本報では,100°Cを超える融点を持つ潜熱蓄熱材であるエリスリトールを,マイクロカプセル等の手法を用いずにシリコンオイル中に直接分散させてその熱輸送効率を向上させることを目指し,界面活性剤とともにオイルに加えた混合系を調製し,エリスリトール融解後の分散安定性を観察した.その結果疎水性の強い界面活性剤であるオレイルアルコールを用いることでエリスリトールの凝集を抑制できることを見出した.この混合系をポンプにより直管に流し,その際の圧力損失,および直管各部の温度を測定して搬送動力および放熱ロスを見積もった.オレイルアルコールの重量含率を5 wt%とした場合,エリスリトール10 wt%程度まではその圧力損失や放熱ロスはオイル単独の場合との差は小さかったことから,オレイルアルコールによりシリコンオイル中にエリスリトールを分散することで100°Cを超える熱の輸送をより効率的に行うことが期待される.
自然界でも身近な現象である着霜現象は,低温機器の熱交換器で発生し,性能低下の原因の一つとなり,除霜運転が不可欠である.本研究では,ヒータ除霜に代わる機械的除霜の実現を目的として,冷却面表面の微細加工形状に着目し,微細凹凸面の凸部の投影面積を28%まで低減した格子状微細加工面を提案し,霜結晶の生成・成長の顕微鏡観察および数値解析を行った.結果として,格子状微細加工面が着霜の抑制および脆弱な霜層の形成に有効であることを明らかにした.
撹拌所要動力に関する報告は非常に多く存在するが,撹拌翼表面粗さの撹拌所要動力におよぼす影響を定量的に論じた報告は存在しない.本報では種々の撹拌翼の表面にさびや材質変化を模倣した加工を施し,撹拌所要動力におよぼす影響を実験的に検証した.その結果,撹拌翼の表面粗さと翼径の比ε/ d≤0.0125では撹拌所要動力に影響をおよぼさなかった.