日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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68 巻, 12 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • ――歌物語の抒情の起源へ――
    遠藤 耕太郎
    2019 年68 巻12 号 p. 1-11
    発行日: 2019/12/10
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    『肥前国風土記』(逸文)記載の杵島岳での歌垣歌に近似する歌が、『古事記』女鳥王物語にある。一見かけ離れているが、歌垣歌と制度に反して逃避行する男女の歌は、歌垣のなかでは深くつながっている。中国西南部に暮らす少数民族リス族の歌垣には、さまざまなストーリーがあるが、その一つに制度に反して逃避行を決意するストーリーがある。歌垣はストーリーに則りつつ、それに抗することによって持続するが、そこに抒情の原型とでも呼ぶべき心の機微や揺らぎが発生する。歌の掛け合いは、現実の結婚相手を探すという目的を持つ歌垣の場を離れ、歌の上手な老人たちの文芸的空間でも行われるが、その場では結婚相手を探すという現実的インタレストがないため、歌い手は抒情そのものを目的とすることになる。本論は、具体的な声の現場の歌の掛け合いをモデルとして、文字による女鳥王物語の抒情の方法の起源が、声の歌掛けの技術にあることを論じた。

  • ――フィクションとしての西鶴説話――
    梁 誠允
    2019 年68 巻12 号 p. 12-21
    発行日: 2019/12/10
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    西鶴の浮世草子『懐硯』巻五之二「明て悔しき養子が銀筥」は、経済的困窮を隠して世渡りをする町人達の物語である。原拠不明とされてきたが、作中の詐術譚は『棠陰比事』「道譲詐囚」に原型を見出すことができ、歳末の布施行為は民話「大晦日の客」と『撰集抄』の霊験譚・身代わり観音譚の発想を複合させ、ひねりを加えて表現したものと考えられる。一方で当代の婚姻世態を踏まえ、時事的な話題も取り入れており、虚構でありながら現実味のある説話になり得ている。

  • ――〈子僧〉と〈特別急行列車〉――
    八原 瑠里
    2019 年68 巻12 号 p. 22-32
    発行日: 2019/12/10
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    本稿では、〈群衆-紳士〉/〈子僧-特急列車〉という二つの〈頭ならびに腹〉の構図に注目し、新しい認識論に基づいた表現の「面白さ」がどのように試みられているか検討した。その際、従来看過されてきた〈子僧-特急列車〉の構図の特徴を、「寒駅」、「H、K間」などの言葉や同時代資料をもとに調査/分析した。その結果、「時間と金銭」を重視する主体の認識を〈子僧-特急列車〉という物自体に飛び込ませて成立した「現象」を描出するという試みを明らかにした。

  • 坂 堅太
    2019 年68 巻12 号 p. 33-43
    発行日: 2019/12/10
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    本稿は源氏鶏太「英語屋さん」を取り上げ、彼の初期サラリーマン小説における「戦後」の様相について再検討を試みている。主人公の造型や物語の展開を分析することで、この小説が戦後占領と分かちがたく結びついていることを明らかにし、その「占領文学」的性格について論じた。そして占領下の民主化改革により成立した企業コミュニティの姿を描き出した点にこそ、源氏のサラリーマン小説の独自性があったと結論づけた。

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