日本呼吸器外科学会雑誌
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9 巻, 6 号
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  • 胸腔鏡手術と開胸手術の比較
    大淵 俊朗, 河野 匡, 大塚 俊哉, 中島 淳, 柳生 邦良, 古瀬 彰
    1995 年 9 巻 6 号 p. 668-671
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    手術侵襲が術後早期の呼吸機能に及ぼす影響について胸腔鏡手術と開胸手術で比較した.対象は当科で施行した肺楔状切除または非肺切除の胸部手術症例で, 気胸および気腫性・嚢胞性疾患を除いた胸腔鏡手術22例 (A群), 後側方開胸による開胸手術10例 (B群) である.術前後の呼吸機能を肺活量, %肺活量, 1秒量, 1秒率, INDEX (=1秒量/予測肺活量), 肺活量及び1秒率の前後比 (=術後値/術前値) の各パラメーターで表わし, 各群内, 両群間で比較検討した.年齢, 性別, および術前呼吸機能に両群間に有意差は認められなかったが, 術後呼吸機能測定日はA群で平均第8病日, B群で平均第15日と有意差が認められた.術後呼吸機能は各群内で肺活量, 1秒量とも術前より有意に低下していた.両群間では術後%肺活量や1秒量の前後比がB群で有意に低下していた.胸腔鏡手術は開胸手術と比較して術後早期の呼吸機能に与える影響は小さいと考えられた.
  • 松島 伸治, 笹井 巧, 原口 秀司, 真崎 義隆, 平井 恭二, 小泉 潔, 五味渕 誠, 家所 良夫, 日置 正文, 渋谷 哲男, 田中 ...
    1995 年 9 巻 6 号 p. 672-677
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    転移性肺腫瘍切除66例に対して臨床的検討を行い治療方法および予後因子との関連につき言及した.性別は男性39例, 女性27例, 男女比は1 : 0.7, 年齢層は14歳から82歳までで平均年齢は52.7歳であった.原発臓器別では, 大腸, 直腸癌が25例, 腎癌7例, 肉腫6例, 乳癌6例, 子宮癌, 悪性絨毛上皮腫, 睾丸腫瘍が各3例と続いた.全体の累積生存率をみると, 中間生存期間は2.4年, 5年生存率は29% (N=65), 大腸直腸癌の中間生存期間は1.9年, 5年生存率は12% (N=24) でその予後は不良であった.手術術式では肺葉切除例に生存期間の延長傾向が示されたが, 肺葉切除例に単発例が多く, 縦隔リンパ節転移例が少なかったことによるものと考えられた.今回の検討で (1) 適切な化学療法施行例, (2) 転移数単発例, (3) 縦隔リンパ節転移陰性例, (4) DFIが2年以上の症例に生存期間の延長が示された.
  • 庄村 遊, 木村 誠, 日置 巌雄, 井上 孝史, 小野田 幸治, 高尾 仁二, 谷 一浩, 並河 尚二, 矢田 公
    1995 年 9 巻 6 号 p. 678-683
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍5例に対し胸腔鏡下手術を施行した.男性2例, 女性3例で, 年齢は29~78歳, 平均年齢51歳で, 嚢胞性腫瘍2例, 充実性腫瘍3例であった.占拠部位は上縦隔1例, 後縦隔3例, 中縦隔1例であった.手術時間は平均112分であり, 術中出血量は平均20mlと少量であった.術後ドレーン留置期間は平均1.6日と短く, 術後入院期間も1例を除くと平均6.3日と短かった.胸腔鏡下手術は, 出血は少量で, 入院期間も短く, 優れた方法であると思われた.
    過去13年間に経験した縦隔腫瘍121例中, 良性腫瘍57例の胸腔鏡下手術の可能性を個々の症例の術前画像所見および手術所見から検討したところ, 嚢胞性腫瘍の68.8%および神経原性腫瘍の65.0%が可能と考えられた.今後, 手術手技の向上や器械の進歩とともに, 胸腔鏡下手術の適応が広がっていくと考えられた.
  • 沖津 宏, 長野 貴, 片山 和久, 宇山 正, 門田 康正
    1995 年 9 巻 6 号 p. 684-691
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    気管及び食道の同時切除再建を行った気管腺様嚢胞癌2例, 甲状腺癌3例において術式, 合併症について検討した.気管腺様嚢胞癌症例は2例とも縦隔気管瘻造設・非開胸食道抜去後縦隔経路胃管再建術を行なった. 甲状腺癌症例では気管形成術・遊離空腸間置術, 縦隔気管瘻造設・遊離空腸間置術, 気管形成術・非開胸食道抜去後縦隔経路胃管再建術が各1例つつであった.縦隔気管瘻造設例は全例両側鎖骨内側1/3, 第1, 2肋骨及び胸骨柄を切除し, 気管断端を腕頭動脈の右下方に移動させた.重篤な術後合併症は移植空腸壊死, 両側反回神経麻痺を各1例つつ認め, 後者は誤嚥性肺炎により在院死した.気管食道の同時切除において縦隔気管瘻造設例では前縦隔死腔の大網による充填, 気管形成例では吻合部の大網, 腸間膜による被覆などの工夫が有用であった.また気管形成例では食道切除に伴うより愛護的な反回神経に対する操作が痛感された.
  • 岩崎 昭憲, 秀島 輝, 吉永 康照, 松添 大助, 川原 克信, 岡林 寛, 白石 武史, 草野 卓雄, 白日 高歩
    1995 年 9 巻 6 号 p. 692-696
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺および縦隔に発生し組織学的に小細胞癌の確定診断を得た悪性腫瘍7例に対して, 自己骨髄細胞を採取し, 多剤併用の大量化学療法を施行した.評価対象は試験開胸後化学療法をおこなった4例と化学療法によりStage down後に手術を追加し得た3例である.効果はCR 6例とgood PRの1例を得る事ができた.化学療法により著明な骨髄抑制を認めたが自己骨髄移植により速やかな回復を得た.予後は最長の2年を含め全例生存中で, 過去の症例との比較でも生存率で有意の延長を認め, 肺小細胞癌に対する自己骨髄移植併用化学療法の有効性が示唆された.
  • 宮本 良文, 坪田 紀明, 吉村 雅裕, 室谷 陽裕, 針生 智樹
    1995 年 9 巻 6 号 p. 697-702
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 男性.嚥下困難があり, 胸部X線およびCTで前縦隔に巨大な腫瘍が認められた.血中AFPが異常高値でHCG及びLDHも上昇していた.睾丸に異常は認められなかった.腫瘍の針生検では肉腫組織が得られたのみであったが, 縦隔原発の非セミノーマ型胚細胞性腫瘍と診断し, Cisplatin, VP-16, Bleomycin, Adriamycinによる併用化学療法を開始した.3コースの化学療法によって腫瘍の縮小とマーカーの正常化が得られたのちに, 腫瘍の完全摘出術を施行した.術後にVP-16を追加投与し, 7ヵ月を経過した現在再発の兆候を認めていない.
  • 星川 康, 箕輪 宗生, 鈴木 聡, 佐藤 雅美, 小野 貞文, 谷田 達男, 岡庭 群二, 手塚 文明, 藤村 重文
    1995 年 9 巻 6 号 p. 703-707
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    左肺舌区の臓側胸膜から発生したと考えられるいわゆる “localized fibrous tumor of the pieura” の1切除例を経験した.症例は70歳, 男性.胸部X線上左中肺野から下肺野にかけて, 心陰影に重なる巨大な腫瘤影を認めた.針生検で線維腫が疑われたため開胸切除術を行った.腫瘍は左肺舌区の胸膜から有茎性に連続していた.組織学的には腫瘍は紡錘形の細胞からなり膠原線維の増生を認めたが, 悪性所見を認めなかった.免疫組織化学染色では散在性にvimentin陽性, cytokeratin陰性であった.さらに, 電子顕微鏡的には線維芽細胞様で, desmosome, microvilli, 基底膜様構造を欠くことから, 本腫瘍を胸膜中皮下間葉系細胞由来のiocalized fibrous tumor of the pleuraと診断した.
  • 長谷川 誠紀, 田中 紘一, 岡島 英明, 猪股 裕紀洋, 山岡 義生
    1995 年 9 巻 6 号 p. 708-711
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    生後11ヵ月の先天性胆道閉鎖症男児.術前より著明な低栄養, 腹水貯留, 肝性クル病に伴う胸郭変形を認め, 低酸素血症のため酸素投与を要した.生体肝移植手術の際肝静脈流入部の下大静脈が閉塞しており, これを横隔膜の高さまで剥離して血流のある部分に到達し, ここに血管鉗子をかけた.術翌日に気管内チューブが抜管され, 術直後の呼吸状態は安定していたが, 呼吸不全が次第に進行し, 術後4週間目には右横隔膜の挙上のため右胸腔内がほとんど腸管で占められた.第35病日, 呼吸不全が急性に増悪したため気管内挿管し, 陽圧呼吸を開始したが, 右横隔膜の挙上と縦隔の左方偏位は改善されなかった.横隔神経損傷に伴う非可逆的な横隔膜弛緩症と診断し, 第38病日, 右開胸下に右横隔膜縫縮術を施行した.術直後より右横隔膜挙上と縦隔偏位は改善され, 縫縮術後3日目に気管内チューブ抜去, 56日目に退院した.
  • 梅森 君樹, 安藤 陽夫, 宇野 浩司, 青江 基, 伊達 洋至, 清水 信義
    1995 年 9 巻 6 号 p. 712-716
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性と68歳, 女性で, ともに胸部異常陰影を指摘された.CT・MRIでは特異的な所見は得られなかったが, 経食道超音波内視鏡検査では, 辺縁は平滑で被膜を認め, 周囲への浸潤を疑わせる所見は認めず, 内部は均一で低エコーレベルを示し, 嚢胞であることが判明した.手術を施行し, 病理組織診断は気管支嚢胞であった.経食道超音波検査が術前の鑑別診断に有用であった.
  • 斉藤 裕, 田畑 敏, 荒能 義彦, 長尾 信
    1995 年 9 巻 6 号 p. 717-720
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 糖尿病を有する73歳女性で, 肺癌のためTAを用いて右下葉切除を行った後, 第7病日に気管支瘻膿胸, 第8病日に肺動脈瘻を併発した.気管支断端および肺動脈断端壊死のため中葉切除を行い, 中間気管支を再度TAで切断し, 有茎肋間筋で被覆した.術後の経過は良好であった.
  • 木村 秀, 武久 良史, 斉藤 勢也
    1995 年 9 巻 6 号 p. 721-724
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 男性.右肺癌の診断にて右上中葉切除術を行った.第2~9病日まで気管支鏡による吸痰を行うも気管支屈曲偏位のため, 無気肺は改善せず呼吸困難が続くため, 第13病日に右無気肺による対側肺の過膨張を改善する目的で, 右胸腔内に空気を注入し, 著明な呼吸困難の改善を認めた.改善を確認した上で翌日SF6を400ml注入した.予想に反して, SF6注入後約一週間で残存肺は膨張しはじめ, 注入後約1ヵ月で, ほぼ完全に膨張した.これは, 除圧で横隔膜が下がり下葉気管支の偏位が改善し, 又気管支の浮腫もとれ, 徐々に含気が回復したものと思われた.空気とSF6の注入が有効であった術後無気肺の症例を経験したので報告する.
  • 宮澤 正久, 矢満田 健, 青木 孝學, 金子 和彦, 吉田 和夫, 羽生田 正行, 岨手 善久, 宮崎 忠昭
    1995 年 9 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    真性赤血球増加症 (polycythemia vera 以下PV) を合併した肺癌の1手術例を経験した.症例は65歳男性.精査の結果, 右上葉原発の肺癌 (腺癌, T1N2M0, stage IIIA) と診断された.血液検査にて全血球成分の増加を認め, 特に赤血球系は著しく増加していた.諸検査の結果, PVの確定診断を得た.術前に瀉血を9回 (計36000nl) 行い, ヘマトクリットを70%から55%まで低下させたうえで手術を施行したところ, 合併症はみられず順調に経過した.
    PVは DICの前段階とされ, 術後, 出血, 血栓症などの合併症がおきやすく死亡率も高いとされているが, 適切な術前管理により, 術後合併症を防止することが可能であると考えられた.
  • 佐野 正明, 飯塚 昌雄, 山田 健, 富野 晴彦, 中島 義明, 水野 武郎
    1995 年 9 巻 6 号 p. 731-738
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    右手握力低下と背部痛を主訴として来院した17歳男性の精査中, 進行する麻痺と気道圧迫症状のため腫瘍の可及的切除と右上葉切除術を施行した.腫瘍は, 後縦隔から発生したprimitive neuroectodermaltumor (PNET) と診断され, 術後補助療法を施行したが, 13ヵ月で死亡した.本腫瘍は予後不良な疾患であり, 完全切除が唯一の予後が期待できる治療法と考えられた.
  • 渡辺 俊一, 下川 新二, 松永 幸宏, 上原 景光, 平 明
    1995 年 9 巻 6 号 p. 739-744
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    肺移植あるいは心肺移植の適応と考えられたEisenmenge r症候群の一例について述べた.症例は51歳, 男性1労作時に呼吸困難が出現し近医を受診した.心室中隔欠損症を疑われ心臓カテーテル検査を行った.肺動脈圧は120/42 (70) mmHgと肺高血圧を示し肺対体血圧比 (Pp/Ps) 0.91, 肺対体血流量比 (Qp/Qs) 1.26, 肺対体血管抵抗比 (Rp/Rs) 0.34であった。肺血管抵抗 (PVR) が14.2unit・m2と高く, また, トラゾリン注入試験の反応が悪く12.5unit・m2と高値を示した.確定診断を得るために更に開胸肺生検を行った.病理組織学的にHeath・Edwards分類Grade IVと診断され, 不可逆性の肺血管病変と判断された.本例はEisenmellger 症候群を呈した心室中隔欠損症で, 肺移植あるいは心肺移植を考慮すべきものと考え, 文献的に考察し検討した.
  • 石倉 久嗣, 三浦 一真, 森田 純二, 吉澤 潔, 高橋 裕児
    1995 年 9 巻 6 号 p. 745-749
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は, 血清CA19-9が高値であった縦隔奇形腫を経験し, 文献的考察を行った.患者は19歳女性.胸部X線写真にて左肺門部の腫瘤影を指摘され来院し, CTにて前縦隔から胸腔内に突出する腹瘤影を認めた.血清CA19-9値は146.0U/ml と上昇していた.縦隔奇形腫の診断のもと摘出術を施行し, 病理学的に成熟奇形腫と診断された.免疫組織化学では, CA19-9に陽性の部分はみられなかった.術後CA19-9値は正常に復した.文献前告上, 血清CA19-9値の上昇した縦隔奇形腫は11例であった.術前のCA19-9値は47.5~958.0U/mlで, 術後すべて正常化し腫瘍由来であることが示唆されている.免疫組織化学では, CA19-9に膵, 気管上皮, 副腎, 胸腺などが陽性であった.血清CA19-9は縦隔腫瘍では, 奇形腫を鑑別診断にあげる補助的マーカーとして利用されるべきで, 縦隔奇形腫において良性か悪性か鑑別できる腫瘍マーカーでないと結論する.
  • 高橋 豊, 石川 真也, 池上 直行, 玉田 二郎
    1995 年 9 巻 6 号 p. 750-754
    発行日: 1995/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    患者は7歳, 男子.Fallot四徴症根治術後8ヵ月目に心・呼吸停止を来し, 蘇生し得たが, 低酸素脳症に陥り, 気管切開を施行した.唾液の気管内流入が多いため, カブ付き気管カニューレを使用し始めた1ヵ月後に大量の喀血を生じた.胸部CT写真にてカニューレによる気管腕頭動脈瘻が示唆された.胸骨縦切開は不可能なため, 胸骨上部の一部を切除して術野を得た。腕頭動脈は結紮切断し, 気管欠損部には大胸筋弁を被覆した.
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