
    1998 年 24 巻 4 号 p. 585-590
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    粉体の電荷緩和特性が粉体の摩擦帯電にどのような影響を与えるのかについて, フェライトコアの表面にシリコーン樹脂をコーティングした粉体を作り, 異なる環境湿度下において回転容器内での帯電特性を測定し定量的に解析を行った.その結果, 試料粉体の最大摩擦帯電量の絶対値は相対湿度30%以下では湿度の増加とともに急激に減少し, 30%以上では比較的緩やかに変化することがわかった.また, 試料粉体および容器壁面の接触電位差はそれぞれ環境湿度に対して緩やかに変化したが, 試料粉体・容器壁面間の接触電位差は環境湿度によらず一定の値となることがわかった.最大摩擦帯電量は粉体層の見掛け抵抗率および誘電率の積より算出した通常の電荷緩和時定数を用いて推定できるが, 帯電特性曲線の傾向は大きく異なった.一方, 帯電特性曲線は接触電位差測定におけるゼロ点電位の変化から得られる電荷緩和時定数を用いることによって定量的に解析できることがわかった.
  • 倉前 正志
    1998 年 24 巻 4 号 p. 591-596
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    二成分ヒートパイプにおいて濃度差によって生じるマランゴニ効果に基づく作動液の帰還力を重力場で測定するために, ヒートパイプの限界熱輸送量測定に用いられている重力傾斜法を適用して検討を行なった.その結果, 先に行われた微小重力実験結果から予想されるように, 水に対して少量の第二成分を含む液体を作動液としたヒートパイプにおいてマランゴニ効果による液帰還力が大きくなることが示された.なお, 水・アセトン系の二成分ヒートパイプについて実験によって得られた結果は水・エタノール系二成分ヒートパイプの場合と異なり前報で提示した簡単なモデルから推定される結果と一致しなかったが, これは二成分ヒートパイプのNTUを考慮することによって定性的に説明できることが示された.
  • 田中 加奈子, 温 慶茹, 山崎 章弘, 山田 興一
    1998 年 24 巻 4 号 p. 597-602
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    メタンを燃料とする1MW固体酸化物燃料電池 (SOFC) のセル, モジュール及びシステムの設計を行った.広い作動温度, スチームカーボン比 (S/C) 条件範囲における出力特性を明らかにし, システムを投入コスト, エネルギーの観点から評価を行った.過電圧, 電解質抵抗の値としては現在1000℃で得られている値が低温でも得られるとしてSOFC発電特性値を計算した.熱力学データをもとに計算した発電効率は, 低温作動になるほど高い値となった.低温化による安価材料の使用, 装置小型化, 燃料原単位の向上により, コスト, エネルギーペイバックタイム (CPT, EPT) は短縮されることが明らかになった.また, 低S/C作動もCPT, EPTの低減に重要であることがわかった.評価の結果, SOFCシステムの実現のためにはS/C=1.0~1.5で800℃以下の作動条件を目標にすればよいことが明らかになった.
  • 堀 元, 田口 佳成, 田中 真人
    1998 年 24 巻 4 号 p. 603-608
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    ポリマーと古紙繊維との複合体粒子が化学粉砕法により調製された.古紙繊維として, 新聞紙繊維が利用された.また, 廃ポリマーとして懸濁重合により生成されたポリスチレンビーズが採用された.実験では, 繊維のポリマー溶液相への親和性を調節するために, 繊維を予め二, 三種類の処理剤により処理した.調製された複合体粒子の機械的強度は, 繊維の添加によって向上した.また, 処理剤濃度には最適値が存在することが分かった.
  • 庄野 厚, 菊池 泰彦, 久保田 勇, 佐藤 一省
    1998 年 24 巻 4 号 p. 609-614
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Di (2-ethylhexyl) phosphoricacid (D 2 EHPA) /n-heptane系によるNaCl水溶液からのNaの抽出と水の有機相への取り込み挙動について実験的に検討した.水の取り込み挙動はpHにより3つの領域に分けられた.pHが1~4の範囲 (領域1) では, pH上昇に従いNaの抽出率は上昇するが含水率は低くpH依存性は示さない.pHが6以上の範囲 (領域3) ではD 2 EHPAはSodium di (2-ethylhexyl) phosphate (SD 2 EHP) として逆ミセルを形成しており, 含水率は高くpH依存性を示さない.pHが4~6の範囲 (領域2) では, pH上昇とともにNaの抽出率, 含水率がともに上昇する.この領域はD 2 EHPA-Na錯体から逆ミセルを形成する遷移域と考えられる.また, 領域1, 2における有機相への水の取り込み挙動についてNaの抽出平衡にもとづいた解析を試み, Naのローディング比が低い場合には, 水分子がD 2 EHPA-Na錯体に配位するモデルでNaの抽出及び水の取り込み挙動を説明することができた.
  • 濱口 孝司, 三浦 秀都, 米谷 昭彦, 橋本 芳宏, 戸苅 吉孝
    1998 年 24 巻 4 号 p. 615-619
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    本論文ではオンラインリアルタイムに異常源を診断できる容易なアルゴリズムを提案する.この方法は, 一方向的な変化だけでなく, 正常に復帰する変化や振動的な変化に対しても異常源診断が可能という点で単層の符号付き有向グラフより優れ, 異常進行に伴い階層数が急増する多層アルゴリズムに比べて, 必要とする記憶容量がきわめて少ないという特徴をもつ.また, CE行列の利用により, 異常経路をブール代数で算出でき, 経路をいちいち探索する必要がない.
  • 丹羽 忠夫, 片岡 美穂, 西谷 紘一
    1998 年 24 巻 4 号 p. 620-627
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    各操作タスクを実行するステーションへ原料物質の入った容器 (槽) を移動させて, 製品製造の各工程を順次実行するパイプレスバッチプラントは, 設備の規模とともにプラントの運用方法によって生産性が大きく影響を受ける.それゆえプラントの設計にあたっては, 各設備の静的な特性とともに運用方法をも考慮にいれて設計する必要がある.本論文では, まずこのように設計要因が複雑に絡んだパイプレスバッチプラントの設計問題の特徴について考察した.つづいて設計案の提案とシミュレーションを使ったシステム解析による設計評価をくりかえす実用的なプラント設計手法を提案し, 具体的にモデリング部, シミュレーション部, 評価部から構成された設計支援システムを開発した.このシステムではいろいろな代替案のパフォーマンスをすべて簡単にシミュレーションで確かめることができる.最後にこの支援システムの有用性を例を使って示した.
  • 微粒子粒度分布・静電気・湿度の影響
    種田 大介, 正垣 太一郎, 加藤 邦夫
    1998 年 24 巻 4 号 p. 628-632
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    粉粒流動層の微粒子平均滞留時間と操作条件との関係を調べた.媒体粒子として砂 (dp=550μm), 微粒子として水酸化アルミニウム (dp=1.4~15μm), アルミナ (dp=3μm) を用いた.媒体粒子を流動化させているところへ微粒子を連続供給し, 定常状態下で実験を行った結果, 微粒子平均滞留時間は, 流動化ガス速度が遅くなるほど, あるいは微粒子径が小さくなるほど大きくなった.また, 微粒子平均滞留時間に及ぼす流動化ガス湿度の影響を調べた結果, 流動化ガス相対湿度が75%と高い時には, 微粒子 (水酸化アルミニウム, dp=3μm) 平均滞留時間は, 流動化ガス平均滞留時間の約3,000倍に達した.そして, 用いる粒子の静電気帯電特性やぬれ特性により, ガス湿度の影響は大きく異なることが分かった.一方, 微粒子中の各粒子径毎の平均滞留時間を調べた結果, 微粒子粒度分布が広い場合には, 粒子径毎の平均滞留時間に大きな差を生じることが分かった.均一な微粒子平均滞留時間を要求される場合には, 供給微粒子の粒度分布の調整が必要となる.
  • 田口 佳成, 田中 真人
    1998 年 24 巻 4 号 p. 633-637
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    懸濁安定剤としてリン酸三カルシウム粉末 (TCP) を使用して, スチレンの懸濁重合を実施した.そして, TCPに2, 3の界面活性剤を吸着させることにより連続水相中における帯電特性を変化させ, ポリマー粒子径に及ぼす影響を検討した.
    ζ電位0mV付近において, TCPは凝集したが, ポリマー上滴表面への付着量は増加した.結果として, 粒径が小さく, 均一性の高いポリマー上粒子が生成された.
  • 碇 醇, 幡手 泰雄, 愛甲 涼子
    1998 年 24 巻 4 号 p. 638-641
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂をステンレス金網で包むことにより, 枕形充填物を作成した.60個の充填物を充填した, 回分蒸留用の実験装置を組み立てた.
    微量の酢酸エチルを含むエタノール水溶液を缶に仕込み, 蒸留した.塔頂蒸気の凝縮液を全部塔に戻すと, 留出液の酢酸エチルの濃度は急速に低下し, 缶の酢酸濃度は緩やかに上昇した.
    これとは逆に, 微量の酢酸を含むエタノール水溶液を蒸留すると, 塔で酢酸エチルが生成し, 留出液中のその濃度は徐々に増大した.
    これらの実験結果から, エタノール水溶液中の微量の酢酸エチルの除去に対する, 触媒蒸留の適用について考察した.
  • 野村 俊之, 向阪 保雄, 田中 健
    1998 年 24 巻 4 号 p. 642-645
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    前報 (向阪, 野村 : 化学工学論文集, 23,666-672 (1997)) において, 均一核生成によって生成される粒子個数濃度n*は臨界モノマー濃度C*において (モノマーの生成速度G*) = (核への拡散によるモノマーの消費速度) の関係を満足するように生成されると考えた均一核生成の工学的モデルを提案し, 粒子分散系でよく用いられるセルモデルを用いた核まわりへの非定常拡散の解を用いて解析を行い, 次の関係が導出されている : G* =4πr*DC*n*.ここで, Dはモノマーの拡散係数, r*は臨界核半径である.その中に含まれる因子の一つであるモノマーの拡散係数に着目して, モデルの妥当性を検討した.すなわち, 溶液に増粘剤を添加することによりその粘度を変えてモノマーの拡散係数を変化させて, 液相還元法による銀微粒子の生成実験を行った.その結果, モノマーの拡散係数と生成粒子個数濃度は反比例し, それに伴い生成粒子の粒子径も変化することが実験的に明らかになり, 定量的に筆者らのモデルの妥当性を確かめることができた.
  • 野田 多美夫, 鈴木 基之
    1998 年 24 巻 4 号 p. 646-652
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    アミノ基とアルデヒド基との化学反応性に着目してアセトアルデヒド用の吸着剤を開発する研究を行った.硫酸アルミニウム・ヒドラジン複塩を, シリカゲルや活性白土に添着することにより, ヒドラジンの活性と大気中での化学的な安定性を両立させ得ることを見出し, アセトアルデヒド用吸着剤の製造方法を開発した.本方法で製造した吸着剤へのアセトアルデヒド吸着の機構は, ヒドラジンとアセトアルデヒドとの化学反応によるアセトアルダジンの生成によるものと推定し, 水溶液で反応させて得た物質を熱分解-GC/MS法により解析して, その生成を検証した.また, 吸着が化学吸着が主体であるため, 0.1ppm以下の低濃度での吸着容量は1.36mol/kgにもなる.本方法で製造した吸着剤を半年間大気中に放置した後も, 添着したヒドラジンの残留量は製造直後とほとんど変化せず, 吸着性能を維持している.
  • 出井 一夫, 山本 靖夫, 竹原 貞夫
    1998 年 24 巻 4 号 p. 653-659
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    本論文では, 水素化脱硫反応における反応の初期, 中期, 後期の各触媒活性劣化を, コーキングおよびメタル (Ni, V) の付着に起因する活性点と有効拡散係数の減少による挙動として理論的に説明した.前報では, 活性劣化は各種活性種の1次減少速度の総和であると仮定して, 水素化脱硫反応における触媒劣化を連立1次式としてモデル化した.本研究ではさらに, アラビアンヘビー常圧残油による長期活性劣化試験にもとづき, 触媒の細孔内拡散に起因する活性劣化についてモデル化し, 連立1次劣化モデルに拡散モデルを付加することによって活性劣化過程の全挙動を説明する総括劣化速度式へ発展させた.本報ではこの総括劣化モデルのコンセプトとモデルを構成する劣化パラメータの特定方法を述べるとともに, 軽・重質油水素化脱硫反応における触媒の様々な活性劣化挙動を解析した結果をまとめた.解析結果は長期試験にもとづく活性劣化の全挙動に一致した.さらに, 解析により得られた劣化パラメータと触媒物性の関連性を議論し, 本モデルの応用性についても言及した.
  • 木俣 光正, 柏谷 仁, 長谷川 政裕
    1998 年 24 巻 4 号 p. 660-664
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    チタニアコーティング複合粒子を窒化処理することにより単分散導電性微粒子を調製した.複合微粒子は, テトラエトキシシランの加水分解により合成した球形単分散シリカ微粒子をシードとし, これにチタンイソプロポキシドの加水分解によりチタニアをコーティングしたものである.窒化処理実験は, 一定流量のアンモニアガス中, 処理温度を種々変化させて電気管状炉で行った.粉末X線回折の結果, 窒化チタンは処理温度973K以上で生成されることがわかった.また走査型電子顕微鏡により, 窒化後の複合粒子はシード粒子の球形単分散の形状を維持していることを確認した.窒化処理後の粒子の電気伝導率は, 実用上十分な値を示すことがわかった.
  • 外輪 健一郎, 内藤 清嗣, 加納 学, 長谷部 伸治, 橋本 伊織
    1998 年 24 巻 4 号 p. 665-669
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    特性曲線法は一階偏微分方程式のシミュレーションに適した数値解法である.本研究は, 特性曲線法を拡張し, 結晶成長速度が粒径依存性をもつ場合でも使用可能な, 晶析プロセスシミュレーションアルゴリズムを開発した.偏微分方程式の数値計算によく用いられる有限差分法と開発した特性曲線法を使って, 晶析プロセスモデルのシミュレーションを行い, 計算結果を比較した.有限差分法では, 解が強いメッシュ依存性を示したのに対し, 特性曲線法では, メッシュ数を変えても同一の解が得られた.また, これら2つの計算法を使って得られる解の間には明らかな違いが見られたため, 有限差分法による数値解は数値拡散による大きな誤差を含むことが明らかとなった.
  • 森下 佳代子, 宝田 恭之
    1998 年 24 巻 4 号 p. 670-674
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    カーボンナノチューブを高収率で回収することを目的として, オルト過ヨウ素酸-過塩素酸混合溶液による湿式酸化反応を用いた精製法を検討した.カーボンナノチューブ含有炭素質の湿式酸化挙動を走査型電子顕微鏡 (SEM) により観察した.また, 精製効果に対するオルト過ヨウ素酸濃度の影響について検討した.湿式酸化反応性は炭素の質によって異なり, ナノチューブの反応性は塊状炭素に比べて極めて低く, ナノチューブを選択的に回収できた.湿式酸化により, ナノチューブ自体も酸化されるものの, チューブ表層が乱層化する程度で, 大きなダメージはなかった.また, オルト過ヨウ素酸添加量の増加に伴って, ナノチューブの精製効果は高くなることがわかった.湿式酸化はナノチューブ精製法として有効な手段であることが示唆された.
  • 福島 美貴子, 加藤 尚武
    1998 年 24 巻 4 号 p. 675-677
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    通常, 固相での分離に限られるゾーンメルティングプロセスにつき, 試料管もヒータも移動させない, かつ液相を冷凍する操作法を用い, 液体の高度分離の可能性が検討された.
    廃液の減容化を想定したコバルト水溶液の濃縮実験を行い, ゾーンメルティング操作回数1の時, 初期コバルト濃度を約40%低減できた。従って, ヒータ数, 操作回数を増せばさらに不純物を低減できる.
  • 碇 醇, 幡手 泰雄, 愛甲 涼子
    1998 年 24 巻 4 号 p. 678-681
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    オスマー型の装置を使用して, 微量のアセトアルデヒド, イソブチルアルデヒド, 酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを含むエタノール水溶液の気液平衡を, 12.7, 25.3および101.3kPaの定圧で測定した.
    各圧力における微量成分 (イソブチルアルデヒド, 酢酸エチルおよび酢酸イソアミル) の平衡比曲線を, エタノール濃度の関数として示した.
    しかし, 微量成分 (アセトアルデヒド) の平衡比曲線は, データがばらつき, 得られなかった.
  • 鵜飼 健司, 中山 淳一, 豊倉 賢
    1998 年 24 巻 4 号 p. 682-685
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    塩化カルシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液との反応において, 反応初期に生成する非晶質炭酸カルシウム懸濁溶液中に塩化ナトリウム結晶を添加し, その添加時間を変えることにより生成するカルサイトの粒径分布に及ぼす影響を検討した.また, 操作温度が293Kから328Kの範囲において塩化ナトリウム結晶を添加することにより菱面体カルサイトが選択的に生成する事を明らかにした.
  • 花熊 克友, 山本 順三, 中西 英二
    1998 年 24 巻 4 号 p. 686-688
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    プロセス制御では, 雑音が重畳した信号のリアルタイム平滑化処理に移動平均法や指数平滑フィルタが使用される.しかし, 応答遅れが大きいプロセスの信号に適用した場合, 大きな位相時間遅れが生じ, 制御を難しくする.本論文では, 移動平均法を改良した, 位相時間遅れの少ない簡易設計法を提案する.本法を実プロセスの組成データに適用した結果, 有効であることがわかった.
  • 山本 順三, 佐々木 隆志, 花熊 克友, 中西 英二
    1998 年 24 巻 4 号 p. 689-691
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    燃料油の重要な品質であるアンチノッキング性を示すリサーチオクタン価を推定するために, ニューラルネットワークによるモデル化の検討を行った.ここでは, 燃料油の各組成毎のリサーチオクタン価から推定する経験的方法, 統計的解析的な方法, 及びニューラルネットワークモデルによる方法について適用と考察を実施した.その結果ニューラルネットワークモデルを用いてリサーチオクタン価を精度良く推定できることがわかった.
  • 紀ノ岡 正博, 宮岡 正夫, 田谷 正仁, 東稔 節治, 小野 莞爾
    1998 年 24 巻 4 号 p. 692-695
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    フタバネゼニゴケ細胞の回分培養を, グルコース濃度20, 40kg/m3, 培地浸透圧520,830kPa, 平均入射光強度0, 13, 28W/m2の初期条件下, 25℃にて行った.培養中における細胞濃度の増加に伴って, 培地中のグルコース濃度, 浸透圧, 平均光強度の値は減少するため, いずれも細胞増殖を制限する因子となった.これら3つの増殖制限因子の効果を考慮した増殖速度式を提出し, 回分培養の結果に適用した.実験により求めたパラメータ値を用いた計算結果は, 各培養における実測値と良好に一致した.
  • 福井 啓介
    1998 年 24 巻 4 号 p. 696-698
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    管径比2の急拡大円管内流の周期的非定常流に関し, 流れの可視化実験を行った.3次元流れ場となる乱流への遷移条件として, 平均Re数, 振幅Re数と周波数fとの関係を明らかにした.また, その流れ構造の時間的変化について考察した.
  • 張 貴林, 半澤 保, 酒井 昇
    1998 年 24 巻 4 号 p. 699-703
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    多孔質材料の有効熱拡散率について, 見かけ熱物性値を使用して定義式により求め, その結果の検証のためにフラッシュ法による数値解析を行い, 比較検討した.さらに, フラッシュ法での数値解析で得られた種々の操作条件での多孔質試料内の温度分布の経時変化により, 空隙率, 2相間熱伝導度比率の有効熱拡散率への影響も検討した.
    また, 有効熱拡散率へのフラッシュ法の適用範囲を判断する基準について, 試料サイズと分散相サイズとの比のみでなく, 2相間熱伝導度比率や空隙率などの因子も影響を与えることを示した.
  • 山崎 浩, 篠崎 勝彦, 平田 雄志
    1998 年 24 巻 4 号 p. 704-707
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    10kg/m3CCNa溶液を用いてアイスライニングによる凍結濃縮における氷晶層中への溶質の取り込みについて撹拌回転数Nとブライン温度と溶液の氷点との温度差ΔTをもとに検討した.溶質のみかけの分配係数Kへの影響はΔTよりNの方が大きい.ΔT=2.8~7.9℃, 撹拌回転数N=20~400min-1の条件下における氷晶層の成長速度は10-7~10-6m/sである.氷晶層への溶質の分配係数Kは氷晶層の成長速度より, むしろ, その氷晶層の表面状態の影響を受ける.氷晶層の表面状態は凍結界面の溶液側の撹拌によって影響を受け, 弱い撹拌条件下では複雑な形状の氷晶層が生成し, その比表面積は大きくなる.そのため氷晶表面に付着する溶質量が多く, 結果的に氷晶層に取り込まれる溶質量も多くなるものと考えられる.
  • 佐治 明, 谷井 忠明
    1998 年 24 巻 4 号 p. 708-710
    発行日: 1998/07/10
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    シミュレーション解析は実証試験による確認が必要となるが, CO2深海貯留はその特殊性から実証が難しい.そのため, いくつかの仮定値を用いて解析した「CO2の深海挙動シミュレーション」を報告したが, 運動方程式と質量保存方程式の誤記されている点やCO2溶解度, クラスレート水和物の密度, クラスレート水和物および液体CO2の粒径, クラスレート水和物と液体CO2の溶解速度, 渦拡散係数の仮定値の引用等について, 指摘に従い補遺する.
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