日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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23 巻, 6 号
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原著
  • 野田 雅史, 大石 久, 前田 寿美子, 小柳津 毅, 佐渡 哲, 桜田 晃, 星川 康, 遠藤 千顕, 岡田 克典, 近藤 丘
    2009 年 23 巻 6 号 p. 788-791
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    2000年以降当科で胸壁腫瘍の診断により手術を施行した症例のうち軟骨肉腫と診断された10症例について臨床的検討を行った.性別は男性6例,女性4例で,腫瘍発生部位は胸骨発生2例,肋骨発生8例であった.術式は肋骨切除4例,肋骨+椎体合併切除を追加したもの3例,肋骨+横隔膜合併切除1例,胸骨全摘1例,胸骨亜全摘1例であった.胸壁再建は9例で行い,皮膚筋弁による皮膚再建を要した症例は3例であった.肉眼的腫瘍切除範囲はwide resection7例,marginal resection3例で,病理学的に中高悪性群は5例,低悪性群5例であった.再発は3例で認め,無再発3年生存率は66.7%であった.
  • 森山 重治, 山本 寛斉, 三好 健太郎
    2009 年 23 巻 6 号 p. 792-797
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    1995年1月から2007年12月までに当科で経験した術後気管支瘻9例の患者背景,治療方法,予後について検討した.年齢は58~73歳(平均67.4歳)で,全例が男性であった.原疾患は1例が荒無肺,他の8例は原発性肺癌であった.発生率は全症例では1.3%であったが,特に右下葉切除は他の肺葉切除に比して有意に発生頻度が高く(p<0.001),気管支動脈中枢での切断が誘因の一つと考えられた.気管支瘻発症時期は術後2~3週間前後が9例中7例を占めていた.気管支鏡的塞栓療法が奏功した1例を除いて,初回手術で有茎大網弁被覆を行った症例は4例とも一度の手術で閉鎖に成功しており,他の4例中3例は最終的に有茎大網弁充填または被覆が有効であった.1例は閉鎖が不成功に終わった.術後4例がMRSA肺炎を併発し,1例は保菌のまま回復したが3例を成人呼吸窮迫症候群(ARDS)で失った.
  • —より安全に気胸外来治療を行うための工夫—
    三澤 賢治, 三島 修, 北野 司久
    2009 年 23 巻 6 号 p. 798-801
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    携帯型気胸ドレナージキット(ソラシックエッグ®:以下TE)の有用性についてretrospectiveに検討した.対象は2007年3月から2008年9月にTEを使用して治療を行った自然気胸患者43例.患者の平均年齢は33歳(13~69歳),男性32例,女性11例,患側は右18例,左25例,初発27例,再発16例であった.17例は外来通院のみで治療が可能であった.空気漏れの持続や気胸の再発で手術を行った症例は18例であった.気胸の悪化により持続吸引やトロッカーカテーテルへの入れ換えが必要な症例は認められなかった.カテーテルの屈曲による閉塞のため1例でTEの再挿入が必要であった.挿入後の自己抜去例は2例であったが,肺の虚脱はなく再挿入は不要であった.TEのカテーテル部分と排液ボトルの間に三方活栓を留置することで抜去前にクランプによる肺瘻確認を容易に行うことが可能であった.TEは排液の多い気胸でも使用可能であり,自然気胸の外来治療に有用と考えられた.
  • 西 英行, 鷲尾 一浩, 間野 正之, 清水 信義
    2009 年 23 巻 6 号 p. 802-806
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    方法:1993~2008年の期間に,24例の胸膜中皮腫に胸膜肺全摘術を施行した.そのうち再発した10例を対象とし検討した.結果:性別内訳は,男性9例,女性1例で,平均年齢は62.3歳(54~75歳)であった.組織型は上皮型7例,肉腫型2例,二相型1例であった.臨床病期は,II期が8例,III期が2例で,病理病期は,II期が2例,III期が8例であった.術後補助療法は,化学療法が2例に,放射線療法が1例に行われた.再発までの期間は,平均8.5ヵ月(1~17ヵ月)で,再発部位は,8例は局所再発で,2例が遠隔転移であった.全例に化学療法が行われ,Pemetrexedが3例に,Gemcitabineが7例に使用された.24例の無病生存期間中央値は13.2ヵ月で,再発例は7.0ヵ月であった.再発からの生存期間中央値は9ヵ月であった.結論:胸膜肺全摘術後の再発は局所再発が多く,局所制御法の確立が望まれる.
症例
  • 安藤 耕平, 禹 哲漢, 大森 隆広, 田尻 道彦, 小倉 高志
    2009 年 23 巻 6 号 p. 807-811
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.人間ドックで胸部X線写真を撮影し,右自然気胸を指摘された.左自然気胸の手術歴があり,弟,長男,長女にも自然気胸の既往があった.胸部CT検査では両側に多発する肺嚢胞を認めた.顔面に線維毛包腫(fibrofolliculoma)を疑う病変と,線維性疣贅(acrochordon)を認めた.以上の所見から,Birt-Hogg-Dube症候群(以下,BHD症候群)を疑った.右気胸の根治を目的に手術を施行し,肺底部に今回の気胸の原因と思われる2cm大のブラを認め,これを胸腔鏡下に切除した.術後,BHD遺伝子の核酸配列解析を行い,BHD症候群と確定診断した.BHD症候群は,常染色体優性遺伝の皮膚疾患であり,多発肺嚢胞・自然気胸,腎細胞癌を合併することがある.気胸の家族歴があり,多発肺嚢胞を有する症例は,BHD症候群を疑う必要があると考えられた.
  • 北見 明彦, 神尾 義人, 玄 良三, 植松 秀護, 中島 宏昭, 成瀬 博昭
    2009 年 23 巻 6 号 p. 812-815
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.反復する上気道感染と下痢の精査中に低ガンマグロブリン血症を指摘された.また胸部CTにて前縦隔腫瘍と左胸膜病変が確認され,CTガイド針生検の結果胸腺腫(Type B2)と診断された.胸腔内播種病巣を伴うStage IV A胸腺腫と判断し,導入化学療法として,modified ADOC(nedaplatin,doxorubicin,vincristine,cyclophosphamide)を2コース施行した.効果判定のCTでは,ほぼPRの腫瘍縮小効果が得られたが,両肺におよぶ間質性変化を認め,喀痰PCR検査にてニューモシスチス肺炎と診断された.手術は断念し外来で経過観察していたが,腫瘍の再増大を認め,縦隔および播種病巣への放射線照射を行った.その後新たな播種病巣に対して放射線照射を行ったところ,ニューモシスチス肺炎の再燃を認めた.ST合剤(1日9錠,より開始,以後漸減し3ヵ月継続)経口ステロイド剤(PSL,1日80 mg5日間投与)の治療により病状の改善は得られ,現在外来経過観察中である.
  • 田尾 裕之, 河本 純一, 大藤 剛宏, 山根 正修, 豊岡 伸一, 佐野 由文
    2009 年 23 巻 6 号 p. 816-820
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は湿性咳嗽を主訴とする66才,女性.PET/CTでFDGの高集積(SUV max=10.6)を呈し,右中葉支を閉塞する30mm大の肺門部腫瘤を認めた.気管支鏡検査で,中葉支を閉塞するポリープ状の病変を認めた.肺癌を疑い手術を施行,気道病変は迅速病理検査で乳頭腫と診断され,中葉スリーブ切除を施行した.肺門部腫瘤は,嚢状に拡張した気管支とその中に充満する粘液栓であった.術後病理診断は腺扁平上皮混合型乳頭腫であった.孤立性気管支乳頭腫は稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 佐野 功, 南 寛行, 松本 桂太郎, 森野 茂行, 畑地 豪, 中村 昭博
    2009 年 23 巻 6 号 p. 821-825
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.尿路結石で受診の際にCTにて胸部異常影を指摘された.胸腔鏡下肺部分切除を施行したが術後永久標本にて非定型カルチノイドであり約2週間後,右中葉切除,ND2aを施行した.病期はpT1N2M0 stage III Aであった.術後経過は良好であったが,高Ca血症,intact PTHの上昇および副甲状腺3腺の腫大をみとめ,原発性副甲状腺機能亢進症を疑い手術を施行した.病理は副甲状腺過形成であった.多発性内分泌腺腫症1型を疑い遺伝子検索を行ったところMEN1遺伝子のexon 4の変異が確認され確定診断となった.多発性内分泌腺腫症1型に肺カルチノイドを合併することは比較的稀であり文献的考察を加えて報告する.
  • 黒田 晶, 大竹 節之
    2009 年 23 巻 6 号 p. 826-832
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.33歳時に肺結核に対し両側の骨膜外パラフィン充填術を受けた.術後34年目に微熱・咳嗽・喀痰が出現し,パラフィンの喀出を認めた.胸部X線写真および胸部CTでは,拡大傾向を示す左上肺野のパラフィン充填腔と左上葉の浸潤影を認めた.パラフィンの喀出を認めることから,パラフィン充填腔の肺への穿破と充填腔の感染,および周囲の肺炎を疑い,左側パラフィン除去の目的で手術を行った.左上葉を圧排する充填腔は骨性蓋に覆われ,左上葉との強固な癒着を認め剥離が不可能であったため,パラフィン除去とともに左上葉切除を行った.病理所見では肺穿孔部位は明らかでなかった.術後は解熱が得られ,微熱や喀痰などの症状も改善した.残肺の含気も良好であり,術後21日で退院した.骨膜外パラフィン充填術の晩期合併症としてパラフィンの皮下脱出や充填腔の拡大などが報告されているが,パラフィンの喀出が見られることは極めて稀であり報告する.
  • 足立 広幸, 前原 孝光, 正津 晶子, 安藤 耕平, 坂本 和裕
    2009 年 23 巻 6 号 p. 833-837
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    27歳,女性.妊娠19週後半に突然の右胸痛を自覚し当院受診.右III°自然気胸の診断で持続吸引ドレナージによる保存的加療をおこなったが気漏停止しないため妊娠21週に胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した.術後経過は順調で術後3日目に軽快退院.以降再発なく正期産で健児を出産した.妊娠中の自然気胸治療に関しては,胎児への影響を考え妊娠時期を問わず保存的に加療すべきとの報告もあるが,分娩時怒責による分娩中再発や長期ドレーン留置に伴う感染が原因で流産・早産などに至るリスクもあり,特に長期気漏持続症例,再発症例では妊娠中でも時期・術式・使用薬剤を考慮した手術が望ましいと考える.
  • 松浦 求樹, 藤原 俊哉, 片岡 和彦, 妹尾 紀具
    2009 年 23 巻 6 号 p. 838-842
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    肺摘除術後の気管支瘻は致命的になりうる合併症であり,早急かつ適切な処置が必要とされる.今回我々は右肺摘除後の気管支瘻に対し,大網を楔入充填することで瘻孔閉鎖に成功した2例を経験したので報告する.症例1は78歳,男性,右主気管支から中間幹に広く浸潤するpleomorphic carcinomaでsleeve pneumonectomyを施行した.術後16日目に吻合部縫合不全のため瘻孔大網楔入充填術を行った.症例2は59歳,男性,扁平上皮癌で体外循環下に左房合併切除を伴う右肺摘除術を施行した.外来化学療法中に膿胸を併発し,気管支断端瘻となったため,術後8ヵ月で同様の手術を行った.気管支瘻の断端や瘻孔周囲は,すでに血流障害に陥っているため,一期的縫合閉鎖では気管支瘻が再発しやすい.抗炎症作用に優れ局所の血流を改善させる大網を瘻孔に直接楔入充填するこの方法は,手技が容易で大変有用であった.
  • 大角 明宏, 田中 亨, 濱路 政嗣, 大角 潔
    2009 年 23 巻 6 号 p. 843-848
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.約30年前から気管支拡張症を指摘され,繰り返す肺炎から荒蕪肺となり,左肺全摘を勧められていたが放置していた.胸痛,咳嗽,喀痰の増加に加え,血痰が出現したため精査したところ,気管支鏡検査で左主気管支をほぼ完全閉塞し気管に突出する腫瘤を認め,同部生検によりカルチノイドと診断した.左胸膜肺全摘除,横隔膜部分合併切除・心膜合併切除再建,気管分岐部楔状切除・気管分岐部再建を行い,良好な結果を得た.活動性炎症が持続する荒蕪肺に対して胸膜肺全摘除を行うことにより,術野を汚染することなく完全切除が施行でき,気管分岐部再建後の術後合併症を回避できた.
  • 保坂 靖子, 大和 靖, 吉谷 克雄, 小池 輝明
    2009 年 23 巻 6 号 p. 849-853
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性で,腹痛の精査にて撮影した胸腹部CTで,心右縁に沿って造影されない腫瘍と上大静脈拡大が認められ,確定診断を目的に当科を紹介された.胸腔鏡下生検では,腫瘍は易出血性で横隔膜直上から心右側背面を覆うように存在し,病理組織検査の結果は海綿状血管腫であった.縦隔腫瘍の中で血管腫の頻度は0.5%以下とされ,中でも中縦隔に発生の血管腫の報告は少ない.今回,我々は,上大静脈拡大を伴った中縦隔血管腫という非常に稀な1例を経験したので報告する.
  • 大畑 惠資, 奥村 典仁, 高橋 守, 山科 明彦, 松岡 智章, 亀山 耕太郎
    2009 年 23 巻 6 号 p. 854-860
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    肺底動脈大動脈起始症に対し,胸腔鏡補助下に異常動脈灌流域肺区域切除を行った2症例を経験した.症例1は29歳,女性.血痰,健診胸部レントゲン異常で精査を行い,肺底動脈大動脈起始症と診断した.異常動脈は左肺底区を灌流しており,胸腔鏡補助下に左肺底区切除術を施行した.症例2は36歳,女性.他疾患精査中の胸部CT異常で肺底動脈大動脈起始症と診断した.異常動脈は右S9およびS10を灌流しており,胸腔鏡補助下に右S9+S10区域切除術を施行した.灌流域が特定区域に限局する肺底動脈大動脈起始症においては,区域手術により呼吸機能温存が可能であった.また,小開胸併用での胸腔鏡補助下手術は侵襲軽減,安全性の面から妥当であると考えられた.
  • 池田 達彦, 堀之内 宏久, 森岡 秀夫, 矢部 啓夫, 林 雄一郎, 小林 紘一
    2009 年 23 巻 6 号 p. 861-865
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例1は79歳,女性.前胸部痛を自覚し,胸部CTにて胸骨を取り囲むように腫瘍を認めた.生検にて卵巣癌の転移と診断された.手術は腫瘍と共に胸骨上部1/3,両側第2,3肋骨前方1/3,右肺上葉一部,および胸壁全層合併切除・再建術を施行した.症例2は58歳,男性.甲状腺癌術後胸椎転移,胸骨転移,骨盤転移にて紹介された.胸部CTにて胸骨を中心として6cm大の腫瘍を認めた.椎体切除術の約10ヵ月後に胸骨転移の手術を行った.手術は腫瘍とともに胸骨上部1/2,両側鎖骨前方1/3,第1,2肋骨前方1/3,および胸壁全層合併切除・再建術を施行した.症例1,2ともに骨性胸壁再建にpolypropylene meshおよびtitanium reconstruction plateを使用し,術後に胸壁動揺を認めず経過良好だった.胸壁全層切除症例の術後胸郭動揺の予防のために骨性胸壁再建にpolypropylene meshとtitanium reconstruction plateを利用することが有用だった.
  • 大畑 賀央, 宇佐美 範恭, 谷口 哲郎, 相馬 孝博, 横井 香平
    2009 年 23 巻 6 号 p. 866-870
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性で,右B2原発の肺門型扁平上皮癌に対し右上葉管状切除術を行った.第6病日に発熱,呼吸困難,血痰が出現し,胸部X線写真にて右中葉に浸潤影を認めた.気管支鏡検査では中葉気管支は狭窄していたものの,気管支鏡の通過は可能であった.CTにて中葉の肺動静脈が全く造影されず,気管支の狭窄所見と合わせて血流障害を伴った肺捻転と診断,壊疽に陥っていた中葉を切除した.肺切除後の残肺捻転は早期診断が難しく,臨床症状,気管支鏡検査およびCT所見などを総合的に判断して,その可能性を検討することが重要である.特に捻転に伴う肺動静脈の血流障害の評価に造影CTは非常に有用であった.
  • 笠井 由隆, 桝屋 大輝, 松岡 弘典, 吉松 昭和, 鈴木 雄二郎
    2009 年 23 巻 6 号 p. 871-874
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.健診で胸部異常影を指摘され,精査加療目的で当科に紹介入院となった.胸部CT検査では,両肺に多数の結節影,粒状影を認めた.画像上,悪性腫瘍の多発肺転移も否定できずFDG-PETを施行したところ,いずれの結節もFDGの集積は軽微であった.2年前に子宮筋腫の手術歴もあったことから良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma:BML)も念頭においたが,FDGの集積に乏しい悪性腫瘍の多発肺転移との鑑別のためにも胸腔鏡下生検を行うことにした.右肺S8およびS9の胸膜表面に存在する結節を2ヵ所生検し,BMLとの診断を得た.BMLは子宮筋腫の既往のある女性に発症する稀な疾患で,さらにBMLに対するFDG-PETの報告例は少ない.両側に多発する肺結節影を認めた場合,BMLを念頭におく必要があるとともに,FDG-PETは多発肺腫瘤性病変の鑑別に有用であると考えられた.
  • 田中 聖子, 尾関 雄一, 橋本 博史, 中山 健史, 前原 正明
    2009 年 23 巻 6 号 p. 875-880
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.2008年4月頃から咳嗽,喀痰が出現したため近医を受診し,胸部レントゲン写真で両肺野に多発結節影を指摘された.胸部CTでは径5~27mm大,両肺胸膜直下に多発する境界明瞭,辺縁不整な結節影を認めた.一部に石灰化を伴っていた.PET-CTで多発結節影に集積を認めたため転移性肺腫瘍を疑い,確定診断目的で胸腔鏡下に右肺部分切除術を施行した.胸膜直下に暗赤色調で中心部に白色の浅い陥凹を伴う腫瘤を認めた.右肺S3の腫瘤を切除し迅速病理診断に提出し,肺アミロイドーシスの診断を得た.最終組織診断はAL(λ)型の多発性結節性肺アミロイドーシスであった.術後に血液検査などを追加し,シェーグレン症候群の合併を認めた.結節性肺アミロイドーシスの本邦報告例55例では,全身性のものは認めず,シェーグレン症候群を合併する頻度が22%(12/55)と高頻度であった.
  • 岡田 真典, 田尾 裕之, 山根 正修, 大藤 剛宏, 佐野 由文, 豊岡 伸一
    2009 年 23 巻 6 号 p. 881-885
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性で,数年前より逆流性食道炎に対する治療を受けていた.咳嗽を契機に発見された肺癌に対する右上葉切除術後,喘鳴を伴う呼吸苦および心房粗細動を認め,急速に呼吸・循環不全に陥った.胸部CTで左胸腔内に滑脱し,拡張した胃による心肺の圧迫を認めたため,ヘルニア根治術を施行した.術後,呼吸・循環動態は速やかに改善した.食道裂孔ヘルニアを有する症例では,胸部手術後に食道裂孔ヘルニアが悪化し,呼吸・循環に重大な影響を与える可能性のあることを認識しておく必要がある.
  • 和久 利彦, 渡辺 直樹
    2009 年 23 巻 6 号 p. 886-890
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性.2年前より間質性肺炎の疑いが指摘されていたため当院紹介となった.胸部CTでは,両肺野に広範囲な間質性変化をきたし,辺縁不整な小結節影が両肺野末梢の胸膜直下に9個存在していた.結節の確定診断のため胸腔鏡下肺生検を行った.左下葉の腫瘤を触知確認し楔状切除を行った.肺の実質内にみられる腫瘍様病変は,炭粉沈着を伴う反応性の腫大を示すリンパ節であった.術後1年の時点で間質性肺炎の増悪はあるものの,小結節の増大傾向はない.多発性肺内リンパ節の成因は,肺野末梢に微小な肺内リンパ節が多発している状態において,炎症の影響を受けることによって反応性腫大した結果であると考えられた.またリンパ節周囲の炎症などのためリンパ節の辺縁が不整で転移性肺腫瘍との鑑別が困難な場合は肺生検を行うべきであると考えられた.
  • 一瀬 淳二, 河野 匡, 藤森 賢, 吉屋 智晴
    2009 年 23 巻 6 号 p. 891-895
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例1は59歳,女性.1987年子宮筋腫の診断で子宮全摘を行い病理検査にて子宮平滑筋肉腫であったと診断された.1991年肺転移が出現したが本人が治療を希望せず,2002年胸腔鏡下手術を行うということで同意を得,胸腔鏡下右下葉切除,右S2・S3・左S3・S6部分切除術を施行した.病理診断は7個の腫瘍すべて子宮平滑筋肉腫肺転移であった.術後6年間無再発である.症例2は47歳,女性.子宮筋腫の診断で子宮全摘・左付属器切除を行い病理検査にて子宮平滑筋肉腫であった.6ヵ月後CTにて両肺多発結節を認め,胸腔鏡下右中下葉,左上下葉部分切除術を施行した.病理診断は右S5と左S1+2の結節が子宮平滑筋肉腫肺転移で,他は肺内リンパ節であった.術後1年間無再発である.子宮平滑筋肉腫の両側多発肺転移に対する一期的胸腔鏡下手術は治療の選択肢となり得る.
  • 大石 久, 羽隅 透, 齋藤 泰紀, 阿部 二郎
    2009 年 23 巻 6 号 p. 896-900
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    急性膿胸に対する胸腔鏡下手術の有用性が近年報告されつつある.我々は膿瘍が後腹膜腔まで進展した急性膿胸に対し,胸腔鏡下手術を行い救命し得た1例を経験した.症例は41歳,男性(路上生活者),呼吸困難と腰背部痛が出現し,当院へ救急搬送された.胸部CTにて右胸腔内に気泡を伴った多量の胸水を認め,膿胸が疑われた.膿瘍は後腹膜腔へ進展していた.胸腔ドレーンを挿入し,持続吸引を開始した.その後もCTにて膿瘍の残存が疑われたため,胸腔鏡下手術にて掻爬・ドレナージ・洗浄を施行した.胸腔内下部背側から後腹膜腔の膿瘍への交通孔が確認でき,同部から胸腔内へ多量の膿汁がドレナージされた.術後13日目に胸腔ドレーン抜去,25日目に退院した.術後1年経過し再発を認めず,患者自身も社会復帰を果たしている.重症急性膿胸例であっても,胸腔鏡下手術で適切な手術を行うことにより高い治療効果が得られると考える.
  • 池田 公英, 久保田 伊知郎, 廣津 泰寛
    2009 年 23 巻 6 号 p. 901-904
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    医原性の横隔膜ヘルニアは稀な疾患で,肺切除術後の発生はわずかな報告しかない.今回,胸腔鏡補助下肺葉切除後に発生した医原性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.81歳女性.左肺下葉S10aの約2.5cm大の腺癌に対し胸腔鏡補助下左肺下葉切除,リンパ節郭清(ND2A)を施行した.術後11ヵ月後に嘔気,嘔吐が出現し,胸部X線写真,胸部CTにて左横隔膜ヘルニアと診断された.第7病日に手術施行.全身麻酔下に左第6肋間後側方切開にて開胸.約1,000mlの血性の胸水貯留を認め,腱中心の部分の裂孔より胃および大網が胸腔内に脱出しており,胃大網側が壁側胸膜と癒着していた.胃の癒着を剥離し,脱出臓器を腹腔内に還納した.横隔膜は1号絹糸にてマットレス縫合した.手術後経過は良好で,現在,術後1年の時点で横隔膜ヘルニア,肺癌ともに再発の兆候なく生存中である.
手技の工夫
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