日本呼吸器外科学会雑誌
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14 巻, 5 号
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  • その解剖学的検討
    馬渡 徹, 越野 督央, 森下 清文, 渡辺 敦, 一宮 康乗, 安倍 十三夫, 村上 弦
    2000 年 14 巻 5 号 p. 591-601
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    しばしば認められる異常分葉肺の血管・気管支を詳細に観察し, 肺切除に有用と思われる知見を得た.対象は正常解剖体の肺右202体, 左211体から見出した右35体 (17 .3%) および左27体 (12.8%) の異常分葉肺である.頻度の高い異常裂は, 右下葉上部にほぼ水平に走行する右副後葉型 (右PPL型: 25体)と, 左上葉の前方縦隔側から後上方に走行する左上前型 (LUAF型: 22体) の2型であった.右PPL型の異常裂がS6の下縁に, またLUAF型の異常裂が上大区と舌区の境界に一致するのは, それぞれ約90%, 60%だった.右PPL型では一般肺に比してB7とB8, B*との共同幹形成が多く, A6は1本で分岐しやすく, V6は2本で還流するものが多かった.また, 上葉とS6の間に異常血管を高頻度に認めた.LUAF型では一般肺に比して舌区動脈が葉間より一本で分岐するものが多く, 舌区静脈ではV5が下肺静脈に注ぐものを多く認めた.異常分葉肺の肺切除では, 上記のような一般肺と異なる所見を考慮し, 周到な気管支と血管の観察, 処置を要する.
  • 新谷 康, 中川 勝裕, 藤原 清宏, 井上 匡美, 福原 謙二郎, 重村 周文, 安光 勉
    2000 年 14 巻 5 号 p. 602-607
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    びまん性肺疾患における胸腔鏡下肺生検 (VTLB) の有用性について, 開胸肺生検 (OLB) と比較検討し, さらに外科的肺生検の重要性を検討した.VTLB17例とOLB15例を比較するとドレーン留置期間, 摘出標本数, 標本の大きさ, 採取部位には差はなく特異的診断率 (約93%) も同等であった.出血量, 手術時間はOLBで多く, 合併症はVTLBで2例, OLBで3例であった.またTBLBを既施行した26例での同方法による特異的診断率は23%であり外科的肺生検のそれ93%に比し低値であった.好酸球性肺炎やサルコイドーシス等のTBLBが有用である疾患以外のびまん性肺疾患を正確に診断するためにはまず胸腔鏡下肺生検を考慮すべきであると考えられた.
  • 市橋 匠, 飯田 茂穂
    2000 年 14 巻 5 号 p. 608-611
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    59歳男性.鈍的胸部外傷による左第2~12肋骨, 鎖骨, 肩甲骨, 右第11肋骨骨折で入院した.奇異性運動を伴わない左側胸部の陥没を認め, CTでは軽度の左血気胸と高度の左胸部変形を認めた.葉間部肺動脈と骨折肋骨の間の距離は約1cmしかなかった.気管内挿管加圧呼吸にても胸部の変形は不変で, 左後側方切開で手術を行った.皮下を広く剥離, 広背筋前鋸筋を可動性とし牽引すると, これらの筋を切離することなく骨性胸郭を広く露出できた.最小限の肋間開胸部から腸べらを挿入し肺を傷つけないようにしてドリルで肋骨に穴をあけた.10本のA-Oプレートとネジにより左第3~8肋骨を固定すると胸部の形はほぼ正常となった.気管切開と約2週間の人工呼吸管理, IVHにより術後合併症はみられず, 術後約6週間で退院した.現在創痛やプレート, ネジの移動もなく呼吸機能も良好である.高度に陥没固定された胸郭のネジとプレートでの修復は急患にも対応でき有用である.
  • 大田 守雄, 石川 清司, 国吉 真行, 川畑 勉, 源河 圭一郎
    2000 年 14 巻 5 号 p. 612-617
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    血中HCGが高値を示した前縦隔悪性胚細胞腫瘍に対しcisplatin (CDDP) を中心とした術前化学療法が奏功した一例を経験した.症例は18歳, 男性.前胸部痛を主訴に入院.胸部X線写真, 胸部CT所見より前縦隔腫瘍を疑い, X線透視下経皮生検にて縦隔悪性胚細胞腫瘍 (精上皮腫) と診断された.腫瘍マーカーは血中および尿中HCGが高値を示した.術前化学療法としてCDDP (60mg/m2), Vindesine (3mg/m2), Etoposide (100mg/m2) を1クールとし, 術前に2クール施行した.腫瘍は著明に縮小し, 血中および尿中HCGはいずれも正常値を示した.胸骨正中切開により腫瘍を摘出し, 術後に化学療法を1クール追加した.前縦隔原発悪性胚細胞腫瘍の治療においては, 腫瘍マーカー値を指標にCDDPを中心とする術前多剤併用化学療法と腫瘍の根治的切除により, 良好な予後が期待できる.
  • 小谷 一敏, 梅森 君樹, 牧原 重喜
    2000 年 14 巻 5 号 p. 618-621
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肋骨原発軟骨肉腫は比較的稀である.今回われわれは右第8肋骨に発生した肋骨原発軟骨肉腫の1例を経験した.症例は71歳, 男性.右胸壁腫瘤を主訴に来院した.生検にて軟骨腫と診断され右第8肋骨部分切除を施行した.病理組織検査にて軟骨肉腫と診断され, 断端骨に腫瘍の遺残が認められたため, 初回手術後2ヵ月目に胸壁広範切除術を追加した.胸壁欠損部はポリプロピレン製手術用非吸収性合成メッシュを用いて修復した.
    軟骨肉腫の治療としては化学療法や放射線療法は無効とされており, 適切な外科治療が行われた症例では良好な予後が報告されている
  • 吉増 達也, 尾浦 正二, 前部屋 進自, 西田 宗弘, 櫻井 照久, 中村 恭子, 松山 健次, 内藤 泰顯
    2000 年 14 巻 5 号 p. 622-626
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性.胸部X線にて異常陰影を指摘され当科に紹介された.胸部CT, MRIでは均一な内部構造を有する充実性の腫瘍が椎体に接して認められた.1998年5月15日, 腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は3.3×2.0×1.0cm大で, 壁側胸膜に覆われ, 表面平滑, 弾性軟で, 割面は黄褐色であった.病理組織検査では, 血管, 平滑筋細胞, 脂肪組織の3成分からなる良性腫瘍であり, 血管筋脂肪腫と診断された.血管筋脂肪腫は腎に発生することが多い間葉系の良性腫瘍で他臓器の発生は稀である.縦隔原発例は, これまで本邦において自験例を含め5例が報告されているのみである.
  • 柴田 康行, 丹羽 宏, 山田 健, 可児 久典, 前本 勝利, 水野 武郎
    2000 年 14 巻 5 号 p. 627-630
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顆粒細胞腫は皮膚, 食道など全身の臓器に発生する腫瘍である.胸腔内へ突出するように発育する胸壁発生の顆粒細胞腫は極めて稀である.今回我々は肋間神経由来と思われる本症の一手術例を経験したので報告する.症例は68歳, 女性.胸部異常陰影を主訴に当科を受診した.腫瘍は大きさ4.5×2.5×2cmで第3肋間神経より発生していた.第3, 4肋骨を切除するとともに, 肺への浸潤が疑われたため左肺上葉の一部を合併切除した.病理学的には顆粒細胞腫で悪性所見はなく, 肺, 肋骨への浸潤は認められなかった.
  • 鈴木 弘行, 星野 実加, 樫村 省吾, 木村 隆, 樋口 光徳, 塩 豊, 藤生 浩一, 管野 隆三, 後藤 満一
    2000 年 14 巻 5 号 p. 631-636
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の女性, 学校検診にて胸部X線写真上, 左中肺野の径約9mmの腫瘤影を指摘された.経過観察にて腫瘤影の増大を認めたため胸腔鏡にて肺部分切除施行.術後の組織診にて胞巣状軟部肉腫との診断を得た.転移と考え全身検索を行ったが, 明らかな原発巣を指摘できなかった.現時点では原発か転移かは明らかでないが, 再発, 転移の兆候なく外来経過観察中である.
  • 加瀬 昌弘, 坂本 和裕, 山形 達史, 蔵田 英志
    2000 年 14 巻 5 号 p. 637-644
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    気管支動脈蔓状血管腫の2例を経験した.症例1は59歳, 肝硬変のある男性.右肺下葉の扁平上皮癌の精査中に右B2入口部のポリープ状病変を認めた.同部の生検により大量に出血し, 保存的には止血出来ず緊急手術で肺癌を含めた右肺全摘除術を施行した.症例2は幼少時から血疾を繰りかえす41歳の男性.血疾の量が増加したため来院した.気管支鏡では右上葉支口に累々とした血管様病変を認めた.気管支動脈造影でも同部へ流入する著しく屈曲蛇行, 拡張した3本の血管が描出された.手術は拡張した気管支動脈とともに右肺上葉切除術を施行した.病理組織学的には2症例とも気管支周囲に拡張屈曲した血管の増生を認め, これらが気管支粘膜下にまで連続しており気管支動脈蔓状血管腫と診断した.なお2症例とも観察期間内には再喀血は認めていない.
  • 櫻庭 幹, 前 昌宏, 吉田 珠子, 小山 邦広, 大貫 恭正, 新田 澄郎
    2000 年 14 巻 5 号 p. 645-648
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は24歳, 女性.検診時胸部X線異常影を指摘され入院となった.胸部CTでは前縦隔に腫瘍影を認めた.術前経皮肺生検を施行したが, 確定診が得られず浸潤型胸腺腫を疑い手術を施行した.術中迅速診にても確定診断が得られず拡大胸腺全摘および心膜の一部と左肺上葉切除術を施行した.術後病理組織学的にHodgkin病結節硬化型と診断された.その後は化学療法 (ABVD療法) 6クール施行され再発は認められない.本邦における縦隔悪性リンパ腫の報告の中で, Hodgkin病の報告は希である・浸潤型胸腺腫と悪性リンパ腫は, 治療方法が異なるため術前の鑑別が重要となるが経皮針生検, 術中迅速診にても鑑別困難であった1例を経験したので報告する.
  • 四方 裕夫, 松原 純一, 土島 秀次, 塚 正彦
    2000 年 14 巻 5 号 p. 649-654
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    12歳, 女性.発熱・胸痛・咳嗽を主訴として近医を受診, 右胸腔に巨大な腫瘤を指摘された.胸部MRI, 胸部CT, 血液生化学的諸検査などを施行した.CA19-9が異常高値を呈し, 右胸腔をほとんど占拠する巨大な腫瘤で, 縦隔左偏位, 拘束性肺障害, 脊柱側弯を認めた.原発部位不明の奇形腫を考慮した.縦隔内血管への浸潤・癒着が不明なため胸骨正中切開としたが, 腫瘤の摘出が困難で, 乳房下皮膚切開, 第7肋間開胸を追加した.右肺下葉は後下方に圧排, 中葉は腫瘤と完全に分離できず含気も全く認めないため中葉を腫瘤と一緒に合併切除した.腫瘍は1, 700gで, 固い充実成分と油脂を多く含む灰白色液体成分より成り, 病理診断は縦隔由来の成熟奇形腫であった.CA19-9は術後経時的に著明に減少した.術後の肺血流シンチでは右肺上葉の血流は乏しく, 下葉の血流はほとんど見られなかった.術後経過は順調で術後30日目に退院した.
  • 小林 理
    2000 年 14 巻 5 号 p. 655-659
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.検診の胸部X線写真で異常陰影を指摘され, 当院で精査を行った.CT, MRIによる画像診断では気管支嚢胞も疑われたが, 非定型的所見も認められ, 血中CA19-9が163 .9U/ml (正常≦各37) と異常高値を示したため, 肺癌も否定できず手術を施行した.開胸所見としては, 右肺下葉の異常分葉間に挟まれる形で嚢胞が認められ, 病理学的に肺内気管支嚢胞と診断された.免疫染色で嚢胞内面の上皮細胞にCA19-9が認められ, 嚢胞内容液のCA19-9は299, 300U/mlと高値を示した.術後CA19-9は正常値を示した.
  • 村松 高, 大森 一光, 北村 一雄, 並木 義夫, 長坂 不二夫, 羽賀 直樹, 古賀 守, 四万村 三恵, 古市 基彦, 福谷 敏彦, ...
    2000 年 14 巻 5 号 p. 660-665
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺切除後に発症した急性肺血栓塞栓症の2例を経験したので報告する.症例1は55歳, 女性.左肺腺癌の診断で, 左上葉切除術施行.術後第二病日, 離床時にショック状態から心肺停止状態となり直ちに心肺蘇生を行ったが, 胸部レントゲン写真や心電図等では肺血栓塞栓症特有の所見は認められなかった.しかし, 心肺停止発症から5日目の肺血流シンチグラムで両肺野の欠損が認められ, 術後肺血栓塞栓症と診断された.直ちに肺動脈圧を測定後, 血栓溶解療法と抗凝固療法を施行した結果, 肺血流シンチグラムでは右上下肺野の欠損はほぼ消失した.症例2は57歳, 男性.右肺扁平上皮癌の診断で, 右全摘除術を施行.術後第三病日, 離床時にショック状態となり心肺停止状態となる.直ちに心肺蘇生を行うが血圧が触れず, 臨床所見から術後肺血栓塞栓症と診断し, 心肺蘇生を行いながら血栓溶解療法を開始した.しかしいずれの治療も無効で死亡した.剖検では肺動脈本幹から左肺動脈主幹を経て末梢につながる血栓を認めた.
  • 篠原 博彦, 大和 靖, 土田 正則, 渡辺 健寛, 橋本 毅久, 斎藤 正幸, 石山 貴章, 林 純一
    2000 年 14 巻 5 号 p. 666-671
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    気管全長と右主気管支に渡る広範な結核性瘢痕性狭窄に対し, 段階的に拡張術を行い, 狭窄の改善を認めた.症例は33歳女性, 次第に増悪する多発性の気道狭窄に対し, まずV-V ECMO下に気管切開, 気道内チューブによる段階的な拡張を行った後に狭窄部のレーザー焼灼を施行し, 気切チューブを留置した.後に右主気管支入口部の狭窄に対しては, 気管支鏡下にPTA用バルーンを用いて計3回の拡張術を施行し, 狭窄の改善をみた.その後気管切開孔よりTチューブを挿入し, 現在外来通院中である.広範な気管.気管支狭窄に対する治療は難渋することが多いが, 手術時の手技や麻酔, 術後管理等を工夫することにより安全に治療を行うことができると考えられた.
  • 櫻井 照久, 尾浦 正二, 吉増 達也, 中村 恭子, 松山 健次, 内藤 泰顯
    2000 年 14 巻 5 号 p. 672-675
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    化学放射線同時併用療法が奏効した肺尖部胸壁浸潤肺癌の1切除例を経験したので報告する.症例は57歳, 男性.右前胸部痛を主訴に受診し, 精査にて肺尖部胸壁浸潤肺癌と診断された.術前治療としてMVC (mitomycinC, vindesine, carboplatin) 療法を1クールと放射線46Gyによる同時併用治療を施行し, 縮小効果を認めた.手術は, 標準的胸骨正中切開に加え頚部襟状切開ならびに右鎖骨の部分切除にてアプローチを行った.腫瘍は, 第一肋骨ならびに右腕頭静脈への浸潤を認めたが, 本アプローチで右上葉切除ならびに第一肋骨, 右腕頭静脈の合併切除を安全に施行できた.摘出標本の病理組織学的検索では, 腫瘍細胞は認められず, Ef.3と診断された.術後経過は良好で, 第17病日に軽快退院し, 術後3ヵ月の現在再発なく経過観察中である.
  • 羽隅 透, 磯上 勝彦, 大久田 和弘
    2000 年 14 巻 5 号 p. 676-680
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は27歳, 女性.職場検診にて胸部異常陰影を指摘され, 精査目的に当科入院となった.胸部CT, 3次元CT, 肺動脈造影等の検査にて, 右S10, 左S8の両側肺に多発した肺動静脈瘻と診断された.本症例に対し, 両側一期的に胸腔鏡下切除術を施行した.末梢肺野に発生した病変は容易に同定可能であり, Endostaplerにて安全に切除しえた.確実性, 低侵襲性の点から胸腔鏡下手術は極めて有用な治療法と考えられた.
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