化学工学論文集
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32 巻, 5 号
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編集ノート
移動現象,流体工学
  • 近藤 伸一, 高橋 幸司, 石田 賢司, 木下 耕次
    2006 年32 巻5 号 p. 387-394
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
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    固液混合はスラリーの調製,重合反応,晶析などのプロセス工業で頻繁に見受けられる操作である.そのため,粒子浮遊限界撹拌速度,固体粒子濃度分布,固液物質移動などに関して従来より多くの研究が行われている.しかしながらそれらの多くは単一翼に関するものであり,化学工業においてしばしば用いられる多段翼を対象とした研究は数少ない.本研究では二段翼の固液系撹拌に着目し,槽全域で物質移動促進ができるような固体粒子の浮遊および分散条件を満足する撹拌翼の組み合わせならびに設定位置について検討した.その結果,最適な二段翼の組み合わせは下段に傾斜パドル(押し下げ),上段に傾斜パドル(押し上げ)が最適で,翼間隔は槽径と同等が最適であることがわかった.
分離工学
  • 柚木 徹, 松本 幹治, 中村 一穂
    2006 年32 巻5 号 p. 395-401
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    不織布繊維フィルターを構成している繊維がお互いに重なることなく,ランダムに,かつ平行に配列していると仮定してフィルター断面の二次元シミュレーションを行い,近接する繊維が形成する空隙の内接円直径(D)および繊維間距離(L)の分布(すなわち細孔径分布)を求めた.シミュレーションで得られた細孔径分布とディファレンシャルフロー法(DFM)により求めた細孔径(Df)の分布およびステンレススチール繊維フィルター断面の顕微鏡観察により求めた繊維間距離(LM)の分布を比較し,以下の結果が得られた,(1)シミュレーションで得られたDLの分布はΓ分布で近似できた,(2)DfLMの分布はある範囲で対数正規分布および,Γ分布で近似できた,(3)Dfの50%径とフィルターの空隙率(ε)の関係はDの50%径とεの関係とほぼ一致した,(4)DFMで求めた平均流細孔径とεの関係はΓ分布におけるDの平均値とεの関係とほぼ一致した,(5)いずれのεにおいてもバブルポイント法で求めたDfの最大値はDおよびLの最大値とほぼ一致した,および(6)LMの50%径とεの関係はLの50%径とεの関係とほぼ一致した.
  • 松隈 洋介, 高谷 真介, 井上 元, 峯元 雅樹, 上島 直幸
    2006 年32 巻5 号 p. 402-408
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    光化学スモッグや悪臭公害の主要な原因の一つになっている,低濃度溶剤をハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いた,TSA方式で除去・濃縮するシステムについて最適化のためのシミュレーション計算を行った.本研究では,各パラメータが溶剤回収率,所要加熱量および濃縮倍率に及ぼす影響を検討することにより,最適条件の選定を行った.
    この結果,53000 m3 (STP)·h−1の排ガスを処理する装置の最適形状は,層高0.8 m,吸着,加熱再生およびパージ部の分割比が300°/30°/30°で,最適操作条件は,再生ガス流量15000 m3 (STP)·h−1,再生ガス温度453 K,回転数14 rphであることがわかった.また,処理ガス流量が変化しても,比較的簡単な制御により,所定の性能を維持できることがわかった.
    このような計算により,排ガス条件と目標性能に即した装置の最適設計を行うことが可能であることがわかった.
  • 関 秀司, 于 克鋒, 丸山 英男, 鈴木 翼
    2006 年32 巻5 号 p. 409-413
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
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    水苔由来の腐植物質であるピートモスの重金属吸着剤への利用を目的としてカドミウムと鉛に対する吸着特性について検討した.金属結合サイトである酸性基(カルボキシル基とフェノール性水酸基)の数と解離定数を電位差滴定によって決定した後に,カドミウムおよび鉛吸着実験の結果を酸性基への水素イオンと金属イオンの結合反応に基づく吸着モデルを用いて解析し,ピートモスへの2価金属イオンの吸着がBidentate型であることを明らかにした.ピートモスには約1.5 mmol·g−1の酸性基が存在し,2価金属イオンに対する吸着容量は約0.75 mmol·g−1であった.また,カドミウムおよび鉛イオンの吸着速度過程が擬二次速度式に従うことを示した.
熱工学
  • 中曽 浩一, 野上 精一, 手島 博文, 稲富 康利, 北村 邦彦, 深井 潤
    2006 年32 巻5 号 p. 414-419
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    潜熱蓄熱槽内の伝熱面積を拡張するため,布状に加工した炭素繊維(炭素繊維クロス)を槽内部の多管式熱交換器に設置した.これをビル空調用システムに組み込み,蓄熱・放熱性能を既報の炭素繊維ブラシと比較した.クロスおよびブラシの体積分率は,それぞれ0.27 vol.%および1.3 vol.%である.蓄熱操作において,クロスの体積分率はブラシの約1/5であるにもかかわらず,ブラシよりも平均10%程度高い蓄熱速度を示した.また,放熱操作において,ブラシはクロスとほぼ同等の性能を示した.放熱性能について,クロスの充てん量と伝熱促進効果の関係を総括フィン効率により検討した結果,平均放熱負荷35–45 kW,充てん量0.27 vol.%の本実験条件で,総括フィン効率はクロスを設置しない場合の2倍程度向上することがわかった.また,総括フィン効率が0.9となるクロスの充てん量は約1 vol.%であることがわかった.
  • ―噴霧流初期条件および噴霧流解析モデルに関する研究―
    渡部 弘達, 両角 仁夫, 青木 秀之, 丹野 庄二, 三浦 隆利
    2006 年32 巻5 号 p. 420-428
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    灯油を用いた噴霧燃焼の数値解析を対象とし,粒径分布を得るための噴霧実験において灯油の代替流体として水が適当であるかどうかについて検討を行うとともに,噴霧滴の粒径分布が解析結果に与える影響について検討を行った.さらに,パーセル数が解析結果に与える影響についても検討を行った.灯油と近い物性値をもつ20 wt%エタノール水溶液を灯油の代替流体として使用した.水の噴霧滴径はエタノール水溶液の噴霧滴径よりも数ミクロン程度大きかったが,この差異が燃焼状況に及ぼす影響はほとんど見られなかった.パーセル数を450個とした温度分布はパーセル数を450,000個とした温度分布をおおむね再現することができたが,燃焼器上流部において温度分布に差異が見られた.近年,NOxやすすの排出量のさらなる削減が求められている.したがって,これらの値をより正確に予測する必要があり,そのためには,上流部における温度分布を正確に評価することが重要となる.噴霧燃焼において気流噴射型ノズルを用いた場合,正確な噴霧燃焼解析を行うためには,パーセル数が少なくとも4500個程度必要であることが示された.
エネルギー
  • 中田 裕之, 窪田 光宏, 渡辺 藤雄, 松田 仁樹, Erwin P. Ona, 日高 秀人, 垣内 博行
    2006 年32 巻5 号 p. 429-434
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    Erythritol(融点119°C,潜熱量340 kJ/kg)に各種の多価アルコールを添加することにより,給湯温度域の有機系潜熱蓄熱材の新規開発を目指した.Erythritol–多価アルコールの2成分系混合PCMの融点および潜熱量はDSCを用いて測定した.多価アルコールとしては,Trimethylolethane, Trimethylolpropane, 2-Ethyl-2-methyl-1,3-propanediol, Pinacol, Dithioerythritol, Xylitol, Sorbitolを用いた.本実験によって得られた潜熱量および融点は,それぞれ2成分系混合物の融解に関する理想エンタルピー変化および固液系熱力学平衡から得られる推算値と比較した.
    その結果,Erythritolに多価アルコールを加えた2成分有機系PCMの潜熱量は,おのおの両成分の重量分率に対する潜熱量の和によって2乗平均誤差13%以内の精度で推算可能であった.また融点については,溶液の活量係数も考慮した理想溶解度の式によって7%以内の誤差で推算可能であることが明らかになった.
環境
  • 宮入 嘉夫, 杉山 茂広
    2006 年32 巻5 号 p. 435-441
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    グリコールエーテル系水溶液の特異な相転特性と油脂溶解特性を利用して,洗浄液の非蒸留再生と無排水化を特徴とする洗浄プロセスを開発した.これについては,すでに報告済みである.本研究では,グリコールエーテル水の三つの温度条件下における,それぞれの相転特性と油脂溶解特性の違いを活用するとともに,それらの条件を順次組み合わせることにより,新しい洗浄プロセスを構築した.この新規なプロセスを採用することにより,洗浄液として油脂溶解力の強い90 wt%グリコールエーテル水での洗浄が可能となり,開発済みの35 wt%グリコールエーテル水を洗浄液とするプロセスの特長を生かした上に,一層強い洗浄力を得る可能性を見出し,各種アイデアを織り込みながら実験的に確認した.その結果,今まで洗浄が不十分であった狭隘部の油脂汚れに対しても,1.1.1-トリクロロエタン洗浄と同等の洗浄効果が得られた.また,この洗浄プロセスでは均一相と2相間の相転操作および油脂分離操作が必要となるが,この操作時間は実用上要求される範囲に収まることも確認した.
  • 金川 幸司, 小林 信介, 小林 潤, 羽多野 重信, 板谷 義紀, 森 滋勝
    2006 年32 巻5 号 p. 442-447
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    ガス化プロセスにおける硫化水素吸着を目的とし,流動層を用いて木質バイオマスを原料とした活性コークス製造を行った.前報では,固定層型製造装置を用いて活性コークスの製造を行っており,固定層型製造装置で製造した活性コークスは,硫化水素の吸着に適していることが明らかとなっている.そのため本研究では,活性コークスの大量生産を狙い連続式流動層型製造装置での活性コークス製造を行った.実験では,流動層型製造装置および固定層型製造装置で製造した活性コークスの硫化水素吸着性能を評価することで活性コークス製造法が吸着性能に与える影響について検討を行った.その結果,流動層型製造装置で製造した活性コークスは,固定層型製造装置で製造した活性コークスと同等の硫化水素吸着性能を有していることが明らかとなった.
  • 平野 祐樹, 高坂 智也, 中島 慎輔, 村山 憲弘, 芝田 隼次, 岡本 裕行, 木下 宗茂
    2006 年32 巻5 号 p. 448-453
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
    ジャーナル 認証あり
    ビール工場から排出されるビール粕を原料として作成したビール粕炭に炭酸ガス賦活法,水蒸気賦活法,水酸化カリウム賦活法を適用し,ビール粕賦活炭を調製した.得られた3種類のビール粕賦活炭を用いてフェノール,メチレンブルー,1,2-ジクロロエタンおよび1,2-ジクロロプロパンの液相吸着特性について検討した.
    フェノールおよびメチレンブルーの吸着では,それぞれの吸着量は炭酸ガス賦活炭<水蒸気賦活炭<水酸化カリウム賦活炭の順に大きくなり,各種賦活炭の比表面積および全細孔容積の大きさの順と一致した.各種賦活炭のフェノールおよびメチレンブルー吸着量を比較すると,分子径の小さいフェノールの方が吸着量は大きくなった.1,2-ジクロロエタンおよび1,2-ジクロロプロパンの吸着でも同様に,それぞれの吸着量は炭酸ガス賦活炭<水蒸気賦活炭<水酸化カリウム賦活炭の順に大きくなった.各賦活炭の1,2-ジクロロエタンおよび1,2-ジクロロプロパン吸着量を比較すると,両化合物の分子サイズは類似しているにも関わらず,1,2-ジクロロプロパンの吸着量が1,2-ジクロロエタンの2倍以上となった.この相違は,両化合物の水に対する溶解度の違いに基づくものと考えられる.溶解度の大きい1,2-ジクロロエタンは溶媒中により安定に存在するため,吸着量が小さくなったと考えられる.
  • 藤田 隆文, 澤崎 円, 松田 仁樹, 小島 義弘, 朝倉 義幸, 小林 和人
    2006 年32 巻5 号 p. 454-460
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
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    模擬土壌としてカオリンに吸着した有機塩素系除草剤(4-chloro-2-methyl phenoxy)acetic acid (MCPA)からの超音波抽出ならびに分解実験を行った.
    MCPA含有模擬土壌スラリーに対して周波数527 kHz,出力 21 Wの超音波を照射した実験では,超音波を照射しない場合に比べて短時間でより高いMCPA抽出率が得られ,超音波の照射によるMCPAの抽出促進効果が認められた.MCPA含有模擬土壌スラリーへの超音波照射実験において,抽出液中のMCPA濃度は超音波の照射開始とともに増加し,極大値をとった後,さらなる超音波照射によって減少した.反応の経過とともに,MCPAおよび中間生成物の超音波分解によって生成する抽出液中のCl濃度は増加した.
    一方,MCPA含有模擬土壌スラリーの超音波分解とMCPA水溶液の超音波分解を比較すると,MCPA含有模擬土壌の分解率の方が低いことが認められた.この超音波照射下におけるカオリンに吸着されたMCPAの低い分解効率はMCPA含有模擬土壌からのMCPA抽出に対する物質移動抵抗,ならびに過剰なカオリン粒子による超音波の減衰によるものと考えられた.
  • 大平 勇一, 佐藤 修一, 中村 正則, 小幡 英二
    2006 年32 巻5 号 p. 461-464
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/10/20
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    マグネサイトの加熱分解に及ぼす硝酸塩分解温度の影響を実験的に検討した.分解温度の異なる硝酸塩を混合して実験を行ったところ,混合する硝酸塩の分解温度がマグネサイトの分解速度に大きく影響を及ぼすことがわかった.マグネサイトの加熱改質にもっとも効果がある硝酸塩添加物は,硝酸マグネシウム6水和物である.
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