化学工学論文集
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 関山 和英, 名嘉山 祥也, 梶原 稔尚
    原稿種別: 報文
    2024 年 50 巻 2 号 p. 35-41
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル 認証あり

    樹脂成形などの分野で広く用いられる二軸押出機や連続混練機に関し,混練性能や生産能力の向上のためには混練機内の流動状態を詳細に把握することが重要となる.流動状態の把握には数値解析技術が有効であり,近年は粒子法といったメッシュフリー法の発展にともない,混練機内の部分充満流動について数値解析による検討が進められている.著者らは,メッシュフリー法の一種であるElement-Free Galerkin Methodを利用した部分充満解析とマーカー粒子追跡を行い,異方向回転連続混練機のロータ形状と操作条件に対する充満率,平均滞留時間および滞留時間分布の関係について検討した.充満率については,同方向回転二軸押出機と同様に,流量と回転速度の比Q/nと線形関係にあることが確認された.平均滞留時間で正規化された滞留時間分布は,Q/nの大小によって滞留時間の長短に差異が生じ,特にQ/n>1.5では滞留時間分布が単峰から次第に双峰的になり,滞留時間分布が大きく変化することがわかった.さらにマーカー粒子の滞留時間の平均値と充満率から算出される平均滞留時間についての比較を行い,実験において平均滞留時間から推定される充満率は,充満率の軸方向分布が一様である場合は良い推定値となるが,軸方向充満率が不均一な場合について過大評価となることがわかった.

  • 吉鶴 祐耶, 金井 由悟, 鈴川 一己
    原稿種別: 報文
    2024 年 50 巻 2 号 p. 42-48
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル 認証あり

    水平配置円筒型気泡槽において,槽底部に設置した散気管から放出される気泡流により,装置特有の自励振動現象が起こることが実験的に明らかにされている.本研究では,まずCFDによる自励振動現象の再現に必要な二相流モデルおよび解析条件を調査した.この結果,解析領域の格子解像度を実測平均気泡径の2倍以下にとれば,特別な気泡群の抵抗係数を適用することなく,単一気泡の抵抗係数のみで自励振動の再現が可能であることが判明した.装置および流動条件が振動数に与える影響因子として槽径およびガス流量に注目して評価を行ったところ,ほぼ実験に対応する結果を再現できた.さらに槽径を変化させて自励振動数を評価したところ既往の実験相関式の結果との差異±3%以内で予測でき,CFDにおいても自励振動数は槽径Dにのみ依存する結果を得た.次にこのモデルを用い槽内の邪魔板設置が自励振動現象に与える影響を調査したところ,散気管上部に邪魔板を挿入することにより気泡流の振動を変化させ,一次モード発生を抑制できることが判明した.この結果,自励振動現象の発生機構は次の2段階,1)気泡流側面の速度勾配の強い領域に発生する渦層が循環流により曲がり引き伸ばされ,気泡流が逆方向に移動するときに渦層が分裂し渦が放出される,という過程を繰り返す気泡流の発振現象.2)散気管中心から液面までの気泡流の長さが槽半径に一致するとき,気泡流の振動と液面波動が同期することにより単一の一次モードを発生する同期振動現象,から成ることを明らかにした.

分離工学
  • 久保 優, 松谷 史也, 島田 学
    原稿種別: 報文
    2024 年 50 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/20
    ジャーナル 認証あり

    噴霧乾燥を用いて調製したゼオライト凝集体のPb2+平衡吸着挙動とPb2+吸着速度を評価した.合成Na-FAUゼオライト(Si/Al比3.2, 一次粒子径0.34 µm)の噴霧乾燥により,結晶構造およびマイクロ細孔構造を変えることなく中空構造を有する球状凝集体を形成した.噴霧乾燥ゼオライトの幾何平均粒子径およびタップ密度は,加熱温度やゼオライト濃度によって変化し,その範囲はそれぞれ0.93–1.64 µm, 0.28–0.32 g/cm3となった.噴霧乾燥ゼオライトは385 mg-Pb2+/gの飽和Pb2+吸着量を示し,これは80°Cの恒温槽で乾燥した乾燥粉体(Pow-Y)と一致し,Si/Al比から計算されるイオン交換容量とも一致した.噴霧乾燥ゼオライトのPb2+吸着速度はPow-Yよりもはるかに速く,10 s程度でPb2+吸着平衡に達した.Pb2+吸着速度の経時変化を境膜–細孔–表面拡散モデルにより解析した.境膜と粒子内部の物質移動の比を表すBiot数が200よりも大きくなったことから,噴霧乾燥ゼオライトのPb2+吸着は境膜での物質移動が速く起こり,吸着剤内部での物質移動が律速段階であることが明らかとなった.さらに境膜–細孔–表面拡散モデルを用いて計算された噴霧乾燥ゼオライトが鉛を排水基準(0.01 mg-Pb2+/L)以下まで吸着除去するための時間は,Pow-Yと比べて1000倍以上短いことが推算された.

材料工学,界面現象
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