化学工学論文集
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30 巻, 6 号
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熱力学, 物性, 分子シミュレーション
  • —外部磁場が作用する場合—
    青島 政之, 渡辺 知規, 佐藤 明
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 771-777
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    粒子径分布を考慮した強磁性コロイド分散系における凝集構造を, 磁場が作用する場合についてcluster-movingモンテカルロ法により検討した. 凝集構造は2体相関関数を用いて定量的な解析を行った. 結果を要約すると次のとおりである. 強い外部磁場の影響下では, 粒子間相互作用が増加するにつれ磁場方向に鎖状クラスタが伸長するとともに, 太くなる. また, 粒子径分布の幅が広いほうが太い鎖状クラスタを形成する. 外部磁場が非常に弱い場合は屈曲構造, 小ループ構造, 分岐構造を有する鎖状クラスタが形成される. これは, 大きな粒子がもつ粒子間相互作用に由来する. 外部磁場の影響が支配的になるにつれ, これらの構造は減少し, 磁場方向に直線状の鎖状クラスタを形成する. 鎖状クラスタの太さは磁場の強さにあまり依存せず, 粒子径分布の幅が大きいほど太くなる.
移動現象, 流体力学, 混合
  • 野中 利之, 安蔵 慶介, 鈴木 睦
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 786-794
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    無重力環境下の円管内環状液膜は, ある長さを超えると安定な形状を保持できず, 複数の液体プラグに分裂する. 本報では, 有限差分法に基づく円管内環状液膜の界面変形の三次元数値シミュレーションを実施し, 落下塔実験の結果と比較した.
    円管中心に存在するガスコア部の半径を変化させたところ, 気液界面が管中心に向かって盛り上がった部分 (ピーク) の間隔が, 初期気液界面に与えた形状の摂動 (白色雑音) の種類によって変動するが, 全体的には既往の線形安定性理論の値に一致することを確認した.
    また, ガスコア部を偏心させると, ピーク統合と偏心性によって液膜のピーク間隔が広がることを定量的に示した. 数値解析による偏心液膜のピーク間隔の値は, 落下塔実験の結果と定性的に一致した.
  • 渡部 弘達, 松下 洋介, 両角 仁夫, 青木 秀之, 丹野 庄二, 三浦 隆利
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 795-801
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    噴霧燃焼シミュレーションを行う場合, 噴霧滴の運動は燃焼装置内の燃料蒸気分布と密接に関連し, 燃焼ガス温度, 化学種濃度分布などの燃焼状況を左右する要因のひとつであることから正確に予測する必要がある. 噴霧燃焼炉内では微粒化ノズル近傍において液滴空間密度の高い領域が存在するため, より高精度の解析結果を得るためには液滴体積分率も考慮して計算を行う必要がある. 本論文では, Lagrange法による噴霧流解析法の予測精度向上を目的とし, 液滴の解析格子滞在時間と格子体積を用いて液滴体積分率を算出し, 得られた液滴体積分率を気相の支配方程式および粒子運動方程式に適用することによって液滴体積分率を考慮する噴霧流解析法を提案し, 測定結果と解析結果の比較を通して本解析法の予測精度を検討した. その結果, 液滴軸方向速度および噴霧流束分布ともに液滴体積分率を考慮しない場合の解析結果は実験結果と差異が見られたが, 液滴体積分率を考慮することによって予測精度が大幅に向上し解析結果は実験結果と良好に一致した. したがって, 液滴体積分率を考慮することで液滴の空間密度が高い領域も解析可能となり, 提案した噴霧流解析法の有効性が示された.
  • 趙 黛青, 山下 博史, 喜多 敦
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 808-814
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    高水蒸気かつ低酸素雰囲気下での火炎の燃焼特性および燃焼限界を解明することは, 水蒸気添加型ガスタービン発電システムの開発にとってきわめて重要である. 本研究では, 高水蒸気かつ低酸素雰囲気下でのメタン・空気対向流拡散火炎について詳細素反応機構を用いた数値解析を行い, その火炎構造や燃焼限界に与える水蒸気添加の影響を調べ, 消炎のメカニズムについて検討した. その結果, 以下のような知見を得た. 水蒸気の添加により火炎温度は著しく低下し消炎限界に達する. 燃料や酸化剤の予熱温度により消炎限界での添加水蒸気濃度はかなり異なり, より多くの水蒸気を添加するためにはより高い予熱温度が必要である. 放射熱損失の影響で添加水蒸気濃度あるいは火炎温度が約1割低下するが, 消炎限界の火炎温度はほぼ同じとなる. 水蒸気の大きな比熱による火炎温度の低下が消炎を引き起こす大きな要因であるが, 消炎に対する反応動力学的な影響も存在する. とくに, 素反応O+CH3→H+CH2O (R10), OH+H2→H+H2O (R84), H2O+O→OH+OH (−R86), OH+HO2→O2+H2O (R87) およびOH+CH4→CH3+H2O (R98) における発熱速度の変化は, 消炎限界付近での火炎安定性に大きな影響を与える.
  • 相田 真男, 城田 大吾, 岩崎 重雄, 望月 雅文
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 835-839
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    通気時の浮遊化限界動力と通気動力との間に簡単な関係を仮定し, 気液固撹拌槽における浮遊化限界動力を推定する新しい相関法を提案した. 通気時の浮遊化限界動力は, 通気動力, 無通気時の浮遊化限界動力, 撹拌翼の傾斜角度で相関される. この相関式を使用する事により, 既往の文献値が精度良く整理できた. また, 小型装置を用いた合成反応実験より, 気固反応を完結させるためには, 相関式により算定した浮遊化限界動力以上の撹拌動力が必要であることを実証し, 相関式の有用性を明らかにした.
  • 中山 昭男, 横尾 敦史
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 849-851
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    深海底から有用な鉱物資源を回収する方法として, 空気泡ポンプおよび電解気泡ポンプが考えられる. しかし, 前者はコンプレッサーの限度で, 深度3000m以上に存在する鉱物資源の回収は不可能とされている. 後者は深度のいかんを問わず鉱物資源の回収が可能である. しかし, 現在電解気泡ポンプの設計基準が示されていない. 本報は電解気泡ポンプによる揚固特性を明らかにする第一段階として単一粗大粒子の揚固速度を検討した.
分離工学
  • 松宮 紀文, 真野 弘, 原谷 賢治, 松山 秀人, 寺本 正明
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 752-757
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    燃焼排ガスからの二酸化炭素除去への促進輸送膜の適用を, コンピューターシミュレーションにより検討した. 燃焼排ガス源としては100万kWの天然ガス火力発電所と石炭火力発電所を, 促進輸送膜としては2,3-ジアミノプロピオン酸 (DAPA) をキャリアとしたゲル塗布膜を選択した. 発電所から放出されるCO2の50%を回収し90%に濃縮した後, 気体で輸送するケースでは, CO2の回収に要する電力は天然ガス火力発電所, 石炭火力発電所でそれぞれ発電量の8.39%と10.55%であった. CO2分離コストはそれぞれ359円/kmol-CO2と283円/kmol-CO2であった. また, 発電所から放出されるCO2の50%を回収し, 膜分離後液化し99.9%に濃縮し輸送するケースでは, CO2の回収に要する電力は天然ガス火力発電所, 石炭火力発電所でそれぞれ発電量の11.1%と14.5%であった. CO2分離コストはそれぞれ247円/kmol-CO2と354円/kmol-CO2であった.
    促進輸送膜によりCO2を分離・回収するシステムが経済性に優れるシステムであることを推定した.
  • 三村 富雄, 八木 靖幸, 飯島 正樹, 吉山 隆士, 米川 隆仁
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 758-761
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    高さ約25mのパイロットスケールの吸収塔を用いて排ガス量を定格の555m3/hから約2倍の1100m3/hの範囲まで増加させて, 火力発電所排ガスに対する炭酸ガスの分離・回収を行った.
    この結果から, アルカノールアミン系ヒンダードアミンである吸収剤KS-1を用いた化学吸収法でかつ吸収塔の充てん材に規則充てん材を装着することにより, 炭酸ガス回収量を従来の設計の約2倍に増加できた. 言い換えれば, 従来の1/2の断面積の吸収塔で同一量の排ガスが処理できることになり, 吸収塔建設コストを大幅に削減できることになる.
紛粒体工学, 流動層
  • 椋田 隆司
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 745-751
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    注射用セファロスポリン剤ウィンセフは得られた無菌原薬をそのまま粉末充填する製剤処方が採用されたことから, ウィンセフの比容, 平均粒子径に及ぼす晶析温度, 過飽和比, 撹拌速度, 種晶の影響を検討し, 充填精度に優れたウィンセフの球状凝集結晶が得られる晶析条件の設定を行った. 初期過飽和比が高いほど比容は小さくなり, さらに, 一次結晶の成長と凝集過程の阻害から最適な撹拌数が存在することが判明し, 単位体積あたりの所要動力がスケールアップ因子として適用できることが明らかとなった.
    500l 晶析槽でのスケールアップ実験で得られたウィンセフを用いて粉末充填を行った結果, 期待する充填精度が得られた. さらに生産スケールである3000l でも求める粉体特性を有するウィンセフが再現性よく得られた.
  • —矩形断面ノズルの使用—
    森本 洋史, 社河内 敏彦, 藤井 琢也, 市南 幸哉
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 802-807
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    近年, 工業用先端材料の多くが粉体の形態をとり, μmまたはsub-μm-orderの微粉粒子が様々な工業分野で強く求められている. ところで, 種々の微粉粒子の製造, 粉砕に, 超音速ジェット粉砕機が広く利用されているが大きな運転動力を必要とするため, 省エネルギーの観点からその粉砕効率 (エネルギ効率) を改善・向上させることが重要である.
    本研究では, 矩形断面を有する新たな超音速ノズルを提案しその流動特性や粒子の加速性能を, シュリーレン法による流れの可視化・観察, および粒子速度の測定から実験的に明らかにした. また, 数値計算からも流動特性を把握した. その結果, 新たに提案した超音速ノズルは高い粒子の加速性能をもち, ジェット粉砕機の粉砕効率を大きく改善・向上できることが明らかになった.
  • 笠井 千鶴, 中島 耀二, 篠原 邦夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 815-821
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    最近の疫学的な調査により, 大気中に浮遊する微小な粒子の濃度と健康障害の相関が疑いのない事実として確認されている. 排煙中の粉塵粒子はバグフィルタや電気集塵機で効果的に除去できるとはいえ, サブミクロン粒子の捕集に関しては一層の性能向上が望まれている.
    本研究では, 電界を印加した粒子充填層を電気集塵機の後段に接続し, 電気集塵機を透過してくるサブミクロン粒子を捕集する実験を行った. この電気集塵機は一室式の標準的な円筒タイプであるが, これを透過するサブミクロン粒子は強く荷電されており, この実験では電気集塵機が荷電装置としても機能している. 電界を印加した粒子充填層の捕集効率をサブミクロン域の微粒子で実測した結果, この際の捕集機構はよく理解できない部分があり, 想像以上に複雑であることがわかったが, 静電的な効果の有効性については非常にはっきりしている. 実用上は粒子充填層に5kV/cm程度の電界強度を無理なく印加できるが, 本実験では電源の制約上1kV/cmしか印加できなかった. それにもかかわらず充填層におけるサブミクロン粒子の捕集効率は, 50cm/sの空塔速度での圧力損失が0.2-0.3kPaの充填層条件でおよそ98%であった.
  • 伊藤 竜生, 向井 淳, ゴールマン ボリス, 篠原 邦夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 840-843
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    粒子の流動層コーティングでは, 被覆液を噴霧しつつ高温空気で乾燥するため, 被覆される粒子を長時間, 比較的高温にさらす可能性がある. このため, 熱に弱い物質の場合, 短時間で被覆する必要があり, その操作条件は経験的に設定されてきた. そこで本研究では, 操作条件の相互関係について定量的に検討を行い, 粒子温度を湿球温度として推算した. その結果, 所定の粒子温度で, 被覆速度を高めるためには, 噴霧液流量を多くし, 吹き込み空気の風量ないし温度を高くすればよいことがわかった.
  • 酒井 章二, Boris Golman, 篠原 邦夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 844-848
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    マクロな粒子およびシームレスカプセルが連続的に液中で調製された. カプセル径および膜厚に及ぼす操作条件の効果が検討された. 実験データは, 力の釣り合いに基づく式の計算値とよく一致した. 粒子径は, 循環流速が吐出流速よりも速い場合, 吐出流速の増大に伴って減少していくが, 循環流速が吐出流速よりも遅い場合, 吐出流速とともに増大していくことがわかった. カプセル調製の場合, 全吐出流速が増大すると吐出流量割合によらず, 全ての循環流速範囲で大きなカプセルが生成された. それゆえに, 全吐出流量の増加や, 循環流速の減少によって, カプセルの外径および内包液径を増加させることが可能になることが分かった. 膜厚の厚いカプセルは, 全吐出流量一定で吐出流量割合を増加させる事により生成された.
生物化学工学, 食品工学, 医用工学
  • 小井手 資幹, 平田 誠, 高 旻天, 高梨 啓和, 羽野 忠
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 826-830
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    エアーリフトバイオリアクターを用い, 石炭系破砕状, 石炭系粉末状, ヤシガラ系破砕状活性炭を培地中に添加してRhizopus oryzae (AHU6537) による回分発酵を行った. その結果, 発酵液は活性炭により脱色され, 無添加と比べてより清澄な発酵液を得ることができた. また石炭系活性炭を添加した発酵では, 菌体は無添加と比べて小さい良好なペレットを形成し, 発酵性能は改善された. さらに活性炭の添加量を増加させることにより, 生産性はより改善された. 以上の結果より発酵に適した活性炭を選定し, さらに添加量を制御することにより乳酸発酵の効率化が可能であることを明らかにした.
安全, 環境, エネルギー
  • —活性アルミナ粒子によるタール排出量低減効果—
    波岡 知昭, 吉川 邦夫, 幡野 博之, 鈴木 善三
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 762-770
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    活性アルミナ粒子によるタール捕獲効果の循環流動層への適応性について検討するため, 小型循環流動層ガス化炉の流動媒体に活性アルミナ粒子を用いて杉チップの連続熱分解実験を行なった. 循環流動層ライザー内のような粒子希薄雰囲気下であっても, 流動媒体に活性アルミナ粒子を用いることでタール排出量を大幅に低減させることができた. ただし, タール排出量低減効果はタール成分により異なり, 重質タール排出量は2桁以上減少したのに対し, 軽質タールの排出量低減は数十%程度であった. 軽質タール排出量低減効果が低い理由の一つは, タール熱分解促進効果に伴う, 軽質芳香族成分排出量の増加が原因であった. 活性アルミナ粒子はガス化特性にも影響を及ぼし, 水素・二酸化炭素生成量の増加傾向が観察された. 水蒸気ガス化プロセスを想定した場合, 生成ガスの発熱量は低下するが, ガス生成量の増加割合が大きいため, 冷ガス効率は数%の効率向上が見込めることがわかった. その他の特長として, 流動媒体に活性アルミナ粒子を用いることで, 粒子循環特性が向上することがわかった. 理由の一つとして, 活性アルミナ粒子が瞬時にタールを捕獲するため, Bogging現象が抑制されたことが原因と考えられる.
  • 中山 勝也, 田島 善直, 水野 賀夫, 小島 義弘, 松田 仁樹, 高田 満
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 778-785
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    溶融飛灰中の重金属塩化揮発挙動に及ぼす含有NaCl, KCl, CaCl2の影響を調べるため, 模擬飛灰および溶融飛灰を用いて窒素雰囲気下で加熱処理 (873-1173K) を行い, 実験的検討を行った.
    その結果, PbO, ZnO, CuOを含有する模擬飛灰に対してNaCl, KCl, CaCl2を添加し, 1023Kで加熱処理したときの鉛, 亜鉛, 銅の揮発率は, すべてCaCl2>NaCl>KClの順に高くなった. 一方, 加熱温度の変化に伴う溶融飛灰中の鉛揮発率は, 模擬飛灰の結果と傾向的に一致し, 873K付近から揮発率の向上が認められた. また鉛の塩化反応は, 923K以下の温度で生成したCaCl2, NaCl, KCl共融混合物の影響を受けることがわかった. 一方, 加熱温度の変化に伴う模擬飛灰中の亜鉛の揮発変化は, 溶融飛灰の結果とは異なる挙動を示した. これは溶融飛灰中のZnOが, 溶融飛灰中の未燃炭素分ならびに鉄分との還元反応によってZnを生成し, ZnOの融点よりも低い温度で揮発したためと考察された. また模擬飛灰中の銅は, 1173Kに加熱しても十分な揮発率が得られなかった. とくに溶融飛灰中の銅は, 加熱温度の変化に伴う揮発率の向上がほとんど得られず, これは亜鉛の揮発挙動と同様, 溶融飛灰中に存在する未燃炭素分および鉄分によってCuOがCuとなることにより, 無機塩素化合物との塩化反応が進みにくくなったためと推測された.
  • 井上 勝利, 大渡 啓介, 大島 達也, 大西 沙耶香, 牧野 賢次郎
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 822-825
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    パルプの製造においてほとんど廃棄物同然の価値の低い副産物として発生するリグノスルホン酸をホルムアルデヒドで架橋することにより吸着剤を調製した. 滴定により測定した吸着剤中の陽イオン交換性の水素イオンの量は4.83mol/kg-dry gelであった. その多くは吸着剤のフェノール性水酸基によるものと考えられる.
    いくつかの金属イオンの吸着に対するpHの効果と吸着等温線を明らかにするためにバッチの吸着実験を行った. 吸着はpH>2において起こり, pHの増加とともに増加した. これは金属陽イオンが陽イオン交換反応により吸着されていることによると考えられる. 吸着される金属イオンの選択性の序列は以下のとおりである. La(III)>Pb(II)~Fe(III)>Fe(II)~Cu(II)~Al(III)>Cd(II)~Ni(II)>Mn(II)~Zn(II). 吸着等温線はLangmuir型であり, 銅 (II), 鉛 (II), およびランタン (III) イオンに対する飽和吸着量はそれぞれ0.86, 0.76および0.47mol/kg-dry gelであった.
    本吸着剤の工業的利用を考えて鉛 (II) と亜鉛 (II) の相互分離実験を吸着剤を充填したカラムを用いて行った. 亜鉛からの鉛の満足すべき分離が達成され, 亜鉛メッキ浴からの不純物の鉛の除去等の工業的利用の可能性が示された.
  • 正本 博士, 徳勝 博之, 宗安 裕一, 中原 俊輔
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 831-834
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    今日, 廃棄物埋立地からの浸出水は塩類を高濃度で含み, そのままでは環境を汚染するので捨てられない. 現在, 主として膜分離法により浸出水を処理しているが, 得られる塩類の濃縮水はさらに2次処理が必要となる. そこで, 蒸発法により一段処理を開発した. 浸出水を噴霧し水分を蒸発させる噴霧法と, 浸出水を布に含浸させて水分を蒸発させる含浸法である. 実験の結果, 塩類濃度の減少は噴霧法で93%, 含浸法で99.7%であり, 熱効率は噴霧法で56%, 含浸法で28%であった.
  • 佐藤 修一, 中村 正則, 大平 勇一, 小幡 英二
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2004 年 30 巻 6 号 p. 852-855
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/04
    ジャーナル 認証あり
    マグネサイトを低温で酸化マグネシウムに改質することを目的として, マグネサイトに硝酸マグネシウム6水和物を添加して加熱改質試験を行った. その結果, マグネサイトの改質速度は単独加熱の場合よりも大きくなり, 最大170K低温でマグネサイト改質を行うことができた. これは, 硝酸マグネシウム6水和物の分解によって生じる窒素酸化物の効果であり, マグネサイトをより低温で脱硫剤に改質できる可能性が示された.
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