日本呼吸器外科学会雑誌
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6 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 乾 健二, レシャード カレッド, 高橋 豊, 神頭 徹, 高嶋 義光, 和田 洋巳
    1992 年 6 巻 7 号 p. 740-746
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    限局型肺アスペルギルス症6例を経験し, 全例に外科療法を施行し良好な結果を得た.症例は男性5例, 女性1例で平均年齢は54歳であった.基礎疾患として, 肺結核症の既往3例と急性骨髄性白血病1例, 糖尿病1例を認めた.病巣の位置, 大きさに応じて, 肺部分切除術・肺区域切除術が各1例に, 肺葉切除術が3例に, 肺剔除術が1例に行われた.術後経過は順調で, 全例再発をみていない.最近肺アスペルギルス症に対する薬物治療例の報告が増加しているが, 治療期間が長いこと, 無効例があること, 空洞内注入では発熱・喀血などの合併症が発生しうるなどの問題点がある.現段階では, 機能的に外科療法可能な肺アスペルギルス症例, 特に菌球型は手術適応と考える.
  • 酒井 聡, 小久保 光治, 石川 真, 村川 真司, 森 義雄, 広瀬 一
    1992 年 6 巻 7 号 p. 747-754
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1972年から1990年1月までに当科で手術を行った胸腺腫25例を対象とし, 術後成績について検討を加え報告する.正岡分類による臨床病期はI期16例, III期6例, IVa期2例, IVb期1例であった.切除術を行ったのは22例で試験開胸術は3例であった.組織型では, 上皮細胞優位型が8例, リンパ球優位型は5例, 混合型は12例であった.術後遠隔成績では, 非浸潤型16例の5年生存率は85%, 浸潤型9例の5生率は58%であった.また非浸潤型のMG非合併例の5生率は100%で, 非浸潤型のMG合併例は56%で、2群間に統計学的有意差を認めた.MG合併例の死亡例3例のうち2例はMGに関連した呼吸不全死であったが, 腫瘍の再発は認めなかった.組織型別生存率では, リンパ球優位型が5生率100%で, 上皮細胞優位型73%, 混合型51%であった.全摘例の5生率が85%, 亜全摘例では80%であったが, 試験開胸例33%と予後不良であった.
  • 乾 健二, レシャード カレッド, 高橋 豊, 神頭 徹, 平田 敏樹, 八木 一之, 室 恒太郎, 糸井 和美, 秋山 仁一郎, 川島 正 ...
    1992 年 6 巻 7 号 p. 755-759
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1980年9月から1986年12月までの間に, 島田市民病院呼吸器科で17例の肺化膿症症例を経験した.性別は男性15例, 女性2例, 平均年齢は54歳であった.7例に外科療法を行ったが, その理由は再発あるいは慢性化3例, 膿胸・気胸合併各1例, 他疾患治療中に併発2例であった.化学療法群の1例 (81歳, 心不全合併) と外科療法群の1例 (食道癌術後縫合不全に続発) を除き, 良好に経過した.本症発症の誘因と考えられたものは, 治療不十分な糖尿病が5例と最多で, 他に脳梗塞, 慢性アルコール中毒, 他側肺術後, 悪性疾患合併, 他疾患に続発などであった.肺化膿症の治療は化学療法の発達とともに変遷してきた.本症の現在の治療方針と外科療法の占める役割につき, 文献的考察を加え著者らの経験を報告する.
  • 東山 聖彦, 横内 秀起, 土井 修, 児玉 憲, 建石 竜平
    1992 年 6 巻 7 号 p. 760-766
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    当施設で外科切除された「胎児肺型肺腺癌」6症例について, その臨床病理的特徴について検討した.男性が多く, 喫煙指数の高い症例が多い.全例が右肺末梢型で, 多くが胸部X線で銭型陰影を示した.術前細胞診で, 扁平上皮癌や小細胞癌と診断されている場合があり, 本組織型と正診された症例はなかった。手衛は肺全摘1例, 肺葉切除5例で, 5例にR-2の郭清が行われた。病期は1期5例, IIIA期1例で, その予後は, 腫瘍死2例 (縦隔再発1例, 脳転移1例), 肺炎死1例, 3例が無再発生存中である.再発は他の組織型 (小細胞癌1例, 通常の腺癌1例) をまじえる症例にみられ, 他の組織型をまじえない「純型」の胎児肺型腺癌の予後は良好であった.以上より, 本組織型は他の組織型との混在に注意を払った治療が必要であると考えられた.
  • 阪本 俊彦, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 久保田 真毅, 室谷 陽裕
    1992 年 6 巻 7 号 p. 767-773
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    成人肺内気管支性嚢腫の3切除例を経験した.症例1は湿性咳嗽, 熱発を主訴として来院し, 胸部X線写真上air-nuid level が認められた.症例2は無症状であり, air-fuiuid level も認められなかった.症例3は無症状であったがair-fluidlevelが認められた.3例は病態を異にしていたがいずれにも嚢腫の全切除を行ない葉切除を回避することができた.肺内気管支性嚢腫は気道との交通による肺感染症を併発すると嚢腫のみの切除が困難になるため, 症状の有無にかかわらず早期に切除すべきであるが, その方法としては良性疾患であるため肺機能をできるだけ温存する術式が選ぼれるべきである.
  • 千葉 渉, 畠中 陸郎, 澤井 聡, 小西 孝明, 石田 久雄, 塙 健, 松井 輝夫, 小鯖 覚, 松原 義人, 池田 貞雄
    1992 年 6 巻 7 号 p. 774-779
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    成人のBochdalek 孔ヘルニアは比較的稀な疾患である.今回我々はDown症候群の成人男性に合併したBochdalek 孔ヘルニアの1治験例を経験したので報告する.症例は41歳男性.染色体分析で47XY+21を認め, Down症候群と診断された.胸部X線では左横隔膜上に腫瘤陰影を認めたが, 自覚症状は無かった.CT検査では腹腔から胸腔に連続する脾臓を認めた.横隔膜ヘルニア (Bochdalek 孔ヘルニア) と判断し左開胸にて手術を施行した.横隔膜欠損部は約70cm2あり, 脾臓がヘルニア嚢を伴って胸腔内に突出していた.脾臓は容易に腹腔に還納しえたが, 横隔膜の縫縮ではヘルニア孔を閉鎖しきれなかったため, 最終的にはパッチをあてて閉鎖した.Down症候群に合併したBochdalek 孔ヘルニアの報告例は無く, 本症例が第一例目である.
  • 岡林 寛, 濱田 正勝, 矢野 公一, 小山 倫浩, 井上 政明, 大崎 敏弘, 光冨 徹哉, 白日 高歩
    1992 年 6 巻 7 号 p. 780-785
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    レックリングハウゼン (氏) 病に伴った縦隔腫瘍の4例を報告した.2例は迷走神経由来の神経線維腫であったが, うち1例は腫瘍中央部が病理組織学的に悪性神経鞘腫の像を呈していた.1例は他に報告例を見ない重症筋無力症を伴った浸潤型胸腺腫との合併例で, 前胸壁の放射線照射野に悪性神経鞘腫を合併した。1例は骨破壊像を伴う腫瘍で神経線維腫が疑われている.本例はまた腸間膜にも巨大な神経線維腫を認めた。4例中3例は遺伝的素因があったが, うち1例に通常では考えられない染色体異常が認められた.レックリングハウゼン病に伴う縦隔病変は悪性転化の可能性もあるため外科的な切除が望ましい.また多彩な臨床経過をとるものが多くあるため全身の検査及び綿密な術後のfollow upが必要と考えられた.
  • 松岡 勝成, 桑原 正喜, 糸井 和美, 大久保 憲一
    1992 年 6 巻 7 号 p. 786-791
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    線維平滑筋腫性過誤腫は肺野に多発する事が多く, 単発例の報告は非常に稀である.今回, 我々は胸部X線写真上に孤立性陰影を呈した肺原発性の線維平滑筋腫性過誤腫を経験したので報告する.
    症例は47歳, 女性.人間ドックにて胸部X線上, 右上肺野にcoinlesionを指摘され来院.自覚症状はなかった.初診時, 胸部X線, 断層写真, CTで, 右S2に辺縁が明瞭で内部の構造が均一な円形陰影を認めた.胸膜陥入像や空洞形成は認められなかった.気管支鏡検査を施行したが確定診断にはいたらず, 開胸生検を施行した.腫瘤はS2の肺胸膜直下にみられ, 弾性硬で, 腫瘍を含めた肺部分切除を行なった.切除標本の割面は一部に白色部位を有する黄色であった.病理所見より線維平滑筋腫性過誤腫と診断された.また全身検索にても他に平滑筋腫は認められなかった.
  • 矢内 康一, 芳賀 甚市, 佐久間 弘, 大石 明雄, 井上 仁, 元木 良一
    1992 年 6 巻 7 号 p. 792-797
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性.40年前に肺結核のため左人工気胸術を受けている.血性疾を主訴に来院し, 左側の慢性膿胸と診断され入院した.胸腔ドレナージを施行し保存的治療を試みたが, 血性排液が持続するため止血目的に胸郭成形術を施行した.胸郭成形術時の組織検査にて膿胸壁のdiffuse large cell, B cell typeのmalignant lymphomaと診断された.術後, cyclophosphamide, epirubicin, vincristine, prednisoloneによる化学療法を行った.術後10ヵ月現在, 外来通院中である.
  • 成田 久仁夫, 岩波 洋, 日吉 晴久, 立花 正徳, 左近司 光明, 篠原 義智, 坪井 栄孝
    1992 年 6 巻 7 号 p. 798-803
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸壁から肝臓に広範に浸潤した右下葉肺癌に対し, 右中下葉肺と胸壁, 横隔膜及び肝臓の部分切除を施行した.症例は62歳の男性.胸壁 (第7~10肋骨) と横隔膜を越えて肝臓への浸潤を伴った右下葉原発の腺扁平上皮癌症例.肺門部, 胸壁を切離した後, 肝浸潤部は経胸郭操作により切除した.術後, 肝切除面からの胆汁や血液の漏出を予防するために, 切除面にフィブリン糊を厚く塗布し, 直接縫合によって閉鎖した.更にその上をテフロンシートで縫着・被覆した.横隔膜, 胸壁はそれぞれテフロンシート及びMarlex pOlyethylenemeshで再建した.進行性肺癌の手術に際し, それがReduction surgeryに終わった場合は, 予後に改善はないとする報告が多いが, 非治癒切除例でも, 適切な術後補助療法によって, 時に長期生存例を得ることがある.現時点において, 手術以外に有効な治療法がない以上, 外科医は治癒切除を行うべく最大限努力すべきであると考える.
  • 小久保 光治, 杉本 浩志, 酒井 聡, 田中 常雄, 野垣 晴彦, 石川 真, 荒川 博徳, 村川 真司, 森 義雄
    1992 年 6 巻 7 号 p. 804-810
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳, 男性で3年前より体動時の呼吸困難に気づいていたが放置していた.平成3年3月胸部受傷時に両側の巨大ブラを指摘された.Hugh-Jones分類IV度で肺機能はVC960ml, %VC25%, 一秒量620ml, PaO265Torrであった.右側は胸部X線写真, 胸部CT, 肺血流シンチグラフィーより残存肺の再膨張が期待できないと評価し, 人工心肺準備下左側のブラ切除術を施行した.また陽圧呼吸によるブラの増大を防止するため開胸するまで自発呼吸を維持した.術後, 右肺構造の増大と血流の改善を認めたため, 約2ヵ月後に右肺巨大ブラ切除術を施行した.術後4ヵ月の現在, Hugh-Jones分類1度で, 肺機能はVC3240ml, %VC84%, 一秒量2170mlと著明に改善した.低肺機能の巨大ブラ手術では麻酔管理の重要さおよび起こり得る呼吸機能不全にたいする準備が必要と考えられた.
  • 滝沢 恒世, 寺島 雅範, 小池 輝明, 菅原 正明
    1992 年 6 巻 7 号 p. 811-817
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    52歳の男性.住民検診の喀痰細胞診D判定で発見された肺門部同時性多発早期肺癌に対し左上区切除及びS6スリーブ区域切除とR2aの肺門縦隔リンパ節の郭清を行なった.術後経過は良好で術後1年4カ月現在再発なく外来経渦観察中である.
  • 栗本 典昭, 山本 真也, 榎本 正満, 村山 正毅, 倉西 文仁, 吉岡 伸吉郎, 西亀 正之, 土肥 雪彦
    1992 年 6 巻 7 号 p. 818-824
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は, 腺様嚢胞癌の一手術例を経験し, 興味ある摘出標本の超音派検査所見を得たので報告する.症例は, 70歳女性.平成3年10月より咳, 血痰が出現し, 気管支鏡CT等にて, 右中間気管支膜様部より生じた腺様嚢胞癌と診断した.手術は, 右中間気管支後方への壁外浸潤を強く疑い, 右中下葉切除とした.気管支壁と腫瘍の関係を知るため, 摘出直後の標本を脱気水に入れ, 7.5MHz の probeにて超音波検査を行った.この検査にて,
    1) 腫瘍部分と非腫瘍部分の区別が容易
    2) 気管支壁内外の腫瘍の位置関係が明瞭
    3) 腫瘍の気管支軟骨への浸潤の有無を読めるなど, 興味深い所見が得られた.
    以上より, 術中困難であった気管支壁への局所浸潤の程度を, 摘出直後に診断する一方法として, 超音波検査があげられると考えた.
  • 青柳 壽幸, 山口 豊, 柴 光年, 藤野 道夫, 関根 康雄, 籾木 茂, 由佐 俊和, 鈴木 洋人, 吉田 成利, 尾辻 瑞人, 藤沢 ...
    1992 年 6 巻 7 号 p. 825-831
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    25年もの長期にわたり無症状に経過した巨大縦隔奇形腫の一手術例について報告する.症例は55歳, 男性.主訴は労作時呼吸困難, 発熱, 咳噺.胸部X線写真では左胸腔内に巨大腫瘤陰影を認め, 呼吸機能検査では混合性障害を認めた.手術にあたって, 腫瘍摘出による術後の急激な循環動態の変動を来すことを避けるために, 術前に腫瘤内容物を吸引排出を行った.それにより全身状態の改善が得られ, 安全に腫瘤を完全摘出することができた.切除標本の病理組織学的検査では膵組織は存在せず, アミラーゼの上昇も見られなかった.このことが長期にわたり穿孔も来さず巨大腫瘤を形成し得た-因と考えられた.
    更に腫瘤内容物の親水性成分の検索では, LDH, CA125, CA19-9, CEA, HCG などの各種腫瘍マーヵーが高値を示した.
  • 澤端 章好, 飯岡 壮吾, 東条 尚, 櫛部 圭司, 根津 邦基, 河内 寛治, 北村 惣一郎, Hidehito Sakaguchi
    1992 年 6 巻 7 号 p. 832-836
    発行日: 1992/11/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性, 28歳時に左肺結核治療のため人工気胸術を受けている.1989年12月風邪症状からH-JIV度の呼吸困難が出現, 喀痰量も増加し左結核性有瘻性全膿胸と診断された.本例に “extraperios-tealfluidplombagethoracoplasty” (近中法) を施行し膿胸を治癒せしめた.術後4ヵ月目には, レソトゲン写真上左肺に含気が認められるようになり, H-JII度まで改善した.呼吸機能検査では, 術前の% VC37%が術後4ヵ月には57%に, また1秒量0.62L が1.09L に増加した.換気シンチからの比率で配分すると, 左肺換気量は術前60ml が術後150mlに90ml 増加であり, FVC 増加量780mlのうち690ml (88.5%) は右肺の増加と考れた.術前後における換気・血流シンチでは, 術後左肺の換気比率の増加を認めたが, 換気に見合うほどの血流比率の増加は見られなかった.
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