日本呼吸器外科学会雑誌
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16 巻, 6 号
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  • 林 雅太郎, 上田 和弘, 濱野 公一, 善甫 宣哉, 縄田 純彦, 江里 健輔, 宮下 洋
    2002 年 16 巻 6 号 p. 683-687
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌にて手術が施行された男性628例, 女性286例を対象とし, 男女間の外科治療成績を比較検討した.両群間の平均年齢には差はなかった.女性には腺癌が多く, pT1症例が多かった.pN肝, 術式では男女間に有意差を認めなかった.女性の5年生存率は62%で, 男性の44%よりも有意に良好であった.性別, 年齢, pT因子, pN因子, 組織型, 術式を共変量とした多変量解析にて女性の男性に対する欄危険度は0.60であった.pT因子, pN因子, 年齢は有意な予後因子であったが, 術式, 組織型は有意な予後因子ではなかった.組織型別, pT因子別の層別解析では, 腺癌症例, pT1症例において女性は有意な予後良好因子であった.一方, 扁平上皮癌症例, 進行癌症例において性別は予後因子ではなかった.女性肺癌手術症例の術後成績は男性のそれよりも良好であり, その理由は女性の小型腺癌症例の予後が良好であることが示唆された.
  • 中村 昭博, 伊藤 重彦, 田村 和貴, 松尾 聡
    2002 年 16 巻 6 号 p. 688-691
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    喘息に続発する縦隔気腫はしばしば経験されるが, 基礎疾患の無い健康人に発生する特発性縦隔気腫は比較的まれである.当院で経験した8例について検討した.症例は全て男性で, 1例を除き10歳代であった.全例に発症機転と考えられるエピソードがあり, スポーツが5例, 発声が2例, 力仕事が1例であった.症状は頚部・咽頭痛が8例全てにみられ, 胸背部痛が6例に, 呼吸困難・息切れが2例にみられた.治療は入院安静と抗生剤投与のみで全例軽快し, 外科的処置を要した症例はなかった.全例数日で, 症状, 気腫の所見とも改善し, 7例が1週間以内に退院した.現在まで再発例はない.
  • 関 幸雄, 今泉 宗久, 吉岡 洋, 上田 裕一
    2002 年 16 巻 6 号 p. 692-696
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 32才女性, 喘息の重積発作の診断で関連病院に入院し, 気管内挿管となった.胸部CTで頚胸境界部に腫瘍を認め, 頸部よりの経皮生検で腺様嚢胞癌の診断を得て, 関連病院に赴きステント留置の後, 転院を予定したが, 腫瘍は第2気管輪より存在し, 易出血性で狭窄も強くステントの挿入が困難で, 挿管のまま転院とし準緊急で手術を行った.術中, 気管断端の腫瘍遺残がないこと, 気管前リンパ節の転移陰性を迅速病理診断にて確認の後, 甲状腺亜全摘を伴う気管亜全摘喉頭全摘を施行した.残存気管が気管分岐部より4気管輪となったため, 大胸筋筋皮弁を伴うanterior mediastinal tracheostomyを施行した.また, 術後の気管孔狭窄予防には経鼻エアーウエーを工夫して用いた.腫瘍はlow grade malignancyであるが, 本例では根治術である完全切除を優先した.
  • 竹内 幸康, 正岡 昭
    2002 年 16 巻 6 号 p. 697-699
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の女性.月経時に右気胸を3回繰り返した後, 胸腔鏡下手術を施行した.横隔膜腱中心に欠損孔を認め, これを含む横隔膜領域を切除縫合した.病理組織検査の結果, 広範なヘモジデリン沈着を認め月経随伴性気胸と考えた.術後8ヵ月間リュープロレリンの投与を行ったが, 投与中止後7ヵ月目に気胸が再発した.そこで投与を再開したが, その後の再発はない.手術療法後のホルモン療法は再発予防に有用と考えられた.
  • 永松 佳憲, 蓮田 正太, 白水 和雄
    2002 年 16 巻 6 号 p. 700-703
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 女性.前胸部膨隆を主訴として受診.前胸部に発赤, 疼痛を伴う直径10cmの膨隆と血液検査では炎症反応の亢進が認められた.胸部単純X線写真では右肺門部に腫瘤影を認めた.胸部CTで腫瘍はS3, S5を中心とし, 心陰影に接する経10cm大の不整形を呈し, 肋軟骨の破壊を伴う胸壁への浸潤像を認めた.肺癌あるいは前縦隔腫瘍の胸壁浸潤を疑い穿刺細胞診を施行したが, 同部位より膿汁の排出を認め, 膿瘍として切開排膿術を行った.病理標本では高度の炎症とともに糸状の菌塊よりなる硫黄顆粒を認め, 膿汁細菌培養よりActinomyces israeliiを検出し, 肺放線菌症と診断した.治療はABPCの投与を開始し, 約1ヵ月で腫瘤の著明な縮小が認められた.その後外来で約6ヵ月のAMPCの投与を行い, 現在再燃なく外来経過観察中である.胸壁浸潤性腫瘤の鑑別診断としては, 肺癌など胸部悪性疾患とともに, 放線菌症も考慮に入れるべきと考えられた.
  • 田村 和貴, 中村 昭博, 松尾 聡, 伊藤 重彦
    2002 年 16 巻 6 号 p. 704-707
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群を合併した原発性肺癌の1切除例を経験した.症例は65歳男性.1999年1月, 胸部単純X線で右上肺野に10×14mmの異常陰影を指摘された.同年7月には汎血球減少を指摘され, 骨髄穿刺にて骨髄異形成症候群と診断された.同年11月8日, 胸部異常陰影は35×30mmと増大したため原発性肺癌を疑い当科に入院した.入院時血液検査所見では好中球数615/mm3, Hb9.29/dl, Plt8.1×104/mm3であった.術前にG-CSF75μgを9日間投与し, 好中球数2, 938/mm3と増加したため12月8日手術を施行した.術中穿刺細胞診で扁平上皮癌との診断が得られたため右上葉切除術を施行した.病理病期はT2N0M0, stage IBであった.術中に濃厚赤血球4単位, 濃厚血小板10単位を投与し, 術後にも濃厚赤血球2単位を投与した.G-CSF投与は術後7日間続行し感染症, 出血傾向などの合併症もなく良好に経過した.
  • 田川 哲三, 濱武 基陽, 金子 聡, 中橋 恒, 大城 由美
    2002 年 16 巻 6 号 p. 708-712
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    既存の肺疾患なしに発症した原発性肺アスペルギローマと考えられる2症例を経験した.画像所見では2例とも空洞形成を認めず結節影のみであり, どちらも気管支鏡検査による組織生検にてアスペルギルス症との診断を得た.1例は抗真菌剤 (イトラコナゾール) の投与にて改善を認めなかったため外科的切除を行い, もう1例は内科的治療を行わず, 外科的切除を行った.切除標本ではどちらも拡張した気管支腔内にアスペルギルスの菌塊が充満していた.2例とも先行肺疾患を認めず, また免疫能低下を来たす基礎疾患を認めず, 比較的稀な原発性肺アスペルギローマと考えられた.
  • 山下 良平, 寺畑 信太郎
    2002 年 16 巻 6 号 p. 713-717
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    検診で孤立性肺結節影を指摘され, 肺癌との鑑別を要した限局性結節性アミロイドーシスの1例を経験した.症例は71歳女性で, 胸部X線写真上, 右上葉S2に径2cm弱の結節影を認めた.CTでは比較的辺縁明瞭でnotchを有する結節で, 内部に空洞形成を認めた.画像所見より肺癌が否定できないと考え, 1999年1月18日, 胸腔鏡補助下右上葉切術を行った.病理組織学的に, 病変はHE染色にて好酸性で均一に染まるamorphousな物質が主体を成し, その物質は, Congoredで強く染色され, 更に免疫組織染色でALλ陽性, AA陰性であった.以上の所見より, 本病変は限局性結節性アミロイドーシスと診断された.肺の限局性結節性アミロイドーシスはまれな疾患で, 孤立性結節影として検診や他疾患治療中に偶然発見されることが多い.ヘリカルCTの普及などにより, 今後遭遇する機会が増える可能性があり, 肺癌や転移性肺腫瘍などとの鑑別上, 考慮しておく必要があると考える.
  • 松本 勲, 吉田 政之, 清水 淳三, 藤井 奨, 澤 重治
    2002 年 16 巻 6 号 p. 718-723
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    興味深い胸腺原発リンパ性病変の2例を経験したので報告する.症例1は29歳, 女性.手, 膝関節の疼痛と腫脹のため来院.シェグレン症候群, 慢性関節リウマチと診断された.胸部CT検査, 67Gaスキャンなどから胸腺の径約3cmの腫瘤が発見された.胸腺胸腺腫瘤摘出術を行い胸腺内リンパ濾胞過形成と診断された.腫瘍組織の遺伝子再構成において単クローンのリンパ球の増殖を起こしていた.シェグレン症候群患者で悪性リンパ腫を合併する前駆状態である可能性も示唆された.症例2は14歳, 男性.前胸部痛, 発熱のため来院.胸部単純X線およびCT検査で前縦隔に径約10cmの不正形腫瘤を認めた.胸腔鏡下生検で診断がつかず, 手術施行.腫瘍は胸腺内主体で心膜, 左腕頭静脈に浸潤していた.胸腺と腫瘍を一塊として摘出した.組織および免疫染色から胸腺原発の硬化を伴うびまん性B細胞性大細胞型リンパ腫と診断された.術後化学療法を行い, 12ヵ月経過した現在再発をみていない.
  • 四方 裕夫, 上田 善道, 黒瀬 望, 土島 秀次, 佐久間 勉, 渡邉 洋宇, 松原 純一
    2002 年 16 巻 6 号 p. 724-728
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    稀な孤立性気管支乳頭腫の1例を経験した.症例は19歳, 男性.検診にて右肺の異常陰影を指摘されたが気管支鏡生検では確定診断は得られなかった.陰影の増大と末梢の閉塞性肺炎を呈していたため確定診断の目的もあり手術を行った.分葉不全と気管支内の腫瘤の位置確認のため, 胸腔鏡下手術に前胸壁の小開胸を追加し, 中葉切除を行った.切除標本ではB4, B5入口部に乳頭腫が存在した.末梢は粘液で充満されており, その中に乳頭腫細胞塊が浮遊し, 一部に肺胞上皮へ生着しており, 移植の可能性が示唆された.中葉切除術式の妥当性を確認した.さらに腫瘍細胞のDNAをPCR法で増幅しhuman papilloma virusの関与を検索したが関与は否定された.
  • 竹内 幸康, 正岡 昭
    2002 年 16 巻 6 号 p. 729-732
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は20歳の男性.検診で右肺野の異常陰影を指摘され当院を受診した.胸部CT写真で下葉に限局した多発嚢胞性陰影を認め, 肺嚢胞症との診断のもと, 右肺下葉切除術を施行した.病理組織検査の結果, 各嚢胞は線毛円柱上皮に被われ, 嚢胞壁には軟骨を欠き先天性嚢胞性腺腫様奇形と診断された.本症は, 通常新生児期に呼吸不全症状を呈して発症し, 成人例では呼吸器感染症状で発見されることが多い.検診で発見された成人例は極めて稀である.
  • SF6とC3F8の比較
    木村 秀
    2002 年 16 巻 6 号 p. 733-736
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺全摘術後の対側肺過膨張を予防する目的で従来からSF6ガス (以下SF6) を使用してきたが, 維持期間をより長くする目的で眼科領域で使用されているC3F8ガス (以下C3F8) を使用しSF6と比較した.
    対象は肺全摘術後の5症例で男性3例, 女性2例, 胸腔管理の期間は1年から8年6ヵ月, C3F8開始からの観察期間は約1年6ヵ月であった.
    SF6からC3F8へ変更したのは3例, 初回から使用したのは2例であった.SF6の維持は5~6ヵ月間であったが, C3F8は約2倍の維持が可能であった.C3F8の注入量はSF6の約半分であった.C3F8はSF6よりも少ない注入量で長期の維持が可能であり, 胸腔管理のガスとしてSF6より有効と思われた.
  • 奥田 昌也, 張 性沫, 岡本 卓, 劉 大革, 亀山 耕太郎, 林 栄一, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2002 年 16 巻 6 号 p. 737-740
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回我々は脳膿瘍を合併した肺動静脈瘻の一手術例を経験したので報告する.症例は38歳男性.健診で胸部異常を指摘されていた.発熱に続く頭痛・意識混濁を主訴に近医受診し, 精査の結果脳膿瘍と診断され治療を受けた.脳膿瘍の原因が肺動静脈痩と診断されたため根治目的で当科紹介された.入院時, 体動時呼吸困難および低酸素血症を認めた.造影剤アレルギーがみられ, 経カテーテルによる治療は適応外と判断し, 肺区域切除術を施行した.術後経過は良好で術後14日に退院した.術後, 呼吸困難および低酸素血症の改善が見られた.当症例は外科的切除が有効な治療方法であったと考えられた.
  • 宮本 彰, 遠藤 千顕, 中村 好宏, 相川 広一, 桜田 晃, 菅原 崇史, 佐藤 雅美, 近藤 丘
    2002 年 16 巻 6 号 p. 741-745
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は72才女性.右肺癌の診断にて右開胸術を施行した.術後第2病日にドレーン排液が白濁し乳び胸の疑いで絶食・中心静脈栄養管理を開始した.リンパ管シンチにて右胸腔奇静脈近傍のリンパ漏を認めた.第13病日低脂肪食の開始とともに急激な排液量の増加を認めたため再び絶食としたが, 排液量の減少は認められなかった.マクトンオイル®食を開始したところ, 排液量の減少を認め, 第30病日に抜管した.その後はマクトンオイル®食を漸減離脱しても胸水の再貯留を認めなかった.リンパ管シンチは123I-BMIPPを長鎖脂肪酸食と経口摂取してリンパ経路を明らかにする簡便な検査で, 乳び胸部位診断に有効であった.マクトンオイル®は中鎖脂肪酸主体の食用油で, 中鎖脂肪酸は胸管を経由せず門脈経由で肝臓へ運ばれるため乳びを減少させるには有効であったと考えられた.
  • 本邦報告例を加えての検討
    上吉原 光宏, 坂田 一宏, 大谷 嘉己, 川島 修, 森下 靖雄
    2002 年 16 巻 6 号 p. 746-751
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    外傷や基礎疾患なしに自然気胸発症時に血胸を合併する原発性血気胸において, 両側発生の報告はない.今回著者らは, 両側原発性血気胸の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.症例は28歳男性.1999年12月に左胸痛を主訴に来院した.左自然気胸と診断され胸腔ドレナージ後, 出血を400ml認め, 胸腔鏡下に緊急手術を施行した.肺尖部に異常血管を認め同部を止血し, 術後第4病日目に退院した.その後, 2000年4月に右胸痛を主訴に再来院した.右自然気胸と診断され胸腔ドレナージしたところ, 出血を100ml認め, 胸腔鏡下に緊急手術を施行した.手術では, 前回と同様な部位に異常血管を認め止血し, 術後第3病日目に退院した.
  • 田 大力
    2002 年 16 巻 6 号 p. 752-756
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    縦隔脂肪肉腫は極めてまれな悪性腫瘍である.当教室は1992年1月から1999年12月までの8年間に手術した縦隔脂肪肉腫5例を経験した.この5例の縦隔脂肪肉腫は同時期の縦隔腫瘍手術例の2.0% (5/250) を占めていた.5例は全部男性で, 年齢は12歳から75歳まで, 平均年齢は43歳であった.手術のアプローチは3例右後側方切開, 1例左後側方切開, 1例胸部正中切開を選んだ.外科治療の結果として1例は試験開胸であったが, 2例は他の臓器に浸潤するため腫瘍を非完全切除し, 2例は腫瘍を完全に切除した.術後の病理診断としては5例全部脂肪肉腫であったが, その組織分類はWell-differentiated typeが1例, Myxoid typeが4例であった.予後としては1例の試験開胸の症例は術後5ヵ月で死亡した.2例の非完全切除症例はそれぞれ術後10ヵ月と65ヵ月で腫瘍の再発と転移で死亡した.2例の完全切除した症例はそれぞれ術後23ヵ月と48ヵ月で生存している.縦隔脂肪肉腫の外科治療においては完全切除をすることが重要である.
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