化学工学論文集
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29 巻, 4 号
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熱力学,物性,分子シミュレーション
移動現象,流体力学,混合
  • 山田 善之, 後藤 邦彰, 西村 龍夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2003 年 29 巻 4 号 p. 500-507
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    向流充填層燃焼操作での燃焼過程に及ぼす燃料粒子の径および形状の影響を実験的に検討することを目的として,厚さが同一でアスペクト比および大きさの異なる長方形紙片をモデル燃料粒子として実験的検討を行った.検討ではガス燃焼が生じず固体表面反応だけが起き,かつ,燃焼が持続するガス流速範囲を対象とした.
    実験の結果,そのガス流速範囲内では同じガス流速であっても,燃焼面進行速度は紙片に依って異なるが,その違いは紙片形状の一部の特徴を表わす幾何学的形状因子では表わせないことがわかった.この紙片形状による燃焼面進行速度の差違は,表面反応において有効な表面積の差によって生じると仮定し,流体透過法により各燃料粒子の有効比表面積を測定し,実験結果を整理したところ,一定ガス流速での燃焼面進行速度は紙片の形状に関わらず有効比表面積が大きいほど大きくなることがわかった.このことは,この有効比表面積が,本実験条件において,燃焼面進行速度を支配する表面反応速度を表している事を示唆する.
    さらに,有効比表面積から算出できる有効球相当径を代表値として,相似則からJ因子を用いて物質移動係数を求めた.結果,燃焼面進行速度は粒子形状,供給ガス流速によらず物質移動係数と相関できることがわかった.このことは,燃料形状の燃焼過程に与える影響は流体透過法により評価できることを示す.
  • 長山 和史, 今井 正直
    原稿種別: ノート
    専門分野: 移動現象,流体力学,混合
    2003 年 29 巻 4 号 p. 568-571
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    スルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム(AOT)により形成したマイクロエマルションに生体高分子としてゼラチンを添加することによって調製したゲル組織において,酵素反応の基質として脂肪酸とアルコール(ともに炭素数4から14)の有効拡散係数(Deff)と分配係数(P)を実測した.それぞれの有効拡散係数とモル容積(v)の相関式を得た.
    (脂肪酸)Deff[10-10m2s-1] = 6.55×10-12υ-0.43
    (109.0≤;υ[10-6m3mol-1]≤331.0)
    (アルコール)DeffAL[10-10m2s-1] = 2.67×10-13υ-0.71
    (103.6≤υ[10-6m3mol-1]≤325.6)
    一方,有機相本体に対するゲル相中の基質の分配係数は炭素数の増大とともに減少傾向を示したが,炭素数が8以上に至ってほぼ一定の値を示した(PFA = 2.03(ブタン酸),1.17(ヘキサン酸),ca. 0.85(オクタン酸,デカン酸,ドデカン酸,テトラデカン酸);PAL = 4.01(ブタノール),1.70(ヘキサノール),ca. 1.50(オクタノール,デカノール,ドデカノール,テトラデカノール)).アルコールの分配係数は脂肪酸のそれより約2倍大きい値を示すことが認められた.
触媒,反応,反応器設計
  • 井土 忠厚, 清水 智也, 晋 工, 後藤 繁雄
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2003 年 29 巻 4 号 p. 534-540
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    名古屋大学大学院工学研究科分子化学工学専攻,464一8603名古屋市千種区不老町
    塩化ベンゾイルとフェノールからの安息香酸フェニル生成反応を3種類の反応器を使って行った.相聞移動触媒にポリエチレングリコール,有機溶媒にトルエンを使ったとき,フェノールおよび水相のアルカリ濃度を増加させると,主に触媒からなる第3相が形成した.しかし,塩化ベンゾイルおよび安息香酸フェニルは共に加水分解するため,完全混合回分反応器では安息香酸フェニルへの選択率は0.6以下となった.第3相により有機相と水相の直接の接触を避けることができる相分離型回分反応器では,フェノールおよびアルカリ濃度を変化させることにより,選択率を0.9以上にすることができた.
    相分離型回分反応器と同じ高い選択率を得る事ができるように,塩化ベンゾイルおよびフェノールを有機相および水相にそれぞれ分離して供給する相分離型流通攪拌反応器の新しい型を工夫した.
  • 後藤 宗治, 畑中 千秋, 上江洲 一也, 後藤 雅宏
    原稿種別: ノート
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2003 年 29 巻 4 号 p. 565-567
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    Rhizopus起源のリパーゼをn-ビニル-2-ピロリドン,メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル,n-イソプロピルアクリルアミドの重合によって得られる樹脂中に包括固定化した.調製した固定化リパーゼまたは遊離リパーゼを用いて,グリセリンとオレイン酸のエステル合成反応を37°Cで行い,リパーゼ担体の極性がエステル合成反応の選択性に及ぼす影響について検討した.親水性の担体(n-イソプロピルアクリルアミド)にリパーゼを固定化することにより疎水性(n-ビニル-2-ピロリドン)の担体に固定化した場合や遊離リパーゼを用いた場合と比較して選択的にモノオレインを合成することができた.
  • 菅原 靖, 浅利 孝一, 菅原 勝康, 菅原 拓男
    原稿種別: ノート
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2003 年 29 巻 4 号 p. 572-575
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    二酸化チタン光触媒を組み込んだコンパクトなガス分解用反応装置を設計するための基礎情報を得ることを目的として,形状制御可能な金網光触媒を試作し,そのエチレン分解特性を評価した.
    まずはじめに,試作金網光触媒の初期活性変化を調べた.ブラックライトランプ照射下,50ppmのエチレンを回分法で分解する操作を繰り返した結果,エチレンの完全分解に要する時間は,最初,ランプ照射回数の増加に伴って短くなり,数回の照射後に一定になった.
    ついで,20メッシュ金網光触媒(二酸化チタン塗布量1.88g,単位金網面積当たり7.2g/m2)および350メッシュ金網光触媒(二酸化チタン塗布量1.88g,単位金網面積当たり5.1g/m2)で約107ppmのエチレン分解を比較した結果,分解能がほぼ同等という結果を得た.反応速度はエチレン濃度の0.5次で表現できた.20メッシュ金網に対し,二酸化チタン塗布量を0.92g(単位金網面積当たり3.5g/m2),1.88g(単位金網面積当たり7.2g/m2),2.70g(単位金網面積当たり10.4g/m2)と変化させた光触媒で50ppmのエチレンを分解した結果,分解速度は塗布量に比例して増大した.
  • 坂東 芳行, 津野 直樹, 孟 令光, 中村 正秋
    原稿種別: ノート
    専門分野: 触媒,反応,反応器設計
    2003 年 29 巻 4 号 p. 576-578
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    構造物を設置した矩形気泡塔における泡沫生成挙動について実験的に検討した.構造物としては,塔内に仕切板,液面に閉塞板を設置した.これらの板の設置位置を変えて,流動特性と泡沫生成挙動(泡沫層高)を測定した.泡沫は仕切板および閉塞板の設置により生成しやすくなり,泡沫層高はライザにおけるガス速度・ガスホールドアップおよび液面での乱れに強く支配された.また,泡沫層はライザからの液流れによりダウンカマ液面で生成され,生成した泡沫は含水率の低いムース状であった.界面活性剤を用いた泡沫分離実験においては,本方式の除去率・濃縮率ともに従来方式よりも高かった.
材料工学,デバイス
  • 長尾 大輔, 峯 英一, 片倉 俊彦, 今野 幹男
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 材料工学,デバイス
    2003 年 29 巻 4 号 p. 546-550
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    シリコンアルコキシドの加水分解反応を利用したシード成長において生成する粒径分布に及ぼすアンモニア濃度の影響を調べるために,アンモニア濃度0.25–1.0kmol/m3の範囲でシード成長実験を行った.高濃度の1.0kmol/m3ではシード粒子同士がわずかに凝集し,一方,低濃度の0.25kmol/m3では多数の新粒子が発生した.これに対し中間の0.5kmol/m3では,凝集や新粒子発生がほとんどないことから,シード成長には最適なアンモニア濃度が存在することがわかった.新粒子の発生原因を検討するため,シード成長中の実測pHに基づき反応中のイオン強度を算定し,高アンモニア濃度におけるイオン強度の増大が新粒子発生を抑制することを指摘した.この考察の妥当性を確認するため,電解質であるLiClまたはKClをシード成長溶液に添加する実験も行った.いずれの電解質でもサブmol/m3の添加で新粒子発生数が大幅に減少した.
分離工学
  • 川崎 健二, 松田 晃, 新倉 隆男
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    内径50および55mmの円筒形凍結管を用い,水-NaClおよび水-グルコース系について,幅広い凍結速度範囲における濃縮分離効率の変化を調べ,併せて超音波照射による濃縮分離効率の改善効果についても検討した.その結果,超音波を照射しないで凍結する場合,凍結速度が5mm/h以上ではほとんど濃縮分離されないが,凍結速度が3mm/h以下になると,凍結速度が遅いほど濃縮分離効率は向上した.超音波を照射しながら凍結すると,未照射の場合よりも凍結濃縮分離効率は格段に向上し,凍結速度が遅いほど効率は高くなった.このとき,溶液の溶存酸素濃度(すなわち溶存空気濃度)の影響は大きく,7mg/L以上ではキャビテーションの作用により,40mm/hの速い凍結速度でも十分に分離が可能であった.一方,キャビテーションが生じ難い溶存酸素濃度7mg/L以下では,15mm/hより遅い凍結速度で超音波の振動により濃縮分離された.
  • 近藤 郁, 今城 祐二, 島田 学, 奥山 喜久夫
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 513-520
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    レーザー光散乱(LLS)にもとづいた遠隔粒子測定法による,高周波プロセスプラズマ中で気相生成された粒子の空間分布in-situ測定が多く報告されているが,低濃度の粒子群の計測が困難であるため,プラズマ/イオンシース境界領域に捕捉された高濃度の粒子雲に限定された報告がほとんどである.そこで本研究では,プラズマCVD装置に外部から導入したSiO2試験粒子をプラズマ内に挿入したサンプリング管で吸引し,種々の位置における粒子を,減圧下の使用が可能なパーティクルカウンタにより測定した.本測定法により,LLS法では困難な低濃度の粒子分布測定が可能となった.測定結果から,捕捉粒子雲が形成されるプロセス条件においては,捕捉限界以上の過剰な粒子が,接地電極(基板)方向へ排出されず,電極横方向からプラズマ領域外へ排出されることが明らかとなった.また,捕捉粒子雲の形成を崩し,粒子を接地電極方向へ流出させるガス流量の条件が,RF電力と粒子径に依存することが見出された.さらに,プラズマ停止後の捕捉粒子の輸送を測定することで,プラズマプロセスにおいて基板表面粒子汚染が発生しやすい条件も明らかになった.
  • 芝田 隼次, 森川 正貴, 芳川 典生, 山田 智子, 村山 憲弘, 山本 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    液晶製造プロセスから排出されるエッチング廃液に溶媒抽出法を適用して,リン酸,酢酸および硝酸を含む廃混酸から酢酸および硝酸を抽出分離して,抽残液としてリン酸を残す分離プロセスの構築を行った.酢酸および硝酸を抽出するための抽出剤として,リン酸トリオクチル(TOP)を用い,リン酸,酢酸および硝酸の抽出と剥離に関する基礎実験およびミキサーセトラー抽出装置を用いた実証試験を行った.
    TOPを用いると,リン酸を主成分とする廃混酸から酢酸および硝酸を選択的に抽出分離することができる.エッチング廃液に相比(A/O)0.4,6段の向流抽出を適用すると,酢酸と硝酸をほぼ完全に抽出分離できる.酸を抽出したTOPと純水とを相比(O/A)1.0,4段の向流剥離の条件で接触させると,酢酸と硝酸がそれぞれ99%および99.5%剥離できる.得られた基礎実験の結果を基にして,ミキサーセトラー抽出装置を用いて実証試験を行った.その結果,廃混酸中の酢酸および硝酸の抽出率はそれぞれ約95%,98%となり,抽残液に粗リン酸を得ることができた.
  • 今駒 博信, 江田 昌之, 久保田 克之, 山村 方人, 吉田 正道
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 579-581
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    シート状基材上に塗布層を形成させた塗膜の乾燥曲線を連続測定できる乾燥実験装置を提案した.実際の塗膜乾燥は両面対流方式を用いて短時間で行われることが多いが,この原理を実験室で再現しながら,塗膜試料の微小な質量減少を追随するのは困難であった.本研究では,パソコンにつないだ2台の電子天秤を跨いだ試料の上下面から試料に衝突熱風を供給することで,試料の質量変化を連続的に測定可能な,両面対流方式乾燥機を模擬した乾燥実験装置を製作し,その性能を検討した結果,風速0.6m/s以下で満足できるデータが得られた.
  • 今駒 博信, 中井 清孝, 久保田 克之, 山村 方人, 吉田 正道
    原稿種別: ノート
    専門分野: 分離工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 582-584
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    多成分均相系溶液のモデル系としてポリビニルアルコール(PVA)+グリセリン+水系を取り上げ,その薄膜の赤外線放射連続および間欠乾燥を行い,乾燥曲線を測定した.連続乾燥結果よりPVA質量基準平均含水率に対する乾燥速度は,グリセリン分率に関わらずPVAのみの場合と全含水率範囲にわたってほぼ一致した.また間欠乾燥曲線の一致も良好であった.この結果は乾燥装置設計・操作上有用である.
粉粒体工学,流動層
  • 出口 清一, 出口 雅之, 西村 顕, 藤間 幸久
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 粉粒体工学,流動層
    2003 年 29 巻 4 号 p. 493-499
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    密閉容器内の粒子層を,系外から流動化気体を供給すること無く流動化できる密閉型オシレート流動層を発案した.本システムは,密閉容器,容器中の粒子ストッパー上部と分散板下部の空間をつなぐ弁付き通気管より構成される.密閉容器の上下強制振動と粒子層の慣性運動で誘起される気体流れを弁付き通気管により整流することで,流動層を形成できると考えた.本開発研究では,まず鉛直方向可動距離を制限した鋼球とその台座を弁とした通気管を試作し,その通気抵抗値をもとに想定機構による流動層形成の可能性を理論的に示した.この通気管を組み込んだ密閉型オシレート流動層を試作し,流動層の形成を確認した.流動状態は,オシレート数増加とともに固定層,初期流動層,気泡流動層,表面波を伴う気泡流動層と変遷した.また,本密閉型オシレート流動層を効率的に運転するための通気管構造を示した.
  • 松尾 誠治
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 粉粒体工学,流動層
    2003 年 29 巻 4 号 p. 526-533
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    近年の石炭有効利用,特に低品位炭CWMにおける流動化技術および微粒子製造法などを考慮し,CWMに対する従来の充填率のみに依存しない粒度分布に基づく半経験的な粘度モデルの提案を検討した.モデル導出では,懸濁液中粒子群の平均粒子間液膜厚さの概念を出発点に粘度モデルの提案を行った.また,凝集性スラリーのレオロジーモデルを基にCWM本来の特徴である非ニュートン性への拡張も試みた.さらに,モデルパラメータとなる比表面積,空間率の粒度分布からの算出法についても同時に検討および改良を実施した.
    その結果,提案したスラリー粘度式に基づいた推定結果を実測データと比較したところ,両者には正の相関が見られモデルの有効性が示唆された.その際,粒子群の空間率の算出に用いた補正が有効であった.このモデルより,たとえ粒子群の空間率が小さな試料でも微細粒子の増加により比表面積が増大すれば,スラリーの粘度は空間率の大きな試料より増大することを定量的に明らかにすることができた.
  • 出口 清一, 出口 雅之, 磯部 幹隆, 西村 顕, 藤間 幸久
    原稿種別: ノート
    専門分野: 粉粒体工学,流動層
    2003 年 29 巻 4 号 p. 585-587
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    密閉型オシレ-卜流動層(Airtight Oscillating Fluidized Bed,AOFB)の伝熱速度を同装置にて分散板下部より流動化空気を導入する通常流動層のそれと比較した.AOFBの伝熱係数はオシレート数の増加とともに増加した.AOFBでは層内へ間欠的に流動化空気が流れ込むにも関わらず,その伝熱係数の最大値は通常流動層のそれと殆ど変わらない値であった.AOFBの鉛直方向伝熱速度分布は,サインカーブ状を呈していた.これについては,気泡の滞留位置や頻度から定性的に説明できた.
プロセスシステム工学
  • 小野 仁意, 園田 隆, 大谷 雄一, 倉世古 浩志, 野田 賢, 長谷部 伸治
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: プロセスシステム工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    固体酸化物型燃料電池(SOFC)システムは,電池の温度,圧力等の状態変数に対して運転上の制約を有している.本研究では,SOFCシステムを対象に,種々の制約を満足しながら起動時間を最短とする最適起動操作の導出を試みた.動的最適化手法として,状態変数と制御変数をともに時間領域で離散近似するSimultaneous approachを採用した.離散化により,動的最適化問題から変換された非線形計画問題には,逐次二次計画法(rSQP法)を用いた.その結果,電池入口の温度差,圧力差,温度変化率,最大温度等のすべての制約を満足しながら,起動時間を最短にする5つの操作量の操作指針が得られた.さらに,装置設計パラメータも最適化変数に加えて,理論最短時間で起動する操作方法と機器仕様を同時に導出した.
  • Zhang Wenlong, 今枝 正夫, 橋本 強二, 神戸 貴章, 服部 洋文
    原稿種別: ノート
    専門分野: プロセスシステム工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 541-545
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    近年,現代制御理論に基づく様々な制御方法が提案され産業用プラントにも応用がみられる.その中で注目できるのが一般化予測制御(GPC)法で適応的制御が可能である.本研究では,化学プロセス工業において中心的なプロセスの一つである蒸留塔を取り扱い,その中段温度の安定化制御を行った.運転条件により変動するプラントの動特性をパラメトリックモデルで求め一般化予測制御法を適用し蒸留塔の温度制御を試みた.さらに一般化予測制御法に基づいてPIDパラメータを自己調整するセルフチューニングPID制御法へ拡張した.運転データをもとにした一連のコンピュータシミュレーションでは良好な制御結果を得ることができた.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 渡辺 泰祐, 今井 正直, 鈴木 功
    原稿種別: 化工データ
    専門分野: 生物化学工学,食品工学,医用工学
    2003 年 29 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    Escherichia coliを供試菌として,高圧ならびに超臨界状態の二酸化炭素を用いた殺菌法の可能性を検討した.処理条件の範囲は,圧力5–20MPa,温度298–323K,処理時間300–1,800sである.生残菌率(処理前の系の生菌数に対する処理後の系の生菌数の比)を評価指標として用いた.生残菌率は,同一圧力のもとでは高い温度条件の系ほど減少が顕著であった.同一温度のもとでは圧力の高い系ほど顕著に減少した.また,超臨界二酸化炭素の供給口と細菌懸濁液の立体的接触状態が殺菌効果に影響を与えることを示した.処理時間の経過にともなう生残菌率の初期減少過程を一次反応とみなし,殺菌の速度定数を求めた.速度定数の温度変化より本法による殺菌の見かけの活性化エネルギーを推算したところ,約50kJ· mol−1であった.この値は,気体あるいは液体の二酸化炭素による殺菌処理,あるいは加熱処理の約6分の1であり,本法がエネルギー的に有利な殺菌手法である事が認められた.
安全,環境,エネルギー
  • 森 滋勝, 近藤 元博, 板谷 義紀
    原稿種別: 総合論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 453-465
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    廃棄物の大幅な減量化および再生型エネルギー資源としての活用を図る上で,有機系廃棄物のエネルギーリサイクルは緊急性の高い開発課題である.一方で,排ガスや灰中への有害物質の生成が大きな社会問題となっており,環境負荷の低いシステムが要求される.これまでに,有効な廃棄物エネルギーリサイクル技術に関する数多くの研究・開発が実施されており,最近では燃焼のみならずガス化システムも検討されている.これらの技術の一部はすでに,新たな実用またはパイロットプラントとして建設や試験,稼動が始まっている.本論文では,廃葉物からのエネルギーリサイクル技術に関する最近の動向を概説するだけでなく,燃焼炉やガス化炉のプラント設計に不可欠となる基礎的知見について,主要な国内外の研究および著者らによる研究成果をレビューして体系化を試みた.具体的には廃棄物,特にRDFの燃焼やガス化の反応速度論,ダイオキシンおよび塩化水素の発生と相互作用やこれらの発生抑制操作,脱硫や脱硝等の排ガス処理対策,灰処理技術に大別して,これらに関する要素研究を概説した.またこれらに基づき,今後の展望について考察した.
  • 岡本 裕行, 井上 雅夫, 山本 秀樹, 芝田 隼次
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 466-470
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    ビール粕,おがくず等の有機性原料を固形化して焼成した炭,あるいは木炭の燃焼特性を把握するために2種類の装置を開発した.燃焼速度測定装置は,一定条件下で炭を燃焼させながら被燃焼物の質量の経時変化を測定することにより,火持ちを数値化するものである.一方,燃焼ガス温度測定装置は,一定条件下で炭を燃焼させながら通気空気の出口温度の経時変化を測定することにより,火持ちを数値化するものである.高含水率のビール粕(脱水後67wt%)を乾燥させ,加熱しながら高圧で圧縮して成形品を作成し,これを低酸素雰囲気下で焼成することにより得た炭化物(ビール粕成形炭)と市販のオガ炭,備長炭について,これらの装置でその燃焼特性を評価した.いずれの装置で評価しても,火持ちは備長炭が最も長く,ついでビール粕成形炭とオガ炭は同等であるという結果を得て,これらの燃焼特性評価装置が実用に供せる可能性を示した.
  • 大竹 哲也, 宍戸 昌広, 安藤 則男, 小林 正男
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    親水性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)水溶液に木炭を浸漬することで表面をPEGで被覆した木炭を調整し,その表面修飾炭の吸放湿特性を評価した.その結果,木炭に比べ調湿能力が2–7倍向上することが確認できた.焼成温度が高い木炭ほどPEGの保持量が大きく,また調湿能力の向上も大きかった.さらに,高湿度時のPEG木炭の吸湿量はPEGおよび木炭のそれぞれの単体による吸湿量の和から予測される値より大きくなった.これは,PEG膜中の水分濃度が高くなった場合PEGが潮解をおこし,生じたPEG溶液が木炭側へ移動して導管および細孔などの微細構造部分に保持される,いわゆる「吸い取り紙」的な作用が発現するためと考えられる.
  • 片田 直伸, 池田 恵俊, 小座間 基裕, 志戸 崇紀, 門脇 幸重, 丹羽 幹, 杉谷 栄一
    原稿種別: 技術論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 488-492
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    水蒸気を含む窒素気流中で木材を熱処理したところ,1,050Kで700m2g−1,1,100Kで800m2g−1と,高い表面積を有する炭化物を調製できることがわかった.反応生成物の分析からは水性ガス反応が起きたことがわかった.また,連続処理装置を試作し,簡便な操作で700m2g−1程度の活性炭を1.4kg h−1の生産速度で製造する実証試験に成功した.
  • 佐藤 耕一, 濱渦 陽
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 508-512
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    CFC12-フルオロエーテル転換装置を開発するため,NaOH-メタノール溶液中でCFC12に氏i株)O線照射した.CFC12は光脱塩素反応によりHCFC22に変換され,それに続くWilliamsonエーテル合成反応によりフルオロエーテル(CHF2OCH3)になる.ここでは,光脱塩素反応を解析した.速度光反応速度はCFC12の分圧の1/2乗および光強度の3/2乗に比例し,メタノール中に析出したNaCl粒子により速度が増加することがわかった.これらの関係から,連鎖反応にメトキシイオンラジカルが関与する光反応機構を提案した.
  • 小林 潤, 藤田 拓也, 杉山 征輝, 福田 宜弘, 小林 敬幸, 渡辺 藤雄, 架谷 昌信
    原稿種別: ノート
    専門分野: 安全,環境,エネルギー
    2003 年 29 巻 4 号 p. 562-564
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル 認証あり
    水蒸気系吸着ヒートポンプ(AHP)用吸着材の開発を目的として,近年リサイクル等で着目されているPETを原料に用いて低温KOH薬品賦活により活性炭を製造し,その水蒸気吸着特性に基づく性能評価を行った.
    KOH/原料比0.8–4,賦活温度673–873Kにおいて生成された活性炭は,AHP操作範囲において最大でシリカゲルの約1.7倍の水蒸気平衡吸着量を示すこと,原料単体の熱分解生成物と比較し賦活炭の方が収率が非常に高いこと,賦活温度およびKOH/原料比がそれぞれ773Kおよび3.2で最適となることが分かり,本法によってAHP用吸着材として優れた性能を有する活性炭の製造が可能であることが示された.
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