Papers in Meteorology and Geophysics
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19 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 荒州 正一, 大林 智徳
    1968 年 19 巻 3 号 p. 341-361
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    一次元非定常の逆転面下の流れが山を越えるとぎの方程式系は双曲型で,二組の特性曲線を有する。この性質を利用して方程式系を特性曲線に沿って数値積分した。初期条件として,(1)至るところでsubcritical flow,(2)山頂でcritical flowで他はsubcritical flow,(3)至るところでsupercritica1 flowとなるような三通りのばあいを扱った。各例とも山の風上側で逆転面がもり上がり,風下側では低下してsupercritical flowが生じ,ある時間たつと風下側にjumpが生じた。初期流が速いほど風下側のjumpは下流に生じ,風下側山麓におろし風の起る可能性を示唆した。また風上側のもり上りは初期流が速いほど高く,おろし風の際にみられる風上側と風下側の異常な気圧差を説明している。
    形が変化しないようなjumpまたはdroPの伝ぱんについて解析的な性質を吟味した。この性質から,上の数値解に現われた各じょう乱の伝ぱんと速度分布等が全部説明できた。
  • 鈴木 栄一
    1968 年 19 巻 3 号 p. 363-399
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    日本における降水量の永年変動の状態をまず,年降水量について調べ,つぎに月別の降水量について解析し,さらに年降水量のうち梅雨期雨量,台風による雨量についてその変動状態を統計的に解析した。解析の方法としては,順位相関によるトレンド検出,直交多項式およびそれを変換した通常の多項式のあてはめ,変動状態を記述するいくつかの指数の計算の3つを採用し,増加または減少の実態を明らかにし,地域的な比較を行なった。資料は1900年以前から観測のなされている本邦全気象官署の1964年までの値である。
    主な結果をあげると
    (i)本邦全域としてみた場合,増加傾向になっている地点が多い。
    (ii)とくに九州,四国地方は顕著な増加傾向域となっているが,それは主として台風による雨量が増加しているからである。
    (iii)東北,北陸地方では増加と減少の区域が入りみだれて存在し,とくに冬季降水量(降雪量)の明らかな増加域が点在しているが全般的には減少している。
    (iv)関東地方はどの月別の降水量にも減少傾向の場合が多く,それが年降水量の明瞭な減少傾向となってあらわれている。
    などである。
    これまでの研究で定性的に知られていたことが数量的な結果として明らかにされ,資料補足によって若干訂正された結論が得られた。
  • -潮汐予報の精度について-
    磯崎 一郎
    1968 年 19 巻 3 号 p. 401-426
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    潮汐予報の精度は海岸の局地的特性によって異なる。この論文では同一の潮汐解析法にもとずいて得られた30分潮の潮汐常数を用いて,日本沿岸53地点の潮汐予報を行なった結果について,予報の精度や誤差の性質をスペクトル解析の手法によって吟昧した。
    外洋に面した検潮所では,30分潮を用いた予報で天文潮の約95%が表現される。一般にはこれは満足できる結果であるが,有明海のように潮差が4m以上にもなる場所ではさらに精度のよい予報が必要であろう。予報誤差はスペクトルで周波数が2cpdのところに集中する傾向があるので,精度向上のためには半日周期の分潮をより多く考慮する必要がある。
    湾内,ことに大阪湾と瀬戸内海では潮汐のnon-linear interactionのために予報精度が悪く,天文潮の約90%しか表現されない。この誤差の性質はスペクトル上で非常に明らかで,予報精度を向上させるためには2cpdのほかに5cpd,6cpdなどに属する分潮を考慮する必要がある。
  • 末廣 重二
    1968 年 19 巻 3 号 p. 427-435
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    松代群発地震の発生前(1964年)と終末期(1967年)において,松代地震観測所で記録された震源地と規模をほとんど同じくする近地地震(S-P:約2秒)のスペクトルを比較したところ,著しい差がみられた(Figs.2-5)。群発地震発生前には200cps以上の高周波が豊富に記録されたが,終末期にはこのような高周波成分はほとんど見られなくなってしまった。この研究によって,かかるスペクトルの変化はきわめて多数発生した地震により破砕された群発震源域の媒質によって起こされたもので,かかる媒質中を伝播する地震波高周波成分の減衰は多くの割れ目による散乱であることを明らかにした。従って茂木の実験で示されたように,今回の松代群発地震はきわめて不均一の地域が歪みを受けた結果,破壊が群発地震として進行し,その結果数多くの割れ目ができたという現象であろう。
  • -余震活動の初期および後期における時間間隔の分布について-
    山川 宜男
    1968 年 19 巻 3 号 p. 437-445
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    先ず,余震活動の時間分布および空間分布は,互いに密接に関連し合っている事実を指摘した。次に,地震活動の時間間隔分布において指数法則にしたがう確率過程が,ボアソン過程と全く同一のものであることを強調し,この立場から,次の如き結論を得た。
    (1)本研究のこれまでの過程(第III,IV報)で明らかにしてきた余震活動の後期における時空間分布のランダム性は,時間間隔分布の立場からも確められた。
    (2)他方,改良大森公式n(t)=A/(t+c)pの常数cが主要な役目を演ずる余震活動の初期においては, 本研究第III報において見出された空間的集中性に対応して,時間的にも集中性を示すことが,時間間隔 分布の立場から見出された。
  • -近赤外域の測定-
    村井 潔三
    1968 年 19 巻 3 号 p. 447-480
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    装置の詳細と紫外,可視域における測定の結果をPartIに述べたが,エーロゾルの粒径分布を推定するためには近赤外域の測定が極めて重要であるので,この領域の測定を容易にするために装置の改良を行い新しい装置を作製した。また,古い装置における測定誤差の主な原因と思われる部分の改良もほどこしてある。
    直射光の測定から得られたエーロゾルの光学的厚さの波長分布は3つの型に分類される。FoitzikおよびDeirmendjianの計算結果と比較して推論された粒径分布は上の3っの型に対応して次の様に表わされる。
    TypeI粒子半径r<1.0μの領域ではsteepなpower law分布を示し,0.1<r<0.5μでは分布曲 線はhollowを示し,0.5<r<1.0μではhumpを示している。TypeII Foitzikの仮定した4つのGaussian groupの組合わせにより表わされるが,0.5<r<1.0μの領域に存在するGaussian groupの粒子数はFoitzikの仮定したものよりも僅かに少い。TypeIIIかなりsteepなpower law分布により表わされ,7>1.0μの領域では分布曲線の傾斜は僅かに減少している。周辺光の強度は太陽からの角度θ<5°の領域では波長と共に増加する分布を示し,θ>10°の領域では変化は非常に少く,あるいわ,僅かに波長と共に減少する傾向を示している。周辺光強度の大気外値に対する相対値はθ=1°ではほぼ10-4のorderを示し,2<θ<5。では10-5のorder,θ>10° ではほぼ10-6のorderである。周辺光の強度は大気の混濁度の増加と共に増加し,混濁度の増加に対する周辺光強度の増加の割合は波長が大きい程大きい。
    周辺光強度の波長分布の型ほ明確な分類は難かしいが,前述の粒径分布のTypeIに対応する波長分布は波長λ<0.5μ の領域で急激な増加を示し,TypeIIに対応する分布は波長と共にゆるやかに増加する傾向を示している。TypeIIIに対応する分布はTypeIIに比して急激な増加を示す曲線で表わされる。
    周辺光強度の角度分布の傾斜は波長と共に増加し,Volz,Bullrich等の測定よりも傾斜は急である。また,Deirmendjianの計算結果と比べると角度分布の傾斜は非常に急である。
    分布曲線の傾斜の波長による変化はTypeIの粒径分布に対応する場合に最も大きく,TypeIIIの場合に最も小さい。
  • 三宅 泰雄, 杉村 行勇
    1968 年 19 巻 3 号 p. 481-485
    発行日: 1968/12/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1967年春から夏にかけて採取した北太平洋西部海水中のプルトニウム含量について報告する。プルトニウムは,500lの海水から,水酸化鉄との共沈によって濃縮し,陰イオン交換法を用いて単離精製したの`ち,ステンレス板上に電着し,α 線波高分析法によって定量する。
    表面水のプルトニウム含量は,1.8~22.6×10-15 g/lをしめし,申層水および深層水でも,かなり高い倉量がみとめられた。
    プルトニウムの同位体のうち主要なものは239Puであるが,少量の239Puがみとめられ,238Pu/239Puの放射能比は7~28%をしめした。
    海水中の239Pu/U比は2x10-10~9×10-9であり,火山岩やソ連の陸水中の値(2×10-9~7×10-7)よりも低い。
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