近年,水道源水ともなる河川水がゴルフ場や農業廃水からの農薬によって汚染されている.活性炭による吸着処理は農薬類の処理に有効であるといわれているが,河川水などの環境水はフミン質などが含まれており,活性炭による農薬の処理を評価する場合,フミン質と農薬の相互作用を考慮した共存系の吸・脱着現象を明らかにしなければならない.
そこで,本研究では農薬として2,4-Dを例にとり,2,4-Dとフミン質,およびそれらの共存系について活性炭による吸着実験を行い,吸着平衡関係を求めると共に,表面拡散係数を算出し,活性炭による2,4-Dの吸着性に及ぼすフミン質の影響について検討した.その結果,吸着等温線はフロイントリッヒ式で整理できた.フミン質の存在によって,2,4-Dの吸着性は有意に減少することが明らかとなった.加えて,2,4-Dを吸着させた活性炭にフミン質を吸着させたときの,2,4-Dの脱着を検討したところ,2,4-Dの脱着速度および脱着量は添加したフミン質濃度に依存することが明らかとなった.また,2,4-Dの選択的吸着処理を目指して共存系の吸着平衡を測定した結果,2,4-Dの選択的吸着処理には細孔の小さい活性炭を用いるのが有効であることが明らかとなった.以上のことからフミン質と農薬の共存系における農薬の活性炭による吸着処理の有効性が示された.
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