化学工学論文集
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48 巻, 2 号
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編集ノート
物性,物理化学
  • 加納 寛起, 山根 岳志, 吉田 正道, 柴柳 敏哉
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    2種の輸送物性,拡散係数およびSoret係数が未知である水溶液に対して,レーザホログラフィ実時間干渉法を適用し,それぞれを同一の光学系上で計測するシステムを提案する.まず,本計測法の妥当性と信頼性を検討した.拡散係数はNaCl水溶液,KCl水溶液を対象に,拡散方程式の厳密解が正規分布にしたがうことから干渉縞群厚さの時間変化を利用して算出し,文献値と良好に一致した.Soret係数はNaCl水溶液を対象に,ある時刻の干渉縞位置,熱拡散項を含んだ拡散方程式の厳密解,上記で求めた拡散係数から算出し,既往研究の計測値と良好に一致した.妥当性確認後,文献値に乏しいNa2CO3水溶液10 wt%においても両者の計測を行った.また,本計測に対する誤差要因を明らかにし,拡散係数およびSoret係数の不確かさ幅を推定した.本法は等屈折率線と一致する干渉縞の解析に溶液の屈折率と温度・濃度の関係を利用することで,既存手法に比べて拡散係数およびSoret係数算出の単純化が図られた.

分離工学
  • 三谷 拓也, 荒木 悠佑, 鈴木 基史, 菊地 葵, 多島 秀男
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 2 号 p. 35-41
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    福島原子力発電事故により約1300万m3のセシウム吸着土壌が発生し減容化が求められている.この汚染土壌を再生利用可能な土壌とするためには,土壌から70%程度のCsを除去する必要がある.Cs分離方法として固液抽出が挙げられるが,抽出後のCs含有廃水の処理が必要である.汚染土壌中のCsは,主にバーミキュライト(VRM)のような層状鉱物によって吸着され,塩水溶液による固液抽出のみではCs除去70%に達しない.そのため,土壌を処理するための改善方法が必要である.本研究では,塩水溶液による固液抽出の他に分級と磁気分離,液液抽出を組み合わせた洗浄方法を提案する.模擬土壌を用いてこの方法の有効性と本洗浄法のCs除去性能の評価を目的とした.抽剤として様々な濃度の塩水溶液を用いた結果,K+イオンを含む水溶液が最適であった.KCl水溶液を用いて鉱物ごとのCs脱離率の経時変化を測定し,3サイト脱離モデルを用いてフィッティングした.Cs不可逆吸着サイト(FES)を多く含む鉱物ほど脱離率と脱離速度が低かった.模擬土壌に対して単位操作を順に行ったところ,模擬土壌から総括で70%程度のCsを除去することができ,磁気分離と固液抽出の組み合わせが汚染土壌の洗浄に有効であることが示された.吸着時間の増加にともなって鉱物表面のCsがFESや多孔質構造の奥側に移動するため,FESが存在する鉱物では吸着時間の増加によりCs脱離率が低下した.低Cs吸着量の汚染土壌では除去性能が低下する可能性があるが,固液抽出条件をさらに探査することで,高脱離率で本洗浄法を応用できるだろう.

  • 鈴木 翔, 都留 稔了
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 2 号 p. 42-48
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    パーフルオロスルホン酸膜は高い水蒸気透過性を持つことから,膜式ドライヤーで使用されているが,水蒸気透過率は操作温度,湿度に強く依存している.広範囲(10–40°C, 0–90% RH)における,単膜での擬平衡状態におけるパーフルオロスルホン酸膜の水蒸気透過率を定式化し,市販パーフルオロスルホン酸膜式ドライヤーの除湿シミュレーションに応用した.シミュレーション対象は,広範囲の操作温度,湿度条件だけでなく,実用性を考慮し外部およびセルフスイープ方式とした.単糸のシングルモジュールおよび,複数本のマルチモジュールにおいて,実験値と計算値での各出口相対湿度の比較検証では良好な一致を示した.

  • 大平 勇一, 中野 和哉, Khairunnisa Binti Mohd Pa’ad, 島津 昌光, 平野 博人
    原稿種別: ノート
    2022 年 48 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    浮力計量法による粒径分布測定におよぼす秤量棒形状と容器形状の影響を実験的に調べた.中空ガラスビーズを浮上性粒子として使用した.秤量棒として円柱棒,角型棒,板を,容器として角型容器またはメスシリンダーを組み合わせて粒径分布を測定した.メスシリンダーを容器として使用した場合,角型棒や板を使用しても粒径分布の測定が可能であった.角型容器と円柱棒を組み合わせた場合も粒径分布を測定できた.秤量棒の位置は粒径分布に影響を与えない.

反応工学
  • 神谷 憲児, 小林 信介, 張 百強, 板谷 義紀
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 2 号 p. 54-61
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    触媒として212–500 µmのアルミナおよびゼオライトを充填させた噴流層型DBDプラズマリアクターを用いてメタンのドライリフォーミングを行なった.実験では,周波数や印加電圧,電極位置等のプラズマ条件に加えて,触媒の有無および触媒粒子の流動状態が反応ガスの転化率および生成ガスの選択率に与える影響について評価を行なった.DBDプラズマによりメタンのドライリフォーミングが可能であったが,プラズマ条件により転化率は大きく異なっていた.印加電圧7 kVから13 kVに増加させることで二酸化炭素転化率は8.6倍に増加した.また印加電圧だけでなく周波数を大きくすることで転化率は増大し,層内への電極挿入によっても転化率を向上させることが可能であった.ガス流量は転化率に大きな影響を与え,ガス流量の増大とともに転化率は半比例的に減少することがわかった.触媒層の流動状態によっても転化率は異なり,触媒を流動させない固定層条件において最も高い転化率が得られた.ただし,固定層では消費電力の急激な増大にともない電極温度の急速な昇温と炭素析出が見られ,安定したガス改質が困難であった.一方,粒子流動をともなう噴流層ではプラズマ失活にともなう転化率の低下が確認されたものの,触媒粒子の流動制御により転化率の向上と炭素析出を抑制した安定運転が可能であることがわかった.

材料工学,界面現象
  • 渡邉 裕之, 平沢 泉
    原稿種別: 報文
    2022 年 48 巻 2 号 p. 62-69
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル 認証あり

    リン酸水素二ナトリウム12水塩は室内の空調や床暖房への適用が期待される潜熱蓄熱材であるが,7水塩は12水塩の融点より高い温度で安定に存在し得るので,長期にわたる蓄熱・放熱の繰返しにおいて12水塩の融液中に晶析して蓄積し,潜熱量の減少を引き起こす.このような相分離を回避するため,相図上の7水塩の液相線を考慮して過剰量の水が一般に添加される.しかし,水の過剰量添加は潜熱量の減少を招く欠点がある.また,蓄熱・放熱時の7水塩の過渡的な相変換挙動を平衡系の相図から予測することはきわめて困難である.本研究は相変換挙動と相図との対応を明らかにするため,リン酸水素二ナトリウム濃度範囲24.7–52.9 wt%の水溶液に対して,温度範囲243–353 Kの熱サイクル試験を実施し,得られた冷却加熱曲線により相変換挙動を観測した.比定した結晶相は12水塩と水との共晶,12水塩および7水塩で,これらの融点は相図と一致した.しかし12水塩および7水塩の液相線の位置は相図とは異なり,それより高濃度側にあることが指摘された.

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