化学工学論文集
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33 巻, 3 号
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物性,物理化学
  • 早坂 良, 青島 政之, 佐藤 明, 間島 保
    2007 年 33 巻 3 号 p. 187-194
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
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    粘度や拡散係数といった輸送係数に対する磁場,せん断流,ランダム力の影響,および希釈コロイド分散系中のヘマタイト粒子の配向分布について研究を行った.ヘマタイト粒子は粒子軸と垂直な方向の磁気モーメントを持つ回転楕円体としてモデル化した.本解析では,これらの粒子が単純せん断流および磁場中で回転ブラウン運動を行っている問題を取り扱っている.配向分布関数の基礎方程式をトルクの釣り合いから求め,数値解析法により解を求めた.得られた結果を要約すると以下のようになる.非常に強い磁場の場合,粒子の磁気モーメントは磁場方向に拘束されるので,棒状粒子の運動はせん断面に垂直な面に限られる.比較的強い磁場の状況下において,せん断流が小さい場合は,棒状粒子は磁場方向の周りに自由に回転できる.対照的に,せん断流が大きな場合は,磁気モーメントが磁場方向を向くとともに,粒子は流れ場の方向に傾く傾向を持つ.配向分布関数は粒子軸を沈降方向に一致させながら沈降方向に動く場合と,粒子軸を沈降方向に対して垂直な方向にとりながら粒子が動く場合の,ニつの特徴的な運動に支配されているため,大きな拡散係数の値を得ることができない.
移動現象,流体工学
  • 加藤 禎人, 多田 豊, 佐藤 裕子, 原田 拡, 長津 雄一郎, 中谷 哲治
    2007 年 33 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    低動力で数Pa·sまでの液粘度の流体を撹拌可能な,非定常的な流れを発生させる新しい撹拌翼が野村マイクロ・サイエンス(株)によって開発された.この撹拌機は半円形の立体翼を互いに逆方向に回転する2軸で架橋した撹拌翼である.最大の特徴はボルテックスリングを連続的に発生させて液を流動させることで,比較的広い粘度範囲の液を撹拌できる.このオクタジットの性能を評価するために混合時間,循環時間分布,撹拌所要動力を測定し,乱流域では循環時間分布のピークが一つで,同等の撹拌所要動力ではディスクタービンより短い混合時間を得た.
  • 柴 貴子, 平田 雄志, 井上 義朗
    2007 年 33 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    マルチフラクタル解析を用いて3種類以上の流体種から成る混合パターンを評価する方法を提案した.本評価手法では,混合パターンの幾何学的特徴を,流体種の数と同じ次元をもつ擬局所フラクタル次元ベクトルqと,スカラー量である擬大域フラクタル次元f(q)によるスペクトル曲面として表現する.通常のマルチフラクタル解析では,1個のスキャンパラメータの関数であるエスコート確率測度P(β)を用いて,局所フラクタル次元と大域フラクタル次元とを関連付ける.本解析法では,qと同じ次元をもつスキャンパラメータベクトルβを新たに導入し,ベクトルβ内に含まれる各々の要素を独立に動かすことでマルチフラクタル変数を計算する.多くの流体種からなる混合パターンの解析では,着目する流体種の選択とそれらを含む部分空間(サポート)の選択が重要である.本解析法では,着目流体とサポートの組み合わせを変えることで,多くの異なるマルチフラクタル・スペクトルが得られる.これにより,2種類以上の流体間の複雑な相互的混合状態を定量的に評価することができる.
  • 川崎 博幸, 山本 辰美
    2007 年 33 巻 3 号 p. 208-210
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    気泡塔内の平均ガスホールドアップφ,物質移動容量係数kLaおよび液混合時間tMに対する設置数Nが5段の多孔板付きドラフトチューブの影響を多孔板の孔径を一定とし,孔数nを21,81,162,323に変えた場合で実験的に検討した.
    φおよびkLaはガス空塔速度uG0nの増大とともにそれぞれ増加した.N=5の場合,n=323の多孔板付きドラフトチューブを設置した時に,φとkLaはそれぞれ最高値を示した.tMuG0とともに減少した.N=21の場合のtMNとともに大きくなったが,n=323の場合では,tMNによらず,ドラフトチューブがない場合の値と同じとなった.
分離工学
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 原田 修, 桑田 実, 山本 統平
    2007 年 33 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    コラーゲンからゼラチンを製造する新しい方法として高温高圧水処理が適用可能であるかを検討した.まず,コラーゲンのモデル化合物として牛皮を用いた.利用した高温高圧水処理装置は連続処理が可能で,牛皮スラリーを容易に処理することができた.反応温度260°C,反応時間2秒未満,圧力22 MPaの処理条件で牛皮のほぼ100%が水に可溶なゼラチンとなった.これらの分子量は反応温度の上昇とともに低くなり,130万Da以上の高分子量域(反応温度170°C)から,数百Daまでのコラーゲンペプチド(反応温度335°C)の製造が可能であることがわかった.本方法では連続処理が可能であるため装置がコンパクトになり,水だけで処理するために中和等の後処理が簡略化できる.以上のことから,ゼラチンの新しい製造方法のひとつとして,高温高圧水処理が有効であることが明らかとなった.
マイクロシステム,ナノシステム
  • 吉尾 宜之, 平田 雄志, 井上 義朗
    2007 年 33 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    マイクロリアクター・システムで用いられる合流型,分岐型,屈曲型のチャネル部を通過するときに,濃度分布は一時的に発生する2次流によって歪められる.流れが層流かつ定常であれば,入口断面の濃度分布ベクトルを出口断面における濃度分布ベクトルに対応づける変換行列を定義することができる.この行列は速度場の情報だけから決定されるが,一般に物質収支条件を満たすように構成することは困難である.本論文では,物質収支条件からのズレを表す局所誤差量を緩和するために,誤差量に関する拡散方程式を導入し,それを用いて物質収支条件を満足する変換行列を求める新しいアルゴリズムを開発した.本計算アルゴリズムの有効性を確認するために,5本逐次合流型チャネルの出口側断面における濃度分布についての計算結果と実験結果を比較しその有効性を確かめた.
材料工学,界面現象
  • 張 延林, 伴 貴彦, 塩井 章久
    2007 年 33 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    反応拡散系の構造形成原理を利用することで,微粒子内に自発的な物理的・化学的ミクロ構造を,均一な水系ゲル内で形成させることができる.今回,(Ba2+,Sr2+)イオンとSO42−イオンが,それぞれ,寒天および寒天/ゼラチン混合ゲル中を対向拡散して形成される粒子の構造と,元素分布について検討した.寒天ゲル中では,粒子がゲル内の広い位置に分布して形成され,結果として得られる粒子の構造は広範な多様性を有する.これは,ゼラチン単一成分のゲル中での結果と同様である.しかし,混合ゲル中では,粒子がゲル内の狭い位置でのみ形成され,比較的構造の分布が少ない粒子が形成された.この結果は,ゲル内において,粒子を分別製造する—位置によって異なった構造のものを作り分ける—システムと,比較的単一構造に近い粒子を得るシステムを,どのようにデザインすればよいか,について基礎的な知見を与えている.
エネルギー
  • 寺前 剛
    2007 年 33 巻 3 号 p. 246-256
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    木質系バイオマスガス化におけるタール排出量および生成ガス量に関する流動媒体(触媒)の影響を検討するため,流動層による連続ガス化実験を行った.窒素雰囲気および水蒸気雰囲気において杉粒子を873 Kでガス化した.まず,近年研究例の多い活性アルミナとケイ砂を使用したときのガス化特性を比較した.また,同じ活性アルミナを用いバイオマスと活性アルミナの投入速度などの実験条件を変え,排出タール濃度を変化させたときのタール成分およびガス量を測定した.その結果,活性アルミナ使用時のタール排出量はケイ砂使用時と比較して大幅に低減されること,軽質芳香族炭化水素の量はほとんど変化せずより重質のタールの排出が抑えられることがわかった.タール排出量低下は,生成ガスと流動媒体の接触が良好になるほど顕著となった.活性アルミナによるタール捕集に伴って,窒素雰囲気下では水素の発生は起こるものの一酸化炭素および二酸化炭素の生成はほとんど起こってないことが示された.活性アルミナを含む8種類の流動媒体でガス化特性を検討した結果,窒素雰囲気下では発生ガス量にほとんど変化はなかったが,水蒸気雰囲気下ではタール排出量が少ない流動媒体を用いたとき,生成ガス量は増加した.触媒によるタール分解時の水蒸気との反応が起こっていることが示唆された.酸強度や酸量といった触媒の酸性質の側面からタールやガス組成について検討した結果,タール排出量および発生ガス量は触媒の酸量と相関があることがわかった.
  • 中島 隼人, 今井 良行, 笠原 清司, 久保 真治, 小貫 薫
    2007 年 33 巻 3 号 p. 257-260
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    熱化学水素製造法ISプロセスの要素反応であるヨウ素と水の混合系への二酸化硫黄ガス吸収反応について,323 K,ヨウ素飽和条件で,二酸化硫黄分圧の影響を調べた.定圧二酸化硫黄ガス存在下,2相分離(硫酸相とポリヨウ化水素酸相),擬似平衡状態への到達が観察され,同状態におけるポリヨウ化水素酸に対してブンゼン反応の逆反応による理想的脱硫操作を行って得られる溶液の酸濃度(HI/(HI+H2O))は,高二酸化硫黄分圧の元で高く,最大15.7±0.3 mol%に達した.
環境
  • 安藤 新悟, 棚橋 尚貴, 三原 直人, 藤田 隆文, 渡邉 澂雄, 松田 仁樹
    2007 年 33 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    CaOおよびNa2CO3のアルカリ固体吸収剤によるトリクロロエチレン(TCE)の熱分解と塩素吸収挙動について実験的検討を行った.CaO,Na2CO3の存在しない条件下では,TCE-N2系混合ガス中のTCEは873 K以上で熱分解し,HCl,テトラクロロエチレンおよび四塩化炭素が生成した.一方,水蒸気が共存するTCE-N2-H2O系では,TCEは673 K以上で熱分解し,HClを生成した.
    CaOおよびNa2CO3の存在下では,473–1073 Kの全ての温度域でTCEの分解が確認され,その分解量は吸収剤の存在していない場合と比べて増加した.このときの反応生成物としては,TCE-N2系ではHClおよびジクロロアセチレン,TCE-N2-H2O系ではHClおよびジクロロエチレンが確認された.また,固体吸収剤はTCEの分解過程で生成する塩素化合物中のClを吸収することでCaCl2あるいはNaClとなった.
    CaO,Na2CO3吸収剤のCl吸収特性については,TCE-N2系混合ガスにおいて,873 Kでそれぞれ塩素吸収率の極大値0.60および0.53を示した.さらに,水蒸気を添加することで,CaOの場合は473–873 Kの範囲で塩素吸収率は向上し,873 Kで極大値0.72を示した.しかしながら,1073 Kでは水蒸気添加によってCaOの塩素吸収率は減少した.一方,Na2CO3の塩素吸収率は473–1073 Kのすべての温度域で水蒸気を添加することで向上し,873 Kで極大値0.66を示した.
  • 日高 隆太, 吉田 昌弘, 幡手 泰雄, 甲原 好浩
    2007 年 33 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
    ジャーナル 認証あり
    エレクトロニクス産業の分野で必須材料となっている封着加工用鉛ガラスの鉛フリー化は急務の課題である.本研究では,以前に報告したLi2B4O7–ZnO–BaOの三成分系鉛フリーガラスにおいて,低融性,低熱膨張性,かつ非晶質ガラスであった80 wt% Li2B4O7–20 wt% ZnOの組成からなるガラスに対してKPO3を添加し,その評価を行った.評価項目は,熱量分析におけるガラス転移温度,ガラス軟化温度,結晶析出温度,熱機械分析における熱膨張係数の測定,粉末X線回折におけるガラス構造の確認,封着実験,および耐水試験である.本研究のガラスの中で最も低融性で,封着力に優れていたのが24 wt% Li2B4O7–6 wt% ZnO–70 wt% KPO3ガラスであった.これは従来の鉛ガラスと同温の450°Cで封着が可能であった.しかし,熱膨張係数が14.5×10−6/Kと鉛ガラスと比べて高く,耐水試験において試料の重量減少率が約30%であった(鉛ガラス:熱膨張係数11.5×10−6/K,耐水試験による重量変化1.97%).そこで熱膨張係数の低減,耐水性向上のために,24 wt% Li2B4O7–6 wt% ZnO–70 wt% KPO3ガラスにNb2O5およびAl2O3を添加した.その結果,熱膨張係数と耐水試験による重量減少率を大幅に下げることができた.その中でも21.6 wt% Li2B4O7–5.4 wt% ZnO–63 wt% KPO3–10 wt% Nb2O5ガラスは熱膨張係数が12.7×10−6/K,耐水試験による重量減少率が1.6%であり480°Cで封着が可能であった.これらは現在使用されている鉛ガラスと同等の数値目標を達成できた.
  • 芝田 隼次, 村山 憲弘, 中島 慎輔
    2007 年 33 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/25
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    層間陰イオンの異なる4種類のMg/Al系ハイドロタルサイト様化合物(HT)をMg/Al=2.5の条件下で共沈法により合成し,得られたHTのpH緩衝作用について検討した.4種類のHTのpH緩衝作用により,Mg–Al–SO42−HT(pH 9.0)>Mg–Al–CO32−HT(pH 8.5)>Mg–Al–NO3HT(pH 8.0)>Mg–Al–ClHT(pH 7.6)の順に高いpHで一定になる.2価の陰イオンを取り込んだMg–Al–SO42−HT,Mg–Al–CO32−HTは,1価の陰イオンを取り込んだMg–Al–ClHTとMg–Al–NO3HTと比べて,緩衝作用により高いpH値を示す.これは,HT中からSO42−やCO32−が遊離され,溶液中のH+を消費するためである.Mg–Al–ClHTとMg–Al–NO3HTのpH緩衝作用を比べると,Mg–Al–NO3HT(pH 8.0),Mg–Al–ClHT(pH 7.6)となり,Mg–Al–NO3HTの方が高pH側で一定となる.HT層間に存在するOH量がMg–Al–NO3HTよりもMg–Al–ClHTの方が少ないために,Mg–Al–NO3HTは高いpH値で一定になると考えられる.層状複水酸化物のpH緩衝作用は層間に取り込まれた陰イオンの種類や量によって変化することがわかった.
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