日本作物学会紀事
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64 巻, 2 号
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  • 続 栄治, 島崎 敦, ナイバルレブ ロサバティ ウルカラ, 富山 一男
    1995 年 64 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サトイモは宮崎県における主要な作物であり, 需要の増加と共に生産量も増えている. これに伴い栽培農家ではサトイモの連作障害の発現が問題となってきている. 本研究ではサトイモの連作障害の実態を調査すると共に, 連作土壌の理化学性, 土壌線虫, およびサトイモ由来の生長抑制物質について分析・調査した. サトイモを5年連作すると地上部の乾物重および塊茎収量は著しく低下し, 初年度作に比べ地上部乾物重において50%, 塊茎収量においで59%それぞれ低下した. サトイモ連作区と輪作区における土壌について分析した結果, 両者間に土壌の理化学性および線虫数について明瞭な差異は認められなかった. サトイモ地上部(茎葉)およびその連作土壌を水ならびにメタノールで抽出し, その抽出液について生理活性を検討した結果, これらの抽出液はダイコンならびにカブの初期生育を著しく抑制することが認められた. 以上の結果から, サトイモの連作障害はサ卜イモ由来の生長抑制物質と密接に関連しているものと推察した.
  • 関塚 史朗, 野瀬 昭博, 川満 芳信, 村山 盛一, 有隅 健一
    1995 年 64 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    デンドロビウム (Dendrobium Ekapol cv. Panda) の Crassulacean Acid Metabolism (CAM) 型 CO2交換に及ぼす日長の影響を調べた. 日長処理として長日, 短日及び中日の3区を設定し, 長, 短日区は各々16及び10時間日長のグロースキャビネット内で57~60日間生育させた後, 個葉のガス交換を調査した. 中日区は自然日長下で生育させ, 日長が12時間に達した時に調査を開始した. その結果, デンドロビウムはいずれの日長条件下でもCAM型CO2交換を示す固定的なCAM植物であった. CAM型CO2交換の日変化における各PhaseのCO2収支量は, 日長条件により変化した. 短日条件では Phase 1が, 長日条件では Phase 2と4のCO2収支量が増加した. 1日の総CO2収支量は中・短日条件下で高く, また測定葉のリンゴ酸含量の日変動幅が大きかった. 葉のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性は, 日長処理の影響が認められなかったが, リンゴ酸に対するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの感受性は, Phase 4からPhase 1の前半にかけて処理間差が認められ, その時期で得られたCO2交換速度の違いと密接に関連するものと推察された.
  • 平尾 健二, 窪田 文武, 森 和一, 宋 祥甫
    1995 年 64 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中国産の超多収性F1品種, 汕優63号 (SH)の個葉光合成速度 (Pl)を評価するため, わが国の代表的自殖系2品種 (JC;日本晴とコシヒカリ)と比較した. 各品種を生育初期から出穂直前期まで, ポット栽培した. Plと関係の深い要因として, 気孔伝導度, 葉肉伝導度, クロロフィル含量, 可溶性タンパク質含量, リブロース1,5ニリン酸カルボキシラーゼ(RuBPCase)活性等を測定した. 結果を以下に述べる. 1) SHのPlは, JCに比較し, 生育期間中, 常に高く維持された. 特に, 生育初期では, SH (26.98μmolm-2s-1)とJC (平均;21.15μmolm-2s-1)との差が大きかった. 2) 生育初期にSHのPlが高いのは, 気孔伝導度と葉肉伝導度の双方が高いことによるものであった. また, 出穂直前期には, 葉肉伝導度が高いことがSHのPlを高める主要因となっていた. 3) 可溶性タンパク質含量とクロロフィル含量はSHで有意に低かった. 一方, RuBPCase活性にはSHとJCとの間で有意差は認められなかった. 4) このように, SHの葉内のクロロフィル含量や可溶性タンパク含量は少ないが, Plは高く, また, RuBPCase活性もJCと同じ水準の活性を示すことが明らかとなった. 個葉光合成に関して, 高い窒素利用効率を示すことがSHの特性の一つであると考えられた.
  • 崔 亨吉, 金 潤植, 武岡 洋治
    1995 年 64 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    異なる栽培条件下で生育した水稲品種シモキクの株を成熟期に採取して, 穂の諸形質を調査するとともに, 徒手およびパラフィン切片法により穂首節間の維管束数を観察して, その大・小両維管束数と一次・二次の各枝梗数, 一穂籾数および籾重との各相関関係, ならびに異なる栽植密度および窒素施肥量による大・小両維管束数の変化を調査した. 大・小両維管束数はともに正規型分布を示し, 平均値は各々9および16.5であった. これら維管束数の変動係数は, 下位伸長節間に比べて遥かに大きい値を示した. 大維管束数は一次枝梗数と相関係数0.894で, 小維管束数は二次枝梗数と相関係数0.764で, それぞれ有意な正の相関を示した. 大・小両維管束数は一穂籾数とも各々相関係数が0.855および0.850で,極めて高い正相関を示した. 両維管束数ともに窒素施肥量と正の回帰関係を示す一方, 栽植密度とは各々負の回帰性を示した.
  • 伊藤 誠治, 佐藤 暁子, 星野 次江
    1995 年 64 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    今後の東北地域のコムギの品質改良に帰するため, 東北農試育成の30品種・系統と外国コムギ30品種を同一条件で栽培し, 硬質コムギと軟質コムギとに分類し品質調査を行った. 硬質コムギと軟質コムギで品質諸形質間に有意な差が認められた. また, 硬質と軟質コムギを全体としてまとめたときと, 硬質コムギと軟質コムギに分けたときでは異なる品質諸形質相互間の相関関係が認められた. このため, コムギの品質諸形質相互の相関関係を比較検討するときには, 硬質コムギと軟質コムギに分類して行う必要があることが明らかに出来た. 硬質コムギでは原粒灰分含有率と製粉性との間に負の相関関係が認められた. 硬質と軟質コムギの原粒粗蛋白含有率の平均値に有意な差は認められなかった. 原粒粗蛋白含有率と製粉性との間には相関関係は認められなかった. A粉の白さと製粉性との間に, 硬質コムギと軟質コムギそれぞれで正の相関関係が認められ, グループ内では製粉性の向上は粉色の向上につながると考えられた. 硬質コムギではA粉灰分含有率とA粉の白さおよび明るさとの間に, 負の相関関係が認められ, 粉色の向上に灰分含有率の低下が重要と考えられた. しかし, 軟質コムギでは, 有意な相関関係は認められなかった. 硬質コムギ, 軟質コムギともA粉粗蛋白含有率とA粉の白さおよび明るさとの間には, 有意な相関関係は認められなかった. セディメンテーション値と灰分含有率との間に, 硬質コムギで負の相関関係が認められ, 製パン性には粗蛋白含有率だけでなく灰分含有率も影響している可能性が示唆された.
  • 山本 由徳, 黒川 洋, 新田 洋司, 吉田 徹志
    1995 年 64 巻 2 号 p. 227-234
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    出穂期がほぼ等しく分げつ性に優れる半矮性インド型稲のIR36と分げつ性の劣る穂重型日本型稲の黄金錦を供試し, 遮光と培地窒素濃度に対する分げつ反応の品種間差異について, 乾物生産特性の面から解析を行った. 1. 1/5000aワグネルポットを用いて遮光 [0(無遮光), 40, 77%] と窒素濃度 [10, 20(標準), 40ppm] を組み合わせた水耕栽培の結果, 両品種とも遮光程度が強く窒素濃度が低い区ほど分げつ数は減少したが, いずれの条件下でもIR36の最高分げつ数は黄金錦の2~2.5倍の値を示した. 対照 (無遮光・標準窒素濃度) 区に対する各処理区の分げつ発生割合をみても, IR36は黄金錦よりも高く, 環境要因の変動に対して安定した分げつ能力を示し, とくに強遮光条件下での差異が大きく認められる傾向にあった. 2. 両品種とも地上部乾物重の増加に伴って分げつ数は多くなっだが, 乾物重が同一水準での分げつ数はIR36が黄金錦に優った. これには分げつへの乾物分配率がIR36で優れていることが密接に関係しており, 黄金錦の無遮光区とIR36の強(77%)遮光区の割合がほぼ等しかった. 一方, 両品種の遮光および窒素濃度の変動に伴う分げつ数の多少は主に乾物生産量に支配された.
  • 関塚 史朗, 川満 芳信, 野瀬 昭博, 村山 盛一, 新城 長有
    1995 年 64 巻 2 号 p. 235-242
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    デンドロビウム (Dendrobium Ekapol cv. Panda)を用い, 水ストレスが個葉のガス交換に及ぼす影響を調べた. Crassulacean Acid Metabolism型CO2交換は, 水ストレスを与えると速やかに変化し, まず明期の後半に生じるCO2吸収が減少した. 次いで暗期と明期始めのCO2吸収も減少したが, 葉の水ポテンシャルが-0.6MPa以下でも正のCO2交換速度を維持した. 各PhaseのCO2収支量は, 水ポテンシャルが-0.38MPa以下に低下すると急激に減少し, デンドロビウムのCO2交換速度が低下する水ポテンシャルの閾値は-0.38MPa付近にあるものと考えられた. ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性は, 水ストレスを与えると増加し, CO2吸収の減少と対応しなかった. 一方, 水ストレス条件下の葉の拡散伝導度とCO2吸収速度との間には, いずれのPhaseにおいても高い正の相関関係が認められ, 本研究で認められた水ストレス下のCO2吸収は, 主に気孔を含むガス拡散系により律速されていると考えた.
  • 寺島 一男, 秋田 重誠, 酒井 長雄
    1995 年 64 巻 2 号 p. 243-250
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲における根の土壌中分布特性と耐ころび型倒伏性との関係を明らかにするために, 耐ころび型倒伏性程度の弱い日本の品種とこれの強いアメリカ合衆国の品種を用い, 断根処理, 作土下層への不織布埋設処理が押し倒し抵抗値に及ぼす影響を調査した. また, 土壌の充填密度をかえたポットで同じ材料を栽培し, 根重と押し倒し抵抗の上壌密度に伴う変動を調査した. 5cmの深さまでの浅い層に伸長する根を切断した場合の押し倒し抵抗の低下は比較的小さかったが, 10cmまで切断すると押し倒し抵抗が顕著に低下した. また, 5~10cmの深い部分の根が切断される場合, 単位根重あたりでみた押し倒し抵抗の低下度は, 5cmまでの断根処理に比べて大きい傾向が認められた. さらに, 作土下層に不織布を埋設すると, 押し倒し抵抗が低下する傾向がみられ, とくに心土層への根の分布量の多い品種ほど低下の程度が大きかった. 心土層中の根の単位根重当り押し倒し抵抗値は, いずれの品種においても作土層中の根に比べて大であった. 一方, 高密度で土壌を充填したポット内に生育した株は, 低密度で充填したポットの株より単位根重当りの押し倒し抵抗値が高くなった. 以上から, 水稲の耐ころび型倒伏性の改善には, 土壌密度の高い心土層へ根を多く分布させる特性が重要と判断された.
  • 山口 武視, 津野 幸人, 中野 淳一, 三木 幸次
    1995 年 64 巻 2 号 p. 251-258
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    鳥取市湖山町(大学附属農場)と鳥取県東伯郡北条町(農家圃場)とで同時期に移植した水稲3系統について, 生育経過を比較した. 北条の肥培管理の特徴は, 多量の窒素追肥で葉身N%を登熟後期まで高く維持した. 湖山は当地方の慣行に準じて管理した. 両者の大きな差は, 北条で登熟初期の粒重増加が小さいことであった. この原因を, 籾当たり葉面積(F/籾), 葉身N%および玄米中のアンモニア濃度に着目して解析した. 登熟期間全般を通じて, F/籾が大であるものほど粒重増加は大である傾向がうかがえた. しかし, 穂揃後15日では, F/籾が一定の範囲であれば葉身N%の高い個体の粗玄米千粒重は小さかった. 玄米中のアンモニア濃度と粗玄米千粒重との間には負の相関が認められ, このアンモニア濃度は葉身N%と正の相関があった. 北条の稲は登熟初期の葉身N%が3%以上と過度に高く, 玄米中のアンモニア濃度が高かったために, 粒重増加が抑制されたものと考えた. 粒重増加にプラスの要因であるF/籾は, 根の呼吸速度と対数関数で示される正の相関関係が認められた. これは, 根の呼吸速度が高い個体の葉身N%が高く, これらの個体で葉の枯れ上がりが少なかった結果であり, 登熟後期まで根の呼吸速度を低下させないことが葉面積を高く保つこととなる. 根の呼吸速度には, 根部N%と根部全糖濃度の2要因が関与していることを確認することができ, 同じ根部N%であれば, 全糖濃度が高いものほど高い呼吸を示した.
  • 斎藤 邦行, 菊入 誠, 石原 邦
    1995 年 64 巻 2 号 p. 259-265
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ29品種を供試し, 圃場条件下における日中の頂小葉傾斜角度(β)の品種間差異を検討した. 各品種のβは8月8日には10~65度(平均39.8度), 9月4日には25~80度(平均50.6度)と大きな品種間差が認められた. 8月8日にβの大きい品種が9月4日に大きいβを示すとは限らなかったが, 両日ともに三重大豆のβは最も小さかった. 三重大豆とβの大きい品種に属するエンレイを用いて, 牛育に伴うβの日変化の推移を調査した. 早朝小さかったエンレイのβは日射量の増加とともに急速に大きくなり, 9~11時に最大となった後, タ刻になるに従い徐々に小さくなる日変化が認められた. 三重大豆のβはエンレイに比べて1日中小さく, 日変化する程度も小さかった. βの日変化で認められた最大値は, エンレイに比べ三重大豆は30~40度小さく, 両品種ともに栄養生長期に比べ生殖生長期に大きくなった. 個体群上層部の相対光強度には日変化が認められ, 早朝小さく9~11時に大さくなったが, その程度はエンレイに比べ三重大豆で小さかった. 木部水ポテンシャルの日変化を調査した結果, 三重大豆の木部水ポテンシャルは日中エンレイより約0.1MPa低く推移した. 以上の結果, エンレイに比べ小葉のβの変化する程度の小さい三重大豆では, 個体群内への光の透入が悪いとともに, 個体群上層の小葉は水分ス卜レスの程度が大きいことが明らかとなった.
  • ビルベー卜 ボニラ, 平井 達也, 内藤 整, 土屋 幹夫
    1995 年 64 巻 2 号 p. 266-272
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本研究では低濃度のNaCl前処理によるイネの耐塩性強化の可能性を検討した. 耐塩性品種の Kala Rata1-24 (KR1)および Bhura Rata, 感受性品種 Taichung 65および IR28を用い, 6葉期の個体に対して, 0, 9, 18および 52 mmol 1-1 のNaClで14日間の前処理を行った後, 0, 18, 52および104 mmol 1-1のNaCl本処理を7日間行い, 生育を調査した. KR1とIR28については, Naおよびリグニン, セルロース, 珪酸含有率を測定した. さらに, KR1については Na+の蒸散流濃度係数 (TSCFNa+)も算出した. その結果, IR28を除く各品種では, 高濃度NaClによる乾物増加の低下が前処理によって軽減されることが認められ, 耐塩性強化の可能性が窺われたが, その程度は品種および前処理の濃度により異なっていた. また, KR1では前処理による茎葉部への Naの集積の抑制とTSCFNa+の低下が認められ, 前処理によって根のNa+排除効率が高まったことが推察された. この点には, 前処理による根のセルロース含有率の増大, および茎葉部リグニン含有率の増大が係わっているものと推察された.
  • EISA El Gaali, 前田 和彦, 森 信寛, 北本 豊
    1995 年 64 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    リゾビウム菌の細胞融合を行うため, プロトプラストの作出法と再生法を確立した. 細菌菌体を1%N-ラウリルサルコシンで予備洗浄し, Tris-HClバッファー(pH7.5)に0.6M MgSO4と5mg/mlのリゾチームを添加した反応液に加えて1時間反応させ, 溶菌を行った. 反応途中の反応液の交換によリプロトプラストが高効率で作出された. 調製したプロトブラストは 3.O×10-2~6.4×1O-3の再生率を示した. 種間および種内融合にポリエチレングリコール法を適用し, 栄養要求性マーカーを異にするリゾビウム菌株間で融合処理したプロトプラストを0.6Mマンニトールを含む軟寒天最少培地に混和すると, 10-7レベルの頻度で再生がみられた. Bradyrhizobium japonicum の種内融合株および B. japonicum と Sinorhizobium fredii間の種間融合株は, ポット栽培試験で宿主植物に対する根粒形成能力を示した. 種間融合株には供試した親株よリ1.5倍多い根粒を形成した菌株があった. 数十倍以上の継代培養を経た種内および種間融合株を調べたところ親株と比較して2倍以上高いニトロゲナーゼ活性を示す菌株があった. これらの結果から, 細胞融合法の適用による大豆根粒菌の窒素固定能の増大の可能性が示唆された.
  • 磯部 勝孝, 国分 牧衛, 坪木 良雄
    1995 年 64 巻 2 号 p. 281-287
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの収量成立過程を発育形態的な観点から解析するため, 有限伸育型品種 (エンレイ, タマホマレ) と無限伸育型品種 (Harosoy) を用いて花房次位ごとの着英率と子実肥大の経過を明らかにした. 調査は主茎の第4, 7, 10, 13および最上位節について行ない, 以下のような結果を得た. いずれの品種とも着莢率と子実乾物重は花房次位が高まるにつれて低下したが, 一莢内粒数は花房次位間に一定の傾向は認められなかった. 高次の花房で子実乾物重が低下したのは, 高次の花房ほど開花が遅くなり, 肥大期間が短くなるためと思われた. また, 2次花房の複葉は子実の生長を助長したが, 着莢には影響をおよぼさなかった. 有限伸育型品種の最上位節では0次花房よリ1次花房のほうが子実乾物重, 乾物蓄積率(RDA)とも大きかったが, これは0次花房は1次花房に比べ英数が多いため同化産物の競合がより著しいためと思われた. 以上のように, ダイズでは伸育型の相違にかかわらず, 着莢率, 子実乾物重のいずれもが低次な花房ほど大きくなることが明らかにされた. したがってダイズの収量は低次な花房に由来する子実の割合が高く, これらの子実の稔実の良否が収量に大きく影響するものと推察される.
  • 佐藤 忠彦, 権 五昌, 三宅 博, 谷口 武, 前田 英三
    1995 年 64 巻 2 号 p. 288-293
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ペチュニアとイネのプロトプラストを用いて, 走査電子顕微鏡の試料調製法の検討を行った. アルコール脱水処理中に生じるプロトプラストの形状変化を軽減するための固定条件を調査した. その結果, 固定条件の違いにより, 脱水処理により生じるプロトプラストの体積の減少にかなりの差が認められ, グルタルアルデヒド固定, グルタルアルデヒド・オスミウム固定, グルタルアルデヒド・タンニン酸・オスミウム固定の順に, 体積の減少が少なくなった. グルタルアルデヒド単独固定の場合に, ペチュニア葉由来プロトプラストの葉緑体の緑色は, アルコール脱水により脱色した. グルタルアルデヒド・タンニン酸・オスミウムで固定すると, ペチュニアとイネのプロトプラストの良く保存された走査電子顕微鏡像が得られた.
  • 島田 信二, 国分 牧衛, 松井 重雄
    1995 年 64 巻 2 号 p. 294-303
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田転換畑ダイズの多収化技術の基礎的知見を得るために, ライシメータを用いて地下水位を制御し, その高低 (15cm~100cm一定あるいは変動, 無潅水) がダイズの生育・収量に及ぼす影響について解析した. 試験は茨城県つくば市では気象条件が異なる2ヵ年 (1991年:多雨, 1992年:少雨)および1992年にはつくば市, 広島県福山市の2ヵ年において行った. その結果, (1) 葉の葉緑素含量は葉位で反応が異なり, 主茎下位葉では地下水位が低い場合に高かった. 上位葉では降雨条件によって異なり, 多雨年には低い地下水位で高く, 少雨年には40cm区で最も高く, それよりも上下の地下水位ではやや低かった. (2) 土壌各層の根長密度も地下水位に影響され, 70 cm区では土壌表層と地下水位面付近の2ヵ年所で大きかったが, 20, 40 cm 区では土壌表層のみで大きかった. (3) 収量は降雨条件に左右され, 多雨年は70 cm区で, 少雨年は40 cm区において最も多収であった. また, 地下水位の変動処理は減収を招いた. 収量構成要素は処理によって稔実莢数が最も大きく変動し, ついで百粒重もかなり変動したが, 一莢内粒数は比較的安定していた. このように, 地下水位がダイズの生育・収量に及ぼす影響は降雨条件によって異なることが示唆されるので, 降雨条件に応じて地下水位を一定に維持することがダイズの安定多収に重要であることが示された.
  • 前迫 誠, 佐野 芳雄, 井之上 準
    1995 年 64 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アジア稲の浮稲と祖先野生種の浮稲性を比較する目的で, 浮稲747品種と祖先野生種112系統を用いて, 伸長最低節間 (LEI) の位置および水位上昇条件下 (2 cm/日, 4 cm/日)における節間伸長性について調査した. 本実験に供した野生稲系統を第8葉期の草型によって類別すると, 立ち型と葡蔔型の頻度は半々であった. 葡蔔型系統の稲苗を深水処理したところ, 約5日後には主茎・分げつ共に屈起し, 立ち型系統の稲苗と同じような草型を示した. LEIの位置を平均値で比較すると, 葡蔔型は立ち型より約1節間高く, 野生稲は浮稲より1節間高かった. 一方, 水位上昇下における生育についてみれば, 野生稲系統の多くは浮稲より節間伸長性が劣っており, その程度は葡旬型系統において著しいようであったが, その原因としては, 葉鞘および葉身が短いこと, 系統によっては, さらに個々の節間の伸長性が劣ることが考えられた.
  • 岡野 邦夫, 小牧 晋哉, 松尾 喜義, 広瀬 大介, 巽 二郎
    1995 年 64 巻 2 号 p. 310-316
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    成木茶園における秋冬期の光合成に有効な葉層の厚さを明らかにする目的で, 晩秋期に群落光合成の解析を行った. 茶株内の相対照度は指数関数的に減衰し, 表層下1Ocmでは1%以下となった. 樹冠内の下層部に位置する葉は, 弱光に適応した陰葉的特性を示した. 樹冠内での光分布と各葉の光一光合成曲線に基づいて計算した群落光合成の推定値から, 群落光合成の大部分は株表層葉によって行われること, 及び表層下1O cmに位置する葉は光補償点近辺の光しか受け取れないことが分かった. 次ぎに茶株全体に13CO2を同化させた後, レール走行式摘採機を利用して葉層の層別刈り取りを行い, 13C固定量から葉層別の光合成能力を直接的に求めた. その結果, 群落光合成の85%は表層下5 cmまでの葉層で行われること, 表層下10 cm以下の葉層が群落光合成に寄与する割合は3%以下であることが明らかとなった. 以上より, 芽の生長が休止している秋冬期の成木茶園における光合成に有効な葉層の厚さは約1Ocmと結論された.
  • 湯川 智行, 渡辺 好昭, 山本 紳朗
    1995 年 64 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    オオムギ体内のフルクタンと耐雪性との関連について明らかにするために, 3℃・暗黒下およびその後の20℃・自然光下におけるフルククン含有率とフルクタン分解酵素活性の変化を調査した. 低温暗黒下ではフルクタン含有率は減少したが, フレイン(β-2,6フルクタン)分解酵素およびイヌリン(β-2,1フルクタン)分解酵素活性は一定値を維持し変化が認められなかった. イヌリン分解酵素はフレイン分解酵素より活性が高かった. その後の20℃・自然光下においては, フレイン分解酵素活性は急激に増加した後減少した. イヌリン分解酵素活性は低くほとんど変化しなかった. フルクタン含有率はフレイン分解酵素活性と対称的な変化を示した. 以上より, 低温暗黒下においては構成酵素としての性質をもつイヌリン分解構成酵素が, その後の20℃・自然光下においては, 誘導酵素としての性質をもつフレイン分解酵素が主にフルクタンに作用するものと考えられた. さらに, 耐雪性に関連する両酵素およびフルクタンについて論議した.
  • 星川 清親, ジュリアルニ
    1995 年 64 巻 2 号 p. 323-327
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アピオス (Apios americana Medikus Medikus) の栽培化を目的として, まず本研究では圃場で栽培したアピオスの生長過程を明らかにした. 1993年4月に, 生体重3-4gの平均的サイズの種いもを圃場に植えた. 植え付け後約30日で出芽した. 地上部の乾物重の増加は, 植え付け後98日目ごろから急激になり, 乾物重は168日目ごろに最大値に達し, その後低下した. 地下部について見ると, 68日目ごろに, 地下茎の各節が肥大を始めて, いも形成が始まり, 地上部の生長が終わるころ又は開花盛期以後, いもは急速に肥大した. 植え付け後217日に地上部は降霜により枯れ, いもの生長はここで止まった. 種いもは消失せず, 植え付けから地上部の生長が終わるごろまで, 乾物重が低下し, それ以後急速に増大して, 収穫時には植え付け時の重さとほぼ同じになった. 本研究によりアピオスの圃場条件下での生長を始めて明らかにすることができた. これは今後の栽培技術研究の基本となる.
  • 星川 清親, 佐々木 良治, 長谷部 幹
    1995 年 64 巻 2 号 p. 328-332
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲乳苗の育苗期間を一層短縮化し, しかも機械移植に必要とされる苗丈(7 cm)の確保を目的として, 育苗期間と光条件をかえた4種の乳苗の育苗をロックウールマットによりおこなった. そして育苗した乳苗の移植後(5, 10日後)に活着生長を調査した. 出芽後も暗条件下で育苗した乳苗(イエロー乳苗)の苗丈は育苗期間7日で 9.6cm, 一方, 出芽後2日間緑化し(グリーン乳苗)さらに3日間ハウス内で育苗した乳苗の苗丈は5.5cmであった. 育苗期間4日のイエロー乳苗の苗丈は4.1cmで, 機械移植に必要とされる苗丈には達しなかった. 移植後の根数, 最長根長は, 同じ育苗期間のイエロー乳苗とグリーン乳苗との間で有意な差はなかったが, 移植後10日間の乾物重の増加は, イエロー乳苗が若干少なかった. 4種の乳苗の育苗期間中の乾物重との増加は, 胚乳養分の消費量と相関関係(r=0.984)にあった. 移植後5日間の乾物重の増加と胚乳養分の消費量の間でも相関関係(r=0.994)があり, 活着期の生育は, 胚乳養分にかなり依存していた. 以上の結果より, イエロー乳苗の活着は, グリーン乳苗に比較すると若干劣るものの,実用性があると思われた.
  • 山本 晴彦, 鈴木 義則, 早川 誠而
    1995 年 64 巻 2 号 p. 333-335
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 松田 智明, 原 弘道, 柏葉 晃一, 長南 信雄
    1995 年 64 巻 2 号 p. 336-337
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 武岡 洋治, 竹谷 裕之, モハメッド イサム A.W.
    1995 年 64 巻 2 号 p. 338-342
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
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  • 阿部 淳
    1995 年 64 巻 2 号 p. 343-344
    発行日: 1995/06/05
    公開日: 2008/02/14
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