サルファーフリーのクリーン燃料を製造するため,室温および加熱条件下で金属(Co, Ni, Cu, Zn, Pb)担持炭素を用いるモデル燃料(
n-ドデカンとテトラリン)中の有機硫黄の吸着実験を行った.その結果,いずれの場合もNi担持炭素(Ni/C)が最も高い脱硫性能を示したが,その効果は溶媒の種類と硫黄の化学形態に依存し,室温では
n-ドデカン中で高く,ジブチルジスルフィド<ヘキシルスルフィド<チオフェン<ジフェニルスルフィド<ジフェニルジスルフィド<ベンゾチオフェン<ジベンゾチオフェン(DBT)<4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)の順で増加した.HCl洗浄法によりNiを除去しても,吸着率はほとんど変化しなかったことから,室温でのNi/Cによる脱硫は主に炭素上で起こり,その性能は炭素の性状に強く依存することが示唆された.次に,加熱下におけるNi/Cの脱硫効果を調べたところ,吸着率は200˚C付近を超えると著しく向上する一方,硫黄の形態による影響は室温とは全く逆となり,350˚Cでは4,6-DMDBTを除くすべての硫黄種をほぼ100%除去することができた.さらに,Ni/CのDBTと4,6-DMDBTの吸着におよぼす保持時間の影響を検討したところ,吸着率は250˚Cを超えると時間の増加にともない増大し,その程度は
n-ドデカンよりテトラリン中で大きかった.DBTを用いる実験後のGC-MS分析では,ビフェニルが検出されたことから,Ni/C上での化合物中のC–S結合の開裂が明らかとなった.
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