日本呼吸器外科学会雑誌
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9 巻, 4 号
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  • 田畑 俊治, 佐久間 勉, 小野 貞文, 野田 雅史, 星川 康, 植田 信策, 芦野 有悟, 谷田 達男, 藤村 重文
    1995 年 9 巻 4 号 p. 480-485
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺癌肺葉切除症例12例を対象とし, 術後最大呼気速度;ピークフロー値 (Peak Flow Rates, 以下PFR) の変化をアセス簡易ピークフロー計を用いて検討した.PFRは術後急性期に, 術前に比し約1/3に低下し, 第2週目以降77%まで回復した.また, 術後4週目のPFRは術前PFR×残存肺血流分画にて求めた予測値とよく相関した.術後急性期に硬膜外麻酔を施行することにより, 術後急性期 PFRの低下は抑制され, 術後無気肺の発生は認めなかった.
    以上より肺切除術術後急性期にはPFRの低下が術後急性期肺合併症の発生に関与することが示唆された.硬膜外麻酔はこのPFRの低下を有意に抑例し, 周術期呼吸管理上, その有用性が示唆された.
  • 吉永 康照, 岩崎 昭憲, 松添 大助, 河野 淳二, 河原 克信, 白日 高歩
    1995 年 9 巻 4 号 p. 486-492
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    嚢胞性肺疾患に合併した肺癌12例に手術を行った.男性11例, 女性1例, 平均年齢は57歳, 男性は全員高度喫煙者であり, 9例は巨大ブラであった.術前の確定診断は得られにくく画像診断に続いた開胸診断が重要であった.腫瘍占拠部位は, 右上葉7例, 右下葉3例, 左上葉が2例を占めた.術式は肺葉切除術が9例, 肺葉切除+椎体合併切除1例, 肺葉切除+胸壁合併切除1例で, 試験開胸が1例あった.組織型では, 腺癌7例 (58%), 大細胞癌3例 (25%), 扁平上皮癌1例 (8%), 未分化癌1例 (8%) であり分化度別では低分化な癌が多かった.術後病理病期は, Stage Iが6例, Stage IIIA 2例, IIIB 2例, IV 1例と早期症例が多かった.嚢胞性肺疾患合併肺癌は, 早期に発見し外科的切除を行うことで治療成績の向上が期待できると考えられた.
  • 乾 健二, 磯和 理貴, 植田 充宏, 田中 文啓, 黒谷 栄昭, 福瀬 達郎, 横見瀬 裕保, 池 修, 八木 一之, 水野 浩, 青木 ...
    1995 年 9 巻 4 号 p. 493-499
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1992年8月から1994年12月までに56例に対し59回の胸腔鏡手術・検査を行った.対象は自然気胸26例, 縦隔・胸壁腫瘍10例, 術後肺瘻2例, 多汗症1例 (両側), びまん性肺疾患11例, 肺末梢腫瘤5例, 胸膜生検1例であった.自然気胸症例において3例の開胸移行例を除き目的を達した.再発は2例で開胸例, 再発例ともに初期の症例であった.縦隔・胸壁腫瘍例はすべて胸腔鏡下に摘出した.肺瘻症例は瘻孔を確認しfibrin糊で瘻を閉鎖した.多汗症に対し, 両側胸部交感神経切除を行い著効した.びまん性肺疾患11例, 肺末梢腫瘤5例, 胸膜炎1例において確定診断を得た.胸腔鏡手術・検査は重篤な合併症が無く, 手術成績も満足すべきものであった.処置用具の発達, 手技の洗練症例の蓄積により今後ますます多くの胸腔内疾患に対して胸腔鏡の適応が広がると予想される.
  • 根津 邦基, 澤端 章好, 東条 尚, 河内 寛治, 北村 惣一郎
    1995 年 9 巻 4 号 p. 500-504
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    末梢性肺腫瘤病変25例に対して胸腔鏡下肺部分切除術を施行し, その治療上の問題点について検討した.1.24例 (96%) でENDO GIA30を用い, 切除断端陰性で切除し得た.腫瘤径は全例3cm以内で, 胸部CT上胸膜あるいは葉間からの距離は2cm以内であり, その範囲内であれば, ENDO GIA30による腫瘤の切除が可能と考えられた.2.病巣局在確認の容易さを容易例 (17例), 困難例 (6例), 不能例 (ミニ開胸必要) (2例) に分け, 局在確認を困難にする要因について検討した.結果, 腫瘤が転移性肺腫瘍の疑いが強い場合, 腫瘤径が1cm前後と小さい場合, 胸部CT上で胸膜との距離が15mmを越える場合には展在確認が困難であると考えられた.3.術後合併症は, 4例 (16%) (COPD合併3例, 全摘術後転移1例) で術後5日以上の肺瘻を認めた.COPD合併症例では, ENDO GIA30による切除並びにフィブリン糊塗布は完全とは言えず, 肺瘻予防のため更なる工夫が必要である.
  • 鈴木 聡, 芦野 有悟, 植田 信策, 小野 貞文, 谷田 達男, 小池 加保児, 佐久間 勉, 藤村 重文
    1995 年 9 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    一側肺動脈閉塞試験 (UPAO) 時の全肺血管抵抗指数 (TPVRI) を指標とする肺切除術の機能的適応評価法の生理学的妥当性を検証するために, 選択的肺動脈閉塞試験 (SPAO) 時とUPAO時における肺循環動態を単位肺区域あたりに負荷される血流量一圧関係として解析した.単位肺区域あたりの血管抵抗指数 (PVRIsegment) は, TPVRIが700dyne・sec・cm-5・m2未満の症例では, 閉塞前, SPAO時, UPAO時の順に低下した.一方この基準値を越えた症例では, PVRIsegmentは閉塞前とSPAO時との間に有意な低下を認めたがUPAO時の値はSPAO中のそれよりも低下しなかった.このことは肺血管床コンプライアンスの減少を示している.UPAOで肺切除術の適応基準を逸脱したと判断される症例における肺血管床の特性は, SPAO時とUPAO時との間に生じる予備力の喪失にあることが示された.
  • 山下 良平, 家接 健一, 片田 正一, 小杉 光世
    1995 年 9 巻 4 号 p. 510-515
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1988年1月~1994年12月の7年間に当科で切除した原発性肺癌111例のうち, 重複した消化管癌に対しても切除手術を行った15例 (13.5%) を対象にその臨床像を検討した.男13例, 女2例で, 年齢は56歳~77歳, 平均68.7歳であった.重複癌の内訳は同時性8例, 異時性7例で, 2重複癌14例, 3重複癌1例であった.重複癌臓器は胃が8例と最も多く, 以下結腸4例, 直腸2例, 食道1例であった.肺癌の組織型は腺癌7例, 扁平上皮癌5例, 大細胞癌2例, 小細胞癌1例で, 腺癌では各消化管に均等に重複癌が発生していたが, 扁平上皮癌では全例が上部消化癌であった.経過中に肺癌死5例, 消化管癌死3例を認め, 15例全体の累積3年生存率, 5年生存率はそれぞれ62.2%, 41.5%であった.肺癌患者では, 特に胃癌をはじめとする消化管重複癌の存在する可能性を念頭において, 術前検査や術後経過観察を行い, その早期発見, 早期治療に努めることが, 肺癌の予後を改善する上でも重要と考えられた.
  • 中野 昇, 清本 徹馬, 澤井 勉, 藤原 清宏
    1995 年 9 巻 4 号 p. 516-520
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    左肺癌手術例13例を対象とし, 術直前に縦隔鏡検査を行い, 縦隔リンパ節の存在の有無を確認した.後側方切開にて開胸し, 大動脈脱転とボタロー靱帯切離による縦隔リンパ節郭清群4例と, ボタロー靱帯切離のみによる縦隔リソパ節郭清群9例とで, 存在を確認した縦隔リンパ節に対してどの程度郭清できるか (郭清率) を比較した.縦隔リンパ節の郭清率は, 前者と後者はそれぞれ#2では100%, 0%, #3では100%, 22.2%, 左拠では75%, 100%, #7では100%, 100%であり, #3において有意差 (p<0.05) を認めた.
    左肺癌において後側方切開による縦隔リンパ節郭清では, #3の郭清が不十分であり, 大動脈脱転とボタロー靱帯切離による郭清の必要性が示唆された.
  • 北川 敦士, 三好 新一郎, 藤原 慶一, 鈴間 孝臣, 別所 俊哉, 谷野 裕一, 平井 一成, 西村 好晴, 吉増 達也, 内藤 泰顯, ...
    1995 年 9 巻 4 号 p. 521-526
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は13歳, 男児.進行性神経疾患で低栄養状態のため当院小児科に入院中であったが, 肺炎を併発し, 長期人工呼吸管理が必要になったため気管切開術が施行された.術後21日目, 突然大量の気道出血が出現した.気管腕頭動脈瘻と診断し, 緊急手術を施行した.胸骨正中切開と右頸部襟状切開でアプローチし, 3×4mmの動脈瘻に対しては腕頭動脈切除術, 人工血管置換術, 6×8mmの気管瘻に対してはdebridementの後, 縫合閉鎖術を施行した.術後1週間目に縦隔洞炎を併発したため人工血管を摘除し, 縦隔洗浄後大胸筋及び胸鎖乳突筋で動脈縫合閉鎖部を被覆した.その後, 縦隔洞炎は遷延化したが, 術後4ヵ月目には感染症状も消失した.気管腕頭動脈瘻の治療は, 緊急手術が必要であり, 術式は気管瘻の縫合閉鎖, 腕頭動脈切除術が有用と思われた.また, 人工血管を用いる場合は, 縦隔洞炎の発症を考慮し胸郭外ルートによるバイパス術が必要と思われた.
  • 中嶋 俊介, 西山 勝彦, 小橋 帝生, 高橋 章之, 島田 順一, 岡 隆宏, 真嵜 武
    1995 年 9 巻 4 号 p. 527-531
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    膠原病のうち多発性筋炎や皮膚筋炎等には悪性腫瘍との関連性が高いことは周知の事実であるが, 近年, 進行性全身性硬化症 (PSS) と悪性腫瘍, 特に肺癌との関連が注目されている.今回肺癌を合併したPSSを経験した.症例は47歳, 女性.18年前, 手足の痛みで発症し, PSSと診断され, 3年前, 食道機能低下と肺線維症が確認された.1992年2月頃より呼吸器症状が増悪した.胸部X線上, 右下肺野に腫瘍陰影を認め, 気管支鏡検査で腺癌と診断され, 右肺下葉切除, 中葉部分切除, 横隔膜合併切除およびリンパ節郭清を施行した.病理組織学的には中分化腺癌, 病期はT2N1M0で相対的治癒切除であった.術後経過は良好で24日目に退院した.PSSと肺癌との合併例は近年多数報告されているが, 手術不能例が多く, 相対的治癒切除または絶対的治癒切除し得た例は検索し得た限りでは国内では本例が2例目であり, 極めてまれであると考えられた.
  • 佐久田 斉, 川畑 勉, 城間 寛, 仲本 敦, 松原 忍, 玉城 守, 砂川 一哉, 玉木 正人, 久田 友治, 鎌田 義彦, 岩政 輝男 ...
    1995 年 9 巻 4 号 p. 532-537
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    α-Fetoprotein (AFP) 産生を伴う肺原発腺扁平上皮癌の一手術例を経験した.症例は62歳男性, 胸部異常陰影を指摘され, 精査された.胸部CT上, 右S10領域に4.0×3.0cmの腫瘤を認め, 細胞診及びTBLBにて原発性肺癌と診断された.術前, 血清AFPが186ng/mlと高値を示し, そのConcanavalin A結合率は12%であった.CEA, CA19-9, SCC抗原及びHCGは正常値であった.手術は右下葉切除術及びリンパ節郭清術 (R2b) を施行した.血清AFP値は術後3週目までに正常化した.組織学的には腺扁平上皮癌, t2, n1, m0, stage IIであった.免疫染色にて腫瘍細胞内にAFPを証明した.現在までに, 45例のAFP産生肺癌が報告されているが, 組織学的には腺癌が最も多く, 31例 (67%) を占め, その中の半数以上が低分化型であった.腺扁平上皮癌はきわめて少なく, 本例が2例目の報告である
  • 堀尾 裕俊, 野守 裕明
    1995 年 9 巻 4 号 p. 538-541
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    びまん性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術において標準的な後側方切開を, さらに前方で第6, 7肋軟骨を切断して肋骨弓下に延長し, 開胸を行なった.この方法により良好な術野が得られ, 特に通常困難な横隔膜合併切除が容易となった.
  • 味元 宏道, 冨田 良照
    1995 年 9 巻 4 号 p. 542-545
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 19歳男性で, 1993年7月1日の検診で, 胸部異常陰影を摘指され, 当科を受診した.精査の結果, 食道壁内の先天性嚢腫と診断され, 10月15日胸腔鏡下摘出術を行った.病理検査の結果, 気管支原性嚢胞と診断された.傍食道型はまれであり, 食道嚢腫とは病理学的にも画像診断の上でも鑑別診断が困難なことが多い.最近では, 胸腔鏡下手術が盛んに行われるようなってきており, その適応も徐々に広がりつつある.今回は傍食道型気管支原性嚢胞に対して胸腔鏡下手術を行い, 安全に摘出しえたので報告した.
  • 清水 信義, 青江 基, 伊達 洋至, 山下 素弘, 佐野 俊二, 種本 和雄
    1995 年 9 巻 4 号 p. 546-550
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    欧米では肺移植は, 末期呼吸不全患者に対する最終的な治療法としてすでに確立されているが, わが国ではいまだ移植に対する社会的な合意が得られず実施されていない.我々の紹介により, 原発性肺高血圧症の16歳男児が, 米国で両肺移植を受け, 帰国後きわめて順調な経過をたどっているので, その術後管理について報告する.
  • 青木 輝浩, 小池 啓司, 渡辺 真純, 妻鳥 元太郎, 高木 啓吾, 田中 勧, 相田 真介
    1995 年 9 巻 4 号 p. 551-556
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の胸椎転移例に対して人工椎体を用い切除再建を行い, 良好な結果を得た.症例は64歳男性で, 右第2-3肋骨から第2-3胸椎にわたった腫瘍を認め, 組織学的には未分化癌であった.術前に40 Gyの放射線照射を行ったところ, 腫瘍は著明に縮小した.手術は胸壁側は腫瘍より約5cm離して肋骨, 横突起まで合併切除し第2-3胸椎及び上下の椎間格を切除.チタン性の人工胸椎を挿入固定した腫瘍はすべて線維化巣におき変わっており, 術前放射線治療が著効を示したものと考えられた.人工椎体は変位等もなく固定は良好で日常生活に支障はなく, また術後15ヵ月を経過し, 原発巣と考えられる腫瘍は認めない.
  • 貝羽 義浩, 黒川 良望, 安藤 健二郎, 森 昌造
    1995 年 9 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.繰り返す左側自然気胸のため近医で開胸ブラ縫縮術を受けたが, 術後より呼吸苦が出現し, 在宅酸素が必要となった.入院時, 高度の閉塞性障害と, CTにて両側にびまん性 (傍隔壁型) の気腫性病変が認められた.胸腔鏡下に右側のブラ状となった肺表面を Neodymium-Yttrium-Aluminum-Garnet (Nd : YAG) レーザーにて凝固収縮させた.術後は経過良好で, 術後約3週間で退院となった.術後3ヵ月の呼吸機能検査では, 肺活量 (vital capacity, VC) は 2.76l から2.981, 1秒量 (forced expiratory volume in one second, FEV1) は1.10lから1.29lと増加し, 残気量 (residual volume, RV) は4.36l から4.06l と減少が認められた.運動時の最大酸素摂取量も約20%増加し, 運動能も改善が認められた.本法は, 進行した肺気腫の有効な治療法と考えられた.
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