エレクトロニクス産業の分野で必須材料となっている封着加工用鉛ガラスの鉛フリー化は急務の課題である.本研究では,以前に報告したLi
2B
4O
7–ZnO–BaOの三成分系鉛フリーガラスにおいて,低融性,低熱膨張性,かつ非晶質ガラスであった80 wt% Li
2B
4O
7–20 wt% ZnOの組成からなるガラスに対してKPO
3を添加し,その評価を行った.評価項目は,熱量分析におけるガラス転移温度,ガラス軟化温度,結晶析出温度,熱機械分析における熱膨張係数の測定,粉末X線回折におけるガラス構造の確認,封着実験,および耐水試験である.本研究のガラスの中で最も低融性で,封着力に優れていたのが24 wt% Li
2B
4O
7–6 wt% ZnO–70 wt% KPO
3ガラスであった.これは従来の鉛ガラスと同温の450°Cで封着が可能であった.しかし,熱膨張係数が14.5×10
−6/Kと鉛ガラスと比べて高く,耐水試験において試料の重量減少率が約30%であった(鉛ガラス:熱膨張係数11.5×10
−6/K,耐水試験による重量変化1.97%).そこで熱膨張係数の低減,耐水性向上のために,24 wt% Li
2B
4O
7–6 wt% ZnO–70 wt% KPO
3ガラスにNb
2O
5およびAl
2O
3を添加した.その結果,熱膨張係数と耐水試験による重量減少率を大幅に下げることができた.その中でも21.6 wt% Li
2B
4O
7–5.4 wt% ZnO–63 wt% KPO
3–10 wt% Nb
2O
5ガラスは熱膨張係数が12.7×10
−6/K,耐水試験による重量減少率が1.6%であり480°Cで封着が可能であった.これらは現在使用されている鉛ガラスと同等の数値目標を達成できた.
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