Ce, LaおよびPrを含むセリウム系研磨材は,光学レンズやガラス基板の研磨に多用されているが,使用済み研磨材中の希土類元素は回収されずに廃棄されているのが現状である.本研究では塩素化法を用いて使用済み研磨材に含まれる共存元素(Al, Fe, Si)を揮発させ,Ce, LaおよびPrを固体残渣として回収することを試みた.
試料とした使用済み研磨粉中には,希土類はそれぞれCeO
2, LaOF, PrOFの形態で存在すると推定された.使用済み研磨材を塩素気流中で加熱すると,Ce, La, Prは1100˚Cまで昇温しても全く揮発せず固相中に残留した.またFeは700˚Cから,Alは800˚C, Siは900˚Cから揮発し始めることがわかった.一方,使用済み研磨材に炭素粒子を混合して塩素気流中で加熱すると,400˚C付近からFe, Si, Alの順に顕著に揮発し始める様子が観測された.とくにFeとSiは800˚Cに昇温する過程で全量揮発し,Alは85%が揮発した.Ce, LaおよびPrは,炭素添加試料で800˚C以上の高温になると徐々に揮発し始め,1100˚Cでは10–20%の揮発が見られた.続いて使用済み研磨材に炭素を添加し,塩素気流中で600–800˚Cにて1 h反応を行ったところ,700˚Cで処理すれば希土類元素を全く揮発させることなく共存元素の含有量が少ない希土類元素の固体残渣を得ることができた.
抄録全体を表示