心電図
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14 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 西山 安浩, 元永 一郎, 平野 浩二, 吉田 典子, 野田 武彦, 豊増 功次, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳
    1994 年 14 巻 3 号 p. 145-151
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前壁梗塞 (MI) における運動時ST上昇の意義を解明する目的で, MIにて運動時ST上昇を認める上昇群20例, ST上昇を認めない不変群11例, 労作性狭心症 (EA) 12例および健常者 (N) 13例に症候限界性の多段階運動負荷試験を行ない, 空間速度心電図のQRS間隔, QRS環描記速度 (ρ1, ρ2波高) の変化を検討した.
    N群に比べてMI群では, 安静時QRS時間の延長, ρ1, ρ2の減少を認めた.上昇群では不変群に比べて心室瘤を多く認めた.運動により, N群ではORS間隔は短縮し, ρ1, ρ2は増大したが, EA群ではQRS間隔は延長し, ρ1, ρ2の増大はみられず, 心筋虚血のために心室内興奮伝播が遅延したためと考えられた.MI群では運動によりQRS間隔は変化せず, 不変群ではρ1, ρ2は増加したが, 上昇群では増加せす, ρ1の変化とST上昇の程度が逆相関した.このことは梗塞周辺部が運動中にさらに伸展され, 同部への興奮伝播が遅延し, ST上昇をきたしたものと推察された.
  • 仁禮 隆, 笠貫 宏, 大西 哲, 豊島 ゆかり, 細田 瑳一
    1994 年 14 巻 3 号 p. 152-159
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞 (OMI) と特発性心室頻拍 (VT) においてQRST isointegral mapと心室ペーシングによるVTの易誘発性との関連について検討した.対象は持続性VT (sVT) を伴うOMI 21例, 特発性sVT 26例および健常者40例であり, 体表面電位図を記録しQRST isointegral mapを作成した.OMIと特発性sVTに対してVT誘発試験を施行し, VTの易誘発性について検討した.多双極子性mapの頻度は, OMI 62%, 特発性sVT 8%, 健常者0%であり, OMIはほかの2群に比べ高頻度であった (p<0.01) .OMIでのmonomorphic sVTの誘発は, 多双極子性map 85%, 単一双極子性map 38%と多双極子性mapで高率であり (p<0.05) , また機序はreentryであると診断された.特発性sVTではVT易誘発性に関して多双極子性mapと単一双極子性mapとの間に差はなかった.以上, OMIでは多双極子性QRST isointegral mapとmonomorphic sVTの誘発との間に関連が認められること, およびmonomorphic sVTの機序がreentryであることから, 多双極子性ORST isointegral mapは一方向性ブロックを形成する部位の存在を示唆する可能性があると考えられた.
  • 磯田 菊生, 大鈴 文孝, 赤沼 雅彦, 袴田 尚弘, 林 克己, 中村 治雄, 小須田 茂, 草野 正一
    1994 年 14 巻 3 号 p. 160-168
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (目的) 左室肥大 (LVH) のある症例では, 負荷心電図 (ECG) および負荷201TI心筋シンチ (シンチ) において偽陽性を示すことが多く, 冠動脈狭窄合併患者を検出することがむずかしい.今回我々はシンチ, ECGを冠動脈造影 (OAG) と比較検討した.
    (方法) 1987年7月から1993年5月までに安静時EOGでLVH and strain pattern or with ST-T changesを示し, 負荷シンチ, CAGを施行した25例について検討した.
    (結果) シンチにおいて軽度再分布を陰性にするとCAGとの相関が高まった.負荷EOGの陽性基準をJ点より80mseoの点でa: 1mm低下, b: 2mm低下, J点自身のc: 1mm低下, d: 2mm低下の4点として比較したところ, 特異度, 敏感度に多少差ができるものの, 予測率の有意な上昇はみられなかった.上記4点における陽性例シンチ陽性を加味すると特異度, 予測率に有意な改善がみられた.
    (結語) LVH症例では, 有意な狭窄がなくとも虚血をきたしやすいことや, down sloping ST低下が多いことを加味して判定する必要がある.
  • 鷲塚 隆, 相沢 義房, 五十嵐 裕, 松原 琢, 池主 雅臣, 樋口 幸太郎, 広野 暁, 北沢 仁, 内山 博英, 内藤 直木, 田村 ...
    1994 年 14 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アセチルコリンの冠動脈内注入で著明なQT時間の延長を認め, うち1例ではtorsades de pointes (Tdp) が誘発された2例のRomano-Ward症候群を経験した.症例は失神歴を有する75歳女性と16歳男性で, 心電図上それぞれ0.52秒, 0.54秒とQT時間は延長しており, いずれも家族内にQT延長例を認めた.イソプロテレノール負荷, 運動負荷中のQT時間の延長を認めず, 電気生理学的検査でも心室性不整脈は誘発されなかった.75歳の女性例で失神の精査を目的に冠攣縮誘発試験を施行したところ, 左冠動脈へのアセチルコリン100gによりQT時間は0.73秒まで延長し, Tdpが出現した.他の症例でもQT時間は0.50秒から0.62秒にまで延長した.一方, 冠攣縮の誘発を目的としたQT時間の正常群10例では, このようなQT時間の延長は認められず興味ある症例と考えられたので報告する.
  • 中川 幹子, 藤野 孝雄, 高橋 尚彦, 石田 修二, 渡邊 真理, 丹羽 裕子, 伊東 康子, 桶田 俊光, 犀川 哲典, 伊東 盛夫
    1994 年 14 巻 3 号 p. 177-188
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の心拍変動およびQT間隔と, 自律神経障害および心臓死との関連を検討した.対象は健常人13例 (C群) , 糖尿病群は自律神経障害を合併しない生存群9例 (AN (-) 群) , 自律神経障害を合併する生存群21例 (AN (+) 群) および心臓死群10例 (CD群) である.ホルター心電図より低周波数成分 (LF) , 高周波数成分 (HF) , LF/HFおよびRR間隔標準偏差の平均 (SD) を, 標準12誘導心電図よりQTc間隔およびQTc dispersion (最大QTcと最小QTcの差) を求めた.AN (+) 群とCD群は, C群に比しLF, HF, LF/HFおよびSDの24時間平均値と, その日内変動は著明に低下していた.最大QTc間隔はC群に比し糖尿病群では有意に延長していたが, 糖尿病の3群間には有意差を認めなかった.QTc dispersionはC群に比しCD群のみ有意に大であった.CD群は時間経過とともにHFの低下とQTc dispersionの増加が認められた.以上の成績から, 糖尿病患者の心臓死と自律神経障害およびQTc dispersionによって示される心室筋再分極の不均一性との関連が示唆された.
  • 内藤 直木, 相沢 義房, 池主 雅臣, 宮島 武文, 草野 頼子, 田村 真, 庭野 慎一, 柴田 昭
    1994 年 14 巻 3 号 p. 189-198
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    催不整脈性右室異形成による心室頻拍 (VT) を認めた59歳の男性に対し頻拍起源を切除し, 5年間発作を認めなかった.今回めまいが出現しVTの再発の有無を検討するため電気生理検査を行なった.VTはプログラム刺激で誘発されなかった.心電図上QRS波の後半に遅れて認めた波形に一致する緩徐伝導部位を心内膜マッピングにより右室自由壁下方に同定した.この遅延電位は術前に認められず, 手術操作により形成されたと考えられた.緩徐伝導部位の伝導様式は急速反応型を示し, プロカインアミド (PA) により刺激からこの電位まで, およびこの部位からの刺激の延長は, 正常心筋における伝導時間に比し有意に大であった (p<0.01) .さらにPAは緩徐伝導部位を介する伝導時間には方向により差を示した (p<0, 01) .緩徐伝導部位へのPAのより選択的な作用の証明は, VTにおける緩徐伝導の理解の一助になると思われ報告した.
  • 宍戸 稔聡, 大黒 哲, 野々木 宏, 斉藤 克己, 宮崎 俊一, 後藤 葉一, 土師 一夫
    1994 年 14 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性.前壁心筋梗塞発症6時間後に記録した加算平均心電図 (SAE) では, 心室遅延電位 (LP) が陽性であったが, 発症24時間後にはLPは陰性となった.第9病日以降, 再びLPは陽性となり, 第20病日に突然, 心室頻拍, 引き続き心室細動が出現した.心筋梗塞発症後の致死性不整脈に対する評価法として, LPを用いた成績が集積されつつあるが, 心筋梗塞急性期のLPの動態に関しては, 一定の見解が得られていない.本症例は, SAE所見が心筋梗塞症の経過とともに, 変化することを示唆する貴重な症例であると考えられた.
  • 佐藤 伸之, 赤坂 和美, 川嶋 栄司, 石井 良直, 小川 裕二, 松橋 浩伸, 川村 祐一郎, 山下 裕久, 菊池 健次郎, 鵜野 起久 ...
    1994 年 14 巻 3 号 p. 206-217
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性.昭和62年から月経に一致した失神発作を繰り返すも原因となり得る不整脈は捕捉されず, 心室頻拍疑いで経過観察されていた.平成4年7月, 再び失神発作があり, 精査のため入院.入院時のホルター心電図で約2分間の心室細動 (Vf) が記録された.臨床検査所見, 心エコー図, 心臓核医学検査, 心臓力テーテル検査, 心筋生検では明らかな異常を認めず, 電気生理学的検査でも心室頻拍, Vfは誘発されなかった.本例の安静時心電図では明らかな異常はみられなかったが, ホルター心電図によるパワースペクトル解析では, Vf直前の高周波成分の相対的な低下と低周波成分/高周波成分比の相対的増力口が認められた.一方, Vf非発現日のパワースペクトル解析では明らかな異常は認められなかった.本疾患の原因はいまだ不明であるが, 心室細動の発生に自律神経異常が関与している可能性が示唆され, 興眛ある所見と考えられた.
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