日本呼吸器外科学会雑誌
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34 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 矢島 澄鎮
    2020 年 34 巻 4 号 p. 196-199
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    原発性自然気胸における脱気療法は各種ガイドラインに推奨されているが,近年におけるその成績は明らかでない.脱気療法はその経過の全部又は一部を外来管理でき,その意義は大きい.今回,我々は,臨床研究として適応基準に適合し承諾を得られた20例に対し,脱気療法のみで手術まで待機完遂または10日間無増悪完遂を終点として検討した結果,合併症はなく完遂率は75%であった.同療法は原発性自然気胸に対する初期治療の選択肢になりうる.

  • 坂田 省三, 河内 利賢, 林 宗平, 佐藤 大輔, 四万村 三惠, 櫻井 裕幸
    2020 年 34 巻 4 号 p. 200-204
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    特発性血気胸は自然気胸に血胸を伴う比較的稀な疾患であるが,出血やそれに伴うショック症状から緊急手術の適応となることがある.2014年4月から2019年3月までに特発性血気胸に対し緊急手術を施行した8例について検討した.発症後中央値17.0時間(6-60)で緊急手術を施行した.ショックを呈していたのは5例であった.出血部位は全例肺尖部の壁側胸膜からであった.術前のドレーン出血量,術中出血と併せた総出血量の中央値は,それぞれ1350 ml(200-2000),1356.5 ml(400-3035)であった.術後ドレーン留置期間および術後在院日数の中央値は,それぞれ2.0日(1-6),4.5日(3-14)であった.8例中3例は自然気胸再発症例で,うち2例で自然気胸発症時の胸部CTにて肺尖部胸壁間に索状癒着を認めていた.肺尖部に索状癒着を認める自然気胸は積極的に手術適応とすべきである.

症例
  • 米井 彰洋, 森山 裕一
    2020 年 34 巻 4 号 p. 205-211
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性.近医に通院中,胸部単純X線にて左中肺野に腫瘤影を指摘され,当科へ紹介となった.当院で施行した胸腹部造影CTにて左S6に47 mm大の腫瘤影を認めたが,明らかなリンパ節腫大,遠隔転移はみられなかった.気管支内視鏡検査にて扁平上皮癌の診断であったため,胸腔鏡下左下葉切除を計画した.

    患者は経皮的冠動脈インターベンション術(percutaneous coronary intervention;PCI)後であったが,2年前の冠動脈造影(coronary angiography;CAG)では有意狭窄は認められなかった.抗血小板薬を継続下に,胸腔鏡左下葉切除を行ったが,術後2時間後に超遅発性ステント血栓症を発症した.血栓回収は成功したものの,low output syndromeにて同日永眠された.

    第一世代薬剤溶出性ステントの問題としてステント血栓症が挙げられる.我々呼吸器外科医にとって,PCI術後の患者の手術を行う際は,冠動脈ステントの種類および留置時期を事前に把握し,それに応じたリスク評価,及び対策を講じることが肝要であると思われた.

  • 宮本 竜弥, 三和 健, 窪内 康晃
    2020 年 34 巻 4 号 p. 212-216
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は高度精神遅滞合併の43歳女性.大量喀血を繰り返し,胸部CTで右中葉の気管支拡張と著明に発達した複数の流入動脈を認め,手術の方針とした.術前に動脈造影を行い,中葉動脈と気管支動脈,下横隔動脈,内胸動脈に高度シャントを認めた.術中の出血軽減目的に各動脈をほぼ全て塞栓した.手術は第5肋間開胸でアプローチ,中葉と胸壁,横隔膜との癒着を剥離し,流入する複数の内胸動脈と下横隔動脈を丁寧に結紮切離した.塞栓術による血流の低下で流入動脈の遮断は安全に行い得た.最後に太い気管支動脈を結紮切離し,中葉切除を完了した.合併疾患から術後の喀痰喀出困難を予想し,気管切開を行った.手術時間は223分,出血量は少量で無輸血であった.特に動脈シャントを伴う気管支拡張症において,術前塞栓術が術中の出血量軽減に有用と考えられた.

  • 末吉 国誉, 小林 正嗣, 中島 康裕, 森 恵利華, 石橋 洋則, 大久保 憲一
    2020 年 34 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は50歳男性.非結核性抗酸菌症の既往歴があり,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)についてステロイド内服で加療されていた.経過中に右上葉および右S6区域にそれぞれ空洞形成と内部の真菌球形成を認め,同側肺別肺葉・独立2病変の肺アスペルギローマの診断で外科紹介となった.術前の準備として,抗真菌薬VRCZを導入し,ABPAに対するステロイドの減量を試み,喀痰培養陽性で保菌状態にあった緑膿菌に対して術前からPIPC/Tazを使用した.手術は後側方切開第4肋間開胸下に,右上葉および右S6区域をEn blocに切除した.術後経過に大きな問題なく術後13日目に自宅退院となった.独立2病変のアスペルギローマについて同時切除を行った本邦報告例は稀である.手術侵襲が比較的高くかつ免疫抑制状態にある症例であっても,術前の感染症コントロールと手術時の工夫を行うことで,根治手術が可能であった.

  • 蜂須賀 康己, 藤岡 真治, 魚本 昌志
    2020 年 34 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は17歳男性.発熱と咳嗽を主訴に受診し,胸部単純X線写真で右肺炎と胸水を認め入院した.約1週間抗菌薬投与で加療されたが改善なく,当科を紹介された.著明な低蛋白血症と蛋白尿がみられ,ネフローゼ症候群の合併を疑った.造影CTで大量の胸水を認め,急性膿胸の所見であったが,同時に下大静脈血栓症も指摘された.ただちに下大静脈フィルター留置後,胸腔鏡下膿胸腔掻爬・ドレナージ術を行った.膿胸の治療と並行し腎病変の精査を行ったところ,尿蛋白32.5 g/日,抗Sm抗体陽性であった.さらに術後10日目に顔面に蝶形紅斑が出現し,以上経過と検査結果からSLEと診断した.腎臓内科で,ステロイド投与による加療が開始され,SLEの諸症状が改善し,術後4ヵ月目に退院した.急性膿胸を契機に診断されたSLEの1例を経験した.

  • 境澤 隆夫, 砥石 政幸, 小池 幸恵, 西村 秀紀, 草間 由紀子, 大月 聡明
    2020 年 34 巻 4 号 p. 228-233
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,男性.他院で関節リウマチに対しMethotrexate(MTX)が開始され,3ヵ月後の胸部CTで前縦隔腫瘍を指摘された.MTX中止後も腫瘍が残存するため当科を紹介受診した.CTとMRIでは小結節が多数集簇した形態を示し,Fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)でstandardized uptake value(SUV)2.19の集積を認めた.悪性リンパ腫,胸腺過形成などを疑い胸腔鏡下胸腺全摘術を施行したが,病理診断では多房性胸腺囊胞と診断された.画像上まれな所見を呈し術前診断が困難であった多房性胸腺囊胞の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 西村 友樹, 岡田 悟, 常塚 啓彰, 石川 成美, 下村 雅律, 井上 匡美
    2020 年 34 巻 4 号 p. 234-239
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性,左上葉肺腺癌(cT2aN0M0 Stage IB)に対し左上葉切除術を施行.術後発熱を認めCT検査で左肺炎と肺門に限局した膿瘍を疑った.Ampicillin/Sulbactamを投与するも熱型は改善せず,術後17日目に膿胸の診断で再開胸ドレナージ術を施行.胸水培養で多剤耐性菌Streptococcus mitisを検出し,抗菌薬をLevofloxacin+Clindamycinに変更し左肺浸潤影は改善したが右肺斑状影は悪化した.気管支肺胞洗浄を施行し,リンパ球数の増加を認めたためまず薬剤性肺炎を疑い抗菌薬を中止したが陰影の改善はなく,呼吸状態は悪化し低酸素血症を認めた.除外診断により器質化肺炎と考えステロイドパルス療法およびプレドニゾロン維持療法を行い,呼吸状態と右肺浸潤影は速やかに改善した.外来でステロイドを漸減中止し器質化肺炎の再燃なく術後1年経過している.肺癌術後の難治性肺炎肺炎では本例のような二次性器質化肺炎を考慮する必要がある.

  • 末吉 国誉, 石橋 洋則, 森 恵利華, 中島 康裕, 小林 正嗣, 大久保 憲一
    2020 年 34 巻 4 号 p. 240-245
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は75歳女性.胸部打撲後に貧血を来し,CT検査で右血胸と縦隔側血腫,および辺縁に石灰化を伴う右横隔膜上腫瘤を指摘された.血胸については左胃動脈の右縦隔・横隔膜枝に対して透視下塞栓術を施行し止血を得られ,4ヵ月の経過で縦隔側血腫は縮小した.右横隔膜上の腫瘤は緩徐に増大し,胸腔内Chronic Expanding Hematoma(CEH)の術前診断で開胸腫瘤摘出・横隔膜再建術を施行した.病理標本は新旧混在する血腫の所見でCEHとして矛盾なかった.今回の胸腔内CEHと外傷性血胸の関連について考察を加え,本症例を報告する.

  • 岩谷 和法, 松石 健太郎, 吉岡 正一
    2020 年 34 巻 4 号 p. 246-249
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は64歳男性.人間ドックでの胸部CTにて左上葉に2.5 cm大の結節影を認め,当科へ紹介受診となった.精査にて肺癌が強く疑われたため手術の方針となり,ダブルルーメンチューブによる分離肺換気下に胸腔鏡下左上葉切除および2群リンパ節郭清を行った.上下葉間の分葉は良好で葉間形成は不要であった.終刀時,胸腔ドレーンからエアリークは認めなかったが,気管内チューブ抜去後に咳嗽が出現した後から激しいエアリークと血性排液を認めるようになった.再度麻酔導入し胸腔鏡にて左胸腔内を観察すると,左下葉肺門部の臓側胸膜が肺実質から剥離しており,抜管時の咳嗽による肺損傷が疑われた.

  • 中司 交明, 近藤 正道, 中富 克己, 佐々木 英祐, 内藤 愼二, 岡 忠之
    2020 年 34 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性,呼吸困難を主訴に診断に至った右中葉腺癌pT2bN0M0,StageIIAである.右側大動脈弓(Stewart分類TypeI)を伴っていたが,その他先天性心疾患の合併は認めなかった.胸部大血管3D-CTでは,上行大動脈から順に左腕頭動脈,右総頚動脈,右鎖骨下動脈が分岐し,下行大動脈に大動脈憩室を認めた.手術は右中葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.縦隔リンパ節郭清に際しては,右反回神経が大動脈弓下を反回していることを確認し,温存した.術後嗄声などの合併症は認めなかった.右側大動脈弓を伴う肺癌に対する手術を行う際は,反回神経走行と縦隔リンパ節の郭清範囲に留意する必要があるが,右側大動脈弓を伴う原発性肺癌の報告例は少なく,今後症例を蓄積して検討する必要がある.

  • 小澤 広輝, 中尾 将之, 一瀬 淳二, 松浦 陽介, 奥村 栄, 文 敏景
    2020 年 34 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    現在,自動縫合器は組織の安全な閉鎖・切離のために頻用されている.今回,気管支断端ステープルが肋間動脈を損傷し,術後出血を来した症例を経験したため報告する.73歳,男性.右肺下葉S6-10境界部に増大傾向の結節影を認めた.原発性肺癌疑い,cT1miN0M0 stage IA1の診断で胸腔鏡下右下葉切除,ND2a-1を施行した.帰室5時間後に血性排液増加と血圧の低下を認め,緊急手術を施行した.椎体前面を走行する肋間動脈から出血を認めたため,刺通結紮にて止血を得た.気管支断端が出血部に近接しており,ステープルの接触,摩擦による血管損傷と考えられた.気管支断端と椎体前面をPGA sheetとフィブリン糊製剤で被覆して手術終了とした.ステープルでの損傷による術後出血に関して報告はあるが,気管支断端による肋間動脈損傷の報告はない.術中所見によっては,なんらかの予防策を講じる必要があると考えられた.

  • 船﨑 愛可, 岩井 俊, 関村 敦, 本野 望, 薄田 勝男, 浦本 秀隆
    2020 年 34 巻 4 号 p. 260-264
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    経過中に病変の増大と縮小を認めた粘液産生性肺腺癌の1切除例を経験したのでここに報告する.胸部CTで右肺上葉に結節影を指摘され,気管支鏡検査を施行したが確定診断に至らず経過観察されていた.1ヵ月後,咳嗽が出現し,結節影の急激な増大と炎症反応の増悪を認め,肺炎の診断で入院した.Tazobactam/Piperacillin Hydrate(TAZ/PIPC)にて病巣の縮小と炎症反応の改善を認めたものの,結節影は完全には消失せず,手術にて粘液産生型の肺腺癌と診断された.抗菌薬投与により病変の縮小を認める場合でも,病変が遺残するときは肺癌が併存している可能性がある.最適な治療時期を逸しないように,十分な検討と慎重な経過観察が必要と考える.

  • 土生 智大, 三竿 貴彦, 川名 伸一, 鹿谷 芳伸, 青江 基
    2020 年 34 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    Müller管囊胞は発生学的にMüller管の退化不全により生じ,男性骨盤内に好発するとされ,後縦隔発生は稀である.後縦隔Müller管囊胞は閉経前後の女性に多く,椎体近傍に好発するとされる.症例は46歳,女性.検診で胸部異常陰影を指摘されたが放置していたところ,3年半後の検診で陰影の増大を指摘され当科を受診した.胸部CTでは第4,5胸椎の椎体に接する囊胞性病変を認めた.1年半の経過観察で病変の増大を認め,胸腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.免疫組織学的検査で,囊胞壁内面の上皮細胞にエストロゲンレセプター及びプロゲステロンレセプターの発現を認め,Müller管囊胞と診断された.閉経前後の女性で胸椎の椎体近傍に単房性囊胞を認めた場合,Müller管囊胞も鑑別に考慮されるべきである.また本症を疑い経過観察を行う際には,囊胞が増大する可能性を踏まえ,手術時期や適応についても検討する必要がある.

  • 藤井 祥貴, 三上 厳, 西田 達
    2020 年 34 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    肺癌の術後補助化学療法として行われるUFT療法の副作用として播種性血管内凝固症候群(DIC)は稀である.症例は66歳男性.HBV既感染がある以外に既往歴はない.右肺S6bの肺腺癌に対し右肺下葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行し,術後補助化学療法として術後1ヵ月よりUFT療法を開始した.しかし内服6週間後の外来受診時に38℃台の発熱と体調不良を訴え,肝障害を認めたため緊急入院とした.UFTの内服を中止し肝庇護療法を行ったが,入院翌日に急性期DICを発症した.このためトロンボモデュリンの投与を開始したところ状態は改善し,入院後23日で退院となった.本例はHBV-DNA量の上昇を認めなかったため,HBVの再活性化による肝障害ではなくUFTによる薬剤性肝障害と判断した.UFTは外来診療で投与し易い抗癌剤であるが,薬剤性肝障害やDICが起こりうるため,少なくとも投与後2ヵ月間は十分な観察が必要である.

  • 丸山 来輝, 松島 圭吾, 三窪 将史, 松井 啓夫, 塩見 和, 佐藤 之俊
    2020 年 34 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    無汗性外胚葉形成不全症はNEMO(Nuclear factor-κB essential modulator)遺伝子異常やそれに伴う免疫不全を合併する遺伝性疾患である.本症に合併した感染性肺囊胞に対し手術を施行した症例を報告する.症例は23歳男性.1歳時に無汗性外胚葉形成不全症,先天性右肺囊胞と診断.生後から肺炎,感染性肺囊胞を繰り返し,徐々に抗生剤抵抗性となった.23歳時に大腸型クローン病と診断され,ステロイド剤や生物学的製剤による治療開始にあたり,感染性肺囊胞の制御目的に外科切除の方針とした.右肺下葉の囊胞はS6-10に及び,右肺下葉切除術を施行した.術中の体温管理は,無汗により高体温となりやすいため加温器は使用しなかった.抗生剤は術中のみCLDMを600 mg使用した.術後1ヵ月程度でクローン病に対しステロイド剤開始予定であったため気管支断端の肋間筋弁被覆を行った.術後はネブライザーによる去痰に努めた.術後合併症なく経過し外科切除が有効であった.

  • 武田 裕介, 桒田 泰治, 平良 彰浩, 篠原 伸二, 黒田 耕志, 田中 文啓
    2020 年 34 巻 4 号 p. 281-284
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    今回我々は左側臥位手術後に下肢コンパートメント症候群を発症した一例を経験したので報告する.

    症例は84歳男性.既往歴は両下肢重症閉塞性動脈硬化症.右下葉肺癌に対して左側臥位で開胸右下葉切除を行った.術中に血圧低下,酸素化低下を認め,一旦閉創のうえ仰臥位に戻し,状態が改善したために再度左側臥位とし右下葉切除を行った.術後1日目に右下肢の疼痛,腫脹を認め,右下肢コンパートメント症候群の診断で,減張切開術を行った.術後のコンパートメント症候群は砕石位や頭低位での報告が多いが,呼吸器外科領域,側臥位での報告はほとんどない.本症例を踏まえた発症リスクや予防策について文献的考察を含め報告する.

  • 川岸 耕太朗, 大瀬 尚子, 石田 裕人, 杉浦 裕典, 福山 馨, 新谷 康
    2020 年 34 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 2020/05/15
    公開日: 2020/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は77歳男性.主訴は胸部異常陰影.70年前に布団の上で転倒し,針が胸壁に刺入した.体表からの摘出術を施行したが発見できず摘出不能であった.その後は無症状のため経過観察されていたが,今回MRI検査を施行するため,摘出を希望された.胸部CTで右第9肋骨後面に沿うように数片の高輝度の針状異物陰影を認めたが,胸腔内か胸腔外かは判別困難であった.実際には壁側胸膜内に存在し,胸腔鏡下異物除去手術を行った.

    これほどまで長く留置された伏針の摘出報告はなく,長期留置により針が脆弱化しており,術中透視を用いることで胸腔鏡下に完全摘出しえた一例を経験したので報告する.

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