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片岡 邦夫
1999 年25 巻4 号 p.
501-509
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
化学反応を伴う流れ場の移動現象について複雑系化学プロセス, システムをいかに設計・制御するか化学工学的観点から論じた.2種の反応器 (CSTRとテイラー渦流反応器TVFR) をとりあげた.混合特性の履歴的多重性を論じた後, 2種の化学反応 (ベローゾフ・ジャボチンスキ (BZ) 反応と乳化重合) をとりあげ, CSTRだけでなくTVFRにおいて生起する化学振動の複雑な分岐特性が例証された.酢酸ビニルの連続乳化重合における自励振動のメカニズムについても論じられた.化学反応を伴う場合も含めて, 移動現象の不安定性とその分岐現象をいかに制御すべきかについて, 流れ場, 反応場の履歴的多重性を考慮しながら再考する必要があること, その目的が複雑な化学プロセス, システムの設計概念に創発的シンセシスの方法論を導入することであると強張された。
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西村 崇, 向山 義治, 中西 周次, 小西 秀充, 中戸 義禮
1999 年25 巻4 号 p.
510-515
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
白金電極上の過酸化水素の還元に伴う電気化学振動には2つの振動 (振動AおよびB) が酸性水溶液中で観測される.振動Aは水素発生の直前の電位で観測され, 振動Bは水素発生の電位領域で観測される.これらの振動は, ともに, 過酸化水素の還元と吸着水素 (upd-H) による過酸化水素の還元の阻害とが交互に起こることにより生じる.振動Aが観測されているときに, 電極電位に正の電位パルスを与えると, この電位パルスが低電流状態にあるときには, この電位パルスに同期して電流振動が誘起される.これは, 正の電位パルスにより電極電位が正方向にシフトし, 吸着水素 (upd-H) が脱着して, 過酸化水素の還元が起こるようになるためと説明される.低電流状態の持続時間と高電流状態のピーク電流との関係を詳しく調べ, この結果が以前に我々が提案した振動の機構を支持することが明かとなった.
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川口 正美, 牧野 恭子, 加藤 忠哉
1999 年25 巻4 号 p.
516-519
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC) 水溶液のヴィスコスフィンガリングを放射状ヘレ・ショウセルを使い, 温度を変えて検討した.絡み合い効果により, 強いシア・シニングを示す高分子量のHPMCを用いた.得られたヴィスコスフィンガリングのパターン形態は, 測定温度に関係なく, 空気の注入圧力と共にサイド分岐, 先端分岐, そして串刺しパターンへと変化した.パターン成長を特徴付けるフィンガーの成長速度およびフィンガーの幅を求めた.フィンガーの成長速度は, 非ニュートン流体に提案されている修正ダルシー則の粘度の代わりに, フィンガーの成長速度から計算されるずり速度における有効粘度を使うと, 良い一致が得られた.フィンガーの幅は先端分岐パターンで最大値となった.
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秋山 鐵夫, 鶴田 靖代, 青木 圭子
1999 年25 巻4 号 p.
520-524
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
非線形特有な現象の一つに双安定状態がある.本論文では粉体振動層自由表面の双安定現象について報告する.容器に粉体を満たし, その中に管を垂直に挿入し振動を加えると管の中の粉体層が上昇又は下降し, 管の内側と外側 (管と容器の間) の表面が異なった位置で定常状態に達する.総粉体量と振動条件を一定に保ち, 管内・外の初期表面位置を変えて一連の実験を行うと, 二つの異なった位置で粉体層表面が安定化する, すなわち双安定性を示すことがある.本実験では4種類のガラスビーズを用い, 2枚の仕切り板で中央部と側壁部に分けた二次元振動層における粉体層表面の双安定性を調べた.その結果, 粒子が小さいほど中央部と側面部の層高差が大きくなり, 双安定が発生する傾向の強いことが判明した.双安定発現のメカニズムについても検討した。
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加藤 尚武, 磯井 龍夫
1999 年25 巻4 号 p.
525-529
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
工業連続晶析操作において, 核化速度は, 懸濁密度すなわちポピュレーション密度についての3次モーメントに依存する式で表されることが通例であるが, 1次, 2次モーメントに依存する場合も含めて, 核化速度の形と晶析操作の定常状態との関連性を検討した.K
2SO
4の冷却晶析を想定して計算したところ核化速度が2次モーメント又は3次モーメントに依存する場合, 定常状態の多重性が存在する可能性のあることがわかった.各定常操作点についてHurwitzの安定判別法を用いて安定性の判別および不安定性の原因の解明について検討した.
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相関次元の空間分布による流動構造に関する考察
矢野 貴利, 菊地 隆司, 堤 敦司, 吉田 邦夫, MIROSLAV PUNCOCHÁR, JIRI DRAHO&Scaro ...
1999 年25 巻4 号 p.
530-534
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
In the present study, nonlinear hydrodynamic behavior of bubbles and particles in a gas-liquid-solid three-phase reactor is characterized by deterministic chaos analysis in terms of correlation dimension. The embedding method is used to determine correlation dimension from the series of the time intervals between successive optical signals triggered by bubbles or particles. The axial and radial distributions of correlation dimensions are examined and the effect of superficial gas velocity on correlation dimensions for gas and solid phases is investigated.
In the bubbly flow regime, with increasing axial position the correlation dimensions for the gas phase increase to reach a maximum and slightly drop at the center of the column. On the other hand, in the churn-turbulent flow regime, the correlation dimension of the gas phase has a minimum at the middle of the column. The correlation dimensions of solid phase are 1-2 lower than those of gas phase, and decrease with axial positions. Uniform radial distributions of both gas and solid phases are observed except near the wall.
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中田 聡, 竹村 香織, 平谷 友子, 生島 希美
1999 年25 巻4 号 p.
535-538
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
一般に化学センサは一次元的情報を指標とするため, 不純物の応答を信号処理することは原理的に不可能であった.そこで, 半導体ガスセンサの非線形ダイナミクスを指標とした, 高次元情報型ガス検出法を開発した.実際には, 周期的温度変化に対するセンサの時間軸応答をフーリエ変換した.ガス種の特徴的な非線形応答 (またはフーリエ変換の高調波成分) の物理化学的意義を明らかにするために, センサ表面の反応機構 (吸着・脱離・燃焼反応) に関する計算機シミュレーションを行った.また, センサ表面の有限面積に伴う応答の飽和現象や複数成分系で生じる競争反応など, 実践的なセンサ応答の非線形特性の評価も行った.
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渡邉 教博
1999 年25 巻4 号 p.
539-542
発行日: 1999/07/10
公開日: 2010/02/19
ジャーナル
フリー
ごみ焼却炉では蒸気流量を一定値の近傍に保つためにリレーフィードバック制御がおこなわれている.この制御システムではカオス的な現象が発生している.本論文では実プラントから得られた蒸気流量の時系列データを解析する.その結果, 相関次元は1.7, そして最大リアプノフ指数は0.05であった.これらのことから, ごみ燃焼制御系における蒸気流量の振動はカオスであることが確認できた.
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松田 充夫, 多田 豊, 平岡 節郎, 水谷 芳郎, 上更谷 幸治
1999 年25 巻4 号 p.
543-548
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
撹拌槽内流動において見られる長周期のゆらぎ現象を明らかにするために, パドル翼撹拌槽のトルク時系列の変動の周波数解析と自己相関関数から, トルク変動の規模と周期性を調べた.その結果, トルク変動には羽根の通過周期及び回転周期とそれらと異なる第3の周期による準周期変動と, 羽根の通過周期の約290倍に達する極めて長周期かつ非周期な変動があることが分かった.この長周期変動はHiguchiの方法によるフラクタル次元解析よりフラクタル性を有していること, またその相関次元は, Grassberger-Procattia法による相関次元解析から, 非整数値で, ほぼ3.9~5.2であることが分かった.これらの結果から, 槽内の長周期変動の現象は, 決定論的な方法により記述できる可能性があることが分かった.
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平沢 泉
1999 年25 巻4 号 p.
549-553
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
ホウ酸ナトリウム10和物の懸濁結晶系において, 成長実験を行い, その過程における表面状態を観察するとともに, 二次核速度に影響する因子 (過冷却度, 空塔速度, 撹拌回転数) について, 定量的な相関式を得た.また, その成長過程で, 時間平均の二次核発生速度が表面の荒れ状態の影響を受けること, および経時的には振動することを示した.このような振動現象を, 拡散と表面集積の2過程に基づいて, 定性的なモデルに基づいて考察した.
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川井 淳司, 宮田 貴章
1999 年25 巻4 号 p.
554-558
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
二成分高分子混合系の一相均一領域において, 片方の高分子鎖を光架橋して相分離を引き起こした。化学反応が進行していくと熱力学的な不安定性によって成長していく濃度ゆらぎの波長分布は, 連続から不連続に変わり, 離散的になっていくことが観測された。光照射を温度ジャンプ法と組み合わせることによって, 濃度ゆらぎのこの離散化過程は, 架橋反応を伴う相分離系の特徴であることを確かめることができた。不均一的に進行する架橋反応により連続な分散曲線は離散化され, その結果として, 系内に生成された様々な波長のゆらぎは分別されると結論できた.
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大村 直人, 片岡 邦夫, 塚本 壮一, 柳瀬 竜也
1999 年25 巻4 号 p.
559-563
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
セリウムを触媒として用いたベローゾフ・ジャボチンスキー反応の濃度振動に及ぼす連続攪拌槽型反応器の容積効果を分岐パラメータとして原料供給の平均滞留時間を変化させることにより調べた.実験では, 攪拌条件を同じにして, 3種類の異なった容積をもつ反応器を用いた.反応器内の濃度振動は, セリウムイオンの酸化還元電位を白金電極を用いて電気化学的方法により測定した.その結果, 原料供給のポンプの脈動による外部強制振動と反応器内の濃度振動との非線形カップリング効果によって, カオス的な濃度振動状態が平均滞留時間の短い領域で生じ, この効果は反応器の内容積が小さいほど大きいことがわかった.また, 濃度振動が単一ピーク振動状態からカオス的振動状態に変化する分岐点付近の平均滞留時間で, 間欠的な濃度振動状態が観察された.さらに, 反応器の内容積が, 大きいほど平均滞留時間の広い領域にわたって安定な単一ピーク振動が得られることがわかった.
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大田原 健太郎, L. T. Fan
1999 年25 巻4 号 p.
564-568
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
完全混合反応槽 (CSTR) における振動反応を, 目的とする生成物の濃度に基づいた比例フィードバック機構と組み合わせると, その収率上きわめて有効な反応プロセスを構築できる可能性がある.著者らは前報で, ある自己触媒反応モデルで限られたパラメータの値の場合に, 定常状態での最適操作条件の約4倍もの収率を得られることをシミュレーションで示した.本研究では, さらに広いパラメータ範囲でこのフィードバック機構が有効であり, その範囲によっては, 定常状態での最適操作条件の約50倍もの収率を得ることも可能であることが明らかになった.
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鈴木 正康, 道永 拓治
1999 年25 巻4 号 p.
569-573
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
非線形生命現象に着目した新しい毒性アッセイ法の構築を究極の目的として, 酵母解糖系で見られるNADH濃度の振動現象が化学物質添加時に示す挙動を調べた.振動している解糖系に種々の化学物質を添加して波形変化を観測したところ, 水銀, フッ化物イオン, アセトアルデヒドなどでは顕著な波形変化が見られた.また解糖系とは関係のない呼吸活性阻害剤などでは添加の影響は見られなかった.さらに複数の化学物質を同時に添加することで, 相加的あるいは相乗的な影響が見られた.また実用的にも, 調製後, 凍結乾燥して1カ月以上-20℃で保存しても, 同様の解糖系振動が観察されることがわかり, 試薬化も可能であると考えられた.明確な波形変化が見られた化学物質の数がまだ限られていることや, 検出感度が低いことなど問題点も多いものの, 新しい毒性検出法としての可能性が示された.
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山本 哲也
1999 年25 巻4 号 p.
574-578
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
電気化学的非線形特性を元に, 味覚因子を識別する手法を提案する.界面活性剤水溶液の電気化学的非線形特性を, システム同定法を用いて定量的に求めた.電気化学的非線形特性は塩化ナトリウム, 塩酸, 塩酸キニーネなどの化学種を加えることにより影響を受けた.電気化学的非線形特性は, 同種の味覚因子に対して類似な特性を示し, かつ濃度依存性が見られた.本研究で提案した手法によって, 味覚の種類を識別し, その濃度を定量的に評価できることが示された.
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馬場 凉, 猪熊 喜芳, ANTONIS KARANTONIS, 中林 誠一郎
1999 年25 巻4 号 p.
579-584
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
上下に水平に張った2本の銅細線電極の間の微小空間内において, 硫酸銅を含む電解質流体に電気化学的に制御したレイリー・ベナール (RB) 対流を生じさせ, これをMach-Zehnder型のレーザー干渉計を用いてゼロ磁場下および磁場存在下で可視化することができた.磁場の存在によらず, RB対流は, 電極の電気化学的溶解反応が起こるアノードを上電極とし, 銅の析出が起こるカソードを下電極とした時にのみ観測された。また, 対流および銅細線電極とはそれぞれ垂直な方向に磁場を印加すると, RB対流に見られるロールセル構造が水平方向に運動を始めた。分極や印加磁場を様々に変化させたり, 銅細線電極の一部を絶縁被覆するなどしてRB対流の様子を観察した.それにより, 電気化学的に制御されたRB対流は熱的に制御されたそれよりも流れの制御が容易であり, かつその空間規則性が磁場中で多様に変化することを見出した.
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秋山 鐵夫, 青木 圭子, 大石 剛之, 吉川 哲夫
1999 年25 巻4 号 p.
585-587
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
粉体を容器に充填し重力加速度より少し大きい振動加速度を容器に加えると粒子が中央部で上昇, 側壁部で下降し山 (Heap) を形成する.振動加速度を上げるとある範囲の空気圧・粒子径において粒子の対流方向が逆になり, 側壁部で上昇, 中央部で下降し谷 (Valley) を形成する.さらに強い振動を加えると対流ロール数が増加し非線形・非平衡の特徴が顕著に表われる.
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吉田 利彦, 保科 孝幸, 小出 秀人, 若山 慎一
1999 年25 巻4 号 p.
588-594
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
平板型固体電解質燃料電池 (平板型SOFC) を二次元反応面を持つ矩形断面流通型電気化学反応器と見て研究を行い, 出力特性, 流れ, 熱発生についての指針を実験と解析から明らかにした.
平板型SOFCの電解槽工学解析から得られたセル材料抵抗の推測値と実験から得られた分極値から理想的なセル特性を予測し, 水素燃料において出力密度4.5×10
3W/m
2, 発電効率50%が可能であることを見出した.
平板型SOFCセルスタックでは供給ガスはガスマニホールドを通り, セルスタックの各ガス流路に分配する構造となっている.セルサイズを大型化した場合, 流路の位置によってそれぞれのガス流路内のガス流量は異なってくることを数値解析により見出した.またガス流路内でのレイノルズ数が0.1以上で, 燃料利用率50%以上では流路内の入口/出口の燃料分圧に差が生じることを見出した.
平板型SOFCの発電時の熱発生は各セル面内に温度分布を生じさせることを明らかにした.
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堤 香津雄
1999 年25 巻4 号 p.
595-599
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
流動層を使用して石灰石を焼成する場合, 発生した二酸化炭素は, 石灰石結晶粒子内の既に焼成が完了した生石灰部分を拡散によって移動し, 結晶粒子界面に抜け, 結晶粒子間を移動して, 粒子から出ていく.焼成反応の律速過程を石灰石結晶粒子内の二酸化炭素の拡散であると仮定し, 結晶粒子に未反応核モデルを適用して, 実験より得られた流動層温度と焼成率の関係から, 結晶粒子内二酸化炭素有効拡散係数を求めた.この有効拡散係数は, 石灰石の種類によらず, 流動層温度との相関があり, 流動層温度が高いと有効拡散係数が小さくなる.温度が高いと生石灰の結晶化が進み緻密になると考える.石灰石の結晶粒子径を測定すれば, 実験で得られた有効拡散係数を使って焼成率を計算することができるようになった.
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村形 忠弘, 池北 芳朗, 森下 郁郎, 柳 洪基, 山崎 倫孝, 白幡 邦彦, 黄 定国, 佐藤 志美雄
1999 年25 巻4 号 p.
600-607
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
石炭をアルカリ及び酸性水スラリーとしてメディエーターを用いた間接電解により酸化分解した.アルカリスラリーとして太平洋炭, 幌内炭を電解した場合には, 石炭の約80%が分解され, 生成物であるフミン酸が電解液中に溶出した.また, 溶出したフミン酸はさらにメディエーターによる間接酸化と陽極上での直接酸化により低分子量成分へと分解した.一方, 酸性スラリーでは50h電解を行っても, 転化率は最大で40数%程度であり, 生成フミン酸の殆どは石炭粒子表面上に留まっていた.また, 酸性スラリーでは石炭の一部はCO
2のようなガス成分まで酸化された.このような電解特性について, さらに石炭化度, メディエーターの酸化還元電位の影響を調べ, アルカリ及び酸性スラリー中での石炭の分解機構について考察した.
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高橋 晋, 小嶋 高良, 高橋 燦吉
1999 年25 巻4 号 p.
608-612
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
1, 4-dioxane水溶液が広範囲の混合モル分率で示す共沸は水と1, 4-dioxaneの液中の存在状態に基因すると考え, 水溶液の液体構造, 1, 4-dioxane添加による水の液体構造制御機能の解明とその定量的評価を目的に
17O-NMR化学シフト法により検討を行った.
その結果, 1, 4-dioxaneは水素結合を切断して水のクラスターを小形化し, 水の液体構造を効果的に制御できることならびにその定量評価が可能なことを示した.
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松本 秀行, 黒田 千秋, 入江 秀和, 小川 浩平
1999 年25 巻4 号 p.
613-618
発行日: 1999/07/10
公開日: 2010/02/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 複数異種のHPLC (高速液体クロマトグラフィー) カラムより構成される血漿タンパク質分画プロセスのモデル化に, 離散事象システムの考え方を導入し, 操作手順だけでなく分離挙動に基づくタンパク質量の変化も考慮に入れた定量的なペトリネットモデルの適用を試みた。例えば, 半連続注入型GFC (ゲル濾過クロマトグラフィー) 分画プロセスのモデル化においては, 操作手順の時間的流れとタンパク質の流れを抑止アークで結び, GFCの分離挙動を適切に表現することができた.また, IEC (イオン交換クロマトグラフィー) 分画プロセスのモデル化においては, 注入試料濃度や溶離液の塩濃度などの操作条件によって決定される各操作の所要時間をモデル中に導入した.
以上のように, 分離様式やプロセス形態ごとにモジュール化され, 動作確認を終えたペトリネットモデルを連結して, アルブミン単量体の回収を行うプロセスに関するシミュレーションを行った.その結果, プロセス全体の動的な振る舞いが簡潔に示され, 各HPLCカラムの数や中間タンクの最大容量の設計変更に関して有用であることがわかった.
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近藤 史朗, 中村 克孝
1999 年25 巻4 号 p.
619-623
発行日: 1999/07/10
公開日: 2010/05/07
ジャーナル
フリー
上水スラッジを対象とした加圧脱水に及ぼす濾過期間初期における電気泳動の効果を, 電場が臨界強さ以下である場合について定圧圧搾の条件下で片面脱水と両面脱水との両ケースについて理論解析した.電気泳動により陰極側ケーキの平均空げき率が増大すると仮定して得た理論の予測値は, 横軸形小形カラムの濾過期間初期における陰極側からの脱水に関する実験値を良く説明できることが分かった.
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朴 桂林, 青野 滋, 近藤 元博, 山口 正隆, 山崎 量平, 藤間 幸久, 森 滋勝
1999 年25 巻4 号 p.
624-628
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
現在, 廃棄物固形化燃料 (RDF) を利用する発電技術が注目されている.本研究ではRDF燃料の気泡流動層における燃焼特性を把握するため, 断面0.3m×0.3m, 高さ2.73mの燃焼部を有する流動層燃焼実験装置を用いてRDFの燃焼試験を行い, 排ガスCO, NO
x, SO
xおよびHCI成分等について検討した結果, 次の点が明らかになった.RDF燃焼では揮発分量がきわめて大きいため, RDF供給量が増大するとCO濃度が著しく増大し, 空気比を増加させると大幅に低下する.塩化水素濃度は層温が約800℃において60ppm以下の低い値が得られた.また, 炉内脱塩酸率は層内温度900℃以上の高温でも70%以上となった.NO
x濃度は50~150ppmであり, SO
x濃度は0.5ppm以下となった.
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中島 栄次, 山根 岳志, 吉田 正道, 宮下 尚
1999 年25 巻4 号 p.
629-634
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
密度反転が起こる場合と起こらない場合における水のベナール対流について数値解析を行った.計算は密閉容器内流体層の上部を冷却, 下部を加熱した系を対象に, 密度反転が起こらない場合については上下壁間温度差を, 密度反転が起こる場合については上下壁間温度差及び容器アスペクト比をそれぞれ変化させて行った.密度反転が起こる場合, セル個数は臨界点において最大であり, アスペクト比の逆数の2倍となるが, Rayleigh数
Raの増加に伴いセル個数は減少する傾向にあった.また密度反転が起こる場合, 系上部に発生する停滞層が伝熱抵抗となるため,
Nuは密度反転が起こらない場合に比べ低い値となるが,
Raの増加に伴い両者は漸近する.さらに, 密度反転が起こる場合の伝熱特性及び臨界Rayleigh数の推算モデルを提案したところ, 臨界Rayleigh数の値は推算結果と数値解析結果で良好に一致した.
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董 〓兵, 橋本 憲次, 佐藤 厚, 岡田 勝, 二宮 善彦
1999 年25 巻4 号 p.
635-641
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
CaO粒子の硫化・酸化の連続反応実験を行い, 硫化実験によって作製したCaS粒子のCaOおよびCaSO
4への転換率に及ぼす初期粒子径, 酸素分圧, 反応温度, CaS含有率の影響, ならびに反応速度定数の測定を行った.本実験からCaS粒子を完全に酸化できる条件として, 初期CaS含有率=30mol%では, 1,203および1,253K, O
2=101~5.07kPaで粒子径が0.9mmまでであった.一方, 初期CaS含有率=80mol%では, 1,253K, O
2=1.01~21.3kPaで粒子径が0.2~0.5mmであることなどを見いだした.CaS粒子内の酸化反応機構として, 反応初期には2CaS+3O
2=2CaO+2SO
2によって表面のCaSが順次CaOに変化して, CaOの生成物層を生成した.SO
2はCaO層を拡散して外部に放出されるが, 2CaO+2SO
2+O
2=2CaSO
4の反応によって, CaO層はモル比容の大きいCaSO
4層に次第に変化した.CaSO
4層が成長するに従い, O
2やSO
2の生成物層を拡散する移動速度が小さくなり, 最終的にはCaSの酸化反応が停止した.CaSからCaSO
4およびCaOへの初期反応速度はO
2に対して1次, 活性化エネルギーの値として, それぞれ52kJ/mol, 426kJ/molの値を得た.
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栗山 雅文, 門叶 秀樹, 今野 宏卓
1999 年25 巻4 号 p.
642-647
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
Population balance式を数値的に解き, 撹拌槽内における高粘性分散液滴の過渡的な滴径分布を推算した.式中の三種のパラメーター, すなわち分裂頻度, 生成子滴の分布および母滴の1回の分裂で生成する子滴の数は, 高粘性滴に関する著者らのこれまでの研究 (Kuriyama
et al., 1995a, 1995b, 1996) と低粘性滴の分裂に関する既往のモデル (Konno
et al., 1983) に基づいて与えた.
種々の操作条件の下で滴径分布の経時変化を測定した.この実測値と計算結果の比較から, 本研究で提案した分裂モデルにより広い液粘度域にわたって滴径分布の経時変化が予測できることがわかった.
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村上 佳広, 石倉 研一, 内山 寛信, 谷口 智, 長谷部 伸治, 橋本 伊織
1999 年25 巻4 号 p.
648-654
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
多系列プロセスのスケジューリング問題を対象に, どの系列で処理することが望ましいかという, ジョブの系列指向性を考慮したスケジューリングアルゴリズムを提案する.基本としたアルゴリズムは, シミュレーティッドアニーリング法 (SA法) を用いたスケジューリングを複数回行い, その中で最も良い解を最終的な解とする多重SA法である.提案した手法では, 同じ問題を複数回解くという多重SA法の特徴を利用している.即ち, まず数回のスケジューリング結果から各ジョブの望ましい処理系列を求め, それ以降の探索では, 望ましい系列で処理される確率を高く設定することにより, SA法での探索を効率化する.提案した手法を9系列からなる熱処理プロセスのスケジューリング問題に適用し, 従来の手法と比べ良い解が得られる確率が高いことを示した.
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数値解析結果の式化および実験結果との比較
宮武 修, 田川 公太朗, 野田 英彦
1999 年25 巻4 号 p.
655-661
発行日: 1999/07/10
公開日: 2010/02/19
ジャーナル
フリー
深海域の海水または立て坑内の塩水の静水圧を利用する海水または塩水の逆浸透法脱塩システムに関する前報の数値解析に基づき, 装置の形状と懸垂深さ, 膜の純水透過係数と溶質透過係数, および海・塩水の物性値から, 淡水透過流量を予測する無次元数値実験式を導いた.この式は, 日本海および東シナ海で実施したフィールド実験で得た実験結果と妥当な一致を示したことから, その適用性と有用性が確認された.
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朝川 隆信, 井上 勝利, 吉塚 和治, 大渡 啓介
1999 年25 巻4 号 p.
662-664
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
抽出剤として, 5, 5-ジフェニル-2, 4イミダゾリジンジオンを用いて銀の溶媒抽出を行った.その結果, 分配比はpHに2次, 抽出剤濃度に2次, 銀濃度に2次に依存し, 銀 (1) は2核錯体, Ag
2R
2, として抽出された.抽出平衡定数
Kは2.0×10
-5dm
3/molと求まつた.逆抽出は0.1mol/dm
3硝酸水溶液によってほぼ完全に成し遂げられた.またタリウム (I), パラジウム (II), 銅 (II), ニッケル (II) と比較した場合, 銀はタリウム (I), 銅 (II), ニッケル (II) のみならずパラジウム (II) に対してもより良好な選択性を示した.
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加藤 格, 甲斐 茂高, 三谷 知世, 加藤 覚, 長浜 邦雄
1999 年25 巻4 号 p.
665-667
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
水素化合成モルデナイト (HM) 固定層を用いて, 一酸化窒素の吸着量促進に対する, 二酸化窒素と水蒸気の影響について検討した.HMに対する混合吸着では混合ガス中のNO濃度を400ppmに固定すると, NO
2濃度が高いほどNOの吸着量は増加した.また, NO
2濃度を300ppmに固定すると, NO濃度が高いほどNOの吸着量は増加した.すなわち, NO
2の存在はHM上におけるNOの吸着量を高めることが判った.反対に, 水蒸気の存在は, NOの吸着量を減少させる結果となった.
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PHAN DO HUNG, 正脇 輝之, 東稔 節治
1999 年25 巻4 号 p.
668-671
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
エチレングリコールジグリシジルエーテルにより架橋されたアクリル酸-アクリロニトリル共重体と多孔質アルミナ支持体からなる複合膜を調製し, メタノール (MeOH) /メチルt-ブチルエーテル (MTBE) 混合液からのMeOHの浸透気化分離を行った.架橋剤含量の増加とともに, 両成分の透過流束は減少し, 分離係数は増加した.さらに, メタノールの膨潤効果を考慮した溶解-拡散モデルにより, 透過速度を表現でき, みかけの活性化エネルギーを適用することにより, 透過流束および分離係数に及ぼす温度の効果を推算できることを示した.
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渡辺 隆行, 川崎 春夫
1999 年25 巻4 号 p.
672-675
発行日: 1999/07/10
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
フリー
パラアルデヒド系ケミカルヒートポンプはパラアルデヒド解重合反応を利用した冷熱発生システムである.本研究の目的はシステムの副反応の影響を検討することである.副反応物質は主にクロトンアルデヒド (2-ブテナール) とその重合体であった.反応媒体中の副反応物を考慮してシステムの解析を行った.解析したシステムは反応媒体の一部を液体のまま循環させるサイクルを持っている.冷熱発生速度および成績係数は反応媒体の液体循環量が低くなると減少するが, 反応媒体中のクロトンアルデヒドの濃度変化に対する影響は小さい.
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