心電図
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30 巻, 3 号
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Editorial
第26回 日本心電学会学術集会 学術諮問委員会指定トピックスより
不整脈の遺伝子診断
  • ―複数変異症例の検討―
    伊藤 英樹, 清水 渉, 林 研至, 山形 研一郎, 坂口 知子, 大野 聖子, 牧山 武, 赤尾 昌治, 藍 智彦, 野田 崇, 宮崎 文 ...
    2010 年30 巻3 号 p. 195-199
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    先天性QT延長症候群は,イオンチャネル蛋白に関連する遺伝子変異が原因で心筋再分極異常をきたし,QT延長と致死性不整脈を発症させる疾患である.通常遺伝子変異は単変異であるが,複数の変異を有する症例も報告されている.全国4施設で遺伝子変異が同定された612症例の先天性QT延長症候群を単変異574例(LQT1 259例,LQT2 251例,LQT3 62例,LQT5 2例)と複数変異38例に分類し,臨床像を比較検討した.遺伝子診断された314例の発端者のうち,28例(8.9%)が複数変異症例であった.全612例の解析において,QTc間隔は複数変異症例で有意に延長しており(複数変異症例vs.単変異症例;501±58 vs. 477±53 msec, p=0.014),発症年齢も若年であった(複数変異症例vs.単変異症例;10±7 vs. 18±16歳,p<0.001).β遮断薬の内服率は複数変異症例で有意に高率であった.40歳未満の心イベントはどのサブタイプの単変異症例より,複数変異症例で高率であった.以上から,複数変異症例を有するQT延長症候群例の臨床像は単変異症例より重篤であることが示唆された.
  • ―心臓Na+チャネル病,Lamin A/C遺伝子関連心筋症―
    牧山 武, 静田 聡, 赤尾 昌治, 木村 剛, 堀江 稔
    2010 年30 巻3 号 p. 200-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群,房室ブロックに代表される徐脈性不整脈疾患は,加齢性変化にて多くみられるが,若年や家族性に認められる場合には遺伝的素因の関与が強く疑われる.今回われわれは,家族性徐脈性不整脈疾患の遺伝的背景を調べるために,家族性ペースメーカー植込み患者33症例(すべて発端者)を対象として候補遺伝子の網羅的スクリーニングを施行した.遺伝子解析の結果,33例中17例(51.5%)に心臓Na+チャネル遺伝子(SCN5A),またはLamin A/C遺伝子(LMNA)異常を同定した〔SCN5A異常8/33例(24.2%),LMNA異常9/33例(27.2%)〕.SCN5A異常を検出した8例中5例には,ほかの心臓Na+チャネル病の合併(Brugada症候群4例,QT延長症候群1例)を認めた.一方,LMNAは核膜の裏打ち蛋白であるLamin A,Cをコードし,その遺伝子異常により拡張型心筋症,心臓伝導障害,致死性心室性不整脈による突然死を引き起こす.本研究の結果,家族性ペースメーカー植込み患者には,突然死を引き起こし得る心臓Na+チャネル病(Brugada症候群,QT延長症候群)やLamin A/C遺伝子関連心筋症を合併している例が少なくないことがわかった.治療としては,ペースメーカー植込みではなく,植込み型除細動器や除細動機能付き両室ペーシング植込みが望ましい例もあり,家族性徐脈性不整脈症例における遺伝子解析の重要性が示唆された.
原著
  • 下島 桐, 東 祐圭, 山谷 清香, 若月 大輔, 田辺 彩夏, 森 敬善, 前澤 秀之, 本田 雄気, 江波戸 美緒, 鈴木 洋, 嶽山 ...
    2010 年30 巻3 号 p. 209-214
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    【目的】電気的肺静脈隔離術(PVI)時,アブレーション(ABL)カテーテル先端電極では単極誘導STa高の上昇が観察されるが,現在までABL中のSTa高の変化についての検討はなされていない.そのためPVI時におけるSTa高の時間経過とその意義を検討する.【対象および方法】11症例,通電時68点の局所電位波形を解析対象とした.PVI時,ABLカテーテル先端電極で単極誘導を記録し,通電中のSTa高の時間経過を記録検討した.ABLは先端8mm電極のABLカテーテルを用い,出力30~35W,電極温度50度設定で30~45秒間行い,通電中単極誘導,双極誘導を記録した.【結果】ABL開始とともにSTaは上昇し,10~20秒でpeakとなり,以後徐々に上昇の程度は軽減するが,ABL終了時はpeak時の88.7%であった.また,ABL終了1分後もpeak時の84.2%を示し,上昇が持続していた.これに対して双極電位はABL後,徐々に減高し,ABL終了時は前値の57.8%にまで減高した.【総括】PVI時,ABLカテーテル先端電極単極誘導のSTa高は通電直後から上昇し,通電中は上昇が持続した.その変化は双極誘導の波高,波形変化に伴っており,ABLの指標の一つになると考えられた.
Editorial Comment
原著
  • 中司 元, 藤原 昌彦, 深田 光敬, 安田 潮人, 小田代 敬太, 丸山 徹, 赤司 浩一, 馬場園 明
    2010 年30 巻3 号 p. 216-224
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    近年携帯型のイベントレコーダーが普及しつつあるが,ホルター心電計と比較した費用対効果分析はほとんどなされていない.そこで今回不整脈の精査目的に受診した症例を対象に,ホルター心電計に対する医療用イベントレコーダーの費用対効果分析を行った.費用は各々の保険点数から算出し,効果は治療対象となる不整脈が診断された患者数とした.2007~09年までに来院した連続107名の不整脈が疑われる症例に,ホルター心電計(48名)かイベントレコーダー(44名)のいずれかを割り付けた.残り15名はホルター心電計を割り付けたものの治療対象となる不整脈が診断されなかったためイベントレコーダーを貸与した.症例によっては不整脈の診断に至るまで複数回の検査を行ったが,全対象者でホルター心電図とイベントレコーダーの検査回数に有意差はなかった.またそれらの平均コストはイベントレコーダーがホルター心電図検査より低く(p<0.001),患者一人当たりの不整脈診断に要した総費用も同様であった.一方不整脈の検出率はホルター心電計が39.6%,イベントレコーダーが56.8%で有意差はなかった(p = 0.39).以上より今回使用したイベントレコーダーはホルター心電図検査に比較して明らかに費用対効果に優れ,動悸などの症状が強い割に不整脈発作の頻度が少ない症例に対してより医療経済的であると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 澤崎 浩平, 齋藤 誠, 武藤 真広
    2010 年30 巻3 号 p. 227-233
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.心電図で間欠性WPW(A型)症候群を認め,動悸発作を繰り返したためアブレーションを行った.プログラム刺激により房室回帰性頻拍が容易に誘発され,頻拍時の逆行性心房電位はdullな前半成分とsharpで振幅の大きい後半成分の二つの電位に分裂し,前半成分は冠静脈洞(CS)4-5が最早期で,後半成分はCS7-8が最早期であった.心室ペーシング時の室房伝導も同様であった.心房電位の波形から前半成分を左房電位,後半成分をCS musculature電位と推定し,心房電位の最早期を指標に,経大動脈アプローチによりCS4-5付近の僧帽弁輪側壁側の心房側にてアブレーションを施行した.1回目のアブレーション開始から6.0秒で副伝導路は離断された.その結果,房室結節を介する室房伝導が存在し,左房電位とCS musculature電位がほぼ癒合していると推定した.以後6ヵ月間,頻拍の再発は認めていない.
Editorial Comment
Point of View
心電学マイルストーン
心電図講義
心電学フロンティア2009(第44回理論心電図研究会)
  • 蒔田 直昌, 住友 直方, 関 明子, 渡部 裕, 福原 茂朋, 牧山 武, 堀江 稔, 萩原 誠久, 望月 直樹, Jean-Jacque ...
    2010 年30 巻3 号 p. 267
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
  • ―病理組織学的観点から
    井上 紳, 牧野 睦月, 太田 秀一, 酒井 哲郎, 斉藤 司, 小林 洋一, 小川 玄洋, 松山 高明
    2010 年30 巻3 号 p. 268-274
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    心房細動の発生機序は,期外収縮の連発が心房受攻性を刺激することで誘発された機能的リエントリーであると考えられている.先行する期外収縮連発の機序としては肺静脈壁左房筋袖細胞からの撃発活動が有力視されており,一方の機能的リエントリーの基質としては左房後壁周囲の心筋構造の不均一性が想定されている.そのため,それぞれが高周波通電治療の対象になっている.肺静脈壁左房筋袖は4本の肺静脈で囲まれた左房後壁を構成する心房筋と発生学的に同一とされているものの,近年の遺伝子学的検討から本来の心筋組織とは異なる肺原基の中胚葉起源説が提唱され,潜在的自動能の保持や短い不応期など,心房のほかの部分とは電気生理学的性質が異なることが示唆されている.長い肺静脈筋袖は心筋配列が複雑だが,顕微鏡的観察では肺静脈末梢側で徐々に心房筋袖細胞が小型化し,その先端では洞結節細胞に類似したものがみられる.機能的リエントリーの基質が存在する左房後壁周囲に関しては,心内膜面の肉眼的観察では櫛状筋が目立つ右房と異なり全体が白く平滑で,僧帽弁前庭部と後壁や天蓋部との境界が不明瞭である.それに対し,心外膜面の肉眼的観察では肺静脈開口部周囲を冠静脈洞筋束やMarshall筋束,Bachmann束,一次および二次中隔が取り巻き,きわめて複雑な構造を示すことがわかる.特に冠静脈洞筋束は冠静脈洞内径の2~3倍の広さで分布しており,機能的リエントリーの発生に関与すると思われる.加齢とともに間質線維化や脂肪浸潤により組織不均一性は亢進するが,左房周囲の心房筋線維化には心房の発育・分化に伴うapoptosisも関与していることが予想される.現在の非薬理学的不整脈治療は,肺静脈心房筋袖や左房周囲の大循環系静脈筋袖の付着部をアブレーション・隔離することが主流であり,組織多様性の軽減がその本質と考えられる.
  • ―臨床的立場から
    宮内 靖史, 林 明聡, 岩崎 雄樹, 森田 典成, 小林 義典, 加藤 貴雄, 水野 杏一
    2010 年30 巻3 号 p. 275-280
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/03
    ジャーナル フリー
    Purkinje線維は刺激伝導に特化した筋線維組織である.虚血に対する耐性が強く,動物の心筋梗塞モデルにおいて残存Purkinje線維が心室頻拍(VT)の起源となることが知られている.ヒトにおいては心筋梗塞後の多形性VTや心室細動(VF)を誘発する期外収縮の発生源となるとともに,Purkinje線維網自体がその後のリエントリーの基質となりうることも判明している.正常心でも,ベラパミル感受性特発性左室VTや特発性VFにPurkinje線維が関与している.一方,Ligament of Marshall(LOM)は左大静脈の遺残構造物であり,心筋線維を含むため,心房頻拍や心房細動に関連した異常自動能の発生源となるとともに,左房や肺静脈との間に多数の連結点を有することで心房性不整脈の基質となる.これら微細な構造物の描出は現在の画像診断の精度では不十分であり,不整脈との関連においては不明点が多い.今後の画像診断の精度向上に期待する.
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