日本呼吸器外科学会雑誌
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16 巻, 2 号
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  • 浅岡 峰雄, 岡川 武日児
    2002 年16 巻2 号 p. 97-100
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対する胸腔鏡手術は, いまや標準的手術になりつつある. しかし, かつての開胸手術に比し術後の再発率が高いとの報告が多く, その対策として, 壁側胸膜の擦過・切除, 肺尖部の各種材料による被覆, フィブリン製剤の撒布などの付加処置を推奨する報告もある. 腋窩開胸時代には, ブラを吸収性の糸で丁寧に縫縮していたのであるから, 胸腔鏡で同様に行えばよい成績が得られる可能性がある. 最近の約4年間, 自動縫合器を用いずに, 吸収性の縫合糸で縫縮した症例を集めて, その術後再発などについて検討した. 参考として, 同期間の自動縫合器を用いた症例の成績も検討した. 自動縫合器を用いなかった症例は28例で, 術後1年間では再発は認められず, 満足の行く成績であった. 小型少数のブラに限れば, 付加処置は必要とは考えられず, 縫合糸による縫合縫縮のみで十分であると思われた.
  • 赤嶺 晋治, 岡 忠之, 村岡 昌司, 永安 武, 佐野 功, 近藤 正道, 田川 泰, 綾部 公懿
    2002 年16 巻2 号 p. 101-105
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当科で行った開胸による胸腺腫手術症例67例を臨床病理学的に検討し, 胸腔鏡下胸腺胸腺腫摘出術を想定した場合の妥当性について考察した. 腫瘍が胸腺内に限局していると術中判断された34例中30例 (88.2%) は病理学的に被膜浸潤のない胸腺腫であった.肉眼的に合併切除の必要であった33例中4例 (12.2%) にリンパ節転移がみられた. 限局型胸腺腫に対する胸腺腫摘出術10例中1例の再発は, 切除に際して腫瘍が播種したものと考えられた. 播種性病変は可及的切除で4例中2例が5年以上生存した. 胸腔鏡下の胸腺腫に対する手術の適応は, 臨床的および胸腔鏡所見から非浸潤型胸腺腫であること, 腫瘍を露出することなく胸腺胸腺腫摘出ができることが必要と考えられた. 浸潤型胸腺腫と播種性病変は開胸への移行が必要と考えられた.
  • 吹野 俊介, 深田 民人, 池淵 正彦, 三和 健, 足立 洋心
    2002 年16 巻2 号 p. 106-112
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    原発性非小細胞肺癌切除例のうちDOEOの156例に, 開胸時胸腔内洗浄細胞診 (以下PLCとする) を施行して, その臨床的意義を検討した. PLC陽性例は11例 (7.1%) であった. PLC陽性例は, 組織型では腺癌が8例 (72.7%) と多く, 病理病期ではI期6例, II期以上は5例に認められた. PLC陽性例は胸膜浸潤陽性例, 血管侵襲陽性例に有意に多く, またリンパ管侵襲, リンパ節転移との相関は認められなかった. PLC陽性例の5年生存率は22.7%, 陰性例55.8%で, 陽性例と陰性例に有意差を認めた. さらにI期陽性例の5生率33.3%, 陰性例72.4%で有意差を認めるが, II期以上では, 陽性例と陰性例に有意差は認められなかった. 胸腔内再発は, PLC陽性例は再発例8例中2例, 陰性例は52例中20例であった. 以上より, PLC陽性は予後不良で, 特にI期においては重要な予後因子であり, 癌の局所浸潤よりも全身への微小転移を示唆した.
  • 神崎 正人, 大貫 恭正, 西内 正樹, 舘林 孝幸, 小山 邦広, 杉村 雅秀, 新田 澄郎
    2002 年16 巻2 号 p. 113-116
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    重症冠状動脈病変を有する肺癌肺切除症例では致命的な心合併症の発生が危惧され, 手術適応, 術式の選択, 周術期管理には注意を要する.
    1987年7月から1998年12月までに原発性肺癌で肺切除術を施行した694例中, 虚血性心疾患 (以下IHD) 合併肺癌は69例 (9.9%) で, 4例の重症虚血性心疾患合併原発性肺癌に対し大動脈内バルーンパンピング (以下IABP) を併用し安全に肺切除を行い, 良好な結果を得たので報告する. 抗凝固療法に伴う出血量の増大に注意することで, 冠動脈血行再建が困難な高度冠状動脈病変を有する肺癌症例において, IABPを挿入することで周術期心合併症を回避した肺切除は可能である.
  • 内海 朝喜, 城戸 哲夫, 安川 元章, 吉川 智, 高松 純平, 竹内 麦穂
    2002 年16 巻2 号 p. 117-120
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下手術の欠点の一つに, 術中の触診が出来ないことがあげられる.我々は, 胸骨下から術者の片手を挿入し, 触診下に行う胸腔鏡下手術 (Hand-assisted Thoracoscopic Surgery;HATS) を肺・縦隔病変26例に施行したのでその有用性と問題点について報告する.男性12例, 女性14例, 平均年齢58.1 (37-76) 才.肺12例, 縦隔10例にてHATSで手術を完遂しえた.肺部分切除術11例と縦隔嚢胞摘出術施行例6例の手術時間は平均それぞれ88分, 137分であった.右中葉切除術1例, 拡大胸腺摘出術4例もHATSにより施行しえた.HATSは, 操作の確実性が高く, VATSから開胸への前段階のオプションとして有用であった.また, 視認しにくい末梢性肺病変や縦隔腫瘍がHATSの最もよい適応と考えられた.一方, 標準開胸への移行を要した症例もあり, HATSの適応に関しては術前の充分な検討が必要である.
  • 渡辺 直樹, 山下 裕
    2002 年16 巻2 号 p. 121-127
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年, さまざまな多剤耐性細菌が報告され, 臨床上大きな問題となっている. われわれは特別な既往疾病を有さない健常人に市中感染にて発生した, 重篤なペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) 膿胸を続けて2例経験した. 症例1は34歳, 男性で膿胸の保存的治療中, 胸水中にPRSPが同定された. 胸腔鏡下ドレナージを行い, vancomicinによる胸腔内持続洗浄, 静脈内投与にて軽快した. 症例2は62歳の男性で, PRSP同定後, 同様の治療を開始した. 症状消失し, トロッカー抜去したが, 抜去後の瘻管より感染が再燃し, 開胸開窓ドレナージを要した.
  • 上林 孝豊, 児玉 憲, 東山 聖彦, 横内 秀起, 高見 康二, 新保 雅也
    2002 年16 巻2 号 p. 128-132
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    62歳女性, 甲状腺乳頭癌術後12年目に, 胸部X線で右肺上葉に径1.5cm大の孤立性病変の指摘を受け, 当施設を紹介された. 胸部CTでは, 陰影は境界明瞭な類円形を呈し, 良性腫瘍あるいは肉芽腫等を含む炎症性腫瘤が疑われ, 経過観察とされた. 半年後のCTで僅かに増大傾向を認めたため手術となった. 開胸下術中肺穿刺細胞診で核内封入体を認める乳頭癌との診断を得, 右肺上葉切除術を行った. 術後病理検査ではサイログロブリンに対する免疫染色で陽性に染まり, 甲状腺乳頭癌の肺転移と診断された. 本症例は, 甲状腺癌術後12年経って見つかった孤立性病変であることより, 術前に甲状腺癌肺転移と診断することが困難であった. 特に孤立性の甲状腺癌肺転移の外科切除報告はまれであり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中川 達雄, 田中 嘉人, 吉田 仁, 中川 正清
    2002 年16 巻2 号 p. 133-137
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性. 過去に血痰の既往があり, 喀血にて入院となる. 気管支鏡検査にて中葉気管支入口部に凝血塊および拍動する隆起性病変を認め, 動脈造影にて胸部大動脈より分岐する拡張, 蛇行する気管支動脈を認めたことより, 気管支動脈蔓状血管腫と診断した. 右開胸下に気管支動脈結紮術を施行したが, 手術後3年6カ月後に再喀血を来たし再入院となった. 動脈造影で胸部大動脈より分岐する気管支動脈の血流残存および右鎖骨下動脈より拡張し蛇行する気管支動脈を認め, 気管支動脈塞栓術を施行した. 塞栓術後3年6カ月後の現在, 血痰, 喀血症状は認めていない. 気管支動脈蔓状血管腫は比較的稀な症例であり, これまでに治療後の再発は報告されていない. 気管支動脈への血流は複数の血管が関与している可能性があり, 本症の治療において術前に原因血管を十分に検索することが重要と考えられる.
  • 八柳 英治, 草島 勝之, 鈴木 卓康, 櫻田 卓
    2002 年16 巻2 号 p. 138-143
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は29歳の女性. 繰り返す肺炎の精査加療目的で当科入院となった. 胸部XP, CTでは左下肺野に嚢胞状陰影が認められた. 気管支鏡検査では可視範囲内に異常は認めず, その分枝も正常であった. 臨床的に病変肺と正常肺の気管支系に交通があると考えられたが, 血管造影にて腹腔動脈に由来する異常血管が認められたことから肺分画症の診断にて手術を行った. 前側方切開にて開胸したところ, 横隔膜から左下葉に流入する異常血管が確認され肺葉内肺分画症と診断した. 術式は, 健常部との境界が不明瞭で病変の取り残しの恐れがあると判断し下葉切除術を選択した. 切除標本を用いた造影では, 異常動脈は下肺静脈に還流していた. 本例は, 気管支・肺動脈の分枝が正常であり, 異常血管が弾性動脈であったことから副肺芽に由来するPryce III型の肺葉内肺分画症であり, 炎症性に正常肺の気管支との間に交通が生じたと考えられた.
  • 高橋 豊, 中島 尊, 小林 孝暢, 玉田 二郎, 大政 貢
    2002 年16 巻2 号 p. 144-149
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    術前化学療法の効果判定が困難であった肺小細胞癌2例を経験した. 症例1は70歳, 男性. 化学療法により主腫瘍は縮小したが, 同一葉内に変化のない円形陰影が存在した. 手術の結果, 円形陰影は腺癌であり, 小細胞癌との同時性多発肺癌であった.症例2は66歳, 男性. 左下葉末梢に瘢痕様陰影と#11リンパ節腫大がみられ, リンパ節へ気管支鏡下に針生検を行い, 小細胞癌の診断を得たので, 術前化学療法を施行したが, 末梢の陰影は変化なかった. 術中に瘢痕部に針生検を行ったところ, 小細胞癌であり, 同部が原発巣と考え, 下葉切除を施行した.
  • 井上 清俊, 西田 達, 河田 安浩, 泉 信博, 山本 訓史, 西山 典利, 大杉 治司, 木下 博明
    2002 年16 巻2 号 p. 150-156
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    交通外傷12年後に診断され, 手術治療した気管食道瘻の1例を報告する. 症例は31歳, 男性. 1987年交通外傷にて両側気胸, 意識消失のため入院加療を受けた. 1999年4月食事摂取時の咳嗽のため受診した. 気管分岐部直上膜様部の径33mm大の気管食道瘻と診断し, 手術を施行した. 瘻孔を食道壁とともに自動縫合器により閉鎖し, 第5肋間筋を間置した. 術後合併症はなく退院し社会復帰している.
  • 渡 正伸, 石井 修, 今井 克彦, 河内 和宏, 渡橋 和政, 末田 泰二郎
    2002 年16 巻2 号 p. 157-160
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症を合併した胸腺腫症例では胸骨縦切開による拡大胸腺摘除術が標準的である. しかしながら術前から気管切開され呼吸管理された症例では気管切開部と術野が通じ縦隔炎の発症が危惧される. 今回, このような気管切開症例を経験した. 通常の胸骨縦切開を選択せず, 縦隔炎の合併を回避すべく胸骨T字切開を行い拡大胸腺摘除術を行った. 術後経過は良好で, 気管切開口と術野が連絡することなく, 縦隔炎等の術後感染症を免れることができた.
    胸骨T字切開では頭側の術野が不良で無名静脈より上方の操作はやや困難となるものの, 縦隔炎等の術後感染を予防する上で有用な手技と考えられた.
  • 矢島 靖巳, 清水 幸夫, 高橋 健郎
    2002 年16 巻2 号 p. 161-165
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    同時性肺多発癌の特殊型と考えられる肺の衝突癌の1手術例を経験したので報告する. 症例は51歳の男性. 人間ドックにて右上縦隔の異常陰影を指摘されCTにて右上葉に43×29mmの充実性腫瘤を認めた. TBLBにて悪性所見を認めなかったため, 診断を兼ね右上葉切除術を施行した. リンパ節郭清はND2aを施行した. 病理組織所見は, 扁平上皮癌と腺癌の二つの異なった組織型の腫瘍が衝突したと考えられ, それぞれの分布が明瞭に区別できた. 衝突部位では両癌腫が一線で接しているところや両方の癌小胞巣が互いに混在しているところが認められた. また, 扁平上皮癌成分はP53蛋白が陰性で腺癌成分はp53蛋白が陽性であった. 大きい方の扁平上皮癌成分と小さい方の腺癌成分は共に, p-T2N0M0, Stage IBであり完全切除であった. しかし, 術後5カ月で対側肺に扁平上皮癌が再発し, 術後15カ月の短い予後であった. 衝突癌は, 予後不良の報告例が多く, 腫瘍径, 進行度, および組織型にあった術後療法を考慮する必要がある.
  • 水渡 哲史, 吉津 晃, 後藤 太一郎
    2002 年16 巻2 号 p. 166-171
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性.主訴は嗄声.左総頸動脈・鎖骨下動脈を取り囲んで上縦隔に肺腺癌が存在した.手術は胸骨縦切開に左頸部襟状切開を加えて開胸した.Yグラフトの一端を上行大動脈に端側吻合し, 他の一端の片方を総頸動脈に, 別の片方を鎖骨下動脈に端々吻合した.左腕頭静脈は結紮切断し, 腕神経叢の1部と胸椎骨膜を合併切除して, 腫瘍を含む肺を切除した.放射線治療を行い, 術後44日目に退院した.術後約2年半経過した現在, 再発なく外来通院中である.リンパ節転移のない肺癌症例では, 左総頸動脈・鎖骨下動脈を再建して肺切除を行うことで良好な結果をえられることがあると考える.
  • 塩野 知志, 保坂 淳, 島貫 隆夫
    2002 年16 巻2 号 p. 172-174
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性, 咳嗽を主訴として受診した.胸部CTで前縦隔腫瘍を指摘され入院, CT下生検では浸潤型胸腺腫の診断であった. 腫瘍摘出術, 及び右上葉部分切除, 中葉切除, 心膜部分切除施行したが, 前縦隔, 右肺門に腫瘍が残存, 心嚢液中にも腫瘍高腫瘍細胞を認め, 非治癒切除となった. 術後病理では未分化型胸腺癌の診断であった.術後, CDDP+ADR+VCR+CPAによる化学療法を2コース行い, 更に50Gyの放射線療法を行った. 現在, 術後6年を経過しているが無再発生存中である.
  • 飽浦 良和
    2002 年16 巻2 号 p. 175-178
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 2000年7月人間ドックで胸部異常陰影を指摘されていたが放置していた. 同年12月近医を受診し, 胸部単純X線写真, 胸部CT検査にて肺癌を疑われ, 精査のため当院を紹介された. 同年12月気管支鏡検査では診断がつかず, CTガイド下肺生検では炎症, 乳頭腫の疑い, との診断であったが, 患者の希望で経過観察していた.2001年2月胸部CT検査では腫瘍径などに変化はなかったが, 肺癌を否定できず, 同年3月胸腔鏡下に肺部分切除を行った. 腫瘍は右中葉に位置し, 弾性軟, 14×11mm, 灰白色, 境界は比較的平滑で, 扁平上皮性乳頭腫と診断された. 肺癌, 炎症などとの鑑別に苦慮した比較的稀な肺腫瘍, 扁平上皮性乳頭腫を経験したので, 文献的考察を加え報告した.
  • 〓 英洙, 石川 智啓, 斉藤 裕
    2002 年16 巻2 号 p. 179-183
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫は悪性軟部腫瘍の中で比較的頻度が高く, 特に四肢, 後腹膜に多く認められるが, 胸壁発生は稀である. 症例は16歳の女性. 学校検診で胸部異常陰影を指摘された. 術前検査では肋骨に浸潤する腫瘍性病変を認めたが確定診断はつかなかった. 腫瘍を含む広範な胸壁切除術を施行した. 組織学的には脱分化型脂肪肉腫であった. 補助療法は行わず, 1年を経過した現在も再発の徴候を認めず健在である.
  • 伊藤 正夫, 吉岡 洋, 玉木 修治, 横山 幸房, 今泉 宗久
    2002 年16 巻2 号 p. 184-187
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    血気胸の長期放置により線維胸を呈した1例を経験した.症例は28歳の男性で, 1998年6月に胸痛, 発熱で近医にて感冒として内服治療を受けた. 2カ月後, 胸部X線写真で左肺の虚脱と胸水貯留を認め, 当院呼吸器科を受診した. 胸膜炎の診断で入院. 胸腔穿刺にて血性胸水を認め, 持続胸腔ドレナージを行ったが虚脱肺の再膨張を得られず, 逆行性感染による膿胸を合併した. 9月18日外科転科となり, 胸腔鏡下洗浄ドレナージを施行した. 約1カ月後, 胸水からの排菌は消失したものの, 発熱は続き膿胸腔が残存したため, 肺剥皮術を行った. 充分な肺の再膨張が得られ, 術後経過は良好で11月20日に退院となった. 血気胸原因の線維胸では容易な肺の剥皮が期待できることから早期の手術を考慮すべきと考えられた.
  • 泉 浩, 宮元 秀昭, 山崎 明男, 二川 俊郎, 王 志明, 穴見 洋一, 守尾 篤, 深井 隆太, 園部 聡, 植草 利公
    2002 年16 巻2 号 p. 188-192
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性. 発熱を主訴として受診.胸部X線及びCTにて左下肺野に浸潤影を認め, 気管支鏡下擦過細胞診にてclass IV腺癌と診断された. 2000年5月, 左下葉切除術, ND1郭清が施行された. 病理組織学的に浸潤影は粘液産生型肺腺癌で, 癌巣の中には異物型巨細胞を伴った器質化病変があり, クリプトコッカスの感染を認めた. クリプトコッカスの菌体はすべて異物型巨細胞に貧食され, その形態は肉芽腫性肺炎型に相当した. 菌体は腺癌病巣以外にはなく, したがって本症例は腺癌の産生する粘液に感染した肺クリプトコッカス症と考えられた. 術後抗真菌剤投与は行わず経過観察としたが, 肺癌の再発やクリプトコッカス症の再燃を認めていない. 本例のように完全切除がなされている症例で, かつ組織型が肉芽腫性病変で, 菌体の肺胞腔内散布所見がなければ, 術後抗真菌剤投与は必要は無いと考えられる.
  • 米地 敦, 樋口 光徳, 塩 豊, 鈴木 弘行, 藤生 浩一, 管野 隆三, 後藤 満一
    2002 年16 巻2 号 p. 193-198
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
  • 2002 年16 巻2 号 p. e1
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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