化学工学論文集
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29 巻, 3 号
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[特集] 化学プロセス・ダイナミックスの解明と応用
  • ――混合度のスペクトル表現
    井上 義朗, 平田 雄志
    2003 年29 巻3 号 p. 313-319
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    流体の混合状態を定量的に評価するのに用いられてきた従来の混合度は,1個または少数の混合指標を用いて表現されてきた.しかし,混合の初期から最終状態に至るまでに複雑に変化する混合パターンの特徴を,少数の指標だけで表現するのは困難である.本研究では,escort確率測度を用いた統計熱力学的な解析手法を混合パターンの解析に適用することにより,混合指標をスペクトルとして表現する.これにより,混合パターンの特徴をより詳細に表現することができるだけでなく,混合パターンを情報理論,マルチフラクタル理論および熱力学的観点から総合的に評価することが可能になる.また,従来の混合度の多くは,本解析により導入された混合スペクトルの特殊な場合として含まれるため,この新しい混合指標は従来の混合度の概念を拡張したものとなっている.
  • 植田 利久, 渡辺 佳孝, 渡辺 淳
    2003 年29 巻3 号 p. 320-326
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    外円筒容器と内円筒棒が偏心して設置された二円筒間にみたされたグリセリン中の反応性を有する二液体の混合および化学反応過程について実験的に検討を加えた.外円筒容器と内円筒棒の中心間距離を両者の半径の差で無次元化した偏心率を0.1–0.7に変化させた.外円筒容器と内円筒棒は,ストークス流れの条件を満たしながら交互に回転させる.反応物質として,硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)とフェロシアン化カリウム(K4[Fe(CN)6])を用いた.両者は,

    Fe3+ + K4[Fe(CN)6] → KFe[Fe(CN)6] + 3K+
    の化学反応を生じる.生成物フェロシアン化カリウム鉄(KFe[Fe(CN)6])は濃青色の沈殿物であることから,生成物の存在する位置を特定することができる.この反応は極めて速く進行することから,反応物質が分子スケールレベルで混合すると直ちに反応が起こる.反応熱は無視できるほど小さく,その結果この反応は流れに対してパッシブとして取り扱うことができる.外円筒容器と内円筒棒を交互に回転させると,化学反応はカオス領域において顕著に促進され,化学反応が生じる領域は反応物質の初期位置に関わらずカオス領域全体に広がってゆく.また,化学反応の促進の程度は反応物質の初期位置により異なり,その程度は反応物質の初期位置におけるエレメント伸長率の値に対応している.すなわち,エレメント伸長率の値がより大きい領域に反応物質を置いた場合のほうが化学反応はより促進される.
  • 松田 充夫, 多田 豊, 平岡 節郎, 銭 紹祥, 竹田 宏, 石田 敬二, 毛利 之彦
    2003 年29 巻3 号 p. 327-332
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    Rushton翼攪拌槽における速度場と流動状態について,LDVによる二次元速度場測定データの周波数解析と可視化を用いて解析した.翼回転周波数領域から翼端渦やコロモゴロフ波数に関係した周波数領域における速度場のダイナミクスは,少なくとも3つの周波数,羽根通過周波数fp,翼回転周波数fp/6,および翼近傍の渦の変化(渦の移動や渦の大きさ)により生ずるマクロ不安定性の周波数fu(fMI)とから構成される非線形結合によるものであることを示した.翼取付け高さ条件を変えた場合のフーリエ・スペクトルによるダイナミクス解析も,マクロ不安定性に由来する周波数fu(fMI)は,速度場ダイナミクスを構成する周波数の一つであることを支持していた.
  • 土屋 活美, 石田 俊樹, 齋藤 隆之
    2003 年29 巻3 号 p. 333-338
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    気泡の上昇特性を光ファイバープローブにより測定した.プローブは光源側と検出側の伝送ラインおよび装置内に入る気泡接触用の光ファイバー3本から成り,それぞれ,クラッド径250µmのプラスチック製である.一対のプローブ各先端を適当な距離(~lmm)だけ鉛直軸方向にずらして,信号間に生じる時間差を検出することにより,気泡上昇速度の局所値を,また,それに各プローブの気相内滞留時間をかけることにより,局所気泡高さを測定・評価した.特に局所気泡高さ(弦長)は,高速度画像データに基づき評価した平均気泡上昇速度を用いた場合,すべての接触位置(水平方向)において妥当な値を示した.一方,プローブ信号のみを用いた場合,気泡上昇速度が過大評価される傾向があり,特にプローブが気泡中心線上最も外側を通過すると,画像より求めた値と比較して約5倍も大きく測定されるケースがある.その主な原因は,気泡変形による時間差の過小評価であることが画像より確認された.
  • 板谷 義紀, 内山 茂, Erwin F. Cabrido, 羽多野 重信, 森 滋勝
    2003 年29 巻3 号 p. 339-344
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
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    マイクロ波による均一加熱を目的として,アプリケータ内に形成される電界強度分布を,導電性粒子流動層によりマイクロ波を乱反射させることにより均一化する技術を提案し,そのダイナミック制御効果を明らかにした.導電性流動化粒子には,アルミ箔およびセロハンテープを巻いた径13mm,比重123kg/m3の発泡スチロール球を用いた.分散板が多孔質板のとき本粒子の最小流動化速度はWen-Yuの推算式による予測値とほぼ一致していた.しかし,分散板に多孔板を用いたとき,小孔からのガス噴流により最小流動化速度以下でも流動現象が生じた.業務用電子レンジのアプリケータ側壁面前面に矩形流動層を設置したとき,流動層高さ方向の粒子ホールドアップ分布が均一な流動状態のとき最も均一な電界強度分布が得られた.電界強度分布の均一化効果は流動層によるマイクロ波反射面積や粒子ホールドアップの増大に伴い高くなり,通常の攪拌羽根に比べて良好に改善されることを定量的に実証した.
  • 金 成益, 相田 隆司, 新山 浩雄
    2003 年29 巻3 号 p. 345-350
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    本研究ではNa+型モルデナイト(NaMOR)および様々なSiO2/Al2O3比を持つH+型モルデナイト(HMOR)を用いてマイクロ波非定常加熱におよぼす水の共存効果を検討した.水蒸気の定常供給条件下におけるマイクロ波加熱実験の結果,NaMORの場合は水の供給によって到達温度(最大432K)と昇温速度が非常に大きく改善された.一方,HMORの場合,水の吸着はマイクロ波加熱による達成温度と昇温速度にほとんど影響を与えなかった.TPD実験から,水の吸着はHMOR上よりNaMOR上の方が強い傾向を示すことがわかった.以上の結果からNaMORと水の強い相互作用がマイクロ波加熱において昇温速度と到達温度の改善に大きな影響を及ぼすと考えられた.
  • 武田 和宏, 藤野 雄三, 柘植 義文, 松山 久義
    2003 年29 巻3 号 p. 351-356
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    本論文では,液液分散系の構造安定性から転相現象を数学的にモデル化する.提案するモデルにより,転相と攪拌速度,物性の関係およびそのヒステリシスを統一的に説明することができる.
    水と炭化水素の液液分散系において転相実験を行った.四塩化炭素を混合することにより,有機物の物性を調整した.転相が発生するときの有機物密度,有機物粘度,有機物の対水界面張力と有機物体積分率の関係を測定した.求めた実験結果と提案する理論からの構造安定条件を比較し,提案する理論の妥当性を示す.
  • 大森 隆夫, 山本 拓司, 遠藤 明, 秋谷 鷹二, 中岩 勝, 雨宮 隆, 山口 智彦
    2003 年29 巻3 号 p. 357-362
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    基質の流入と生成物の流出を独立に制御することのできる改良型コンパートメント反応器を,酵素反応の自励振動現象を研究するために考案した.この反応-拡散システムは,完全混合層型の反応器が二組の膜とリザーバーによって挟まれた構成になっている.二つの膜の厚さや透過性を変えることにより,反応器への流入・流出を制御可能である.タンパク質分解酵素の一つであるパパインによるN-α-ぺンゾイル-L-アルギニンエチルエステルの加水分解反応を対象として,自励振動が出現するパラメータ領域をシミュレーションにより決定した.また,振動の出現機構について考察を加えた.その結果,改良型コンパートメント酵素反応器の自励振動領域は,従来型よりも広くなることが明らかになった.これは,反応器への流入および流出を独立に制御することの重要性を示しており,生体系のダイナミクスの研究およびその機能を模倣したバイオミメティック・デバイスの開発のためのモデル系として利用可能であることを示唆している.
  • 片岡 邦夫, 大村 直人, 矢野 武史, 松崎 慈文, 近藤 健太郎
    2003 年29 巻3 号 p. 363-367
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    モノマー,乳化剤,開始剤の同じ原料組成比で,かつCMC以下の乳化剤濃度条件で,酢酸ビニルの乳化重合を回分および連続操作で行った.回分操作では,反応終了とともに約0.3µm以下の小さな粒子のみが存在する粒径分布が得られ,それ以降,粒径分布に時間変化はなかった.この条件の回分操作では1次粒子のみが生成し,凝集が起きないことがわかった.開始剤と乳化剤の水溶液とモノマーを別々に供給する連続操作では,反応操作初期の90分間は,回分操作と同様の約0.3µm以下の1次粒子のみが生成・成長する定常状態の粒径分布を示した.約120分以降の粒径分布は,時間とともに平均粒径が連続的に増加し,分布の中心が連続的に右側にシフトした.約3時間経過して2次粒子の最大粒径約lµmに至った後,120分における粒径分布と同様の分布に戻って,再び粒径分布の中心が右側へのシフトを繰り返した.この粒径分布の時間変動は,連続的に均相核発生により生じるオリゴマーや析出しょうとする非常に小さい微粒子が,大きな2次粒子へ選択的に凝集するダイナミックスによることがわかった.第2期である凝集過程で,成長を終了した2次粒子が排出されて,反応器からなくなると,再度,2次粒子が成長する同様の凝集過程が繰り返されることもわかった.
  • 相田 隆司, 牧田 隆, 新山 浩雄
    2003 年29 巻3 号 p. 368-373
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    触媒反応の周期的濃度変動操作を行ったときの反応成績の改善(Global Reaction Enhancement)の可能性について計算的に検討した.本研究では,NOの炭化水素による還元について実際に提案されているLangmuir-Hinshelwood機構に準じたモデルを用いた.このモデルの特徴は以下の二点である:(1)二種の中間体D,Rが存在し,逐次的に生成されること,(2)活性な第二の中間体Rが競争的に消費されること.計算結果より,反応成績の改善が発現することが明らかとなった.また,変動条件の最適化を行ったところ,定常最適条件に比べ最大約70%の反応成績の改善が見られた.本反応系では,状態関数(表面被覆率)の数が,操作変数の数を上回ることによって,定常条件では決して取り得ない状態が変動操作によって可能となり,これが一般的に反応成績の改善が起こる必要条件であると推察した.
  • 大森 隆夫, Duangkamol Na-Ranong, 山本 拓司, 遠藤 明, 秋谷 鷹二, 中岩 勝
    2003 年29 巻3 号 p. 374-377
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    軽質オレフィン合成反応プロセスに,周期操作およびリサイクル操作を適用した場合の反応成績について,シミュレーションによる検討を行った.周期操作には,反応器の軸方向に壁面温度をサイン波の形で設定する操作法を用いた.また,副生成物であるブチレンとペンテンを,反応器の入口あるいは中間位置に戻すリサイクル操作を行った.その結果,リサイクル操作と周期的温度設定を適切に組み合わせることにより,エチレンの収率を0.116mol-ethylene/mol-methanol,エチレン/プロピレンの生成比を0.685まで増大可能なことなどが明らかになった.また,反応成績向上の要因について,二つの操作の相乗効果の観点から考察した.
  • 大村 直人, 松崎 慈文, 矢野 武史, 北本 圭吾, 片岡 邦夫
    2003 年29 巻3 号 p. 378-381
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    酢酸ビニルの連続乳化重合において,反応温度を周期的に変化させる動的操作により,得られるラテックス粒子の粒子径分布の時間変化を調べた.実験は反応場を水相中に限定するために臨界ミセル濃度以下で行った.周期操作を行わない定常操作により得られた重合率は,臨界温度(Tc)が53℃で0から60%に階段状に変化した.動的操作においては,この臨界温度を跨ぐように一定周期で反応温度を高温と低温に切り替えた.この周期操作により重合率の安定な周期振動を誘発した.この振動に同期して粒子径分布が変化することがわかった.
  • 松本 秀行, 真武 和典, 木村 直樹, 黒田 千秋
    2003 年29 巻3 号 p. 382-388
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    本論文で,設計者への負荷軽減と反応性同時移動現象の精密シミュレーションを目的とした,コンパートメントモデルとCFDモデルの両モデルに基づくハイブリッド型ダイナミックシミュレーション手法を提案した.そして,原料流入口付近の流れによって生ずる反応器内部のプロセス状態量分布の不均一性がプロセスシステム全体の動的挙動に影響を及ぼすようなプロセスの動的シミュレーションを例にとり,同シミュレーション手法の適用性を検討した.
    その結果,ハイブリッド型シミュレーション手法を用いることで,状態量の局所的不均一性の,プロセス全体の動的挙動へ及ぼす影響の程度が攪拌操作条件によって変化することを示すことができた.さらに,非定常運転プロセスシミュレーションを効率よく行うためには,コンパートメントモデルとCFDモデルの各適用領域の適切な決定と,両モデル間でダイナミックにデータ交換をさせるインターフェイスの種々機能の発展が必要であるということが明らかになった.
移動現象,流体力学,混合
  • 倉前 正志
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2003 年29 巻3 号 p. 412-420
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    2成分ヒートパイプの凝縮部でみられるような,自由表面からの物質流入をともなう場合のマランゴニ対流について,気液界面の変形を考慮した境界適合座標を用いて数値解析を行なった.その結果,凝縮面が平面の場合には無重力場でも凝縮液膜は安定に存在し,凝縮量およびマランゴニ力が凝縮部全体にわたって一様のときには,液膜厚さ分布は初期状態によらず,マランゴニ数Maなどの値によって決まる一定の分布形に収束すること,Boが特に大きくなるとヒートパイプが水平であっても液面高さの違いによる重力の作用がマランゴニ力に打ち勝って液帰還が不能になることがあること,Maの値が特に小さくない場合(Ma≧105)には定常状態における液膜厚さ分布および液流速分布はNusseltの膜状凝縮理論に基づくものとは異なるが,単純な平行流モデルから算出される値に近い結果を与えることを示した.また,凝縮部中にマランゴニ効果が生じない部分が存在しても,この付近の液膜厚さが増加するだけで液帰還が不能になるわけではないこと,液が凝縮部端の内壁面と濡れやすい場合や,凝縮部端付近でマランゴニ効果が生じない場合には,液膜厚さ分布は接触角の影響を受けることを明らかにした.
  • 日岡 英一, 松隈 洋介, 井上 元, 峯元 雅樹
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2003 年29 巻3 号 p. 421-426
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    8本のチャンネルを持つ簡単なモデル流路に対する格子ガスオートマトン法を用いたシミュレーションを行い,内部の流動状態を検討した.これより流動状態を把握するとともに差分法解析により格子ガスオートマトン法の妥当性を確認した.内部にはほとんど流れのないよどんだ領域が確認できたため,この領域を障害物に変えるという操作を繰り返す流動形状の自動設計を行ったところ,8本のチャンネルのうち平均流量の最大値と最小値との差が初期形状の場合と比べて自動設計後では27%減少するという結果を得た.さらに格子ガスオートマトン法を用いた並列計算を行い,並列計算への適応性の評価を行った.速度向上率はほぼノード数に比例し,並列化は十分有用であり高速な計算環境を得られることが分かった.
材料工学,デバイス
  • 金澤 亮一, 迫原 修治, 伊藤 昭二
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 材料工学,デバイス
    2003 年29 巻3 号 p. 400-405
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    N-イソプロピルアクリルアミドを主モノマーとし,N,N'-メチレンビスアクリルアミドを架橋剤として反応性界面活性剤を用いて乳化重合を行い,感温性ゲル微粒子の合成を行った.このゲル微粒子は,温度変化に応答して可逆的に膨潤・収縮した.得られる粒子について粒子径および膨潤度に及ぼす合成条件の影響を検討した.界面活性剤濃度を変化させてゲル微粒子を合成しても,ある濃度以上存在すれば粒子径にほとんど変化はみられなかった.粒子径は,開始剤および促進剤の濃度によって影響を受けることが明らかになった.膨潤度は架橋剤濃度によって決定された.これらの結果を基に,この系での微粒子生成メカニズムについて検討を行った.
分離工学
粉粒体工学,流動層
  • 阿部 浩也, 内藤 牧男, 中平 兼司, 堀田 禎, 鈴木 能大, 嶋田 博巳, 米倉 健二, 加藤 仁也
    原稿種別: ノート
    専門分野: 粉粒体工学,流動層
    2003 年29 巻3 号 p. 442-444
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    超音波減衰分光法により,低濃度分散系において球状シリカ粒子の粒子径分布測定を行い,結果をX線透過法による測定結果と比較した.その結果,超音波減衰スペクトラムから粒子径分布を計算する際に必要な減衰係数に着目すると,シリカ粒子径が大きくなるとともに粘性ロスに加えて散乱ロスの影響が増すことを明らかにした.さらに,粘性ロスと散乱ロスを考慮した減衰係数により粒子径分布を計算すると,X線透過法による粒子径分布測定結果と良い一致が得られることを示した.
  • 森脇 徹
    原稿種別: ノート
    専門分野: 粉粒体工学,流動層
    2003 年29 巻3 号 p. 445-447
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    結合剤を含む粉体材料を使って造粒,成型などを行う前の予備操作として粉体材料の混練がある.この混練の成果を評価するために行われる,混練された材料を円筒容器の中で圧縮する試験において,圧縮に応じて変化する容器底面の圧力pLと加圧面の圧力pUとの比が監視される.
    ここで圧縮速度が一定な場合(定速圧縮)と,加圧力が一定な場合(定圧々縮)に別け,さらに材料と容器の壁との間の摩擦のかかり方を仮定した上で,圧縮に伴う比pL/pUと漸減する材料層の高さとの関係を解析し,結果を実験データによって検証を行い,一定の知見を得た.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 梅垣 良太, 紀ノ岡 正博, 田谷 正仁
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2003 年29 巻3 号 p. 432-438
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    無血清培地におけるヒト角化細胞の継代培養操作を行うため,トリプシンおよびトリプシンインヒビター存在下での培養条件について検討した.トリプシンのみを加えた培地では,培養初期における細胞の接着および増殖が著しく阻害されたが,トリプシンインヒビターを共存させることにより,細胞の接着能は通常の培地を用いた場合とほぼ同等となった.細胞増殖の遅延に関しては,通常培地に交換した後の対数増殖期において,未処理細胞に匹敵する倍化時間(23h)を示したことから,トリプシンとトリプシンインヒビターを除くための初期培地交換以後は増殖能が回復することが示された.トリプシンとトリプシンインヒビターが存在する培養において,初期培地交換時間tmを変えてその影響を調べたところ,培養96hにおける接着細胞濃度は,tm=24から36hの範囲で最大となり,初期培地交換時間が延長されるほど誘導期長さが直線的に増加することが分かった.細胞配置型モデルに基づいて,一次および二次からなる連続的な継代培養について細胞の増殖経過を推算し,検討した条件の下で,高い細胞生産速度を与える一次培養での最終細胞濃度,および二次培養での初期培地交換時間を求めた.計算結果に従って,トリプシンとトリプシンインヒビター処理を伴う継代培養を実施したところ,遠心分離操作を介した場合と同様な細胞生産速度を得ることができた.
安全,環境,エネルギー
  • 井上 勝利, 塩屋 晶和, 朱 玉山, Irena Sedlackova, 牧野 賢次郎, 馬場 由成
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年29 巻3 号 p. 389-394
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    水中でそれぞれ砒酸イオンおよび亜砒酸イオンの陰イオン種として存在している5価および3価の砒素を吸着・除去するために,ホルムアルデヒドで架橋したペクチン酸の新しい吸着ゲルを調製した.砒素の吸着に先立ち,本吸着ゲルの基礎的な特性を知るために陽イオンとして存在する様々な金属に対する吸着特性を調べた.その結果,これらの金属の吸着の選択性は以下の通りであった.Sn(IV) ≫ Sn(II) ≫ Pb(II) ~ Fe(III) ≫ Cu(II) > Al(III) ≫ Zn(II) ~ Ni(II) ~ Ca(II) ≧ CO(II) > Mn(II).ここで第2鉄イオンに対しての最大吸着量は0.57mol/kg-乾燥ゲルであった.
    この吸着ゲルに砒酸イオンや亜砒酸イオンに対して高い親和性を有することが知られている第2鉄イオンを吸着させ,これらの砒素の吸着特性をバッチ法,ならびにカラム法により調べた.5価の砒素は主として弱酸性領域で吸着されたのに対して,3価の砒素は主として弱アルカリ性領域において吸着された.5価の砒素は過剰の塩化物イオンや硫酸イオンが存在しても選択的に吸着されることがバッチ,およびカラム実験により明らかにされた.
    カラム実験においては5価の砒素の方が3価の砒素に比べて良好に吸着された.1Mの塩酸を用いれば5価の砒素も3価の砒素も担持した鉄と共に溶離される.5価の砒素は1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いても溶離されるが,少量の鉄の漏出が起こる.
  • 山本 秀樹, 部屋本 範幸, 八橋 拓也, 松井 俊展, 高見 優子, 芝田 隼次
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年29 巻3 号 p. 395-399
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    ポリビニルアルコール(PVA)を主成分とし,ホルムアルデヒドで一部架橋された親水性高分子ゲル(以下PVA高分子ゲル)の感温特性を利用して,水中の塩素系および臭素系有害有機物の吸着除去特性について検討した.前報では,PVA高分子ゲルが周囲の温度変化に応答し体積が可逆的に膨潤・収縮する感温型高分子ゲルであることを明らかにし,310K以上の温度範囲において水中の1,2-ジクロロエタンを吸着除去できることを報告した.
    本研究では,水中に微量に含まれる有害有機物としてクロロホルム,ブロモホルム,トリクロロエチレン,フェノール,o-クロロフエノール,m-クロロフェノール,p-クロロフェノール,2,4-ジクロロフェノール,2,4,6-トリクロロフェノールおよび安息香酸の有機物10種類を選んで,PVA高分子ゲルに対する吸着除去試験を初期濃度200ppm,温度範囲283–323Kで行った.有機物の吸着量は種類によって異なったが,すべて310K付近を境として低温側では吸着量は小さく,高温側では大きくなることを明らかにした.温度スイングによる吸着量の変化は,PVA高分子ゲルが温度の上昇に伴い脱水して体積が収縮することにより表面が疎水化し,水中の有機物と疎水性相互作用で吸着したと考えられた.
  • 庄司 良, 平田 房雄, 須藤 義孝, 鈴木 基之
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年29 巻3 号 p. 406-411
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    近年,水道源水ともなる河川水がゴルフ場や農業廃水からの農薬によって汚染されている.活性炭による吸着処理は農薬類の処理に有効であるといわれているが,河川水などの環境水はフミン質などが含まれており,活性炭による農薬の処理を評価する場合,フミン質と農薬の相互作用を考慮した共存系の吸・脱着現象を明らかにしなければならない.
    そこで,本研究では農薬として2,4-Dを例にとり,2,4-Dとフミン質,およびそれらの共存系について活性炭による吸着実験を行い,吸着平衡関係を求めると共に,表面拡散係数を算出し,活性炭による2,4-Dの吸着性に及ぼすフミン質の影響について検討した.その結果,吸着等温線はフロイントリッヒ式で整理できた.フミン質の存在によって,2,4-Dの吸着性は有意に減少することが明らかとなった.加えて,2,4-Dを吸着させた活性炭にフミン質を吸着させたときの,2,4-Dの脱着を検討したところ,2,4-Dの脱着速度および脱着量は添加したフミン質濃度に依存することが明らかとなった.また,2,4-Dの選択的吸着処理を目指して共存系の吸着平衡を測定した結果,2,4-Dの選択的吸着処理には細孔の小さい活性炭を用いるのが有効であることが明らかとなった.以上のことからフミン質と農薬の共存系における農薬の活性炭による吸着処理の有効性が示された.
  • 澤田 佳代, 神田 真吾, 松田 仁樹
    原稿種別: ノート
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年29 巻3 号 p. 448-452
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2009/05/30
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    焼却飛灰の溶融過程で排出される飛灰を融解したプラスチック中で硫黄,水酸化カルシウムと共に523Kで加熱混練し,鉛の溶出抑制を試みた.実験は,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンの飛灰との混練による物理的封止効果,さらに硫黄と水酸化カルシウムを添加し,硫化物化を組み合わせた条件下での物理的-化学的封止効果の検討を行った.
    その結果,プラスチック添加量の増加に伴って鉛の溶出量はおよそ1/10まで減少したが,埋立基準値(0.3mg/l)を満たすことはできなかった.一方,飛灰(10g)とプラスチック(2.5g)の混練過程で硫黄(1.2–1.4g)と水酸化カルシウム(1.0–1.4g)を同時に添加することによって,鉛溶出量(247–299mg/l)は検出限界値(0.1mg/l)以下となり,鉛の不溶化が認められた.
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