日本集中治療医学会雑誌
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6 巻, 1 号
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  • 花木 秀明, 平松 啓一
    1999 年 6 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    バンコマイシン(VCM)耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)とVCMヘテロ耐性黄色ブドウ球菌(ヘテロVRSA)について,VCMに対する耐性メカニズムをVCM感性黄色ブドウ球菌(VSSA)と比較した結果,両者とも細胞壁合成系の亢進が確認された。この細胞壁合成系の亢進がVCM耐性の要因の1つであると考えられる。また,VRSAの細胞壁中にのみ散在するVCM結合可能なD-Ala-D-Ala(ヘテロVRSAとVSSAには存在しない)がVCMを消費し,本来の標的部位までの到達を妨げるため,VRSAはヘテロVRSAよりもVCM耐性が増強していると考えられる。また,ヘテロVRSAは見かけ上VCM感性菌であり,既存の検出方法では検出できない。しかし,ヘテロVRSAはVCMとβ-lactam剤の併用で拮抗が起きる特徴があるため,この現象を利用した検出方法を考案した。
  • 磁気共鳴画像による研究
    槇田 浩史, 内田 篤治郎, 中沢 弘一, 石川 晴士, 天羽 敬祐
    1999 年 6 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ウサギ(6羽)のオレイン酸肺水腫モデルに対して,パーフルブロン(perfluorooctyl bromide, PFOB)による部分的液体換気(partial liquid ventilation, PLV)を施行し,動脈血酸素分圧(PaO2)の変化とPFOBの肺内分布を調べた。PFOBの肺内分布は,死後に1H-MRI (magnetic resonance imaging)と19F-MRIで調べた。気管切開後FIO2=1.0で調節呼吸を行い,肺水腫作成後にPFOB 15ml・kg-1を分割して気管内投与し,以後30分ごとに動脈血液ガスを測定した。PaO2は66±23mmHg(平均±SD)から,PLV開始30分後には159±91mmHgに改善し,その後徐々に低下した。PFOBは肺の54±29%を占め,下側肺から上方に広がるような分布であった。酸素化能の改善度とPFOBの分布割合には有意な相関は見られなかった(r2=0.60,P>0.05)。
  • 待機手術の見直しと一酸化窒素吸入療法
    木内 恵子, 福光 一夫, 北村 征治, 中道 園子, 谷口 晃啓, 井村 賢治
    1999 年 6 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    大阪府立母子保健総合医療センターにおける膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)導入後の,出生前診断された院内出生の横隔膜ヘルニアの治療方針と成績について後方視的に検討を加えた。治療方針により1期(1988年8月~1990年末);早期緊急手術の時期(n=5),2期(1991年初め~1993年6月);stabilization後の待機手術の時期(n=6),3期(1993年7月~1995年末);一酸化窒素(nitric oxide, NO)導入後の,待機手術の時期(n=6),4期(1996年初め~1997年末);早期手術の時期(n=7)の4期に分けた。各期の生存率は,60,17,33,100%であった。ECMOの利用は1期2症例(1症例死亡),2期4症例(全症例死亡),3期3症例(全症例死亡),4期0症例。NOの使用は3期6症例(4症例死亡),4期5症例(死亡0)であった。待機手術の2期・3期の成績は悪かった。NO吸入の導入は生存率の向上に役立っている可能性がある。
  • 相庭 武司, 伊藤 智範, 伊藤 彰, 大黒 哲, 宮崎 俊一, 笹子 佳門, 中谷 武嗣, 野々木 宏
    1999 年 6 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    目的:急性循環不全に対する経皮的人工心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support system, PCPS)の適用指針を確立する。
    方法:1990~97年に当センターCCUで,PCPSを緊急適用した急性循環不全連続43症例(離脱群14症例,非離脱群29症例)を対象とした。その臨床背景因子,またPCPS装着前の収縮期血圧,心拍数,base excess,意識状態,装着直後の時間尿量からショックスコア(スコア;0~15点)を求め両群間で比較検討した。
    結果:両群間の臨床背景因子に有意差は認めなかった。非離脱群は離脱群に比べ,スコアが98±2.3vs6.7±2.8(P<0.0001)と,重症不整脈または心停止の合併頻度が有意に高かった(72%vs36%;P<0.05)。スコアが11点以上の重症例はすべて離脱不可能であった。
    総括:PCPSはショックスコアが10点以下の軽~中等度のショックにおいて離脱できる可能性があるため,ショックが重症化する前に用いるべきである。
  • 川前 金幸, 田勢 長一郎, 村川 雅洋, 大槻 学, 松本 幸夫, 島田 二郎, 池上 之浩, 五十洲 剛
    1999 年 6 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    好中球依存性肺障害の一つである嚥下性肺炎の形成には,インターロイキン-8(IL-8)が重要な役割を担っている。抗IL-8療法の治療有効時間などを検討する根拠として,塩酸肺炎モデルを作成し,肺組織,気管肺洗浄液(BALF),さらに血中のIL-8の経時的変化について検討した。SD(Spraque-Dawley)系ラットを用い,塩酸(pH1.5,1.5ml・kg-1)を経気管的に投与した。投与後経過観察時間を塩酸投与前,投与後30分,1時間,2時間,3時間,4時間とし,各時間において,無作為に7頭ずつ6群について検討した。IL-8は,BALFおよび肺組織では塩酸投与1時間目に有意の上昇を示し,3時間目に最高値となった。血中では3時間目に軽度上昇し(28.6±10pg・ml-1),4時間目に有意(216±134pg・ml-1)となった。塩酸注入後,BALFと肺組織のIL-8は3時間後に最大となり,血中へは4時間後に有意に遊離した。
  • 加藤 浩子, 宮脇 郁子, 山崎 和夫
    1999 年 6 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    総合集中治療部で治療を要した産科患者の頻度,原因,転帰を調査し,産科重症患者の内容を分析した。1985~1996年に当院集中治療部に入室した産科患者は40名で,頻度は同時期の全ICU入室患者数の0.17%であった。入室理由は産科的合併症によるものが75%,内科疾患合併が25%で,主たる産科合併症は妊娠中毒症,分娩後出血,胎盤早期剥離であった。入室経路で比較すると,転送患者は院内患者に比し入室時のAPACHE IIスコア,妊娠中毒症の重症度,濃厚治療を要した合併症率が有意に高く,ICU在室日数も有意に長かった。40症例中26症例(65%)が1日でICUを退室し,死亡は羊水塞栓の1症例のみであった。産科重症患者は迅速かつ適切な処置を行えば予後は良好であり,その意味で集中治療部の存在の意義は大きい。産前管理の重要性が再認識されたとともに,今後妊娠中毒症の解明により重症患者の頻度の軽減が期待される。
  • 岩崎 洋一, 太田 助十郎, 水沼 隆秀, 寺田 宏達, 西川 俊昭, 伊藤 康信
    1999 年 6 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    二段階の脊髄刺激療法が,蘇生後意識障害患者の意識レベル改善に有効であった。患者は30歳男性。無呼吸,意識喪失の状態で発見され,当院ICUに搬送された。頭部CTには病変なく,聴性脳幹反応(auditory brainstem response, ABR)は潜時の軽度延長を示し,脳波はθ波主体であった。5日間の軽度低体温療法(35℃)と薬物による頭蓋内圧亢進の抑制,および7日間の高圧酸素療法を行った。12病日に痛み刺激に開眼し,16病日のABRは正常化したが,脳波は依然θ波が主体であった。20病日の頭部CTでは全脳性の委縮が認められた。意識レベルの改善を目的に,経皮的磁気脊髄刺激法を29病日から約1か月間行った。刺激2回目には追視を,5回目からは発語を認めた。さらに経口摂取も可能となった。改善傾向があると判断し,硬膜外脊髄電気刺激療法のために脊髄C3~C6レベルに電極の植え込み術を行い,138病日より刺激を開始した。その刺激法から1か月後,脳波にα波の増加を認め,発語も増えた。その後転院し,リハビリテーションを受けている。
    経皮的磁気脊髄刺激法による効果判定は,遷延性意識障害患者に対する硬膜外脊髄刺激療法の適応決定に有用と思われる。
  • 酒井 澄美子, 白石 義人, 横山 順一郎, 五十嵐 寛, 木村 健
    1999 年 6 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    緊急手術患者においてA1Bm血液型患者への不適合輸血を経験した。A1Bm型はB型抗原決定基数が非常に少ないBm型抗原と,A型抗原決定基数が非常に多いA1型抗原とからなるAB型の亜型であり,血液型検査では「おもて・うら」試験が不一致となる。本症例の緊急検査結果は「おもて」試験でA型であったが,「うら」試験のB血球に凝集が認められず,精査必要と報告された。患者は大量出血が続き,精査結果を待つ余裕もなく,大量のA型血液が輸血された。患者はショック状態が続いていたが,患者血液型がA1Bm型であるという精査結果が報告され,直ちに輸血血液をAB型新鮮凍結血漿,AB型濃厚血小板液,A型洗浄赤血球液に変更し,集中治療を続けた結果,重篤な臓器不全を合併することなく回復した。Bm型抗原と抗B抗体との反応性が低いことが不適合輸血による重篤な後遺症を回避できたおもな要因であると思われる。
  • 木村 太, 荒木 功, 松井 晃紀, 坪 敏仁, 石原 弘規, 松木 明知
    1999 年 6 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome, HPS)に罹患し,高熱,汎血球減少,肝機能障害,播種性血管内凝固症候群,急性腎不全,間質性肺炎を呈した5歳女児に,各種薬物療法に加えて持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を施行した。
    CHDF施行前後の腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α, TNF-α),インターロイキン(interleukin,IL)-1β,IL-6,IL-8,ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase,MPO),好中球エラスターゼ(polymorphonuclear leukocyte elastase, PMNE)濃度を測定した。TNF-αとIL-1βは検出不能であったが,IL-6,IL-8,MPO,PMNEのクリアランスは4~10ml・min-1,除去率は14~35%であった。
    CHDFは急性腎不全の治療に加え,HPSの病態に密接に関係する化学伝達物質(chemical mediator)を除去する可能性が示唆された。
    患児は全身状態の改善を得てICUを退出した。
  • 坪 敏仁, 蝦名 正子, 大友 教暁, 石原 弘規, 松木 明知
    1999 年 6 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 1999/01/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    術前に経食道心エコー法を行い診断できた乳頭筋断裂症例を報告する。患者は56歳の男性,急性心筋梗塞の診断で当院に紹介された。全身状態が悪化したため,経胸壁心エコー法を施行して右心不全の診断のみを得た。経口気管内挿管,大動脈内バルーン補助を施行し,集中治療部へ収容した。不安定な循環動態の原因究明のため,経食道心エコー法を施行したところ,後乳頭筋断裂の診断を得た。直ちに僧帽弁置換術が施行されたが救命はできなかった。経食道心エコー法は左房を介した僧帽弁の観察が容易なため,心筋梗塞に伴う乳頭筋断裂の診断に有用と思われた。
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