日本呼吸器外科学会雑誌
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15 巻, 2 号
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  • 川村 光夫, 高橋 保博, 折野 公人, 佐澤 由郎
    2001 年 15 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1987年から1999年までの肺縦隔手術例1, 005例を対象に術後合併症とその背景因子を検討した.術後合併症は106例 (10.5%) にみられ, その内訳は喀痰喀出不能33例, 肺瘻14例, 心房細動13例, 後出血11例, 術後膿胸6例, 気管支血管瘻1例, 冠動脈攣縮による急性心筋梗塞1例, 術後肺炎ARDS1例, 他35例であった.このうち心筋梗塞や気管支血管瘻など5例が手術死亡となった.1ヵ月以降の在院死亡の3例は気管支瘻後膿胸2例と肺癌の進行による癌死であった.これら手術死亡と在院死亡を合わせた術後死亡 (8例) はすべて肺癌症例で全手術例の0.8%, 肺癌手術例の1.6%であった.術式別では葉切除術の0.8%に対し肺全摘術11.1%と肺全摘術での術後死亡が高率であった.しかし, 1994年以降は高齢者の肺全摘の際に有茎心膜脂肪織の被覆を行い気管支瘻の例はなくなった.また, 最近の異型狭心症の例には周術期のリスクを評価する目的で術前に冠動脈攣縮誘発試験を導入した.
  • 三浦 一真, 森田 純二, 吉澤 潔, 長尾 妙子, 吉田 卓弘
    2001 年 15 巻 2 号 p. 78-81
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    一側肺全摘除後, SF6による胸腔内管理を6年以上受けている8例を対象とし, 臨床所見, 経過につき検討した.1: SF6による胸腔内管理は長期にわたり安全に施行可能であった.2: 術後1年以上では施行回数は年平均2回程度となる.胸膜の肥厚によりSF6の吸収が減少し, 胸腔内圧が保持されるためと考えられた.3: 腹部手術, 内視鏡, 放射線, 化学療法は良好なPSで施行可能であった.
  • 杉 和郎, 坂野 尚, 佐藤 泰之, 金田 好和, 江里 健輔
    2001 年 15 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    我々は比較早期と診断される非小細胞肺癌の患者において, 色素を用いたセンチネルリンパ節同定が可能か, センチネルリンパ節生検の正診率および有用性を検討した.cT1N0M0の非小細胞肺癌患者25例を対象とした.3ml1%isosulfan blue dyeを腫瘍周囲3~4個所に分注した.操作中に最初に青色に染色されるリンパ節があればセンチネルリンパ節とした.術後病理学的N因子は25例中22例 (88.0%) はN0であり, 2例 (8%) はN1, 1例 (4%) がN2であった.全25例中センチネルリンパ節は11例 (44%) で同定できた.11例中9例はセンチネルリンパ節にも, 他のリンパ節にも転移を認めなかった (NO).他の2例のセンチネルリンパ節には転移を認めた.全25例中14例でセンチネルリンパ節が同定できなかった.これら14例では病理学的に13例がN0であり, 1例がN1であった.
  • 陳 豊史, 辰巳 明利
    2001 年 15 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    確定診断の困難な肺野末梢腫瘤性病変に対し, CTガイド下に糸付きフックワイヤーを用いてマーキングを行い, 胸腔鏡下肺部分切除を施行した25例について, マーキングの有用性や安全性の観点から検討した.病変の大きさは平均10.4±4.8mmであり, 10mm以下が14例であった.胸膜からの深さは平均5.5±6.7mmで, 胸膜変化のない14例ではマーキングがとくに有用であった.マーキング所要時間は平均18.6±5.4分で, 手術開始から標本切除までの時間は平均27.8±17.6分であった.全面癒着の1例を除き, 胸腔鏡下で肺部分切除を行い得た.術中病理診断で全例確定診断し, 永久標本での診断とに相違はなかった.合併症は気胸9例, 一過性脳虚血発作1例であった.以上より, 本法は簡便かつ迅速に行える手法で, 肺野末梢病変に対し胸腔鏡下肺部分切除を行う上で有用である.また, 気胸などの合併症に留意し, マーキング後は可能な限り早く胸腔鏡手術を行うべきである.
  • 田中 良太, 雨宮 隆太, 朝戸 裕二, 清嶋 護之, 岡 大嗣, 池田 真美, 吉見 富洋
    2001 年 15 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1991年11月から1999年12月まで, 当科において大腸癌転移性肺腫瘍として切除した20例中, 肝転移切除が施行された10例を対象とした.男性7例, 女性3例, 年齢は平均61歳, 原発部位は結腸4例, 直腸6例であった.原発巣の病期はII期4例, III期1例, IV期5例であった.転移経過別に分類すると原発腫瘍術後肝転移切除3例, 原発腫瘍術後肝肺同時転移切除2例, 同時性肝転移術後肺転移切除4例, 同時性肝肺転移切除1例であった.手術関連死亡はなく, 全例の原発腫瘍切除後の3年生存率は66.7%, 5年生存率は22.2%であった.異時性転移5例と同時性転移5例の比較は異時性転移で予後良好であるが有意差は認められなかった.異時性転移に対する手術療法の有効性は一般的に認められているが, 同時性転移に対する有効性は明らかではなく, 補助療法を含め手術適応の検討が必要と思われた.
  • 齊藤 幸人, 大宮 英泰, 庄村 裕三, 得能 正英, 南 健一郎, 今村 洋二, 中谷 壽男
    2001 年 15 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1980年1月より1999年3月までに経験した胸部外傷229例を対象に大阪府守口市に拠点を置くわれわれの施設における外傷の特徴と治療成績について報告する.受傷形態は鈍的外傷が90%以上を占め, 受傷機転では交通事故が191例と最も多く, 高所落下が23例 (10%), 胸部刺傷が15例 (6.5%) であった.CPAOAを含む受傷後24時間未満の死亡は41例 (18%) であり, 受傷後24時間以降から3週間以内での死亡例は32例 (14%) であった.年齢別分布では若年者および働き盛りの交通事故が多くを占めていた.高所落下によるものは救命が難しく, 死亡率は高率であったが胸部刺傷による致死率は低く, 当救命センター搬入患者における救命率は100%であった.一方, 交通事故による鈍的外傷例では診断確定が遅れる症例があり救命率の向上には初療にあたる救急医と胸部外科専門医の密な連携が必要である.
  • 浜口 伸正, 藤島 則明, 環 正文, 鳥羽 博明
    2001 年 15 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    52歳男性で左主気管支および右中間幹に発生した多発性気管支顆粒細胞腫症例を経験した.左主気管支内の腫瘤は17mmと大きく主気管支を80%前後に狭窄する状態であり, Nd-YAG laserにて腫瘤を焼灼し狭窄を改善した後, 左主気管支管状切除術を行った.右中間幹の腫瘤は約3mmと小さく経気管支鏡的に鉗子除去術を施行, 10ヵ月後の気管支鏡検査では腫瘍は消失し生検でも腫瘍細胞は認めなかった.多発性気管支顆粒細胞腫の本邦報告例は本症例が3例目であり文献的考察を加え報告する.
  • 術後長期生存例の検討
    西尾 渉, 八田 健
    2001 年 15 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で, 胸壁浸潤が疑われた右肺S1原発の大細胞癌に対し, 局所照射40Gyと化学療法 (CDDP 150mg, VDS 5mg×3) 後, 1995年5月23日, 右肺上葉切除術を施行した.病理学的分類はp-T2NOMOで完全切除であったが, 切除6ヵ月後から食欲不振が出現し, 左副腎腫瘍が発見された.肺癌転移が疑われたが, 他に明らかな転移巣が認められなかったため1996年2月21日副腎摘出術を施行し, 病理学的にも肺癌の副腎転移と診断された.その後4年半経過するが, 現在まで無再発生存中である.
    肺癌の副腎転移は予後不良とされていたが, 最近になって, 長期生存例の報告が増加している.画像診断法の進歩によって早期発見が可能になったためと推測されるが, 原発巣が治癒切除できており, 転移が片側副腎単独の症例では, 積極的に副腎摘出術を施行することによって長期生存が期待できる.
  • 狭間 研至, 明石 章則, 前畠 慶人, 中村 憲二
    2001 年 15 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.主訴は徐々に増強する呼吸困難感.胸部X-pおよびCT写真にて, 気管上部の圧排と気管の狭窄を認めた.気管支鏡検査では声門直下に頚部気管の膜様部左側から隆起する腫瘍を認め, 内腔は約90%狭窄していた.生検にて気管腺様嚢胞癌の診断を得た.気道確保のためにNd: YAGレーザーにて腫瘍を焼灼し, シリコン製のDumonステントを硬性気管支鏡下に留置した.腫瘍及び左鎖骨上窩リンパ節に計49.6Gyの術前放射線照射を行い, 効果はPRであった.その後, 頚部襟状切開下に第2気管軟骨輪から4軟骨輪を切除する気管管状切除術を施行した.術後反回神経麻痺を認めず, 発声機能が温存できた.術後16ヵ月目の現在, 局所再発や遠隔転移は認められない.
  • 伊藤 祥隆, 小田 誠, 太田 安彦, 呉 哲彦, 常塚 宣男, 渡邊 剛
    2001 年 15 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 男性.既往歴として4歳時に漏斗胸に対して胸骨翻転術を施行され, 14歳時にMarfan症候群と診断された.1994年に右自然気胸に対し胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.1996年2月に右気胸を再発し保存的に加療したが, 同年4月に右気胸を再々発し, 小開胸下に肺部分切除術を施行した.1997年2月15日に左背部痛と呼吸困難が出現し, 当科を受診した.胸部レントゲン写真にて左自然気胸と診断した.胸腔ドレーンを留置して保存的に加療するも改善しないため, 2月20日胸腔鏡下手術を施行した.肺尖部にブラが多発しており, これを切除した.Marfan症候群は気胸の合併率が高く, 本例のように体格の成長に伴って気胸を繰り返し再発することもあり, 注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 平井 文彦, 鶴田 伸子, 加藤 雅人, 中垣 充
    2001 年 15 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 男性.健康診断で左胸水を指摘された.自覚症状はなく, 胸部CTで左に中等度の胸水貯留を認めたが, 肺内に異常所見は認めなかった.サワガニ, イノシシなどの生食歴は明らかにできなかったが, 血清・胸水とも好酸球増加を認め, 肺吸虫症を疑い, 結核や悪性胸膜疾患除外の意味を含めて胸腔鏡検査を施行した.左横隔膜直上の胸壁に隆起を認め, 中央部より赤褐色の分泌物が排出していた.同部位を胸腔鏡下に切除した.摘出標本では虫体は確認できなかったが, 好酸球浸潤の著明な肉芽組織を認め.肺吸虫の胸腔内への侵入経路ではないかと推測した.術後に判明した, 血清・胸水中の肺吸虫抗体価上昇より肺吸虫と診断し, プラジカンテルの内服治療を行った.術後に胸水の再貯留や好酸球増多はなく, 経過良好である.
    肺吸虫の診断と治療において胸腔鏡が有用であると思われる症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 田中 壽一, 井内 敬二, 松村 晃秀, 末岐 博文, 桂 浩, 大倉 英司, 森 隆
    2001 年 15 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    患者は48歳の女性.30歳時, 右肺結核を発病し, 内科的治療を行うが再発排菌を繰り返し, 18年間に上葉, S6区域及び中葉の計3回右側肺切除を他院で行われた.1998年再排菌し, INH, RFPを中心とした多剤耐性で内科的治療が困難なためsecond opinion目的で当院紹介となった.胸部レントゲン写真及びCTスキャンでは残存している右肺底区S8, S10に2個の硬化性空洞を認めた.左肺には初発から結核病巣は出現していない.入院後1ヵ月間の経過観察及び呼吸機能検査の後, 自己血400ccを準備し右残存肺底区切除術を行った.術後1年経過したが, 再発兆候はない.18年間に3回の肺切除にもかかわらず排菌が持続する多剤耐性, 難治性肺結核患者に, 病巣が一貫して片側性で, かつ呼吸機能が温存されていたことから4回目の手術-残存肺全摘-を行い良好な結果を得た極めて貴重な症例を報告する.
  • 舘林 孝幸, 菅野 恵, 鈴木 利光, 新田 澄郎
    2001 年 15 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    27歳女性.1999年5月健診にて左中肺野に胸部異常陰影を指摘された.胸部X線写真, 胸部CTにて上舌区気管枝分岐部に辺縁明瞭な分葉傾向のみられる23×14mmの腫瘤を認めた.同年12月, 26×17mmと増大してきたため, 12月18日手術施行した.迅速病理診にて腺癌と診断し, 左上葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後病理診断では, 円柱状あるいは高円柱状細胞が管状腺管, 一部に小乳頭状構造を形成し増殖し, 胎生8~16週の胎児肺に類似した腺様構造を呈していた.所々にmorulesを認めた.間質は比較的乏しく, 紡錘形細胞が増殖し, 悪性像はなく肉腫成分を欠いていた.免疫染色ではNSE陽性, chromogranin A陽性であった.以上よりwell differentiated fetal adenocarcinomaと診断した.稀な腫瘍であり, 組織学的分類が未確立であり症例の蓄積が必要と思われるので報告した.
  • 白井 俊純, 矢野 真, 川口 悟
    2001 年 15 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    前縦隔・胸腺内に発生した海綿状血管腫の一例を経験したので報告する.症例は71歳男性で, 無症状であった.他病変精査の胸部CTで発見された.大動脈・肺動脈前方に位置する辺縁明瞭・内部均一の腫瘍で, 胸腺腫の疑いで胸骨正中切開でアプローチし, 腫瘍を含む胸腺摘出術を施行した.術後病理組織診断で海綿状血管腫の診断となった.前縦隔胸腺内に発生した海綿状血管腫は稀なので多少の文献的考察を加えて報告した.
  • 石山 貴章, 大和 靖, 土田 正則, 渡辺 健寛, 橋本 毅久, 林 純一, 梅津 哉
    2001 年 15 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性.自覚症状は無く検診で左中肺野に異常影を指摘された.胸部CTで空洞内に可動性の球状物を認め, 血清沈降抗体反応陽性より肺アスペルギローマと診断した.抗菌剤治療で画像上の改善を認めないため, 左S6区域切除およびS1+2c部分切除を施行した.病理学的に拡張した気管支からなる空洞とアスペルギルス菌よりなる菌塊を認めた.従来肺アスペルギローマは, アスペルギルス菌体が既存の肺内空洞病変に腐生的に定着, 増殖したものと言われてきた.しかし近年, 既存の肺病変を持たない`原発性肺アスペルギローマ'とも言うべき病態が報告されている.本症例は, 病理所見よりアスペルギルス感染が先行し, 二次的に気管支拡張による空洞を形成した原発性肺アスペルギローマであった可能性が示唆されたので報告する.
  • 笹本 修一, 島谷 慎二, 濱田 聡, 加藤 信秀, 高木 啓吾, 奥山 伸男, 山崎 史朗
    2001 年 15 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は2歳8ヵ月の男児で, 咳嗽, 呼吸困難のために当院に入院.胸部X線, CTで左上葉の過膨脹を認めた・全身麻酔下の気管支鏡検査で左上葉支のチェックバルブ状の狭窄を認め先天性肺葉性肺気腫と診断した.治療は左上葉切除を行い, 術後経過は順調であった.病理検査では左上葉気管支壁に異常は認めず, 原因不明であった.手術時の体重は正常下限であったが, 術後1年4ヵ月には体重は平均値にまで増加し, 先天性肺葉性肺気腫が患児の正常な成長に障害となっていた可能性が示唆された.
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