本研究では低濃度のNaCl前処理によるイネの耐塩性強化の可能性を検討した. 耐塩性品種の Kala Rata1-24 (KR1)および Bhura Rata, 感受性品種 Taichung 65および IR28を用い, 6葉期の個体に対して, 0, 9, 18および 52 mmol 1
-1 のNaClで14日間の前処理を行った後, 0, 18, 52および104 mmol 1
-1のNaCl本処理を7日間行い, 生育を調査した. KR1とIR28については, Naおよびリグニン, セルロース, 珪酸含有率を測定した. さらに, KR1については Na+の蒸散流濃度係数 (TSCFNa
+)も算出した. その結果, IR28を除く各品種では, 高濃度NaClによる乾物増加の低下が前処理によって軽減されることが認められ, 耐塩性強化の可能性が窺われたが, その程度は品種および前処理の濃度により異なっていた. また, KR1では前処理による茎葉部への Naの集積の抑制とTSCFNa
+の低下が認められ, 前処理によって根のNa
+排除効率が高まったことが推察された. この点には, 前処理による根のセルロース含有率の増大, および茎葉部リグニン含有率の増大が係わっているものと推察された.
抄録全体を表示