化学工学論文集
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40 巻, 2 号
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編集ノート
粉粒体工学
  • 秋元 啓太, 大田 昌樹, 佐藤 善之, 猪股 宏
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,親水的表面を有する金属酸化物のナノ粒子を含有する水溶液から,高い生産性を保ちつつ凝集を制御できる微粒子粉体製造を,高密度CO2を利用して行う手法を提案し,その実証実験を行った.高密度CO2は,水相エマルションの分散溶媒ならびに急速膨張流体として利用される.すなわち,CO2中に混合された水相は高せん断速度により微細化され,これが保持されうる短時間のうちに断熱的に減圧膨張噴霧することで微小水滴化し,さらにその際のJoule–Thomson効果を利用して水滴を冷却凝固させることで滴の合一を防ぐものである.実際にナノ粒子分散水溶液の乾燥実験を行った結果,比較的サイズ分布の狭いミクロンクラスのナノ粒子凝集体を得ることができ,本手法の有効性が実証された.
分離工学
  • 荻 崇, 小野 瞳, 包 理, 新沼 仁, 奥山 喜久夫
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    静電紡糸法を用いてポリアクリロニトリル(PAN)を溶かしたジメチルホルムアミド(DMF)の溶液からナノファイバーを作製した.PAN濃度,雰囲気の温度,原料溶液の物性値(粘度,表面張力,電気伝導度)などを広範囲に変化させて紡糸実験を行い,作製されたファイバーの形態への影響を検討した.実験結果より,粘度の上昇に伴い繊維径,ビーズ径,ビーズ長さ,ビーズ間距離が直線的に増大することがわかった.また,ファイバーの形態がビーズ状,スピンドル型のビーズ状,ストレート状,リボン状へと変化する原料溶液の粘度の閾値が初めて明らかとなった.さらに,作製したファイバーを既存のフィルタの上に紡糸しエアフィルタを作製し,単分散のエアロゾル粒子を用いてエアフィルタの捕集効率および圧力損失を測定した結果,ビーズ状ファイバーを用いたフィルタが最も高い捕集効率を示すことがわかった.
  • 大榮 薫, 大島 達也, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    沈澱法によって調製したマグネタイトを用いて砒素の吸着におよぼすイオン強度,吸着温度の影響および砒素吸着がマグネタイト表面におよぼす影響を調べた.砒素の吸着挙動,吸着前後の表面電位の変化および吸着速度実験から砒素の吸着機構を検討した.As(III)の吸着はイオン強度には全く依存せず,As(III)の存在下においてゼータ電位は負電位側へ,等電点は低pH側へシフトした.As(III)の吸着が吸熱反応と正のエントロピー変化を示すことから,As(III)は水和水の脱離を伴う内圏錯体によって吸着されたと考えられる.As(V)は低pHで高い吸着量を示し,pHの上昇に伴い吸着量は低下した.高pH領域ではイオン強度の増加による吸着率の増加が示され,As(V)の吸着後,等電点は低pH側へ大きくシフトした.As(V)の吸着は発熱反応および正のエントロピー変化を示し,内圏錯体と外圏錯体の形成反応による吸着機構が考えられる.As(III)およびAs(V)の吸着速度解析の結果,As(III)およびAs(V)の吸着は粒内拡散が律速段階であることが明らかとなった.
  • 山下 彬宏, 鹿田 潤平, 大島 達也, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,天然ガスの一種であるメタンガスの大量貯蔵およびバイオマス廃棄物の有効活用を目的に,バイオマス廃棄物を原料とした活性炭の調製を行い,そのメタン貯蔵媒体としての吸着特性を評価した.活性炭の調製は薬品賦活法で行い,竹およびカニ殻を原料とした活性炭を調製した.その結果,竹・カニ殻混合活性炭は比表面積が最大で2,654 m2 g-1となり,市販活性炭の2倍以上高い値が得られた.次いで,その活性炭によるメタンガス吸着を行い,市販活性炭との比較を行った.その結果,3.5 kPa条件下で竹・カニ殻混合活性炭は市販活性炭の約1.5倍と優れたメタン吸着能を示した.メタンガス吸着量と各活性炭の物性との関係を調べた結果,マイクロ孔容積が特にメタンガス吸着に影響をおよぼす因子として重要であることが見出された.
反応工学
  • 菅野 周一, 川嵜 透, 松原 宏文, 原 賢二, 福岡 淳
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    酸素および高濃度水蒸気共存下でのPt/Al2O3触媒による水素酸化反応において,反応ガス中に揮発性低分子シロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン(D5))が存在すると,触媒表面にD5が吸着して水素酸化率が低下した.高い触媒活性を維持するため,反応ガスを各種金属酸化物(除去材),触媒の順で接触させ,触媒を通過した後のガス中の水素濃度経時変化を調べた.その結果,各種除去材がD5を反応ガス中から除去し,触媒の水素酸化率低下を抑制することがわかった.特に,ZrO2, メソ多孔体であるSBA-15やMCM-41は高いD5除去性能を示し,Si–O骨格にZr, Tiを組み込んだZr-SBA-15, Ti-SBA-15は新規な酸点が発現し,SBA-15の除去性能を向上した.Zr-SBA-15をコートしたハニカムのみを用いたD5除去試験において,ハニカムを通過したガス中に未分解のD5とCH4が検出された.ハニカムに流通させたD5と,未分解のD5とCH4でハニカム前後の炭素収支がほぼ100%となり,D5は加水分解して除去されていることを確認した.アレニウスプロットから加水分解反応の次数はD5濃度に対し一次であった.
  • 加藤 貴宏, 菅原 勝康
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    Ce, LaおよびPrを含むセリウム系研磨材は,光学レンズやガラス基板の研磨に多用されているが,使用済み研磨材中の希土類元素は回収されずに廃棄されているのが現状である.本研究では塩素化法を用いて使用済み研磨材に含まれる共存元素(Al, Fe, Si)を揮発させ,Ce, LaおよびPrを固体残渣として回収することを試みた.
    試料とした使用済み研磨粉中には,希土類はそれぞれCeO2, LaOF, PrOFの形態で存在すると推定された.使用済み研磨材を塩素気流中で加熱すると,Ce, La, Prは1100˚Cまで昇温しても全く揮発せず固相中に残留した.またFeは700˚Cから,Alは800˚C, Siは900˚Cから揮発し始めることがわかった.一方,使用済み研磨材に炭素粒子を混合して塩素気流中で加熱すると,400˚C付近からFe, Si, Alの順に顕著に揮発し始める様子が観測された.とくにFeとSiは800˚Cに昇温する過程で全量揮発し,Alは85%が揮発した.Ce, LaおよびPrは,炭素添加試料で800˚C以上の高温になると徐々に揮発し始め,1100˚Cでは10–20%の揮発が見られた.続いて使用済み研磨材に炭素を添加し,塩素気流中で600–800˚Cにて1 h反応を行ったところ,700˚Cで処理すれば希土類元素を全く揮発させることなく共存元素の含有量が少ない希土類元素の固体残渣を得ることができた.
生物化学工学,食品工学,医用工学
  • 峯 浩二, 宇治田 吾朗, 田谷 正仁
    原稿種別: ノート
    2014 年 40 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    チューベローズ(Polianthes tuberosa)カルス培養液からの多糖類(TPS)の分離・回収に関し,工業化に向けたろ過装置運転における操作指針の検討を行った.ろ過助剤を用いた加圧型ろ過機によるデッドエンド定圧ろ過において,同一の透過流束下では,単位膜面積当たりのプレコートろ過助剤量の増大とともにろ液の光学的透過度は上昇した.プレコート層の流動抵抗は,0.48から2.7 kg/m2の範囲のプレコートろ過助剤量に対し直線的に上昇した.ケーク層の平均ろ過比抵抗は,ろ過原料中のカルス濃度に対するろ過助剤濃度の比が,60から89の間でほぼ一定の値であった.加圧型ろ過機によって得たデータより,フィルタープレスでのカルス培養液のろ液処理量は,膜面積1 m2当たり0.22 m3と計算され,デッドエンド定速ろ過において,ほぼ100%のTPS回収率を伴って,光学的透過度が95%以上の清澄なろ液が安定して得られた.
材料工学,界面現象
  • 大島 達也, 増田 ゆかり, 原之村 貴也, 稲田 飛鳥, 馬場 由成
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    フラボノイドの一種であるケルセチンは抗酸化作用やラジカル消去能が知られ,健康食品等への利用が期待されているが,その難水溶性のために単体での経口摂取における低吸収性が指摘されている.本研究ではケルセチンの水分散性を高めるため,カゼインとの複合体を調製した.ケルセチンのエタノール溶液とカゼインの水分散液を混合し,凍結乾燥して得たケルセチン・カゼイン複合体(Que–Cas)は,ケルセチン単体と比較して弱酸性–中性条件下における水分散性が大幅に改善された.動的光散乱法にてQue–Casのゼータ電位と粒子径を分析した結果,Que–Casは等電点が4.7付近で,90–120 nmあるいはそれより大きい粒子を含む多分散なコロイド粒子として水媒体に分散することが示唆された.複合体のX線回折および蛍光分析の結果,Que–Casに含まれるケルセチンは結晶性を示さず,カゼインの蛍光消光が確認されたことから,ケルセチンはカゼインミセルに内包されていることが示唆された.
  • 石山 新太郎, 大場 弘則, 山本 春也, 菖蒲 敬久
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,0.3–3 MeVのプロトン(H2+)を常温でイオン注入したサファイアが約200 nmの紫外光波長領域に特異的な吸収帯を有することが明らかとなった.そこでプロトン注入とレーザー加工を組み合わせたサファイア単結晶基板表面の微細加工を試みた結果,下記結論が得られた.0.3 MeVのプロトンを1.3×1017ions/cm2のイオンフラックスでサファイア表面へ注入した領域に対して3.4 J/cm2の単パルスレーザー照射を行った結果,試料表面に長さ7 mmで深さ1 µm×幅80 µmの均一矩形形状の溝を微細加工することに成功した.ただし,1.3×1017 ions/cm2以上のプロトンをサファイアに過剰注入した場合,表面にブリスタリングが生じることから同加工法にはイオン注入量に上限がある.
  • 久保 翔平, 後藤 成吾, 岩田 龍祐, 甲原 好浩, 武井 孝行, 吉田 昌弘
    原稿種別: 報文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル 認証あり
    優れた低融性,高耐水性,低熱膨張性,高流動性を有する封着加工用鉛フリーガラスの開発は,セラミックスやエレクトロニクス産業の分野において求められている.本報では,金属酸化物および非金属酸化物(V2O5, MnO2, KPO3)からなるさまざまな組成のガラスを調製し,封着加工用ガラスとしての有用性を評価した.評価項目は,熱特性評価,耐水試験,粉末X線回折および赤外分光光度計による構造評価,フローボタン試験,明度測定,封着試験,封着強度試験である.調製したガラスの中で低融性かつ高流動性を有するガラスの組成は,40 mol%V2O5–10 mol%MnO2–50 mol%KPO3, 30 mol%V2O5–20 mol%MnO2–50 mol%KPO3, 30 mol%V2O5–10 mol%MnO2–60 mol%KPO3であった.それらのガラスは多量にリンを含むため,耐水性に乏しかったが,第4成分としてCuOを所定量添加することで耐水性を大幅に向上させることができた.しかしながら,それらのガラスの熱膨張係数は被封着材(ソーダライムガラス)の熱膨張係数(7–8×10-6˚C-1)より高かったため,熱膨張性の改善を行った.具体的には,低熱膨張セラミックフィラーであるリン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr2(WO4)(PO4)2, ZWP)を所定量添加することで,被封着材と同等の熱膨張係数に調整することができた.さらに,それらの中で特に優れた特性を有するガラスは,市販の鉛ガラスと同等の封着特性を有していた.
広領域,その他
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