日本呼吸器外科学会雑誌
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29 巻, 7 号
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原著
  • 坪島 顕司, 永田 真知子, 若原 鉄平, 的場 保巳
    2015 年 29 巻 7 号 p. 804-807
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    【背景】原発性自然気胸は再発時に手術適応となることが多いが,胸腔ドレーン留置後の気漏遷延で手術適応となる場合もある.これまで手術適応の違いによる臨床的特徴は報告がない.【対象と方法】2009年1月より2015年4月までに初回手術を施行した原発性自然気胸症例のうち,手術の原因が気漏であった20症例(Leak群)とそれ以外の115症例(Non-Leak群)を比較検討した.【結果】患者背景においてLeak群,Non-Leak群の初回発症率はそれぞれ75.0%,40.0%(P<0.01)と有意差を認めた.また術後再発因子を検討するとNon-Leak群,25歳未満が有意な因子であった.【まとめ】①患者背景においてLeak群は初回発症例が多い.②Non-Leak群,25歳未満は術後再発が多い.
症例
  • 西川 敏雄, 高橋 正彦, 森 雅信, 上川 康明, 井上 文之
    2015 年 29 巻 7 号 p. 808-812
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.CT検査にて胸部異常陰影を指摘され受診となった.既往歴に心房細動や凝固能異常等は認めなかった.CT検査では左肺S3にground glass opacity(GGO)を認め,T1aN0M0 stage IAの肺癌との術前診断にて手術を施行した.迅速病理検査にて腺癌との診断であり左上葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後4日目に右前腕のしびれと冷感を自覚,造影CT検査にて右腋窩動脈閉塞症と診断し緊急血栓除去術を施行した.その後抗凝固療法を施行,血栓除去術より16日目に退院となった.本症例は造影CT検査及び心臓超音波検査では左房及び左上肺静脈切離断端には血栓を疑う陰影は認めなかったものの,左上肺静脈切離断端に形成された血栓による急性動脈塞栓症の可能性が考えられる.肺に対する手術後には血栓形成及びこれによる動脈閉塞発症の可能性を念頭におくことが重要であると考えられた.
  • 四元 拓真, 似鳥 純一, 長山 和弘, 安樂 真樹, 村川 知弘, 中島 淳
    2015 年 29 巻 7 号 p. 813-817
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    53歳男性.下顎歯肉癌に対し左下顎辺縁切除後3年1ヵ月後CT上,左肺上葉結節影を認め増大傾向を示した.臨床病期T1aN0M0の原発性肺癌を疑い,手術施行.術中迅速病理学的診断にて扁平上皮癌と診断.原発性肺癌の可能性を考え,胸腔鏡下左肺上葉切除,ND2a-1リンパ節郭清を施行した.手術翌日,突然血圧低下,酸素飽和度低下,意識障害を来した.造影CT上,心嚢内に著明な液体貯留像を認め,心タンポナーデと診断した.ドレナージ目的に緊急心膜開窓術施行.血性排液280 mlを認めた.血行動態は安定し肺癌術後8日目に独歩退院した.術中ビデオの振返りでは肺静脈断端の中枢側への落ち込みを認めた.一つの可能性として,Pericardial reflectionを自動縫合器で巻き込み,同部位から持続性出血が起こり心嚢内に貯留したことが考えられた.肺癌術後合併症としての心タンポナーデ発症例は稀であるため報告する.
  • 白藤 智之, 澤田 貴裕, 永安 武, 中村 司朗, 朝重 耕一, 大曲 武征
    2015 年 29 巻 7 号 p. 818-822
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,2012年1月,胸部不快にて当院内科を受診し胸部CT上血胸と診断され胸腔ドレーンを挿入,570 mlの血性排液を認めた.細胞診は陰性であった.血腫は増加傾向のため血腫除去術を施行,退院2週間後再発にて再度血腫除去術を施行した.術後の肺の拡張は不十分でCT上胸腔内に再び血腫が貯留しドレナージも不良で徐々に増大し圧迫症状が出現した.造影CT上造影効果が見られ腫瘍の可能性も否定できなかったがあまりの増大の早さにやはり血腫と診断し29日後3回目の血腫除去術を施行した.フィブリン塊と思われた部分を術中迅速病理診断に提出,小細胞肺癌と診断された.その後術後21日目に癌死となった.血胸で発症する原発性肺癌は0.1%未満とされ現在までの報告例は自験例を含めて5例でそのうち小細胞肺癌は自験例のみであった.本症例では1回目術中に悪性を疑えば術後に化学療法を行えた可能性があった.
  • 渡會 光, 大泉 弘幸, 加藤 博久, 貞弘 光章, 渡會 文果
    2015 年 29 巻 7 号 p. 823-827
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    気管支動脈瘤(Bronchial artery aneurysm:BAA)に対して胸腔鏡下に動脈瘤切除術を施行し良好な結果を得た1例を経験したので報告する.症例は46歳女性.検診で胸部X線写真異常を指摘され,CTで右肺門部に11 mm,中下葉間に16 mmのBAAを認めた.塞栓術は困難であり,手術の方針とした.胸腔鏡下に気管分岐下の胸膜を切開し気管支動脈を探索し,BAAを切除した.さらに,中下葉間から15 mmのBAAを剥離し切除した.術後経過は良好で,術後第5病日に退院した.
  • 尾高 真, 柴崎 隆正, 浅野 久敏, 丸島 秀樹, 山下 誠, 森川 利昭
    2015 年 29 巻 7 号 p. 828-832
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    肺葉切除術後の気管支肺動脈瘻からの大量出血は致命的な合併症である.症例は64歳男性.右肺癌に対して右肺下葉切除術を施行した(cT2N0M0, stage IB, Squamous cell carcinoma).退院後,外来経過観察中であった.術後5週間目に外出先で大量に喀血し救急病院へ搬送された.胸部CTでは右肺動脈断端部の拡張を認めた.肺動脈瘤からの出血と診断し手術を施行した.肺動脈瘤,気管支断端を切除した.肺動脈瘤からの致命的な出血に対して手術を行い救命し得た症例を経験した.
  • 小林 宣隆, 有村 隆明, 小沢 恵介, 吉池 文明, 保坂 典子, 西村 秀紀
    2015 年 29 巻 7 号 p. 833-838
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    患者は80歳女性.左胸痛を主訴に来院した.38歳時に子宮筋腫に対して単純子宮全摘術が施行された.CTで左肺上葉に境界明瞭な腫瘤を認めた.経胸壁針生検を行い肺腺癌と診断し,左肺上葉切除術を施行した.組織学的に複雑に分枝する腺管が密に増生し,腺管の内腔に桑実胚(morule)が散在性に形成していた.形態および免疫染色所見は通常の肺腺癌と異なり,類内膜腺癌に類似した.paired-box gene 8(PAX8)陽性であり,全身精査で原発巣となり得る腫瘍性病変を認めなかったことから,子宮類内膜腺癌の肺転移が最も可能性が高いと考えた.自験例は検索した範囲で最晩期の肺転移例と考えられた.術後4年の現在再発なく生存中である.
  • 利根 安見子, 寺師 卓哉, 田中 伸岳, 飯森 俊介, 大迫 努, 宮原 亮
    2015 年 29 巻 7 号 p. 839-846
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.胸部異常陰影を指摘され当院紹介受診となった.胸部CTで右上葉に空洞を伴う腫瘤,右下葉に石灰化を伴う腫瘤を認めた.気管支鏡下生検ではいずれも軽度炎症細胞と線維化のみで悪性所見は得られなかった.右下葉腫瘤のCT下生検では癌腫と考えられた.右上葉腫瘤は組織学的診断は得られなかったものの,画像上は悪性の可能性が高いと考えられた.多発肺癌,あるいは同側他肺葉に転移を有する下葉肺癌の疑いで胸腔鏡補助下右肺全摘術を施行した.手術検体の病理組織診では,右上葉腫瘤は中分化型扁平上皮癌,右下葉腫瘤は小細胞癌であり同時性多発肺癌であった.リンパ節転移は認めず,完全切除であった.小細胞癌を含む同時性多発肺癌で,リンパ節転移を伴わない症例は報告が少なく,非常に稀な症例と考えられる.今回我々は,小細胞癌を含む同時性多発肺癌に対して右肺全摘術による完全切除を行った1例を経験したので報告する.
  • 小田 梨紗, 水野 幸太郎, 松井 琢哉, 山田 健
    2015 年 29 巻 7 号 p. 847-851
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.胸部異常陰影を指摘され当院を紹介受診され,CTにて右中縦隔に5 cm大の境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.MRIでは内部は均一であり,T1強調画像,T2強調画像共に筋肉よりやや高信号であった.診断治療目的に胸腔鏡補助下腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断はMALTリンパ腫であった.中縦隔発生のMALTリンパ腫は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 岩谷 和法, 吉岡 正一
    2015 年 29 巻 7 号 p. 852-855
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.突然の胸痛を主訴に近医受診し,当院救急外来へ緊急搬送された.造影CTにて前縦隔に7×5 cm大の一部造影効果を伴う腫瘤様陰影を認め,その周囲に等吸収域が存在していた.また,左胸水を認め,試験穿刺にて血液であった.以上のことより,前縱隔腫瘍穿破による前縦隔・左胸腔内出血を疑い,手術を行った.胸骨縦切開にてアプローチ.前縦隔,左胸腔内に2170 gの血腫,出血を認め,胸腺は出血で充満しており,前縦隔の血腫と共に摘出した.摘出標本を肉眼的にも組織学的にも検索したが,血腫のみで腫瘤性成分は認めなかった.手術2ヵ月前の健診胸部レントゲンで異常がないことを確認しており,術中,術後の所見と合わせて特発性胸腺内出血と診断した.特発性胸腺内出血はきわめて稀な疾患で,国内外の文献上,現在までに3例の報告しか無い.
  • 藤野 智大, 棚橋 雅幸, 雪上 晴弘, 鈴木 恵理子, 吉井 直子, 丹羽 宏
    2015 年 29 巻 7 号 p. 856-862
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,女性.2ヵ月前に検診で胸部異常陰影を指摘され,近医を受診した.胸部CTで右横隔膜上に6 cm大の腫瘍を認め当科紹介入院.入院数日前より発熱,右前胸部痛が出現,胸部CTで腫瘍の急速増大と胸水の出現を認め,腫瘍破裂が疑われた.治療戦略を決定するためCT下生検を施行したところ,紡錘形細胞主体の腫瘍で術前治療の必要性は低いと判断し,診断・治療目的で緊急腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は横隔膜から発生し,心膜,中下葉に浸潤し,一部自壊していた.腫瘍摘出に加え,右下葉切除,中葉部分切除,心膜横隔膜合併切除再建術を行った.腫瘍よりSYT-SSX融合遺伝子を検出し,横隔膜原発滑膜肉腫と診断した.軟部肉腫は初期治療の選択が重要であり,正確な組織診断の後に適切な治療を行う必要がある.しかし,迅速な対応が必要な状況では,確定診断が得られずとも腫瘍の細胞形態に基づき治療戦略を決定することは有用と考えられる.
  • 宮原 尚文, 宮原 聡, 吉田 康浩, 山下 眞一, 白石 武史, 岩﨑 昭憲
    2015 年 29 巻 7 号 p. 863-868
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    本邦の原発性肺悪性腫瘍手術の中で気管支形成術の割合は1.7%と報告されている.今回比較的稀な術式であるFlap bronchoplastyを経験したので報告する.症例は11歳,女児.繰り返す肺炎を契機に発見させた腫瘍性病変であり,中間気管支幹内腔を占拠していた.気管支鏡下生検で当初乳頭腫の診断を得たため良性腫瘍と判断し硬性鏡下Core-outにより腫瘍摘出術を行った.最終病理診断でLow-grade mucoepidermoid carcinomaの診断を得て気管支鏡でB6と底区気管支分岐部のB6側に腫瘍の基部を確認したところ腫瘍遺残を認めた.以上より追加切除が必要と判断しB6と底区気管支分岐部のwedge resectionを伴うS6区域切除を行い,B6気管支壁片(B6 bronchial flap)を利用した下葉気管支欠損部再建術を施行した.①腫瘍基部がB6と底区気管支の分岐部に限局,②術前にLow-grade粘表皮癌と診断された症例において,B6 bronchial flapを利用したFlap bronchoplasty(S6区域切除)は縮小手術の術式として有用であった.
  • 星野 英久, 石川 亜紀, 門山 周文
    2015 年 29 巻 7 号 p. 869-874
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    74歳,女性.1998年に甲状腺乳頭癌で甲状腺全摘術が施行された.2011年6月,胸部CTで右肺上葉に結節影を指摘され経過観察されていたが,増大傾向を認めたため,2014年3月,手術目的に当科入院となった.右肺上葉部分切除を行い,術中迅速組織診断で原発性肺癌が疑われたため右肺上葉切除+ND2a-1を行った.また術前CTで右下葉にも結節陰影を認めたため,右下葉肺部分切除を行い術中迅速組織診断で炎症性肉芽腫と診断された.術後病理検査で上葉結節は甲状腺乳頭癌肺転移,下葉結節は類上皮細胞肉芽腫と診断されたが,類上皮細胞肉芽腫の近傍に甲状腺乳頭癌微小肺転移を認めた.著しく増大速度の異なる肺転移巣を捉えた症例として興味深いと考え報告する.
  • 米井 彰洋, 市成 秀樹, 峯 一彦, 綾部 貴典, 富田 雅樹, 中村 都英
    2015 年 29 巻 7 号 p. 875-879
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    妊娠中に発症した自然気胸患者の手術症例を2例経験したので報告する.症例1は28歳,女性.自然妊娠成立6ヵ月前と妊娠8週に左気胸を発症し,いずれも胸腔ドレナージにて軽快した.しかし,妊娠11週に左気胸が再々発し,4週間以上の遷延性肺瘻を認めたため,妊娠16週で胸腔鏡下肺部分切除術を行った.術後経過は良好で,妊娠満期で健児を出産した.症例2は21歳,女性.妊娠20週で右気胸の診断.胸腔ドレナージにて改善.妊娠24週で右気胸再発.再度胸腔ドレナージが行われたが,気漏が続くため,手術目的に入院となった.周術期は産婦人科,麻酔科の連携のもと,妊娠25週で胸腔鏡下肺部分切除術を行った.術後経過は良好で,妊娠満期で健児を出産した.妊娠中の気胸は稀ではあるが,一旦発症すると妊産婦の換気学的素因にて再発を来しやすいため,妊娠週数を考慮した手術適応のもと通常通りの胸腔鏡下手術が可能と考えられた.
  • 仲田 庄志, 小林 健一, 奥村 好邦, 細井 慶太, 閔 庚燁
    2015 年 29 巻 7 号 p. 880-883
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    Birt-Hogg-Dube症候群(以下,BHD症候群)は常染色体優性遺伝の疾患で,①高率に気胸を発症する多発肺嚢胞,②頭頚部の皮膚線維毛包腫,③腎腫瘍を3主徴とする.39歳の男性.呼吸困難を主訴に当院受診し,右気胸のため入院した.右気胸の既往があり,親族5人に気胸の家族歴があった.鼻および耳介に小さな皮疹があった.手術は胸腔鏡下に行い,CTでは同定できない小さなブラを多数認めた.比較的大きなブラには切除あるいは血紮術を行い,小さなブラには予防的にPGAシートの被覆を行った.生検で皮疹は線維毛包腫と判明,遺伝子解析を経てBHD症候群と診断した.多発肺嚢胞を伴う非典型的な気胸では,BHD症候群も念頭に置き対処すべきである.
  • 芳野 充, 椎名 裕樹, 斎藤 幸雄
    2015 年 29 巻 7 号 p. 884-889
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.咳嗽・発熱で近医を受診し,胸部X線で異常を指摘され当院紹介受診.胸部CT, MRIにて左胸腔に表面平滑で境界明瞭,内部に充実成分と脂肪成分の混在する分葉状の巨大腫瘍を認めた.経皮針生検にて確定診断に至らなかったが,間葉系腫瘍を疑い手術を施行した.腫瘍は横隔膜,胸壁とは癒着を認めず,縦隔胸膜および肺底部臓側胸膜に覆われており,後縦隔から発生したものと考えられた.腫瘍は下肺静脈周囲で肺下葉内へ進展しており,腫瘍摘出および下葉切除を施行した.腫瘍の重量は1580 gで病理診断は高分化型脂肪肉腫であった.術後追加治療は行わずに慎重に経過観察中である.脂肪肉腫は四肢の軟部組織や後腹膜にしばしば発生するが,縦隔原発例は稀である.後縦隔原発巨大脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.
  • 横枕 直哉, 西島 浩雄, 柳 正和, 脇田 和博, 原田 亜矢, 佐藤 雅美
    2015 年 29 巻 7 号 p. 890-895
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.CTにて両側肺野の多発すりガラス結節(ground-glass nodule:GGN)を指摘され,その後経過観察されていた.約5年後のCTにてGGNの1部が増大傾向を認めたため,CT上変化を認めた3つのGGNが存在する左上葉切除術を施行した.最終病理診断はいずれのGGNも炎症所見のみであった.長期に渡り徐々に増大傾向のGGNは低悪性度の肺癌の可能性があり,縮小手術が選択されることも少なくない.しかし肺実質内部に存在,多発,といった状況下では診断や治療方針決定に難渋する.一方,今回の症例のように増大傾向を認めたり,画像上肺癌が疑われても病理にて悪性所見を認めない症例の報告もある.多発GGNに対してはこれらの可能性を考慮した上で,個別に対応する必要がある.また,増大傾向を示すGGN症例における非悪性疾患の頻度を全国レベルで明らかにする必要があると思われた.
  • 尾高 真, 柴崎 隆正, 浅野 久敏, 丸島 秀樹, 山下 誠, 森川 利昭
    2015 年 29 巻 7 号 p. 896-900
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.健診で胸部異常陰影を指摘され当院を受診した.胸部CTで縦隔に50 mm大の腫瘤を認めた.FDG-PETで高度のFDG集積を認めた.術前画像診断の結果,縦隔腫瘍を疑った.胸腔鏡手術を施行し腫瘍を摘出した.摘出した腫瘍は腺癌の所見を示した.免疫組織染色はCK7陽性,CD20陰性,TTF-1陽性,NapsinA陽性であり肺腺癌を示唆した.病理所見は肺原発の腺癌を示す結果であった.全身精査の結果,全身他部位に原発部位と思われる病変を見いだせず,原発不明縦隔リンパ節癌と診断した.その後脳転移が出現した.脳腫瘍切除術を施行した.追加治療として化学療法を施行した.われわれは稀な原発不明縦隔リンパ節癌の手術例を経験した.
  • 高橋 耕治, 池田 政樹, 藤永 卓司
    2015 年 29 巻 7 号 p. 901-905
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    硬化性血管腫は良性または低悪性度の稀な腫瘍で多発することはさらに稀である.画像上は転移性肺腫瘍等と類似し,悪性疾患に合併すると転移性肺腫瘍との鑑別が困難である.今回IB期肺癌に併存した多発性硬化性血管腫症例を経験したので報告する.症例:55歳女性,胸部CTで右中葉に肺癌を疑う25 mmの腫瘍を認め,さらに両肺野に合計36個の最大6 mmの辺縁整な多発小結節を認めた.肺癌および多発肺転移と考え組織診断目的で手術を行った.中葉腫瘍と小結節は迅速病理診断で肺腺癌と診断されstage IVと判断したが永久標本で小結節は硬化性血管腫と診断され,根治術目的に残存中葉切除術を追加した.術後,結節が無かった肺野に1ヵ所肺転移再発を来たして治療を追加したが,切除していない多発肺結節は術後も変化なく経過中である.結語:硬化性血管腫は多発することがあり,悪性疾患を罹患している場合は転移性肺腫瘍との鑑別が重要である.
  • 林 明男, 竹内 幸康, 大瀬 尚子, 須﨑 剛行, 谷口 聖治, 前田 元
    2015 年 29 巻 7 号 p. 906-911
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    良性転移性肺平滑筋腫は比較的稀な疾患である.しかしその中に子宮平滑筋肉腫の肺転移が含まれる事がある.当科で経験した子宮平滑筋由来腫瘍肺転移例を検討した.症例1は69歳女性,人間ドックで子宮筋腫と単発肺結節を指摘された.肺葉切除を行い肺平滑筋腫と診断.エストロゲン受容体(ER)陽性,プロゲステロン受容体(PgR)陽性で,術後3年間新病変を認めない.症例2は子宮筋腫手術歴のある48歳女性,検診で多発肺結節を指摘された.肺部分切除を行い病理学的に平滑筋肉腫と診断されたがKi67低発現,ER, PgR強陽性であった.化学療法施行し術後9年生存中である.症例3は子宮筋腫手術歴のある77歳女性,白内障手術時に多発肺結節を指摘された.肺部分切除を行い肺平滑筋腫と診断されER, PgRは陰性であった.術後10年目に右上葉の病巣が急速に増大.気管支鏡検査で平滑筋肉腫と診断され術後11年目に原病死した.
手技の工夫
その他:診療の工夫
  • 本間 崇浩, 井村 穣二, 山本 優, 外山 譲二, 土岐 善紀, 芳村 直樹
    2015 年 29 巻 7 号 p. 916-920
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    胸部領域では術前に確定診断の得られていない病変への手術をしばしば経験する.確定診断が術式を左右することから,術中迅速病理診断は診療上必要不可欠である.今回我々は診療科の新規開設に伴いインターネット回線とバーチャルスライドシステムによる遠隔病理診断ネットワークを構築した.遠隔病理診断は常勤病理医のいない地域病院において質の高い医療を提供し,地域間格差是正のために有効な方法と考えられる.一方でネットワーク構築には少なからず初期投資を要し,人材の有効利用が重要である.
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