日本呼吸器外科学会雑誌
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巻頭言
原著
  • 河中 聡之, 竹内 幸康, 川岸 耕太朗, 小来田 佑哉, 大和 寛幸, 奥村 明之進
    2024 年 38 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    SBリークチェッカーはチェストドレーンバックに接続する装置で,エアリークを定量的に測定でき,なおかつ従来通り水封室の気泡を目視で確認することができる.今回,SBリークチェッカーの忍容性を評価する臨床試験を行った.

    12例でSBリークチェッカーを使用した.SBリークチェッカーの数値と目視でのエアリークを観測した.ドレーンの抜去は従来通りクランプテストを施行した.

    測定されたリーク量はリークのない場合-76~9 ml/min,咳嗽時や発声時のリークで-7~84 ml/min,呼気時のリークで91~540 ml/min,持続的なリークで326~1327 ml/minであった.目視でのエアリークの確認とSBリークチェッカーの数値に乖離はなかった.有害事象は認めなかった.

    SBリークチェッカーは安全に使用することができ,ドレーン抜去可能か判断に悩む場合の判断材料として有用な可能性がある.

症例
  • 赤尾 恵子, 平原 正隆, 森野 茂行
    2024 年 38 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は17歳男性.左前縦隔に10 cmの腫瘤性病変を認め画像所見から縦隔奇形腫と考えた.12歳時に扁桃摘出後に術後出血を認めた.術前の血液検査でAPTTが47秒と延長していたが易出血性を疑う症状はなかった.縦隔奇形腫に対してHemi- clamshell開胸で腫瘍切除術を行った.術後2日目にドレーン排液が血性となり,CTで左血性胸水と胸骨裏面に血腫を認めた.術後出血に対し胸腔鏡下血腫除去術を施行し,胸骨裏面の出血点を確認し止血した.再手術後に出血は認めず,その後の経過は良好であった.退院後の精査で第IX因子活性の低下を認め,先天性血友病Bと診断した.先天性血友病は凝固因子活性の低下により出血傾向をきたす疾患で,第VIII因子活性が低下する血友病Aと,第IX因子活性が低下する血友病Bがある.術後出血を契機に先天性血友病Bと診断した症例を経験したので報告する.

  • 梁 泰基, 北川 崇, 森 俊輔, 重光 希公生
    2024 年 38 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は76歳女性,58歳時に子宮頸部腺癌に対し,前医にて広汎子宮全摘術と両側付属器摘出術および骨盤内リンパ節郭清を受けた.術後6年半無再発で前医を終診となった.術後18年目に結核検診を受けた際に異常陰影を指摘され,精査目的で当院呼吸器内科を紹介受診した.CTで両側多発肺結節を認め,気管支鏡下肺生検を行うも診断は得られず生検目的に当科紹介となった.胸腔鏡下右肺部分切除術を行い,病理検査では当初,HE染色で肺腺癌の診断となった.一方で,免疫染色ではTTF-1陰性,ER陰性,PgR陰性,p16一部陽性であった.故に,前医病理組織標本と比較し,子宮頸部腺癌肺転移と診断した.現在,当院産婦人科で化学療法を施行している.子宮頸癌が術後10年以上経過した遠隔期に単臓器多発肺転移をきたした報告は極めて稀である.

  • 原田 柚子, 今井 一博, 髙嶋 祉之具, 栗原 伸泰, 栗山 章司, 南谷 佳弘
    2024 年 38 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は74歳女性.血清Caとintact-PTHの高値を指摘され,原発性副甲状腺機能亢進症の疑いで99mTc-MIBI SPECTを実施.右上縦隔に点状の集積を認め,縦隔内異所性副甲状腺腺腫の診断で切除目的に当科へ紹介された.標的病変は縦隔脂肪織内に埋没しており術中局在同定が困難と予想され,99mTc-MIBIを用いたRadio Isotope法と術中intact-PTHモニタリング法を併用し手術に臨んだ.第3肋間前腋窩線上に6 cmの小開胸を置き,胸腔鏡補助下に縦隔脂肪織内の病変を切除した.摘出病変は99mTc高集積であり,血中intact-PTHも切除後10分で低下が得られ,完全切除と判断した.最終病理診断は異所性副甲状腺腺腫であり,1年6ヵ月経過した現在まで高Ca血症や腺腫の再発なく経過している.術中同定困難な縦隔内異所性甲状腺腺腫においては,Radio Isotope法や術中intact-PTHモニタリング法などを用いることで正確な腫瘍位置の特定が可能であり,遺残病変の有無も術中に遅滞なく確認できることから,再発率の低下にも寄与し得る.

  • 中村 勝也, 松本 昂, 生田 安司, 岩崎 健, 山元 英祟, 内山 明彦
    2024 年 38 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は17歳の男性.気管支炎で胸部レントゲンを撮影された際に右肺門部の縦隔陰影拡大を指摘された.翌年の検診でも同様の指摘をされ,当院へ紹介された.胸部CTでは前縦隔に10 cm大の辺縁不整な腫瘍を認め,両側腕頭静脈,上大静脈,右房を圧排し腫瘍の浸潤が疑われた.組織診断のため,腫瘍針生検を行った.組織は小型成熟リンパ球とやや大型の腫瘍細胞からなりc-kit強陽性,PLAPが弱染色像を示した点からセミノーマと診断された.化学療法(BEP療法3コース)が施行され,著明な腫瘍縮小効果が認められたが,一部腫瘍の遺残を認めたため,遺残腫瘍切除を施行した.治療前の針生検標本と合わせて検討し,EBV-EBER陽性で上皮系マーカーに陽性となる腫瘍細胞を認め胸腺リンパ上皮腫様癌と診断した.現在,切除より3年経過し,無再発生存中である.文献的考察を含め報告する.

  • 田中 博, 岡田 英, 青木 正
    2024 年 38 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性.横行結腸癌術後に肝転移と肺転移を発症し,肝転移に対して人工胸水下ラジオ波焼灼を施行された.治療後に右胸痛,咳嗽,血痰が出現したが自然軽快した.22日後の転移巣評価の全身造影CTで右肺中葉捻転が疑われた.感染および壊死の徴候を認めないため,3日後に胸腔鏡下中葉切除を施行した.葉間は完全分葉で,上葉と下葉はそれぞれ胸壁と横隔膜に癒着していたため,癒着のない中葉のみが人工胸水によって虚脱し,さらに中葉の転移性肺腫瘍の存在により中葉が反転するように浮力が働いた結果,捻転が生じたと推測した.捻転した中葉は炎症で下葉に癒着し臓側胸膜が肥厚していたが,手術は安全に終了し,術後経過問題なく退院した.人工胸水による肺捻転を予測して未然に防ぐことは困難であるため,人工胸水後早急に画像検査で肺捻転を発見できれば捻転解除術で肺を温存することができるかもしれない.

  • 前田 愛, 野島 雄史, 最相 晋輔, 清水 克彦, 中田 昌男
    2024 年 38 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    癌肉腫の中でも稀である肺癌肉腫芽腫様亜型を経験したので報告する.症例は72歳男性.肝細胞癌術後再発と術後気管支胆汁瘻の経過観察中に右肺下葉に28 mmの結節を指摘された.CTガイド下生検にて多形癌や癌肉腫が疑われ,原発性肺癌の診断で手術を施行した.術中所見では右下葉と横隔膜は気管支胆汁瘻の影響で強固に癒着しており,下葉部分切除術となった.腫瘍は横紋筋肉腫成分と上皮成分のH-FLACが混在しており,肺癌肉腫芽腫様亜型と診断された.術後9ヵ月で局所再発を認め,放射線治療を行った.放射線治療後は腫瘍増大なく経過していたが,肝細胞癌の進行にて全身状態が悪化し術後16ヵ月で永眠された.肺癌肉腫芽腫様亜型の予後は不良であり完全切除する以外に確立した治療はなく,化学療法と放射線治療の効果はいまだ議論の余地がある.症例集積による治療方針の確立が期待される.

  • 蜂須賀 康己, 藤岡 真治, 魚本 昌志
    2024 年 38 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は18歳,女性.伝染性単核球症に対し当院の耳鼻咽喉科で加療中に二次感染による深頸部膿瘍を生じた.局所麻酔下に頸部ドレナージが施行されたが3日後に増悪し,造影CTで降下性壊死性縦隔炎と診断し当科へ紹介された.緊急手術として胸腔鏡下に縦隔切開・ドレナージと左胸腔ドレナージを行い,引き続き深頸部膿瘍の開放・再ドレナージを行った.術後は胸腔内持続洗浄・ドレナージを10日間行い,経過良好で術後29日目に退院した.伝染性単核球症の経過中に発症した若年女性の降下性壊死性縦隔炎の1例を経験した.

  • 谷村 卓哉, 戸田 道仁, 鈴木 智詞, 伊藤 龍一, 篠原 亜弥, 岩田 隆
    2024 年 38 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    リンパ過形成を伴う小結節性胸腺癌(Micronodular thymic carcinoma with lymphoid hyperplasia;以下MNCLH)はリンパ性間質を伴う小結節性胸腺腫(Micronodular thymoma with lymphoid stroma;MNT)に類似する稀な疾患で,WHO分類(第5版)では暫定的に胸腺扁平上皮癌の亜型とされた.症例は48歳男性.CT検診で前縦隔に境界明瞭な径13 mmの結節を指摘され紹介となった.筋無力症状はなく血清CEAやSCC値,抗アセチルコリンレセプター抗体価は正常範囲内.胸腺腫を疑いロボット支援下拡大胸腺摘出術を施行し第4病日に退院.病理検査ではMNTに類似する結節性病変を認めたが,異型性が強いこと,CD5陽性,c-KIT陽性などの所見からMNCLHと診断.正岡I期であったため後治療は行わず1年間無再発生存中である.

  • 杉原 実, 岡本 紗和子, 後藤 真輝, 谷口 哲郎
    2024 年 38 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    患者は66歳男性.喀血と左前胸部痛で受診.CTで左肺上下葉間に内部吸収域不均一な腫瘤影を認めた.左葉間血腫の疑いで,腫瘍を栄養する左気管支動脈を塞栓したが血性胸水の増加と左下葉無気肺の進行を認めたため,内科的治療は困難と判断し,胸腔鏡下血腫除去術を行った.腫瘍を疑う充実性の病変は明らかでなく,葉間に多量の血餅を認めた.血腫の一部を病理検査に提出したところ,肉腫様肺癌の診断に至った.充実性の腫瘍を疑う病変が明らかでなく葉間血腫を呈した肺癌の報告はなく,注意すべき症例であると考えられたため報告する.

  • 三股 頌平, 稲田 一雄, 佐藤 寿彦
    2024 年 38 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,女性.2週間持続する血痰を主訴に当院呼吸器内科を受診,精査目的に入院した.胸部CTで左肺下葉S6に細血管の流入を伴う25 mm大の境界明瞭な充実性結節を認めた.手術目的に当科へ転科し,胸腔鏡下に左下葉S6区域切除を施行,迅速細胞診で紡錘形細胞の増殖を認めカルチノイドや小細胞癌,肉腫等の悪性疾患が鑑別に考えられた.下葉切除及びリンパ節郭清を追加し手術を終了した.術後病理診断では,HE染色からは未分化癌や高異型度の肉腫を鑑別に挙げ,免疫染色では上皮組織マーカー陰性のため癌は否定的であった.SYT-SSXI融合遺伝子を検出し低分化型滑膜肉腫の診断に至った.術後に肺炎,肺塞栓症を合併したが軽快し,術後14日目に退院された.頭部MRI,PET-CTによる原発巣の検索を行ったが腫瘍性病変を認めず,肺原発と考えられた.術後2年6ヵ月時点で再発無く経過している.

  • 小野 元嗣, 原 祐郁
    2024 年 38 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性.自宅階段で転落し左外傷性血気胸と左第8~11肋骨骨折の診断で当院へ搬送された.入院翌日に貧血の進行ならびに胸部CT検査で左胸腔内の液体貯留の増加を認めたため,胸腔内出血が持続していると判断し緊急手術となった.予想に反し胸腔内出血はごく少量で,肋骨骨折した部位からも活動性の出血は認められなかった.胸腔内を再度観察すると前縦隔に広基性に繋がる緊満した囊胞性病変を認め,囊胞内には血液の貯留があり同病変が貧血の原因であると判断し切除した.病理診断では胸腺囊胞と,その一部に顕微鏡的胸腺腫の合併が認められた.

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