重症患者に対する栄養療法は一定の潮流を形成すると同時に,新たなエビデンスの蓄積により日々進化している。本ガイドラインは日本集中治療医学会が作成し,以前のガイドライン2016から改訂した日本独自で最新の「重症患者の栄養療法ガイドライン2024(Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024, JCCNG2024)」である。本ガイドラインの英語版は,日本語版の内容をもとに作成された。ICUに入室する,または集中治療を必要とする小児および成人の予後改善のために,医療従事者が疾患の種類にかかわらず栄養療法を理解し提供することを目的として作成された。想定ユーザーは,栄養療法に精通していない医療従事者も含め,集中治療に携わるすべての医療従事者である。免疫調整療法,特殊な病態に対する栄養療法,および小児に対する栄養療法を含めて,37のクリニカルクエスチョンと24の推奨を作成した。本ガイドラインは,集中治療科,救急科,外科,内科,小児科,麻酔科を専門とする医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士など,栄養療法と集中治療に関連する様々な職種の専門家により,Grading of Recommendations,Assessment,Development and Evaluation(GRADE)システムに従って作成された。GRADEに基づく勧告,Good Practice Statements,Future Research Question,Background Questionsに対する回答はすべて,修正デルファイ法を用いたコンセンサスによって最終決定された。成人では48時間以内の早期経腸栄養とプレバイオティクス/シンバイオティクス投与が強い推奨に,栄養プロトコルの使用,経静脈栄養より経腸栄養,標準を超えるタンパク質量投与,幽門後経腸栄養,持続的経腸栄養,ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養,プロバイオティクス投与および間接熱量測定の使用が弱い推奨に挙げられた。また小児では48時間以内の早期経腸栄養,間欠的経腸栄養および高濃度人工乳が弱い推奨となった。栄養アセスメントは成人,小児両者においてGood Practice Statementsとした。JCCNG2024は,日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会を中心に,様々な学会やセミナーでの教育活動により普及される予定である。重症患者の栄養療法に関する研究が世界で継続的に報告されることを考慮し,4~6年後に改訂する予定である。本ガイドラインが重症患者の臨床や今後の研究に活用されることを期待する。