対流混合パターンの時間変化を,濃度分布の時間変化と見做す従来の考え方では,どのような初期パターンから始めても時間が経過すると,速度分布だけで決まる固有の混合パターンの形に収束することの理由が十分に説明できない.本論文では,対流混合パターンを,混合開始時においてつながり関係を有する流体粒子集合体における,集団としての動きのパターンと見做す新しい考え方を提示する.これによって,あらかじめ初期パターンが与えられていなくても,流れ場の中から固有の対流混合パターンの形が自然に顕れ出ることが説明できる.
粗大粒子を種々の条件で混入させて邪魔板のない撹拌槽の槽壁熱伝達係数を測定した.粒子混入時の槽壁熱伝達は撹拌速度が遅い低Re域では粒子の堆積により抑制され,撹拌速度が速い高Re域では促進されることを示し,その熱伝達挙動は粒子径dp,粒子体積分率ϕvおよび粒子密度ρpに依存することがわかった.熱伝達挙動とこれらの因子との関係は,槽内における粒子分散の可視化実験の結果から定性的に考察した.
さらに,均一相時の熱伝達挙動と同程度の傾きを示した低Re域および高Re域の双方に関して実験式を導出し,それが測定値を良好に表示し得ることを確認した.
3つのタービン翼と多孔板型仕切板を備えた3段縦型撹拌槽の液混合特性について,交換流量におよぼす多孔板型仕切板の開孔率,撹拌速度,槽径の影響を実験的に検討した.翼径Diは槽径DTの1/2とした.交換流量Qは撹拌速度n,開孔率Ar,槽径Diの3乗に比例して大きくなった.槽径DTを0.17 mに変化させても修正無次元交換流量Q/(nDi3Ar)と撹拌レイノルズ数の関係は槽径0.10 mの場合と同じであった.
乱流拡散モデルを基に新たな混合時間の相関方法を提案した.無次元数X1, X3は動力数Np,回転数n,撹拌レイノルズ数Re,混合時間tm, d/D, H/D(D; 槽径,d; 翼径,H; 液深)の関数であり,αはアスペクト比の影響を表す実験パラメータである.
αは汎用小型翼に対して0.25, 大型翼に対して0.15であった.無次元数X1, X3を用いた相関方法を用いることで,邪魔板の条件,偏心の有無によらず,遷移域および乱流域(Re≧100)の混合時間を精度良く相関できることが明らかとなった.
廃棄物の焼却にともない発生する排ガスには塩化水素や硫黄酸化物といった酸性ガスやダイオキシン類,水銀等の微量有害物質が規制値を超える濃度で含まれている.これらの有害物質を除去するのに一般にろ過式集じん装置の入口煙道に消石灰および活性炭を連続して吹込む乾式排ガス処理が用いられているが,反応効率が高くないため多量の薬品を必要とし,未反応の薬剤が残存するという問題がある.本報で紹介するプレコートバグフィルタは装置内のろ布表面に薬剤の反応・吸着層を形成して排ガスを処理,有害物質を高効率で除去するものである.プレコートバグフィルタが納入されている施設で,有害物質の除去性能を調査したが,酸性ガス,ダイオキシン類,水銀がいずれも高効率で除去されていることを確認した.
本研究では,懸濁重合で調製したポリビニルアミド架橋樹脂を加水分解して得るポリビニルアミン架橋樹脂による金属吸着特性について評価した.塩酸系でアニオン性の塩化物錯体として存在する貴金属類が多くの卑金属類から選択的に吸着された.本吸着剤は比較的安価に得られる合成樹脂としては単位質量あたりの官能基(1級アミノ基)量が多く,吸着等温線からLangmuir式により算出されたHym-AへのPd(II)の飽和吸着量は1.68 mmol g−1で,市販のポリアミン系キレート樹脂の1.87倍だった.他方,有害元素として知られるヒ素およびセレンの吸着についても検討した.Hym-Aは2級アミンを官能基として有するキレート樹脂よりも広いpH範囲でAs(V)を吸着した.Hym-AによるAs(V),Se(IV),Se(VI)の飽和吸着量は市販樹脂に対して3.97, 2.42, 2.31倍大きかった.すなわち,本吸着剤はアミノ基を有する既存のキレート樹脂よりも大きな処理量で貴金属の回収や有害元素の除去に利用できる.
核沸騰加熱下,テトラリン液膜で湿潤した炭素担持白金触媒は,速やかに水素を生成した.同時進行する吸熱反応と蒸発のうち,有用な水素が得られる割合を熱回生率と定義し,触媒層の評価基準とした.加熱用電力消費のうちの反応熱の割合は熱利用率で,反応器の評価基準である.両者の鍵を握る水素生成活性要因について多角的な検討を行い,経済性の視点から複合触媒による非白金化を試みた.