溶融飛灰中の重金属塩化揮発挙動に及ぼす含有NaCl, KCl, CaCl
2の影響を調べるため, 模擬飛灰および溶融飛灰を用いて窒素雰囲気下で加熱処理 (873-1173K) を行い, 実験的検討を行った.
その結果, PbO, ZnO, CuOを含有する模擬飛灰に対してNaCl, KCl, CaCl
2を添加し, 1023Kで加熱処理したときの鉛, 亜鉛, 銅の揮発率は, すべてCaCl
2>NaCl>KClの順に高くなった. 一方, 加熱温度の変化に伴う溶融飛灰中の鉛揮発率は, 模擬飛灰の結果と傾向的に一致し, 873K付近から揮発率の向上が認められた. また鉛の塩化反応は, 923K以下の温度で生成したCaCl
2, NaCl, KCl共融混合物の影響を受けることがわかった. 一方, 加熱温度の変化に伴う模擬飛灰中の亜鉛の揮発変化は, 溶融飛灰の結果とは異なる挙動を示した. これは溶融飛灰中のZnOが, 溶融飛灰中の未燃炭素分ならびに鉄分との還元反応によってZnを生成し, ZnOの融点よりも低い温度で揮発したためと考察された. また模擬飛灰中の銅は, 1173Kに加熱しても十分な揮発率が得られなかった. とくに溶融飛灰中の銅は, 加熱温度の変化に伴う揮発率の向上がほとんど得られず, これは亜鉛の揮発挙動と同様, 溶融飛灰中に存在する未燃炭素分および鉄分によってCuOがCuとなることにより, 無機塩素化合物との塩化反応が進みにくくなったためと推測された.
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