化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
40 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
編集ノート
移動現象,流体工学
粉粒体工学
  • 前川 哲也, 徳美 拓也, 東 秀憲, 瀬戸 章文, 大谷 吉生
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    静電噴霧によるイオンとナノ粒子生成過程を明らかにするために,分子量が単分散の標準試料であるPEG4600を溶質として用い,溶液濃度がイオンとナノ粒子の生成過程におよぼす影響を実験的に検討した.また,荷電数と電気移動度分布から,液滴の分裂過程とイオン生成過程を表現できるモデルを提案した.本研究の実験範囲では,溶液濃度が1.0 wt%より高いときは,溶質がナノ粒子として析出することで,十分なイオン生成が行われず,また,溶液濃度が1.0 wt%より低いときは,粗大液滴からもイオン放出が生じるため,イオンの生成量が増大するという傾向がモデルによりある程度説明できることが明らかとなった.
  • 岡崎 精二, 山口 浩平, 坂本 明男, 荻 崇, 奥山 喜久夫
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    現在,黒鉛化処理した炭素材は,さまざまな分野で使用されている.しかし,黒鉛化処理には,莫大なエネルギーが必要であり,大気中に炭素ガスなどを放出するという問題を抱えている.そこで本研究では,環境負荷が少なく,電気エネルギーを削減でき,かつ,十分黒鉛化度を上げることができる熱処理方法について検討した.具体的には,炭素材を種々の黒鉛化炉で黒鉛化処理を行い,粉体特性の変化について検討した.その中で,黒鉛化時の雰囲気ガスの影響について着目した.その結果,窒素ガス中での黒鉛化処理は,アルゴンガス中での黒鉛化処理に比べて,黒鉛化が進行し易い事が確認され,また,黒鉛化温度も300˚C低減できた.
分離工学
  • 山口 俊雄, 青木 和也, 桜井 誠, 亀山 秀雄
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究の最終的な目標は,低濃度VOCs排ガスを処理するための,中小型装置向けの新たなシステムの開発である.吸着技術を応用することにより,省エネ性が高く安価な装置の実現を目指している.本研究では吸脱着試験用VOCsガスとして,代表的な酢酸エチル,およびトルエン・酢酸エチルからなる2成分系ガスを選択し,市販の椰子がら粒状活性炭を充填した固定層を用いて,ガス流通法によりVOCsガスの吸着,およびパージガスフィード量を減ずることによる脱着濃縮実験を実施した.吸着ステップでのフィードガス中のVOCs濃度範囲はトルエン50–600 ppm,酢酸エチル50–2000 ppmで,VOCsトータルとしては主に自燃しにくい600 ppm以下の低濃度とし,温度30–180˚C,流速0.03–0.37 m·s-1で吸脱着実験を実施した.上記実験条件,実験範囲における単成分,2成分系VOCsガスの吸着平衡がLangmuir式あるいは単成分でのデータを用いることによりExtended–Langmuir式で表現できることを確認した.実験でえられた破過曲線および脱離曲線について,Langmuir式あるいはExtended–Langmuir式,濃度基準総括物質移動容量係数を変数とする濃度基準線形推進力近似法モデル(以降LDFCモデルと記載)を適用して,カーブフィッティング(以降,LDFCカーブフィッティング法と記載)を実施し,低濃度2成分系VOCガス濃縮での吸脱着特性を明らかにした.温度依存型Extended–Langmuirモデルが低濃度2成分系VOCsガスの吸脱着・濃縮操作のシミュレーションに有効であること,また数値計算において効率的で精度的にも実用上適用可能であることを明らかにした.本実験領域において,非平衡,非等温操作LDFCモデルが吸着システムおよび関連技術の開発と設計において,有用な解析法であることを確認した.
反応工学
  • 能勢 泰祐, 横山 祐三, 竹崎 秀昭, 花岡 祐三子
    原稿種別: ノート
    2014 年 40 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    水滴噴霧気中パルス放電プラズマによる1,4-ジオキサン処理の研究を初めて行った.パルスパワー発生装置により放電電極に正のパルス電圧を生成させた.パルスの繰り返し数は1 s間に100回とした.その時のピーク電圧およびピーク電流はそれぞれ34.4 kVおよび168 Aであり,放電電力は17 Wであった.水滴噴霧放電処理により水中の1,4-ジオキサンは処理時間とともに減少し,4 h処理後には93%除去され,7 h処理後には検出されなくなった.一方,水滴噴霧未放電処理の場合でも,1,4-ジオキサン濃度は減少したが,その除去率は放電処理のほうが高かった.このことより,水滴噴霧気中パルス放電プラズマは,1,4-ジオキサンの処理法として有効であることが示唆された.
生物化学工学,食品工学,医用工学
マイクロシステム,ナノシステム
  • 門脇 信傑, 鈴森 康一, 川上 佳朗, 阪田 祐作
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    著者らは,マイクロリアクタチューブ内にスラグ流を生成するためのスライド式三方弁システムを開発してきた.生成する微小スラグの容積は,三方弁の切り替え周期によって制御できる.混じり合わない溶液からできるスラグ流は,通常は抽出などのようにスラグ界面を通しての拡散分離操作に有効と考えられてきた.本報告で著者らは,このようなスラグ流を,互いに混じり合う水溶液系の化学合成反応操作へと拡張して応用することを試みた.特に強い酸性の金属イオン水溶液とアルカリ性水溶液間の迅速な無機中和反応をとりあげた.耐薬品性の部材を用いた三方弁システムを開発して,リン成分を均一に含有するスズ酸化物(PTO)で,ナノレベルの均一粒子径をもつ透明なコロイド粒子を合成できた.ここで我々が提案するモデルは,三方弁による流路の切り換えを,微量反応溶液をマイクロビーカと呼ぶ微小容器に切り取る操作と見なし,スラグ流中で起こる化学反応は,このマイクロビーカの内容物間での混合・反応が連続的に生起すると考えるものである.このモデルによれば,流路の切り換え周期を制御すればスラグ流の長さ,すなわちマイクロビーカの容積が変化し,二液の混合レベルが変わり,結果的に生起する化学反応が変わることが説明できる.上記PTOコロイド合成反応では,得られた粒子径ピーク4–8 nmの場合,マイクロビーカの容量は1.6–0.5 µLであった.
材料工学,界面現象
  • 梅澤 宏明, 藤原 正浩, 平田 誠
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    W/O/Wエマルションの界面における無機沈殿反応を応用した界面反応法を用いて,炭酸カルシウム壁中空カプセルの粒径微細化を検討した.粒径微細化のためのカプセル内部空間の形成性に関わるW/O乳化の条件として,使用する乳化剤の種類,親油性乳化剤/親水性乳化剤の比率(平均HLB),乳化剤濃度の影響を検討した.その結果,親油性乳化剤としてSpan 80を,親水性乳化剤としてTween 80を用い,配合比2/1(平均HLB 7.9),油相中の乳化剤濃度を6, 9 wt%にすることで,通常メジアン径で6–8 µmのものをメジアン径で3 µmまで微細化することができた.得られた中空カプセルに殺菌成分のトリクロサンの封入検討を行い,トリクロサンをエタノールに溶解して減圧含浸法を用いることで,メジアン径6.72 µmのカプセルでは,トリクロサン含有率21.3 wt%,メジアン径3.03 µmのカプセルでは,トリクロサン含有率18.9 wt%のトリクロサン封入カプセルが得られた.
  • 今駒 博信, 竹中 啓, 河野 和宏, 堀江 孝史
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    赤外線乾燥過程の温度履歴から,赤外線乾燥速度曲線を算出する材料温度変化法(赤外線)を提案した.材料温度変化法は,質量変化法に代わる熱風乾燥速度曲線の算出法として,筆者らが提案した方法である.赤外線および熱風乾燥実験を行い,温度と質量の履歴を実測した.温度測定には熱電対と放射温度計を使用した.熱風乾燥を対象とした既往の研究では,塗膜表面温度を放射温度計で測定していたが,本研究では,基材底面の温度を,放射温度計で測定する改良測定法を考案した.両温度計で実測した温度履歴の一致は良好であった.実測した両温度履歴に,材料温度変化法(赤外線)を適用することで質量履歴を算出した.算出した履歴同士の一致は良好であり,しかも先に実測した質量履歴とも良好に一致した.その結果,放射温度計を利用した材料温度変化法(赤外線)の妥当性と有用性が示唆された.ただし,熱風乾燥を対象とした材料温度変化法が精密乾燥速度曲線を与えるのに対して,提案した方法は近似速度曲線しか与えないことに注意すべきである.
エネルギー
  • 望月 友貴, 坪内 直人, 菅原 勝康
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    サルファーフリーのクリーン燃料を製造するため,室温および加熱条件下で金属(Co, Ni, Cu, Zn, Pb)担持炭素を用いるモデル燃料(n-ドデカンとテトラリン)中の有機硫黄の吸着実験を行った.その結果,いずれの場合もNi担持炭素(Ni/C)が最も高い脱硫性能を示したが,その効果は溶媒の種類と硫黄の化学形態に依存し,室温ではn-ドデカン中で高く,ジブチルジスルフィド<ヘキシルスルフィド<チオフェン<ジフェニルスルフィド<ジフェニルジスルフィド<ベンゾチオフェン<ジベンゾチオフェン(DBT)<4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)の順で増加した.HCl洗浄法によりNiを除去しても,吸着率はほとんど変化しなかったことから,室温でのNi/Cによる脱硫は主に炭素上で起こり,その性能は炭素の性状に強く依存することが示唆された.次に,加熱下におけるNi/Cの脱硫効果を調べたところ,吸着率は200˚C付近を超えると著しく向上する一方,硫黄の形態による影響は室温とは全く逆となり,350˚Cでは4,6-DMDBTを除くすべての硫黄種をほぼ100%除去することができた.さらに,Ni/CのDBTと4,6-DMDBTの吸着におよぼす保持時間の影響を検討したところ,吸着率は250˚Cを超えると時間の増加にともない増大し,その程度はn-ドデカンよりテトラリン中で大きかった.DBTを用いる実験後のGC-MS分析では,ビフェニルが検出されたことから,Ni/C上での化合物中のC–S結合の開裂が明らかとなった.
  • 岩崎 稔友紀, 小島 紀徳
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    3種の針葉樹,3種の広葉樹,2種の草本,3種の農業残渣バイオマスを,流動層を用い急速昇温条件(最大1000 K·s-1程度)下で,温度(573–1473 K)を変えて乾留し,チャー収率の測定を行った.ユーカリ,ヒノキ,バガス,スイッチグラスについては,低速昇温条件(10 K·min-1)下での測定も行い,いずれも低速乾留より急速乾留の方がチャー収率が低いとの結果を得た.また,急速昇温条件では,本実験で用いた針葉樹は他のバイオマスに比べ,低いチャー収率を与えた.ヒノキ(針葉樹)およびユーカリ(広葉樹)については,昇温速度と乾留温度を変化させ生成したチャーの断面をSEMを用いて観察を行い,乾留挙動について考察を行った.
環境
  • 植木 智也, 高橋 亮, 高瀬 つぎ子, 佐藤 理夫
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2014/01/20
    公開日: 2014/01/20
    ジャーナル 認証あり
    酸化セリウム系研磨材はレンズやプリズムなどの精密研磨工程で一般的に使用される研磨材であるが,原料であるレアアースは中国から輸入されており,価格が高騰している.研磨材の使用量削減に向けた取り組みがこれまでされており,我々は研磨で使用された後に廃棄されるスラリー(使用済みスラリー)中からの研磨材成分を回収する技術を検討してきた.使用済みスラリーは粒子沈降しにくく,研磨材回収が困難である性質を有するが,我々は使用済みスラリーを凍結することで研磨材微粒子が凝集物を形成し,解凍すると凝集物が沈降することで容易に分離,回収できることを発見した.本研究ではさまざまな条件で使用済みスラリーの凍結を行い,分離,回収できる条件を検討した.その結果,試料温度が0˚Cを保ち潜熱除去されている状態では解凍しても分離されず,試料温度が0˚Cより低下した後に,庫内または冷媒温度とおおむね等しくなった完全氷結の状態で解凍すると研磨材が分離できた.また凍結条件を変更し,凍結速度を変化させると形成される凝集物の粒径を制御できることを確認した.スラリーを凍結することで形成される氷の界面に研磨材微粒子が排出され,完全氷結するときに氷によって微粒子が押し固められて,凝集物が形成されると考えられる.液体窒素を使用するなどして急速に冷却した場合,完全には分離されなかった.微粒子排出が十分に進行しないまま氷結したために,凝集しなかったと考察している.
feedback
Top